世界中に広がっている人種差別撤廃運動、今叫ばれているのはなぜ?

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わたしが好きなアーティストがリリースした新曲について

わたしはBeyoncéという、とっても尊敬している海外アーティストがいます。
歌詞は英語なんですが、和訳を見ると、社会問題や女性として勇気づけられる歌が多くて、根強いファンが多いです。

そんなBeyoncéがちょっと前に新曲を発表しました。『BLACK PARADE』という曲なんですが、Beyoncéの故郷でもあるアメリカ・テキサス州で奴隷が完全に解放されたことを記念し、「ジューンティーンス」として祝われている日に配信された曲です。
Beyoncé自身のルーツや故郷、「さあ行くわ 王座に高々と座って/私のパレードについてきて、ブラック・パレードに」と黒人であることについて、誇り高く歌いあげています。

また、楽曲のリリースと共に、自身のインスタグラムで「良いジューンティーンスの週末を!これからも、困難の中でも私たちが喜びを分かちあい、お互いを称え続けることを祈っています。私たちの美しさ、力、勢力を忘れないでください」と投稿。

その背景には、最近アメリカで問題になっている、警官の黒人に対する暴力行為があるのです…。

『Black lives matter』

みなさんは『Black Lives Matter』という言葉をご存じですか?
3つの単語、16文字からなるこの言葉の背景に何があるのでしょう。

2012年2月に南部フロリダ州でトレイボン・マーティンさんという黒人の高校生が夜、フードをかぶって飲み物とお菓子を買って帰るとき、自警団の男性に不審者と見なされて射殺されてしまいました。
マーティンさんは当時、銃などは持っていなかったのに、射殺した男性は正当防衛が認められ無罪になりました。

それを知ったアリシア・ガルザさんという黒人女性がSNSに投稿した文章、“Black people. I love you. I love us. Our lives matter, Black lives matter”、直訳すると「黒人の皆さん。私は皆さんを愛している。私たちのことを愛している。私たちの命は大切。黒人の命は大切だ」という意味。

これを見た友人の女性がハッシュタグをつけ、そこからSNSで拡散していったのです。

この2年後の2014年には白人の警察官による取締りで、黒人の命が奪われるケースが相次ぎましたが、いずれのケースでも起訴されませんでした。
そのたびに抗議の声が上がり、「Black Lives Matter」(BLM)ということばが、さらに広がっていったのです。

この言葉を拡散した人はたくさんいますが、やはり多くのアフリカ系アメリカ人が、命が危険にさらされるとまでいかなくとも、かなり日常生活のレベルで不審者に間違えられるとか、警察に職務質問されるとか、車に乗っていたら、どうでもいいことでかなりの頻度で止められるとか、いろいろ身に覚えがあるようです。

ジョージ・フロイドさんの事件

そして、また黒人を白人が殺害するという事件が起こります。

2020年5月25日、ミネソタ州ミネアポリスで、黒人のジョージ・フロイドさんが白人警察官に紙幣を偽造した疑いで取り押さえられました。フロイドさんはその場で手錠をかけられ、警官の膝で首を押さえつけられました。フロイドさんが「息ができない!」と何度も主張しても8分以上そのままの状態が続きました。その後、フロイドさんの反応がなくなり、救急車で病院に運ばれましたが、死亡が宣告されました。

フロイドさんの死をきっかけに、人種差別に対する世界的な抗議行動や警察改革、植民地時代の象徴の破壊が起こり、アメリカと世界で組織的人種差別をなくすよう求める声が高まっているのです。

ブリオナ・テイラーさんの事件

2020年3月に警官に射殺されたのは、病院職員のブリオナ・テイラーさん。同月13日の真夜中過ぎ、ケンタッキー州ルイヴィルの自宅で恋人とベッドにいたところ、警官隊がドアを破壊して室内に踏み込んで来ました。

当局によると、恋人が所持を許可されていた銃を使い、警官の脚に発砲。3人の警官が計32発を撃ち返したといいます。恋人はその後の警察の調べに、テイラーさんの元恋人が押し入って来たと思ったと話したといいます。

テイラーさんはベッドから出たましたが、銃弾を受けて廊下の床で死亡しました。

警官隊は麻薬取引の捜査で、テイラーさんの自宅の家宅捜索令状を裁判所から得ていました。令状は、捜索の際には「ノック不要」としていたといいます。テイラーさんの自宅住所は、元ボーイフレンドが荷物の受け取り先として利用していました。

テイラーさんに犯罪歴はありませんでした。室内から違法薬物も見つかりませんでした。

世界に広がった黒人差別撤廃運動のパンデミック

フロイドの事件に抗議するデモは、少なくともアメリカの140都市で行われています。警官とデモ参加者との衝突をとらえた画像は瞬時に世界に広がって、怒りのコメントが集まり、行動が呼びかけられています。

さらに抗議活動は世界へと広まり、ベルリンやロンドン、パリ、バンクーバーから、アフリカ諸国や中南米、中東の都市まで、世界各地で行われています。シリアでは、アーティストが人種差別反対の壁画を描き、レバノンやチリでは、警察官による暴力から身を守る方法を活動家らがアドバイスしています。

ヨーロッパ連合(EU)は6月1日に、アメリカの抗議活動に関係する「すべての問題」が、「法と人権とを最大限に尊重し、迅速に解決されること」を望むと述べました。

チリの左派議員は、移民や先住民に対するチリとアメリカの人種差別を比較して、ツイッターでこう述べました。「私たちはみな、ジョージ・フロイドだ」。

人種差別に怒りと悲しみの声をあげた著名人たち

また、多くの著名人が、今回の事件を受けて、怒りと悲しみを訴えています。

著名人① アリアナ・グランデ
「Black lives matter」と書かれたメッセージボードを手に、マスク姿で恋人と一緒にロサンゼルスで行われた抗議デモに参加したことをSNSで報告。

著名人② ビヨンセ
「白昼に(フロイドさんが)殺害されるのを目撃しました。打ちひしがれ、同時に嫌悪感を覚えています。無意味な殺人はもうたくさん。有色人種が人間以下の扱いを受けるのを見るのももうたくさんです」と語る動画を投稿

著名人③ P!nk
「黒人の命だけでなく、全ての人種の命が等しく大切と白人が訴えることにうんざりする」と投稿、「白人は危険な目にはあっていない」と意義を唱えて黒人の人権に寄り添う力強いメッセージを発信。

著名人④ マイケル・ジョーダン
「深い悲しみで胸が痛く、純粋に怒っている。根深い差別と暴力に対して声をあげる人たちと共にいる」とのコメントを発表

著名人⑤ 大坂なおみ
自身のツイッターアカウントで、翌日の準決勝の試合に出場しないことを発表。「私はアスリートである前に1人の黒人女性です」「私がプレーをしなかったからといって劇的なことが起こるとは思いませんが、白人が大多数を占めるスポーツで会話を始めることができれば、それは正しい方向への第一歩だと考えています」とコメント。

他にも、ジャスティン・ビーバーやジェイミー・フォックスなど、数々の著名人たちが抗議しています。
さらに、バスケットボールや野球などのチームが試合をボイコットするなど、スポーツ界にも抗議の声があがっています。

また、トランプ大統領が「略奪が始まれば、銃撃が始まる」と暴力を助長しかねない投稿をしたことに対しても抗議の声があがっています。

著名人⑥ テイラー・スウィフト
「大統領になってからずっと白人至上主義や人種差別主義の火種をまいていたくせに、ずうずうしくも武力で脅して道徳的に優れているふりをするの? 11月の選挙であなたを辞めさせる」と猛烈抗議

著名人⑦ レディ・ガガ
「トランプは大統領として失格なのはわかっていたこと。人種差別者で愚か者」などとインスタグラムに投稿

人種差別は過去のものではない

わたしは人種差別は過去のものだと思っていました。
キング牧師の「私には夢がある。私の幼い子どもたちが肌の色ではなく、人格によって評価される国に暮らすという夢だ」という演説も、わたしが生まれるずっとまえのことです。

それに日本は島国なので、人種が違うということがそもそもないので、黒人だから差別するという考えはあまりないのだと思います。

生まれ持った肌の色は、先祖が脈々と受け継いできた、そのひとのルーツです。
そのひとの、誰も汚すことのできない誇りで、とても尊いものです。
なのに苦しんでいるひとがたくさんいることを、今回の記事で知ることができました。

純粋に「みんな同じ人間なんだからさ!仲良くしようよ!」なんて言葉で解決できるような、そんな簡単なことではないんですね…。

でも、どれだけ時間がかかっても、肌の色で苦しむことのない時代が来ることを願っています。

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