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前編の紹介
前編でご紹介した《NPO法人前庭水管拡大症・ペンドレッド症候群の会》の代表である、大島美和様にインタビューの後編になります。
前編では、大島様の娘さんの持つ、難病の前庭水管拡大症(ぜんていすいかんかくだいしょう)のと、またNPO団体で取り上げられている、ペンドレッド症候群のことなど、幅広くお話を聞けました。
後編では、ZOOMお茶会の詳細と、『ZENPE』が設立されたきっかけとなった、大島様と、代表顧問医師の松永先生の出逢いなどについて、お聞きしました。
お話は引き続き、ライターの翼祈、ゆたと、編集長の島川です。
大島様の言葉については、全て太字で記載しております。
翼祈:難聴児ママとの交流は、どういうことがきっかけで、交流が始まったりするのですか?ご自身のSNSなどの発信の影響が大きいのでしょうか?

ろう学校に生後4.5ヵ月くらいから娘と一緒に行っていて、そこで初めて難聴児のママさん達と出会いました。3歳になった今は、ろう学校の幼稚部と一般の保育園両方に行っていて、そこでのママさん達と交流をしています。
私の場合はこの『ZENPE』ができたことを知っていただきたいという気持ちがあるので、難聴関連のコミュニティやオープンチャット等いっぱいあるので、そういうところになるべく顔を出したり自己紹介をさせてもらっています。
後は、 難聴児を持つ親御さん達のオンライン茶話会に出させてもらい、そこで出会ってという感じです。『ZENPE』はまだまだ始まったばかりなので、『ZENPE』のホームページやインスタを見て集まってくださるというよりも、アクションをこちらから起こしながら色んな方にご挨拶したり、お話をさせてもらったということで、繋がるご縁が多かったかもしれないです。

翼祈:「難聴児のママが社会を変える」というプロジェクトが発足した経緯を教えて下さい。
また、Orangeま〜る主催の、大久保琴さんと、交流が始まったきっかけを教えて下さい。
琴さんとは、ろう学校の先生でもあり、言語聴覚士さんでもある方がZoomで難聴児を育てる親同士の茶話会を主催されていて、そこに参加させてもらった時に出会いました。
そこで、仲良くなって個人的にやり取りをさせていただくようになりました。
まだ『ZENPE』を作ったばかりなので、全然周知されていないということもあり、少しでも知っていただけるようにと、琴さんにご協力いただき、一緒にシリーズ的に3回インスタライブをやらせていただきました。その企画のテーマが「難聴児のママが社会を変える」でした。
ゆた:ZOOMお茶会の詳細を教えて下さい。
次回ZOOMお茶会開催日時詳細
2025年7月19日(土)19時から21時
詳細↓
オンラインお茶会は、前庭水管拡大症やペンドレッド症候群の当事者と親御さんが無料で参加できる交流会です。自己紹介や、子育ての悩みについて先輩保護者に相談したり、当事者が「めまいが強い時の対処法」など生活の工夫を共有したりして、情報交換を行っています。次回は7月19日(土)に開催予定です。
翼祈:難病について書かれた難解な論文を、読みやすい言葉で伝えることに取り組まれていますが、代表顧問医師の松永先生と、出会った経緯などを教えて下さい。

私は元々カメラマンで、政治家さんの撮影も多く手がけていました。ある時、選挙ポスターの撮影依頼を受けましたが、まだ娘が一歳くらいの時期で保育園に預けるのが不安で仕事を休んでいた時期だったので、その状況と娘の疾患に詳しい医師を知りたいとお伝えしたところ、厚労省関係の政治家さんを通じてこの疾患に詳しい医師を紹介してくださいました。その中に松永先生のお名前もありました。
娘はこの疾患以外にも、顎が小さい疑いや複数の疾患の可能性があるかもしれないと当時思っていたので、お教えいただいた中から小児に特化した病院の先生をご紹介いただき、この先生は現在も娘の主治医として診てくださっています。
『ZENPE』を立ち上げる際、この主治医に顧問医師について相談したところ、ペンドレッド症候群に詳しい代表的な医師として松永先生をご紹介いただきました。
翼祈:松永先生と難病の文章を読みやすい表現に変えた文章は、大島様から見て、どのくらい分かりやすくなりましたか?他の方の反応などはいかがだったでしょうか?
どの程度見やすくなったかということは、見てくださっている方に委ねることなので分かりませんが、論文よりはめちゃめちゃ分かりやすくなったかなと、私的には思っています。
松永先生が疾患について分かりやすく説明してくださり、私自身元デザイナーということもあり、親しみやすいデザインとビジュアルで、簡潔に、文字数を抑えて伝わりやすくすることを心がけています。
それと、オープンチャットで以前アンケートを取らせていただいた時に、「当疾患について何が1番お困りですか?」という話をすると、やはり皆さん、「情報がない」ということがお困りでした。
また、珍しい疾患なので、「同じ疾患の人とは出会うことができないと」とおっしゃっていて、まず最初に医療情報と、経験談を分かりやすくお届けすることを、やり始めたところです。
今後はもっともっと【ZENPEマガジン】の記事数やカテゴリーを増やしつつ、「分かりにくいことを分かりやすく」ということをモットーに、継続していきたいと思っています。
翼祈:前庭水管拡大症(ぜんていすいかんかくだいしょう)の子どもが飛行機に乗る時、どうしたらいい?など、元CAからの回答がインスタに掲載されており、SNSや公式ホームページでしか知れない情報が、多くありました。これからも、ここでしか知れない情報が、増えていくのでしょうか?
今後、経験談やロールモデルとなる方のインタビューを充実させていきます。また、茶話会やオープンチャットでよく話題になるトピックを積極的に記事化する予定です。
特に人工内耳に関する話題が多いため、メーカーへの取材や、疾患当事者で人工内耳を使用している方の経験談を豊富に掲載する計画です。
経験談やロールモデルの記事は、特定の選択を推奨するものではなく、さまざまな背景や考えを持つ方を幅広くインタビューします。普通学校に通った方、ろう学校に通った方、手話を第一言語とする方、口話を使う方など、多様な声を届けます。
この疾患は個人差が大きく、症状もバラバラだからこそ、バイアスなく多様な意見や予備知識を提供することで、読者の視野を広げたり、一つのヒントになることを目指しています。
翼祈:大島様のプロフィールに、「新薬の国内承認」と「指定難病化」を2大目標に掲げてありますが、新薬は臨床研究や、臨床試験(治験)などが進んでいるのですか?
また、国内承認ということは、ドラッグ・ラグなど、海外の治療薬ということですか?
私たち『ZENPE』は聴能(ちょうのう)で生きることが正しいと思っているわけではなく、
【情報が少なく、治療法、治療薬、指定難病でない】
という現状なので、患者家族の皆さんの選択肢を一つでも多くしたいという想いから治療薬の国内認証や指定難病化を求めて行動をしていこうと思っています。
例えば薬ですが、0で全く何も選べないのと、検討した上で投薬をしないという判断を下すのは全く意味が違うと思うのです。
この疾患はおそらく世界的に治療薬がないと思います。
そして、日本でさまざまな研究や治験をなさってくださっているようです。
治療薬の国内認証や指定難病化などは、お医者様と共に動いていければと思っています。
翼祈:5月に4日間、第126回耳鼻咽喉学会で、『ZENPE』がブースを出されていましたが、実際に参加されてみて、大島様の感想を教えて下さい。

初めての学会出展でとても緊張しましたが、多くのお医者様に話を聞いていただけました。顧問医師の先生方もブースに来てくださり嬉しかったです。特に、先ほどお伝えした前庭水管拡大症当事者の耳鼻科医、吉田翔先生との出会いは大きな出来事でした。
ゆた:今後『ZENPE』にしかできない、オンラインイベントや、対面イベントをされる予定は、ございますか?
6月8日のイベントでも展示をしたのですが、ハンディーキャップ×ARTのワークショップなども積極的に行いたいと思っています。
例えば補聴器です。
物心がついた時などに、補聴器が恥ずかしいと思うお子さんもいると聞き及んでいます。
なので、「補聴器かっこいいじゃん!」っていう自尊心に繋がればよいなという想いから、花やお菓子や動物など、その人の「好き」を耳の周りに飾って、写真を撮るワークショップです。
展示では、その写真の一部にペンドレッド当事者のアーティストさんにイラストレーションを施していただきました。
翼祈:AKARIの読者の方にも、同じ様な境遇の方もいらっしゃいます。
この記事をご覧の皆さんに、最後にメッセージを、お願い致します。
【情報が少なく、治療法、治療薬、指定難病でない】ということを私たちの世代で変えていきたいです。
普通のお母さんの私が一人で声を上げても、届く範囲が限られます。
一人の声よりも10人の声、10人の声よりも50人の声の方がより大きく遠くまで届きます。
会員登録をして頂くことがその声の代わりとなります。ぜひ患者家族の方に限らず一般の方にも、会員登録をしていただけましたら本当に嬉しいです。
『ZENPE』でやりたいと思っていることの一つには、お医者様と共に行う疾患当事者の会員さんに対するデータベース構築があります。
引っ越されたり、なんらかの理由で病院が変わることって多々起こりうることなので、お医者様も患者さんの長期に渡る診療のデータがなかなか取りにくいことがあります。
ですのでそれを『ZENPE』としてデータベース構築することにより治療に役立てていただきたいと思っております。
お話を伺った感想
翼祈
2022年に大島さんの娘さんが誕生しましたが、まだあの時はコロナ禍。厳重な医療現場がありました。
娘さんが生まれて間もない頃に、「この子はあごが小さいから、哺乳力が弱いかもしれない」と言われて、離れて過ごし、ご主人もコロナ禍で面会に来れない。他のお母さん方は、自分のお子さんを幸せそうに抱いている、もの凄く寂しかったと思います。
娘さんの話から、ろう幼稚園があると知り、大島様の娘さんの場合は普通の保育園が併設された場所で、ろう学校に行かれた後で、保育園に行かれているそうです。
「難聴で言葉を覚えにくいなら、うさぎなら、ぴょんぴょんという擬態語とか身振り手振りを付けると、理解しやすい」という話も参考になりました。
私もたまたま娘さんと同じ感音難聴で、片耳難聴でした。インタビューで、「自分でも娘の難病を調べても分からなかった。なら、団体を作ろう」と、『ZENPE』を立ち上げ、前向きで、明るい大島さんに、元気や笑顔を貰えました。
『ZENPE』も、任意団体から、【NPO法人前庭水管拡大症・ペンドレッド症候群の会】に変わって、本当におめでとうございます。
これからもエネルギッシュな大島さんだからこそ、前庭水管拡大症とペンドレッド症候群の理解や知識を、世に広げていけます様に、ますますのご活躍を期待しています。
今回は、インタビューを受けて下さり、本当にありがとうございました。
ゆた
お話の中で特に印象に残っているのは、出産のお話です。
コロナ禍で、ただでさえ、不安が大きい中、やっとの思いで出産した我が子が障害を抱えていると言われ、とても心配だったと思います。その後も、インターネットにも分かりやすい情報もなく、周りの赤ちゃんは母親といるのに、一時、会えないこともあってその時は心が締め付けられる思いだったという話を聞いて私も心がきゅっとなりました。
前庭水管拡大症は確かにあまり有名な病気ではなく、インターネットで調べても論文のような分かりにくい情報が多いと思います。
情報が少なく、治療法、治療薬、指定難病でない。
そんな状況だからこそ、少しでも分かりやすく、確実な情報を必要な人へ素早く届けることはとても意味のあることだし、それができれば、安心できるのではないのかなって思います。
今後、少しでもお母様方、お父様方が安心できるよう、誰でも分かりやすく紹介するサイト『ZENPE』を多くの人に知ってほしいなと思います!
今後も大島様のご活躍、陰ながら応援しています!
島川
今回お話を伺っていて、ただでさえコロナ禍での初産で不安な中、産まれた時に疾患を複数抱えていることが分かって、大島様やご家族はどれだけ心配で不安であったか、また、そんな時に『ZENPE』様からの情報提供や、相談に乗っていただける環境があれば、どれだけ心強いだろうと思わせていただきました。
以前、私が中学校の特別支援学級で難聴の生徒さんの担任をしていた際、親御さんも難聴の方でしたが、立派に働いておられましたし、その生徒さんも、小学校からのお友達もたくさんいて、普通学級にも通級したり部活の時も楽しく過ごしていました。
ただ、それは産まれてから十年以上も先であって、難聴を抱えていても通学したり、家族を作ったり働くこともできますが、そんなことはその時点では分かるはずがありません。
何も情報も寄る辺もない中、前向きに取り組まれていたり、スタイリッシュなメディアでの発信には、非常に感銘を受けました。我々も当事者に向けたメディアとして、切磋琢磨させていただきたいですし、また何かの形でお手伝いできないかなと感じました。
この度はインタビューさせていただき、大変ありがとうございました。
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