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はじめに
ダンス・ボーカルグループ『AAA(トリプル・エー)』の與 真司郎(あたえ しんじろう)さんが7月26日、東京都内で開かれたイベントで、ゲイであることをカミングアウトしました。
日本では、めずらしい有名人のカミングアウトとなり、大々的なニュースとなりました。
與さんは、カミングアウトを決意する前は、2つの道だけしかないと思っていたことも明かしました。
「1つ目は、本来の自分を受け入れることなく、エンターテイメントの世界に居続けること。もう1つは、エンターテイメントの世界からしりぞいて、世間から隠れて、ひっそりと暮らすことでした。」
しかし、多くの時間考えた上で、3つ目の選択肢にたどり着いたといいます。
それは、ゲイということを公表した上で、自分の大好きなエンターテイメントの活動を続けるということでした。
「ありのままの自分で生きていく事で、大好きなエンターテイメントの活動を、諦めたくなかったんです。」
と、與さんは語っています。
欧米のカミングアウト
欧米では、自分のセクシャリティについてカミングアウトするスターは、少なくありません。
エルトン・ジョンは1970年代にバイセクシュアルであるとカミングアウトした大先輩であり、バイセクシュアルとカミングアウトしているレディー・ガガほか、ノンバイナリーであるとカミングアウトした、サム・スミスなど、多くのスターが、カミングアウトをしています。
彼らの多くは、「カミングアウトしたほうが名前が売れる」などというよこしまな考えで、カミングアウトしたのではなく、他の多くのLGBTQコミュニティの仲間たちを勇気づけたい、一人じゃないと伝えたいという気持ちでカミングアウトしています。
カミングアウトとは?
そもそもカミングアウトとは、どういう意味でしょうか?
自らの性的指向や性自認を自身の意志で他者に伝えること。ゲイの間で用いられていた「クローゼットの中から出て来る(coming out of the closet)」というスラングがLGBTQコミュニティに浸透し、世界中に広まり、定着したものです。Wikipediaなどで「Coming out」と検索していただくとわかるのですが、専らLGBTQの性的指向や性自認の自己開示について用いられる言葉です。
このように、社会全体にカミングアウトしている人を「オープンリー・ゲイ」「オープンリー・レズビアン」などと言います。
カミングアウトと社会問題
先述した與さんのカミングアウトのお話の中に、
「様々な固定概念によって、一人で抱え込み、悩んでいるLGBTQ+の方達が、世界中にいます。ハラスメント、イジメ、セケン的なプレッシャーに苦しみ、それによって、精神的にダメージを受ける人も、決して少なくはありません。
僕がとある記事を読んで、得た情報なのですが、LGBTQ+と自認している方のうち、48%は、自殺について考えたことがあり、さらに、そのうちの12%は、実際にそれを行動に移していた、という統計を目にしました。
例えば、自分の性の対象が、同性や、どちらの性にも向いているというだけで、命を絶つ必要があるのでしょうか。」
という内容がありました。
その通りのお話で、10代のLGBTQの当事者の自殺念慮が2022年からの1年間で、
- 自殺念慮(自殺を考えた)…48.1%
- 自殺未遂(自殺しようとした)…14%
- 自傷行為(わざと自分を傷つけた)…38.1%
というデータが発表されています。
実際の当事者の声
という悲痛な声もありました。
参考:【調査速報】10代LGBTQの48%が自殺念慮、14%が自殺未遂を過去1年で経験。全国調査と比較し、高校生の不登校経験は10倍にも。しかし、9割超が教職員・保護者に安心して相談できていない。
当事者として
マイノリティ当事者として。カミングアウトについてどう思うのか考えたことがあります。
私は、周りの友人や職場では、マイノリティ当事者であることはカミングアウトしていますが、家族や兄弟たちには、カミングアウトすることができていません。
それは、やはり自分の性的な部分を、家族に知られるのが怖いからです。
友人や、職場とは違う距離感なのが、家族になります。
カミングアウトをすることで、嫌悪感を持たれたら、それこそ拒絶されたらと考えると怖くなり、家族には言えないのです。
友人には、本当に恵まれており、誰一人として私を拒絶することはありませんが、うっすらとした差別のようなものはありました。
こちらの記事に詳しく書いています。
自分が嫌だと感じたら離れられる距離感である友人と違い、家族は嫌だと思っても、思われても離れることはできません。
今回、與さんがカミングアウトをした時、私は「なんて勇気のある行動だろう。」と思い、それと同時にご家族が受け入れてくれたことが羨ましくも感じました。
実際に、家族にカミングアウトしてしまえば、意外と「そうなの?」ぐらいで済むような気もしますが、やはり後一歩、踏み込めないでいます。
さいごに
與さんは、メッセージのさいごに、
「人生良い時もあれば、上手くいかない時もあります。それでも、諦めずに進み続ければ、新たな光の指す方へと、導かれていくと思います。僕も正直、この先どうなるのか、自分でもわかりません。
でも、一度きりの人生後悔したくないんです。世界がもっと明るくなり、どんな人でも、生きやすい場所になってくれることを、願っています。」
と語ってくれています。
誰もが生きやすい。そんな場所や世界ができれば幸いです。
参考サイト
カミングアウト | Magazine for LGBTQ+Ally – PRIDE JAPAN
職場で、LGBTのカミングアウトは4.3%:人口の8%はLGBT – ITmedia ビジネスオンライン
AAA與真司郎さんのカミングアウトが「偉業」だった理由。ポップスターの変遷から見る、欧米と日本の違い
【調査速報】10代LGBTQの48%が自殺念慮、14%が自殺未遂を過去1年で経験。全国調査と比較し、高校生の不登校経験は10倍にも。しかし、9割超が教職員・保護者に安心して相談できていない。
『AAA』與真司郎さん、ゲイとカミングアウト「本来の自分を分かってもらい、みんなと距離が縮まることを願ってます」 | ハフポスト NEWS
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堀田様 いつも貴重な情報ありがとうございます。今後の記事の参考にさせていただきます。ありがとうございました。