ジョブコーチの宮本孝之さんと、障害者雇用に関するトークセッションを行いました!(後編)

眼鏡をかけてスーツを着た男性の宮本孝之さん

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ジョブコーチの宮本さんと障害者雇用に関するトークセッションを行っておりました!

前編はこちらです。

ジョブコーチの宮本孝之さんと、障害者雇用に関するトークセッションを行いました!(前編)

後編は、障害者の職業の選び方や、就労に向かって具体的にアプローチしていく方法、就労を続けていくための目標設定などをお話しています。

前編から引き続き、島川ゆたどんはれPinksaladりんごいくらpiasuで、お話を聴きます。

宮本さんの回答は、太字で記載しています。

職業選択について

piasu障害者の人は、自分に向いた仕事ってどうしたら、分かりますでしょうか?

自分に向いてる仕事とか、自分が得意な仕事ってなに?って言われた時に「これです」って言える人ってあんまりいないと思います。

自分の仕事の仕方っていうのを具体的にイメージするって、結構難しいんですよ。

変な話、やりたいって思う仕事じゃないと、やりたくないじゃないですか。

できるって思う仕事じゃないと、できるって思えないんですよね。

だからどっちが優先かっていう話ではなくって1番大事なのって、『その仕事をするために、何か自分として頑張れるところがあるのか』、というところなんですね。

仕事をしている時って、逆に好きだけど、苦手なことも多分出てくると思います。

それをどうすり合わせをしていくかというと、仕事の内容なのか、会社で選ぶのか、色んな考え方がありますが、やっぱり働き続けるってなった時は業務内容よりかは、人的の部分、環境的な部分が僕は大きいと思ってます。

仕事して働いていくって、1人でするわけではないので、人と接すると、自分の周りに不特定多数の人が出てくるのは事実なんですよね。

これは持論ですが、例えば10人一緒の会社で働く人がいるとして、その中で腹割って話せるのって、僕の中で2人ぐらいだろうなって思っているんですよ。

一般就労していく時に大事にしてほしいのは、その2割の人がいるかどうかです。

あとの6人ぐらいは、付かず離れずぐらいの距離で、なんなら2割苦手だなというバランスで、いわゆる『262の分類』って言われるんです。

僕は人は人だからしょうがない、どうにもならないものがあると割り切って、人と接するようにはするんですよね。そうしておかないと自分がしんどくなっちゃうので。

周りの人とのコミュニケーションが全員が全員うまくいけば楽なんですが、正直なところやっぱりそうはいかないんですよね。

その中で、ただしんどいなとずっと我慢しないといけなくなるのは、僕は嫌なんですよ。

だからそれが、例えば会社の中でもいいし、外からでもいいので支援をしてもらう。

例えば、TANOSHIKAから就職していく時に、定着であったりサポートでついてくれる人と連携するとか、話ができるとかっていうのが必要になってくると思うし、どちらかというと、仕事をしながら考えないといけないのって『解決すること』なんですよ。

課題は1個解決するかもしれないけど、何かしら根っこに残ってることが多いんです。

表面が一旦クリアになったかもって思うかもしれないけど、なかなかうまくいきにくいっていうのが起こりやすいですね。

だから、自分の今の現状を整理できるかどうかを考えないといけないと僕は思います。

ゆた今から障害者枠での採用を目指す方にヒントとして、おすすめな業種があれば教えてください。

業種としておすすめはないのですが、まずは自身が『何をしたいのか』を整理することは大切だと思います。また業種によってではなく、どのような会社なのかを知ることが長く働く上では大切と考えています。

salad障がい者でも接客業はできると思いますか?

できると考えています。実際に私もサポートしている方にも接客業の方は多いです。

アパレルで接客する女性

saladしたい仕事と、できる仕事だったらどちらがよいでしょうか?

どちらが、ということは難しいですがどちらも大切な要件であることは変わりません。

その先に自身がどうなっていきたいか、が長期就労では大事だと考えています。

就職活動について

salad見学や実習には積極的に行った方がいいでしょうか?

ぜひ色々な現場を見て『自身が働くとしたら』という視点で体感して欲しいです。

仕事内容で選びやすいのは『経験があるもの』か、『知ってるもの』はイメージできるので職種として選びやすいと思うんですよ。

やったことがないものって分かんないから、選ばないじゃないですか。

僕が今までサポートする中で、伝えてきたことは、『絶対嫌だって思うかもしれないけど、1回やってみて』ということです。

この「仕事は嫌です」というのが、実際にやって嫌なものなのか、

今までの職歴の中で嫌なものなのか、

やったことがないから、苦手って思われているのか、その本当に嫌な理由や、その仕事を避ける理由を一緒に考えたいです。

苦手な理由を知るっていうのは実は大事なんですよ。

食わず嫌いに近い場合もありますし、なんで苦手なのかは、体験しないと分からない部分もあります。

実習に行って1日で嫌だって、それはしょうがないなっていうケースも実際ありました。

ただ、僕が見た時に、意外と本人の作業適性にマッチする可能性があるものが少なくなかったんです。なので、行って嫌だったら嫌でいいから、1回チャレンジしてみてほしいです。

チャレンジする中で、『仕事内容が嫌』ではなく、『環境』という違う要素が、意外と出てきたりするんですよ。

この辺りを整理していく為にも、あんまりお好みではない実習にもチャレンジしてほしいっていうのが、僕の中ではあります。

新しい職場に行くと、人の部分や通勤の部分、働く環境について不安があると思います。

「行って大丈夫かな?」という不安よりも、「行ってやっぱり駄目だった」という方が、自分としては、納得感が作りやすいです。

見学や体験の中で、やっぱりこれ苦手なんだな、意外とこれできるかも、食わず嫌いだったなみたいなことが少しずつ増えてくると、自分が選べる幅が増えてきます。                               

大事なのは、就職するためではなく、『就職したあと働き続けること』です。

そこを目指すためには、今何が出来るかなっていうところになってくるので、全部の課題がクリアにはならないんですよ。

1個クリアできたなと思ったら新しいのが出てくるから、絶対1個これ楽になってきたなと思うと、違うのが大きくなる、就労してくってやっぱりそれの繰り返しだと、僕は思ってるので、0を目指しちゃうとやっぱりしんどくなる。

僕が大事にしてるのは、仕事をする時には、自分の期待値は60%ぐらいに抑えることです。

100%を目指したいところだけど、ここを目指し続けると、できなかった時のダメージが大きいんですよね、最低ラインは60%なんですよ。

だからそれより調子よくて80%いったらラッキーと思うし、100%だったら、本来の俺やなっての捉え方なんですよ。

基準を60にしているのは、体調的に調子が悪い時もあるので、80だったな、いや100%いかなかったなと捉えるのと、60%でいいけど、80%はできたなと捉えるのでは違うんですよね。少しそこの自分の捉え方の幅が作れると自分自身が楽だなと思います。

ガッツポーズをするスーツ姿の男女二人

saladハローワーク以外の、おすすめの求人サイトが知りたいです。

障害者雇用の人材紹介系のサイトは情報を集める、という点では有効だと思います。ただ利用についてはメリットデメリットがあるのでスタッフと一緒に確認してしていくことをお勧めします。

salad上手な求人の探し方などを教えてください。

スタッフと対話をしながら条件整理をしていくことが一番大切だと思っています。

違う人の視点を取り入れるということが求人情報の深掘りに繋がります。

例えば月収30万です、みたいないい求人情報もあるとは思います。

でも、僕の経験上、大体条件がいい求人って、「そうでもしないと人が来ない」とか、「雇ったけど、すぐ辞める」みたいなのが裏に実はあったりします。

ハローワークで、求人がずっと出てる企業とかあるじゃないですか。

ずっと出てるっていうことは、そういうことなんすよ。

ハローワーク主催の面談会とか合同面接でも、毎回出てる企業ってあると思うんですけど、そうせざるを得ない理由があるんだと思います。

就職活動する中で、ある程度自分の求める条件があるじゃないですか。

「ここは、こうしたいな」っていうのを絞り過ぎちゃうと、選べる幅は正直減ります。

なので、求人の条件を1回広げてみてください。

例えば月収15万を1つの基準とするじゃないですか、となると、15万以下は見なくなりますよね。要は15万を超えてるとこしか探せなくなる。

でも、14万8000円で意外といい条件の求人がある場合もあります。

自分が思ってるよりちょっとラインを下げて探すのも、1つの方法なんですよね。

これは勤務条件も同じです。

「絶対にフルタイムじゃないといけないのか」というのは、交渉できる部分もあります。

例えば勤務地も、家から1時間圏内って結構条件としては、多いと思いますが、この1時間が「徒歩1時間」なのか、「公共交通機関を使って1時間」なのか、乗り換えがない方がいいのか、乗り換えしても大丈夫なのか、など色んな条件があります。

片道1時間で考えるんだったら、倍ぐらいに増やしてみてください。

なぜこれを出すかというと、その中から選べって話ではなくって、広げた時に、どういう条件のものが出てくるかなっていうのを見てほしいからです。

そこで改めて、自分の本当に譲らない条件を整理してってほしいんですよね。

もやっとした不安が増えてくる時って、自分の中で整理がしにくくなってくる時なんです。

少しずつ、そのもやっとしてるものをクリアにしていく作業が必要になるんですよね。

これを『条件整理』って僕は言うんですけど、少しずつ「これとこれどっちだったら譲れるかな」、「こっちは無理かな」というのを、色々探って行って欲しいと思います。

salad何月ぐらいが求人が多いとかありますか?

現状としてはあまり大きな違いは発生しなくなっていると感じています。
だからこそ情報収集を日々行い続けることが大切です。

piasu自信がなかったり、挫折経験が多すぎたりして、自分の自己アピールが思い付かない時、どうしたらいいでしょうか。

1人で考えるのではなくスタッフと色々と話をしていくことを意識してみてください。

自身の視点だけではなく他者の視点から見たときに自分がどのように見えているのか、という中にヒントが隠れていると思います。

piasu体調が悪かったりすると、就労への意欲が薄まる時があります。こういった時ってどうしたらやる気が出ますでしょうか。

無理矢理変化させることはきついと思います。

時間経過を自身で把握しながらどのようなときにはやる気が出て、やる気が出ない時はどんな時だろうということを整理していくことも就労後を考えたときに大事なポイントです。

ゆた障害者雇用での就職を目指すために私たちが知っておくべき知識や前もってやっておくべきことはありますか?

まずは自分が『なぜ働きたいのか、どのように働きたいのか』を、しっかりと整理していくことと考えています。その上で必要な知識が何かが見えてくると思います。同時に普段からできることは様々な経験を増やすことだと私は考えています。

ゆた私たちのように就労支援施設などから、就職活動を進めていく中で何を意識して取り組んでいくべきだと思いますか?

スタッフと対話を進めていくことと考えています。

一般就労に進んだ後をしっかりと考えながら対話とすることが就労後の1番大切なポイントだからです。抱え込まずに誰かをうまく『頼る』ということも就労時の大切なスキルだと私は考えています。

僕が今事業所にいる間に、皆さんにお伝えしておきたいのは、人と会話をするって、タイミングによってはしんどいかもしれないですが、自分の頭の中だけで、整理しようとすると、堂々巡りにやっぱなりやすいんですよ。

なので、これがなぜ起こるのかなっていうのを、今のうちに整理しておかないといけない。

例えば、今だったら事業所である程度面談したりできるかもしれないですけど、一般就労に進むと、多くても週1回ぐらい、定着支援が入る前だと下手すると月1回ぐらいになって、関わる量は減ってくるわけですよね。

そうなると、少しずつ自分の中で整理する練習をしておくことも大切になります。

今できる部分で、皆さんが支援者と面談をする中で意識してほしいのは、「今日の面談は、どういう内容だったかな」ということを、自分なりにまとめることです。

そして、「面談を踏まえて次何をしようかな」っていうところまで作ってほしいです。

一般的な面談の流れでいくと、自分がもやもやすることや、やってることを話してちょっとすっきりして終わっちゃうんですよね。

でもこれって話はできてるけど、「じゃこの先どうしようか」っていう、次のアクションはない訳ですよ。

あと今日話した内容っていうのが、「なんかすっきりした気はするけど、今日何を話したっけ?」だけになるんですよ。

更に言うと「じゃまた次しんどくなったら面談しようね」」っていう話になっちゃうと、「しんどくなった時っていつ行ったらいいの?」「自分の中でいつまで我慢すればいいんだろう?」ってなっちゃうと思うんですよ。

これってしんどいじゃないですか。だから自分の中で、踏ん張れる期間がどれぐらいなのかな?っていうのを整理していかないといけない。

例えば2週間に1回の面談を繰り返していく中で、1か月分を1か月に1回整理できるようにしていくと、1か月に1回の面談までに、自分の中で一旦整理できるっていう形が、少しずつ作れてきます。

面談をして、必ず自分の中で1回は、その日の面談をまとめて、何か小さいことでもいいので、次は1個これはやってみようっていうのを一緒に考えてください。

結局ここが志望動機に繋がってくるんです。

でもなぜこの仕事をしたいのか、この会社を選んだのかっていうのは、ちゃんと自分の言葉で表現できるかどうかが大事です。

なので、そこまでやることを、1回意識してもらえるといいかなと思います。

向き合って打ち合わせをする男性二人

salad現在、私たちは障がい者福祉の中にいて、職場に障がい者がいることが当たり前になっているのですが、一般就労すると環境が逆転すると思います。

そのギャップをどのように対処すればいいと思われますか?

色んなパターンがありますが、例えば就職する先に、既に当事者の方がいらっしゃるパターンと、当事者が0のパターンがあります。

当事者と働くことに関するイメージができる企業と、できない企業もやっぱあるんですね。

なぜかというと、当事者、いわゆる「障害」と呼ばれるものを知らない方が多いからです。正しく理解されてないということですね。

会社側として、どうやったら正しく理解できるのか、この擦り合わせをしていくことが、1番大事になってきます。

実習に入るタイミングでのすり合わせの際には、「徐々に自分のことを正しく知ってもらう」ということ、そして会社側として「どうやったら正しく理解できるのか」ということをすり合わせるのが一番大事になってきます。

すごくいい雰囲気だけど、しばらくすると、全然違うみたいな感覚になることがあります。

だから実際に実習現場で何日か過ごして、自分がどう感じるのかを、しっかり体感してほしいと思います。

一般就労が決まった場合、可能であればそこで長く働けるのが、理想なんです。

ちょこちょこ環境が変わると、しんどくなってしまうと思うので、自分の中で半年なり1年なりっていう目標を、しっかりと作ってほしいと思います。

要は『長く働きたい』だけだと、『今』がしんどくなりやすいんですよ。

入社して半年とか1年ぐらいまではある程度自分の中で、整理はしやすいと思います。

でも長く働けば働くほど慣れてくるし、周りも慣れてきちゃうので、刺激がなくなります。そのため、自分で目標を作っておかないと、流れ作業になってきて、嫌なものしか見えてこなくなってくるんですよ。

自分の中でのモチベーションの維持って、めちゃめちゃ難しいじゃないすか。

僕が言うと語弊があるかもしれないけど、僕も正直長続きしないタイプだったんですよ。

若い頃は大体2年ぐらいで飽きちゃうんです。

これから就職先を探していく時に、何が大事かというと、『自分自身の働きやすさを、自分でどう作っていくか』というところです。

長く働くっていう最終的な目標はあるかもしれないけど、ちゃんと自分の中で3か月なり、6か月なりに「何を頑張ろうかな」ということを、自分の中で持てるかどうかが1つ。

それを会社と、ちゃんとフィードバックができるかと、すり合わせができる環境があるかどうかは大きいです。 大体一般企業って半期に1回フィードバックがほぼほぼあるので、このフィードバックのやり方は凄く大事なんですよ。

これは、障害者雇用に限らず同じことが言えるかなと思うのですが、そういう環境面で「この会社で、働き続けれるかどうか」というのを、しっかりと見極めた上で、一般就労先を決めてほしいと思います。

一般就労先を決める時に、僕が結構お伝えすることとしては、『100%の満足は得られない』ということです。正直全て自分の希望通りになるかというと、難しいんですよね。

例えば、70%ぐらいが1つの目標とするんであれば、この70%の中で譲れないものは、きちんと持っておくこと。

その代わりに30%は、ある程度自分の中でフレキシブルに動ける部分を作っておくっていうのが、逆に長く働くためには大事です。

要は言葉は悪いですけど、アラ探しをするようになっちゃうんですよ。

この会社はここが駄目だ、自分の条件に入りにくい、と、だんだん選べなくなっちゃう。

なので、皆さんにお伝えしたいのは、仕事をする中で『自分がどうなっていきたいのかな』ということを就労する時には大事にしてください。

昔の日本では会社に骨をうずめて下さい。みたいな感じがあったじゃないですか。

でも、今はそういう時代じゃないと僕は思っています。 

今、大きい企業でも、5年後10年後潰れてない。って言ったら、意外とそんなことないんじゃないかなって、思ってる部分もあるんです。

例えば転職するってなった時に、自分が選べる状況を作っておかないといけないわけです。

倒産しないって100%は言えないので、一般就労としては、そこで頑張る。

要は、その会社の中で、自分たちで働くことによって、どうなっていきたいのかなっていうのを優先してほしいと思ってます。

ビルのふもとに働く男女5人

おわりに

以上がトークセッションのすべてになります。障害を抱えながら働く人々のなにかヒントになったでしょうか?

よろしければ、感想をコメント欄に残してくださるとうれしいです。

今後も障害を抱えながら働く人々のお役に立ちそうな情報を掲載していく予定です。ご期待ください‼

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