分身ロボット「OriHime」の挑戦―「分身」でできることを増やす―

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 こんにちは、nonoです。

 以前私が書いた「AIの未来の話」についての記事は、皆さん読んでくださったでしょうか。今回はAIと同じく私達の未来を変えてくれるかもしれない、あるロボットのことを紹介したいと思います。

 AIを搭載し自分の判断で行動できる「自律型ロボット」だけでなく、工場で使われているような「産業用ロボット」など、一般的にロボットと聞くとプログラムなどに従ってひとりでに動くものをイメージする人が多いと思います。

 でも、今から紹介するロボットは自動で動くロボットではありません。人がいないと動かせない―むしろ、人が動かさないと意味のない「人間の代わりになるロボット」なんです。

人と人をつなぐ分身ロボット「OriHime」

 株式会社オリィ研究所が開発したロボット「OriHime」は、AIではなく生きた人間が操作して動かすロボットです。

 OriHimeの大きさは高さ23cm、重さは660gととてもコンパクト。丸っこいボディには足がついておらず、スマートフォンやタブレットのアプリを使って腕と頭を動かすことができます。

 この小さなロボットの何が特別なのかというと、実はOriHimeは「誰かの分身になる」ために作られたロボットなんです。

 例えば、いろいろな理由で学校に通えなくなった子どもたち。面会の時間も限られており、家族となかなか会えない入院患者さん。職場から離れて、リモートワークという形で働いている人たち。そういった人々のために、OriHimeは「分身」として働くのです。

 

どこにいても、OriHimeを通じてつながれる

 OriHimeにはカメラとマイクが搭載されており、インターネットを通じて離れたところからOriHimeを操作することで遠くの人とも簡単にコミュニケーションを取ることができます。

 ただ遠くの人と話すだけならSkypeのような音声通話やチャットを使えばいいのでは?と考える人もいるかもしれませんが、OriHimeのすごいところは「相手が本当にそこにいるように思える」ところ。OriHimeはマイクを使った通話のほかに登録されたモーションを使った感情表現ができ、声や文字だけでは伝えきれない気持ちを相手に届けられるのです。

 また、OriHimeを操作している側はカメラを通じて相手を見ることができますが、OriHimeを見ている側からは操作している人の様子は見えないので「自分の顔や家の中を見られたくない」という人のプライバシーに配慮できる利点があります。

体が動かなくても、声が出なくても、誰かと話せる

 OriHimeは遠くにいる人だけでなく、病気や障害が理由で肢体不自由となった人とのコミュニケーションにも用いることができます。

 そのためのツールが「OriHime eye+Switch」です。OriHime eye+Switchは視線、あるいはスイッチでの操作で文字入力と読み上げができ、さらにはOriHimeを操作する機能もついています。

 たとえ文字を書けなくても、話すことさえできなくても、OriHimeがあればみんなと同じようにコミュニケーションが取れる―OriHimeは障害や病気を抱えた多くの人の支えとなっており、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病を持つ参議院議員・舩後靖彦議員も議員活動にOriHimeを活用することを考えているそうです。

 

家にいながら、カフェで接客―新しい形のリモートワーク

 OriHimeは障害や病気を持つ人だけでなく、育休などの理由でリモートワークをしている人の助けにもなっていますが、OriHimeはリモートワークの枠組みを広げるチャレンジも行っているんです。

 リモートワークはチャットや通話で会社と連絡を取りながら、自宅やコワーキングスペースなど好きなところで仕事をする…という勤務形態ですが、会社の外でできる仕事の種類は主にパソコンを使う頭脳労働に限られています。

 そこで開発されたのが、これまでとは一味違った分身ロボット「OriHime-D」。こちらは通常のOriHimeと違って120cmほどの大きさで、足こそついていないもののだいぶ人間に近い外見をしています。

 OriHime-Dの最大の特徴は、コミュニケーションだけでなく簡単な肉体労働が可能なこと。2本の腕を自由に動かし、ペットボトルをしっかり掴んで運ぶことだってできるんです。

 このOriHime-Dはリモートワークでできる仕事を増やし、外出が困難な人の「働きたい」という希望を叶えるほかにも、遠隔地への業務視察や指導に用いるといった活用法も期待されています。

 現在はOriHime-Dを使った社会参加の実験プロジェクトとして期間限定の分身ロボットカフェ「DAWN」βが開催されており、新しい形のリモートワークは少しずつ実現に向けて動いているようです。

OriHimeは「心の車いす」—開発の裏に込められた思い

 遠く離れた人と人をつなぎ、外出が難しい人の代わりに外の世界でコミュニケーションができる分身ロボット・OriHime。その開発のきっかけは、開発者の方が感じた「孤独」だったそうです。

 オリィ研究所の所長にして、OriHimeの生みの親でもある吉藤オリィさんは、かつて人工知能の研究をしていました。不登校の経験があり、人の輪に入るのが苦手だった吉藤さんは「孤独」を消すために人工知能で友達を作ろうと考えていましたが、研究を重ねた結果行きついたのは「現時点で人間の孤独を癒せるような人工知能を作るのは難しい」という結論でした。

 そこで吉藤さんは、人工知能ではなく人間との交流で孤独を癒せるように、人間同士のコミュニケーションを支援する分身ロボットを開発することにしたのです。

 OriHimeのコンセプトは、身体ではなく心を遠くへ運ぶ「心の車いす」。織姫と彦星の伝承になぞらえて、「遠く離れていて会えなくても、心だけでも移動して会いに行けるように」という意味を込めてOriHimeと名付けられました。

 いつどこにいても、どんな相手とでも、直接会って話をしているような感覚で心を通わせられる分身ロボット・OriHime。その存在がもっと社会に浸透すれば、入院中でも家族と自宅のリビングで団らんを楽しんだり、寝たきりでも会社で働いたりして、社会とのつながりを絶つことなく充実した生活を送れるようになるのかもしれませんね。

 

参考元:オリィ研究所―OriHime 分身ロボット「OriHime」 西日本新聞

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