【傍観者効果】困っている人を助けられないのはなぜ?

人混みの中の女性

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 皆さんは、こんな経験をしたことはありませんか?

 電車の中で立っているお年寄りを見かけたけれど、席を譲る勇気が出なかった。具合が悪そうにしてうずくまっている人がいたけれど、みんな素通りしていくので大丈夫かなと思って放っておいた…「困っているのかも」と思いはしても、なかなか相手を助けようと行動できない。そんな気持ちが分かる人は多いはずです。

 周りに人がいると行動をためらったり、「誰かやるだろう」と人任せにしてしまうこの心理は、「傍観者効果」と呼ばれています。

傍観者効果が生んだ悲劇―キティ・ジェノヴィーズ事件

 傍観者効果が知られるようになったきっかけは、1964年にアメリカのニューヨーク州で発生した「キティ・ジェノヴィーズ事件」でした。

 事件の被害者は28歳の女性であるキティ・ジェノヴィーズで、帰宅途中に前科のある男に襲われて殺害されました。事件当時、現場近くのアパートでは38名の近隣住民が彼女の悲鳴を耳にしていました。ところが、この38名の目撃者は、誰一人として彼女を助けようとしなかったのです。

 犯人は最初にキティ・ジェノヴィーズを襲ってから二度現場に戻っており、30分以上にわたって彼女に暴行を加えました。この間にも住民は彼女の救助や警察への通報といった行動を起こさず、初めて警察に通報がされたのは三度目の襲撃の後でした。

ラタネとダーリーによる傍観者効果の証明

 キティ・ジェノヴィーズ事件が起きた当時、近隣住民が行動を起こさなかった原因は「都会の人々の無関心・冷淡さ」として報道されていました。そこで、アメリカの心理学者であるラタネとダーリーはこの住民の対応に関心を持ってある実験を行いました。

ラタネとダーリーの実験内容
・学生を2人、3人、6人のグループに分け、マイクとインターフォンのある個室に通す

・グループごとにインターフォン越しで討議を行わせ、その途中でグループの一人に発作を起こした演技をさせる

・この時、グループ内の他の学生が行動を起こすかどうか、また行動するまでにかかった時間を計測する

 実験の結果、2人グループになった学生は全員が相手を救助しようとしたのに対し、6人グループの学生は誰も行動しようとしなかったのです。

 このことからラタネとダーリーは「キティ・ジェノヴィーズ事件で近隣住民は単に無関心だったわけではなく、他に目撃者がいたために行動しなかったのだ」と結論付けました。

傍観者効果の原因

 傍観者効果が起こる原因として、ラタネとダーリーは次の二つを挙げています。

1.多元的無知

 他者が積極的に行動しないことから、「事態はそれほど急を要するものではないのだろう」と勝手に判断してしまう。

 キティ・ジェノヴィーズ事件の場合、最初に被害者が襲われた際に住民の一人が声を上げて男を追い払ったが、それ以上のことはしなかった。誰も救助に向かわなかったために、「助けるほどではない」という心理が働いたのかもしれない。また、唯一通報した住民も通報の前に知人にどうしたらいいのかと電話で相談していたという。

2.責任の分散

 集団でいると「誰かがやるだろう」「仮に何かあっても自分だけのせいではない」と考え、責任意識が低下してしまう。キティ・ジェノヴィーズ事件では38人もの目撃者がいたために、「誰かが助けるだろう」「きっともう通報されたに違いない」という意識が働き、通報が遅れたものと思われる。

 この他に、行動を起こしたことで周囲からの評価が下がってしまわないかと気にして行動ができない「評価懸念(聴衆抑制)」も原因として考えられています。

傍観者効果を防ぐために

 キティ・ジェノヴィーズ事件は、傍観者効果によって最悪の結末を辿った事件と言えます。人間の心理が招いた悲劇である以上、この事件は現代を生きる私達にとっても決して他人事とは言い切れません。

 もし自分が事故や事件に巻き込まれた時、周りの人に助けを求めてもその声が無視されたら…想像するだけで恐ろしいことです。では、そんな事態を防ぐためには一体どうすればよいのでしょうか。当事者側からできる対策は、次の二つです。

誰か一人に絞って助けを求める

 傍観者効果の原因の一つである「責任の分散」は、人々が集団となっている場合に生じます。これを防ぐには、「誰か助けて」ではなく「そこの人、助けてください」というように特定の個人に助けを求めるのが効果的です。一人を指定して呼びかけることで相手の立場を「集団」から「個人」に変えれば、責任の分散は起こりません。

事態の緊急性を伝える

 「多元的無知」によって事態の深刻さが伝わらず見過ごされている場合は、「なぜ助けを求めているか」「どのように助けて欲しいか」を伝えることも重要です。

 「ひき逃げです」「救急車を呼んでください」などと緊急事態であることを伝えれば、集団であっても「無視してもいい」という意識は働きづらいはずです。

無責任な傍観者から抜け出す勇気を持とう

 最後に、自分が「当事者」ではなく「目撃者」になった場合の対処について。

 大切なのは、自分で行動する「勇気」を持つことです。もし目の前に困っていそうな人がいたら、助けなければとわかっていても「関わった結果トラブルになったらどうしよう」「変に目立ったりしたら恥ずかしい」とリスクばかりが浮かんだり、どう助けたらいいかわからなかったりしてためらってしまうことでしょう。しかし、そこで相手を助けなければ、後で取り返しの付かない事態になって一生後悔し続けるかもしれません。

 自分ひとりで助けられる自身がないのなら、警察に通報したり、誰かを呼んだりして他人に頼っても構いません。助けようと行動を起こすことが何より大事です。

 傍観者にならず、一歩を踏み出して手を差し伸べる勇気。それこそが、第二のキティ・ジェノヴィーズ事件を生み出さないために最も必要なものなのです。

参考元:心理学ミュージアム WIRED.jp pcycho-lo

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