2024年度から知的障害者向けの母子手帳配布。変わり続ける障害者の出産・子育て。  

知的障害 母子手帳

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

障害があると一般的に、「子育ては無理だよ」、「育児放棄になるんじゃない?」とか、思いがちなのではないでしょうか?

実際にその意見が象徴された事件が、2022年に発覚した、北海道のグループホームでの事件でした。

ですが、仮に障害があっても、子育てを頑張っているお母さんがいることに、この記事を通して、再度気付くことができました。

今回は知的障害をメインテーマに、2024年から知的障害を抱えている人向けの母子手帳を作成中の話や、実際に子育てをしているお母さんの話、一般的に障害を抱えている人への偏見など、知的障害を抱えている人の子育てについてお伝えします。

2024年度から知的障害を抱える人向けの母子手帳を配布

看護学や障害者支援の大学教授らで構成された研究班が、国の科学研究費で知的障害を抱える人にも理解しやすい母子手帳や育児支援冊子の作成を推し進めています。知的障害を抱える人の出産・子育てを巡った議論は、北海道のグループホームで入居者が不妊手術や不妊になる様に処置を受けていた問題が2022年に発覚し、育児をサポートする仕組みが整備されていないことが背景に危惧されています。研究班は母子手帳に関しては2024年、各47都道府県の自治体の窓口などで通常の母子手帳と合わせて当事者に配布したい意向でいます。

研究班は、西南女学院大学の看護学が専門の杉浦絹子教授と、びわこ学院大学の特別支援教育が専門の藤澤和子教授の2人。「LLマンガで描いたわかりやすい赤ちゃんを産んだ後の避妊」や、「保健医療従事者のための知的障害のある妊産婦さんへの対応ハンドブック」、「わかりやすい母乳育児の方法」など2021年度から事業に励んでいます。

※「LLマンガ」とは、「Lättläst」は、スウェーデン語で「優しく読める」の意味を持ちます。

通常の母子手帳はカテゴリーや内容を国が定義していて、「分かりやすい版」は副読本として使用して欲しいという想定でいます。研究班の実態調査のデータでは、通常版は知的障害を抱える人には理解が難しい用語が多く記載されていました。簡単な単語に置き換えたり、視覚的に入って来やすい様にイラストを挿入したりする意向でいます。

2024年からこの母子手帳を希望する各自治体に送付する以外にも、ネット上でダウンロードが可能とする予定です。

参考:知的障害者向けの母子手帳作成 育児支援の冊子も、来年配布へ 共同通信(2023年)

知的障害を抱える人はどれ位結婚して子育てがしたいか分かるアンケート結果

恋愛や結婚、出産・子育てに関して日本各地の知的障害を抱える人やその家族らはどう思っているのでしょうか?実態調査を行うと、色んな声が届きました。「結婚することは幼い頃からの夢です」と希望を書いた当事者の人。「綺麗事では片づけられない話」と複雑な気持ちを話してくれたその家族。この度分かった胸の内は、不妊手術をしなくても、その手術に至る手前で色んな制限を受けて来た現実でした。

実態調査は2023年1~2月に行いました。知的障害を抱える人やその家族らで構成された「全国手をつなぐ育成会連合会」などを介して実施しました。その家族・親戚、その支援者から585件、知的障害を抱える本人から176件とトータル761件の回答が届きました。

その結果、20代以上の知的障害を抱える人の中でおよそ5人に1人(19%)は恋愛や結婚、出産・子育てを周りの人から制限、反対された経験があることが明らかとなりました。その家族らの回答で制限や反対をしたのがどなたかを分析すると、家族・親戚が最多で、学校、利用する障害者施設と続きました。

実際に恋愛や結婚、同棲、出産・子育ての経験がある知的障害を抱える当事者はたったの8%。その家族らの61%は「本人の希望を聞いたことも話し合うことすらなかった」と回答しました。知的障害を抱える人の恋愛や結婚、出産・子育てには社会全体でハードルがあって、本人の自己決定権が制限されてない現実があからさまとなりました。

周りの大人が不妊手術や不妊になる処置を求めたり、手術などを受けさせたことがあるかを尋ねると、「ある」がおよそ20件回答がありました。ですが、ほとんどの事案は20~30年前に親族から求められたといった事案であって、北海道のグループホームでのケースの様に障害者施設が関与した近年のケースではありませんでした。

家族らの賛否は「恋愛」と「結婚」では賛成意見が多くありましたが、「子どもを産むこと」に関しては反対が58%と、賛否がひっくり返りました。

反対した人からはこんな意見が届きました。「恋愛は本人の意思に任せていますが、命の責任を持たなくてはならない子育ては、生まれてきた子に対して無責任な行動です。夫婦2人だけの問題でなく、子育てまでを完了するというのはサポートの域を超えています」「生まれた子どもは親が抱える障害を受容できるのか。いじめを受けないか。両親の介護のためにヤングケアラーに陥ってしまうのではないか。

その反面「恋愛や結婚、出産・子育てはみんなに平等に与えられた権利です」といった意見も多く届きました。「障害を抱える人が子育てしやすい環境があれば、全ての人に育てやすい社会の構築になるのではないか」「サポート態勢を整え、社会の偏見を無くす取り組みも重要だと思います」との意見もいました。

恋愛や結婚することにもブレーキをかけ続けているのはその家族や親戚だけではありません。20代の娘を持つ奈良県のお母さんは「特別支援学校の高等部で娘が交際する相手と住所の交換をLINEでしようとしたら、先生がストップに入った」との体験談もありました。

「高校の校則で男女交際を禁止だった」「特別支援学校は『男女はお互いに腕1本分、距離を取って接近しない様に』と指導するだけで、十分な性教育を行わなかった」という意見もありました。

知的障害を抱える人の結婚や子育て支援が専門の東京家大学の教授の女性は、「包括的な性教育が行われていないことで、『自分の意思を伝えてもいいだろう』とも教わってもいないので、自分が抱く希望を話さない人もいるはずです」と指摘し、「家族や親戚、その支援者も、実際に結婚や出産・子育てをしている人が周りにいないことで、『できない』と無意識に思い込んでいるところもあります。国や社会全体でその様な環境や性教育を転換させていくことが重要だと思います」と訴えました。

参考:「小さい時から夢だった」知的障害者は結婚、子育てなぜダメ? 経験者はわずか8%、5人に1人は周りから「制限された」 47NEWS(2023年)

実態調査では知的障害を抱える当事者のその家族らに対し、結婚や出産・子育てなどに関連した要望も質問しました(複数回答)。「サポートできる体制や制度を整備して欲しい」が68%で最多で、「社会の理解が向上して欲しい」が49%、「学校での性教育を拡充して欲しい」が32%と回答が続いていました。

知的障害を抱える当事者に結婚や出産・子育てなどに必要だと思うことを質問すると、「サポートしてくれたりしてくれる人」が47%で最多の回答が届きました。「お金」が46%、「好きな人と一緒に暮らせる自宅」が39%と続きました。

知的障害を抱えていても子育てをしているお母さんの声

大阪府内に位置する団地の一室では、女性が夕方、長男を保育園に迎えに行って帰宅すると、女性ヘルパーが自宅へやって来ました。

女性には軽度の知的障害とASD、ADHDがあります。日常会話をすることや、料理などある程度の家事はできますが、家事を全てこなすにはサポートが必要なので、障害福祉の支援で週3回、ヘルパーの家事援助で手伝って貰います。

ヘルパーは最初に、冷蔵庫に貼付されているホワイトボードの確認を行います。その日にやらなければならないことを忘れっぽい女性が、事前に必要なことをメモに書いているからです。この日は「夕食作りは2人分でOK」「ヘルパーさんの帰宅前にゴミ捨てをすること」などと書かれていました。

ヘルパーが料理を作り始めると、女性は長男の食事を完成させて食べさせたり、おむつを交換したりしていました。ヘルパーは「女性は離乳食で栄養指導されたことをノートに記入して、食物アレルギーの確認もしています。凄くいいお母さんですよ」と褒めています。家事の段取りも女性が自分で考えて行います。

女性は学校の後輩を介して出会った健常者の夫と2020年に結婚しました。2022年3月に長男を出産し、団地で3人で生活しています。

同じ団地で別の棟に住んでいる女性の母は「まさか娘が結婚して子どもを持つなんて…。初めは、凄く心配しましたよ」と当時を回顧します。

小学校で勉強についていけなかった女性は忘れ物も幼少期から多く、途中から特別支援学級に移りました。母は、忘れっぽい女性のために小さい時からメモを書く習慣を身に染み込ませました。特別支援学校を卒業した後、障害者枠でスーパーに就職した女性は「仕事ノート」を自分で作成し、勤務先から指示されたことを書いて復唱しています。

週5日働いていて、朝は夫が仕事に行く前に長男を保育園に預け、夕方に女性が長男を迎えに行きます。料理など家事は夫と夫婦で分担しています。家計は夫婦共働きの収入と、女性の障害年金でやりくりをし、家計簿も毎日つけています。 

女性が育児をできているのには、この様な「メモ」の工夫以外にもう1つありました。それは母の事前に行っていた「先回り」の対策でした。

女性が自分で料理ができる様に、写真を使用して調理方法や電子レンジの使い方を教えました。また、女性が子どもの頃から障害に関する特性や成育歴、サポート機関の担当者などの情報を一括したファイルにまとめていました。病院を受診する時や福祉サービスを利用している時などに担当者の名前を書いておき、女性への配慮を要望しました。

妊娠が判明してからも、この母手作りのファイルを持参して市役所の子育てサポート、障害福祉、保健の各部署を回り、連携してサポートして頂ける様にお願いしてしました。

出産した後、育児に慣れるまでの1ヵ月間は障害福祉から派遣されたヘルパー以外にも、住んでいる市の育児支援ヘルパーも活用して乗り切りました。

長男の入園が決まった際には、母が保育園に足を運び、女性の障害の特性を説明しに行きました。「孫が当日に必要な物をメモで具体的に書いて頂けると娘も助かります」などと頭を下げました。

参考:「めちゃくちゃ心配」された知的障害の女性が出産、「めっちゃいいお母さん」に 子育てを可能にした秘訣とは 47NEWS(2023年)

知的障害を抱えるお母さんの子育て。後日談。

母自身が保育士として働いていて、これまで得た経験や知識も活かさせました。「私がいなくなっても娘が生きていける様に、ずっと先回りをしながら対策を立てていました」と説明します。

知的障害を抱える当事者の親御さんのほとんどは「もし孫が生まれたら、私たち親や本人のきょうだいが世話をしないといけない」と思いがちです。ですが、女性自身が様々なことができる様になったこと以外にも、障害支援サービスを利用して、母が女性や孫に会うのは週1回の頻度です。心配していた子育てし始めの日常生活をクリアして、今は「福祉のサポートを利用することで、障害を抱えていても何とかできる」と明言します。女性は「子育ては毎日楽しく、幸せになれます」と笑顔で言いました。

1歳になった長男は順調に成長し、現在も障害は見つかっていません。でも、もし仮に今後、長男に障害が見つかったら?母は女性に、「仮に障害が見つかっても、色んな人がいるよ。みんな不得意なこともある。サポートを受けられることで、育児をしていて自立できる。そういう気持ちで過ごせばいい」と述べています。

母は自分がいなくなった場合の「親亡き後」に関しても、既に先回りの対策をしています。女性が自分で障害者手帳の更新の手続きを行える様に、手順書を作成していると話してくれました。

北海道のグループホームの件は、私は後から発達障害だと分かりましたが、昔から聴覚障害があったことで、時代が前の時代だと、旧優生保護法とか、そういうのに引っかかっていたんだろうなと思うと、他人事ではない話だと思いました。

この記事では障害があっても子育てできるよという明るい話も書かせて頂きました。この記事で障害を抱えていても、子育ても周りの配慮や工夫をすればできるよって、示せたら良いなと思っています。

noteでも書いています。よければ読んでください。

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ABOUTこの記事をかいた人

左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎、右手人差し指に汗疱、軽く両膝の軟骨すり減り、軽度に近いすべり症、坐骨神経痛などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。