精神疾患の治療‐「幻覚剤支援療法」とは

暗がりでブランコをこぐ少女

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皆さんこんにちは。Pinkです。「精神疾患」の治療について興味深い記事がありました。

スイスで唯一、ジュネーブにある大学病院では、「精神疾患」を「幻覚」を用いて治療するというものです。また、大学病院では、幻覚作用のあるキノコ「マジックマッシュルーム」に含まれる「シロシビン」が「うつ病」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」の治療に用いられているとのことです。

「幻覚剤支援療法」について

幻覚剤支援療法」は、完全合法化への道のりはまだ遠いとのことですが、大学病院で「幻覚剤支援療法」の責任者を務める教授の患者は、薬物常用者ではなく、カプセル状の「シロシビン」や小瓶に入った「LSD」を診察室で初めて見たという人がほとんどだと話しています。

幻覚剤療法」を受けたスイス在住の警察官で4児の父親は、数十年来の「うつ病」を治す目的で、幻覚剤の「LSD」を数マイクログラム服用したそうです。処方量に応じて、日本円で約3万5千〜7万9千円を支払い、最大12時間「トリップ」するとのことです。

幻覚剤の費用は健康保険適応外とのことですが、先述の父親は、「抗うつ剤を二度と買わなくて済むなら、安いものだ」と話しており、これまで「幻覚剤療法」をこの1年間で3回受け、今のところ「うつ病」の症状がすっかりなくなり新しい人生を送っているといいます。

幻覚剤」が、合法化・非犯罪化されている国は、2024年現在で23カ国あるとのことですが、スイス人化学者が1938年に「LSD」を発見して以来、スイスはこの分野で長い歴史をもっており、アメリカ、カナダ、オーストラリアとならび、「幻覚剤療法」とその研究を牽引しているそうです。

また、2014年以降、「幻覚剤」の利用が最終手段として例外的に認められているとのことですが、国内の大規模な医療環境で、安全に「幻覚剤療法」を提供するのは、この大学病院だけだそうです。

幻覚剤療法」を提供する目的の1つは研究ですが、あくまで主な目的は治療で、合法的かつ治療方法の最適化を目的に幻覚剤の治験を行ったのは初めてで、教授が率いるチームが2019年以来、約200人の患者を治療してきたことは、記録的な数とのことです。

マジックマッシュルーム

成功した例について

教授によると、「幻覚剤療法」を受けた父親のように、これまでの治療法では効果がなかった患者に成功例が多く見られるとのことです。

精神疾患」の原因はニューロン(神経細胞)のつながりに柔軟性がなくなるため、患者は人生観を変えるのが難しくなり、落ち込んだときに、物事の良い面が見えなくなると説明しています。

その点、向精神薬の一種である「幻覚剤」は、気分や認識、知覚を変えることができ、その際、脳内で新しいつながりを形成するとのことです。

この種の物質として最もよく知られているのは、大学病院が提案する「LSD」や「シロシビン」で、その他にも、「DMT」や「メスカリン」「MDMA」「ケタミン」があり、これら全ての物質は、スイスや世界の臨床試験で使用されているそうなのですが、患者の多くが経験する先進的な効果は、薬物だけでは説明できないそうです。

教授によると、「幻覚剤」は、セラピーで探った新しい信念や考えを浸透させる基礎を作るものであり、大学病院では、薬物が効いている時間を「心理療法」として区切り、「トリップ」の目的を明らかにしたうえで、「トリップ」での体験を長期的な治療にどう生かせるかを精神科医と話し合っており、心理的なサポートは、治癒への過程で極めて重要であるとのことです。

赤十字のマークが入った帽子

賛否両論の専門家

1950年代の「抗うつ剤」を最後に先進的な新薬が知られていない精神医学の世界に、「幻覚剤」は衝撃を与えたとのことです。中毒性が全く、またはほとんどなく、副作用も最小限で、適切な状況で投与される限り、現在市場に広まっている多くの精神治療薬よりも効果があるように見えるそうです。

しかし、ジュネーブ患者協会の共同設立者にとっては、「適切な状況で投与される限り」という要素が重要で、「幻覚剤療法」を受けた後に協会を訪れる患者の約3分の1は、治療効果が得られなかったり、新たな心の傷を経験したりしていると指摘しています。

問題は薬物自体にではなく、薬物を投与された状況にあるそうです。患者の中には、「幻覚剤」の使用中に起こる不快な体験の最中に放置され、きわめて不安になった人もいれば、無資格のセラピストだったため、安心できる雰囲気で治療を受けられなかった人もいるとのことです。

幻覚体験に適した環境については、専門家たちの間で意見がわかれており、すべてのセラピストは「幻覚剤」を患者に投与する前に自ら試すべきだと考えているそうです。

幻覚剤療法」の新人セラピストは、宗教的職能者や、療法者の経験から学ぶべきだと主張しており、彼らの伝統によれば、幻覚体験は自然の中や超心理学的な状況で強化される一方、病院の白い部屋では患者が不安になる可能性があるとのことです。

他方、自分達の見方を患者に押し付けるのではなく、患者が自分の見方を示せるよう、中立的な部屋を使うようにしており、超心理学的な要素は必要ないと考えているそうです。

この問題に関する科学的研究はまだ初期段階で、これまでに行われた「幻覚剤」に関する研究のほとんどは、医師と患者の関わりや実施環境を厳しく取り決めた規定に基づいて行われたとのことです。

会話をする2人の男性

合法化までの道のり

現在、「幻覚剤支援療法」を希望するスイス在住の成人は、次のようなことを連邦保健庁に証明する必要があるとのことです。複数の薬や療法を試したけれど改善がみられず、「治療抵抗性」であることや、病気が深刻及び不変的で「不安障害」や「うつ病」「依存症」を引き起こすことだそうです。

条件の厳しさは、違法な治療を行う闇世界で、事を大きくすることにつながっているとのことです。一般に、「幻覚剤」を違法に使用しても罰金刑を受ける程度であり、その一方で、世界では「幻覚剤」の規制緩和を求める動きが積極的だとのことです。 

議論が進めば、スイスで「幻覚剤」の医療効果が広く認められる日も近いかもしれないそうです。

参考サイト:スイスで「幻覚剤療法」は普及するか – SWI swissinfo.ch

noteでも記事を書いているので、よかったら読んでみてください!

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