海上で風力発電! 洋上風力発電の可能性 

この記事は約 5 分で読むことができます。

1.洋上風力発電の可能性

 洋上風力発電とは何なのか、これを簡単に説明すると、海上で風力発電を行う、ということを意味しています。洋上風力発電の開発は、日本政府が2010年6月と2012年7月にそれぞれ閣議決定した「新成長戦略」および「日本再生戦略」に盛り込まれた方針でもあります。

 ヨーロッパでは当たり前の光景になりつつある洋上風力発電所ですが、日本には、沖合数kmまた数十kmに数十基設置された本格的な洋上風力発電所はまだ存在しません。

2.洋上風力発電のメリットとデメリット

 洋上風力発電のメリットとしては、①人間がコントロールできる単純な原理であるため、安全性が高い、②大規模・集中電源として、発電量が増えるほど、コストが下がる、③景観を損なわない、④陸上に比べて設備利用率(実際の発電量が、仮に100%運転を続けた場合に得られる電力量の、何%にあたるか)が高い、の4点が挙げられます。

 デメリットといえば、海上で工事・維持修理を行うため、天候が悪い日が続くと工事日数が伸びることくらい、だといわれています。

 なお洋上風力発電普及のための技術的な課題としては、①風車の大型化(羽根の軽量化・低騒音化・長大化、構造の強化)、②塩害による回転機械や電子機器の故障防止(材料の高度強化、長寿命化)、③波や海潮流などのに抵抗できるための構造物の開発、の3点が挙げられます。

 さらに、設置場所の選択肢のを広げるために、水深が深い海域で使用する浮体式の開発も世界的に進められています。

3.洋上風力発電設置のために必要なこと

 洋上風車を設置するためにまず最初にやらなければならないことは、海域の選定です。海域の選定にあたっては必要なことは極めて当たり前のことですが、「風を吹いている」場所を探すことです。

 しかし単に風が吹くだけではいけません。発電事業として成り立つには、一定以上の風の速さが必要であり、かつ一年を通じ、一日中、常に安定的に風が吹く必要があります。ですが日本では、まだ海域の洋上における実際の風を測定した網羅的な実データを整備するまでには至っていません。

 水深が浅いことも、必要条件です。通常の工法で基礎部分を設置できるのは、水深が30m~50mくらいといわれいます。

 「風速」と「水深」の二つの条件を同時に満たす海域は、北海道や東北、関東や東海地域などですが、現在、東京電力が千葉県銚子沖の3kmの地点で実証実験を行っています。

 他にも、設置にあたっては、平らな海底と、海潮流が緩やかであることが必要ですが、残念ながら、この二つのデータも不足しています。

 技術的な問題以上に洋上風力発電の立地を考えるうえで重要なことは、先行的に海域を利用している人との利用調整です。海域の中には、海底通信ケーブルが敷設されていたり、外国船の航路や航空機の侵入経路として使われていて、風車の設置が困難な場合もあります。

4.ドイツの場合

 また、ドイツでは、国による設置許可条件として「漁業従事者かプロジェクトの反対していないこと」との要件が法令の中に明記されています。

 このように、ヨーロッパでは、先行的に海を利用している人がいる海域のマップをすべて作成し、そのマップをもとに先行的に利用者がいない海域に風車を設置することが一般的です。対して日本は、先に風車を設置する海域を選定し、後から利用者との調整を行うケースが多いため、どうして調整が困難になる場合が多いようです。

 漁業者の多くは、「洋上風力発電が漁獲量や生態系に影響を与えるのではないのか」と不安を訴えます。しかしながら、すでにヨーロッパでは洋上風力発電の存在が漁獲量や生態系にマイナスを与えた事例は現在のところ報告されていません。

 それどころか、風車の基礎部分に魚の餌となる小魚が多く集まっていることが報告されたために、逆に漁獲量が300%も増加した、という調査もあります。さらには、洋上風力発電所を活用した沖合養殖の研究も進められています。

5.環境面でも心配ない

 風車は、巨大な羽根が回りながら、全体が振動し、周波数の低い「低周波騒音」を発します。しかし洋上風力発電は、人のいる地域から離れた場所に風車を建てるため、陸上風力発電のように、低周波騒音を心配する必要もありません。

 風車に渡り鳥がぶつかるバードストライクについても、あまり心配する必要はないようです。

 日本では、台風や地震・津波などの心配も予想されます。

 台風の場合は強固な施工をすれば問題がなく、地震・津波についても、東日本大震災時において、震度6の地震と5mの津波に見舞われた洋上風力発電所「ウィンド・パワーかみす」(茨城県神栖市)の7基すべてが地震と津波に耐えて生き残り、世界風力エネルギー協会の事務局長が日本の風力発電における高い技術を褒め称えているというエピソードも生まれました。

6.多くの雇用を生む

 最後に重要な点として、洋上風力発電は多くの雇用を生み出す可能性を秘めているものです。風力発電は2万点の部品による組み立て産業であり、ガソリン車の3万点、電気自動車の1万点と並び、産業の広がりがとても大きいものです。世界風力エネルギー協会の試算によれば、風力発電産業は1万キロワットあたり約160人の雇用を生み出すという試算もあります。

 すでに洋上風力の分野では、ヨーロッパで数多くの雇用創出効果が表れており、日本においても、今後は本格的に導入するメリットは十二分にありそうです。

    参考

 岩本晃一(2012)『洋上風力発電 次世代エネルギーの切り札』日刊工業新聞社.

社会問題の興味深い記事10選 by ライターshin

2018.07.16

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です