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この度、病気や怪我などで入院している子ども達に本物のアートを届ける取り組みを行う、認定NPO法人『スマイリングホスピタルジャパン』代表の松本惠里さんにインタビューさせていただきました!
松本さんが院内学級に赴任したのは、自身の交通事故が始まりでした。
院内学級の中で、アートや音楽などの授業をすると、子ども達は楽しそうな笑顔を浮かべました。
その笑顔をきっかけに、かつての同僚だったスマイリングホスピタルファンデーション創始者のアルバート・ロイヤーズ氏の理念を継承し、『スマイリングホスピタルジャパン』を立ち上げました。
前編では、スマイリングホスピタルジャパンを立ち上げるきっかけとなったできごとや松本さんの活動にかける想い。本物のアートに触れたことで観た入院している子ども達の感動的なエピソードなど、考えさせられる時間が多くありました。
今回お話を伺ったのは、翼祈、mako、りんごいくら、島川です。
ぜひ前後編併せて最後までご覧になってください!
スマイリングホスピタルジャパン(SHJ)の理念や立ち上げの経緯
りんごいくら:スマイリングホスピタルジャパン(SHJ )の理念、「楽しむことは治癒を助ける」「笑いは一番の薬」は、どのような経験から生まれたのでしょうか?
活動を始める前、私は長期入院する子ども達が、治療を受けながら通うことのできる「院内学級」で教員をしていました。
その中で気付いたのは、楽しいことに夢中になると、本当に屈託ない笑顔を見せてくれる瞬間があるということです。
音楽・図工・美術・芸術鑑賞会などの時間になると、子ども達は入院していることを忘れてしまったかのような、素敵な笑顔を見せてくれました。
その姿を見て、「これこそが、闘病に前向きになる秘訣なんじゃないか?」と感じました。
そうした経験から私たちは『楽しむことが治療を助ける』『笑いが1番の薬』という理念を掲げています。
りんごいくら:活動理念について、院内学級で出会った子ども達から影響を受けた言葉や行動はありますか?
私は物作りが非常に好きですが、特に小学校高学年から中高生の女子の病室に行くと、みんなも「何かを作りたい」と言ってきます。
放課後会議などの合間を縫って子ども達のところに出かけて、手芸クラブの様なものを毎日していました。
これは本来は業務逸脱で、たまに他の教員に「何やってんの!」と叱られることもありましたが、ある想いがあって続けていました。
それは、『子ども達の笑顔が、私にとって本当に何よりも大切』ということです。
それに私自身にも力をくれるため、その想いを貫きました。
そして子ども達みんなが、「病室に授業が終わったら来てね」「今度はミサンガ作ろうね」「声優さんが来てくれたら嬉しいな」と、言葉や行動で本心を伝えてくれました。
『その子ども達の願いを形にしたい』
それが活動理念の原点だと思っています。
mako:外資系銀行をお勤めの中、ご自身の交通事故をきっかけに院内学級の先生になられたと伺っていますが、先生になって感じたことは何かありましたか?
院内学級に配属されたのは偶然でしたが、だからこそ運命を感じました。
一口に事故と言っても、「命を取り留めたのは奇跡じゃないか?」と、病院を挙げて言われるほどの、非常に大きな交通事故でした。
自分が生死の境をさまよった経験が、今まさに命と向き合って毎日治療を頑張っている子ども達のもとに導いてくれたと思っています。
自分の意思とは関係ないところで、別の何か大きな力が、私に使命をくれたと感じました。
mako:NPO法人を立ち上げるきっかけや、その時のご自身のお気持ちを教えていただけますか?また、その時のご家族の反応はいかがでしたか?
最初は「NPO法人を立ち上げるぞ」とは、全く考えていませんでした。
この活動を始めた後で、教員としての立場では活動を続けられないとわかり、教員を辞めました。
NPO法人立ち上げたきっかけは、活動を進めていく中で、『法人化しないと資金調達や広報などの面で無理がある』と分かったことです。
結果的には、法人化したことでより活動が広がっていきました。
私は直感で「学校を辞めて、この活動をやろう」と思っていて、家族は私の「もうやらずにはいられない」という様子を見て「その直感を信じて頑張れ」と背中を押してくれました。
翼祈:スマイリングホスピタルファンデーション創始者のアルバート・ロイヤーズ氏の存在は、スマイリングホスピタルジャパンの理念や活動のどの部分に強く反映されていますか?
私にとって彼は、本当に無くてはならない存在です。
初めて彼の存在を知った時、「私が院内学級で感じていたことと、同じようなことを考えている人が地球の裏側にいるんだ」と、非常にワクワクしたのを覚えています。
彼とは意気投合し、メールでのやり取りの中で彼の活動を、日本での活動の参考にしました。
アルバートのほうでは、「プロのアーティスト」「定期活動」にこだわっており、それが活動の柱でした。その考え方は私も絶対に必要だと感じました。
私たちは、アルバートの理念に加えて、プレイルームに来られない子ども達のための『個別活動』と『参加型活動』という日本独自の活動を取り入れました。
SHJの活動について
翼祈:プロのアーティストボランティアが個室やプレイルームを訪問した時の、お子さんの反応はいかがでしょうか?
病院ごとに次の活動日時が決まっているため、子ども達はみんなボランティアがいつ来るかを知っています。
活動の1ヵ月ほど前から私たちで作ったポスターを事前に病院でも貼ってもらうのですが、子ども達が当日を楽しみに待ってくれていたということが、非常に伝わってきます。
ボランティアの方たちが来ると、みんな「待ってたよ!」とニコニコして歓迎してくれます。プレイルームに早くに着いていて、「今か、今か」と待っている積極的な子もいます。
反対に初めて参加する子は、全然知らない人が来たりするので少し警戒し、プレイルームを少し覗きにきて、「どうしようかな」と言いながら、一旦は帰っていきます。
でもプレイルームでのみんなの楽しそうな雰囲気や声が聞こえてくると、徐々に気になって、最終的には参加してくれることもあります。
プレイルームの入り口で立って見ているだけで、結局は帰っていく子もいますが、「次回は何かを作る活動だから、その活動には参加しようかな」と言ってくれたりします。
りんごいくら:私は学生の頃、街中でアートムジカさんの作品に触れたり、福岡県久山療育施設へ訪問したことがあります。
子ども達が夢中で色を塗る姿に触れ、「アートの力」は特別なものだと感じてきました。
単調な日常に色を差し込むような、病気を忘れているような瞬間を覚えています。
私は白血病を経験していたので、より強く思いました。
SHJでは“本物のアート” “クリエイティブな活動”を大切にしていますが、それはどんな理由から生まれたのでしょうか?
久山療育園は私たちの活動場所の1つで、お話を聞いて非常にご縁を感じました。
本当にアートは特別なものです。
病気や障がいと向き合いながら病院や施設で過ごす日常に、アートは『寂しさが滲む日常の隙間に色を添える』ことができます。
そのため私たちは、『本物のアート』『クリエイティブな活動』を大切にしています。
病棟や施設の中で暮らしている子ども達は、どうしても「治療を受ける」という受動的な生活になってしまいます。
ですが、これから成長していく子ども達には、「楽しいこと」「ワクワクすること」「感動すること」を通して、ダイナミックに誰かと一緒に過ごす時間が絶対に必要です。
そういう瞬間が極端に限られている環境で、ただ一緒に遊ぶというだけではなく、「本物のアート」にこだわる。私たちの独自性はそこにあります。
「本物のアート」を提供するには、専門性が活かされる必要があるため、自然とプロフェッショナルアーティストということになります。
そして「クリエイティブな活動」を通じて「主体的・能動的に動く」「感性を引き出す」機会を提供するとなると、アートが『媒体』となる必要があります。
子ども達には、自分の内側から湧き出るクリエイティビティやワクワク感を、“たくさんたくさん” 味わって欲しいと感じています。
プロのアーティストにこだわる理由はもう一つあります。
それは、当日にならないと子ども達が「どんな子なのか」「何歳ぐらいの子たちなのか」「どんなことに興味があるのか」が分からないという環境にあります。
また病棟は、処置や手術、お風呂などの色んなことがあります。そのため参加メンバーが非常に流動的になります。
その時に、プロのアーティストだと色んな引き出しがあって、相手の状態や状況に応じて臨機応変に対応してくれます。結果的に、プロにお願いしたことは大成功でした。
mako:アーティストボランティアの方は、どの様な思いで参加してる方が多いでしょうか?また、その反応にはどんなものがございましたか?
やはりプロのアーティストは、学生の頃から非常に自分の専門性を磨いて、プロになっているため、同じピアニストでも一人ひとり違います。
その様な自分独自のアートが、誰かの喜びや支えになって、子ども達の笑顔に結び付いた実感が、ボランティアの方の喜びに繋がっています。
その上で、子ども達が闘病を頑張っている姿を見て、非常に感動される方もいます。
「子ども達を支援する立場の自分たちが、逆に子ども達から命の大切さを教えてもらっている」と、皆さん口を揃えて言っています。
反応としては、「支援します」という気持ちではなく、『そっと隣に寄り添う』ことが大事だと、徐々に学んでいらっしゃる人が多いです。
入院中のお子さんの反応や変化について
翼祈:スマイリングホスピタルジャパンが立ち上がって、10年以上が経過しましたが、活動の積み重ねで、お子さんにどの様な心の変化が生まれていますか?
「入院していても、楽しいことはあるんだ」「 楽しんでもいいんだ」
という前向きで積極的な気持ちが生まれてきていると感じています。
病院ボランティア団体の活動には、私たちの活動の他に、ホスピタル・クラウンさんや、色んな読み聞かせの会など、多様な形があります。
そんな中で、私たちは「見て下さい」「聞いて下さい」「一緒に遊ぼう」と働きかけるのではなく、別の関わり方をしています。
私たちの活動は、子ども達が「自分はこんなことができるんだ」という、『今まで知らなかった自分を知ることができる場所』としての意味もあります。
その根拠の1つが、プロのアーティストと一緒に活動することでの安心感。
プロのアーティストは臨機応変に対応できるため、子ども達は、「ううん、違う。こういう紙を使いたい」「こっちでやりたい」の様に、少しワガママを子ども達は言えます。
私も行く度に非常に安心できます。
そして、活動の最初の頃は、病院にいるはずのないピエロさんや、大道芸のお兄さんなどが病棟へ行くと、みんなビックリしていました。
しかし、今は大人も子供もみんな本当に嬉しそうにしてくれ、非常に歓迎してくれていると感じています。
その様な反応を見ると、子ども達に積極的な気持ちが生まれていると感じます。
翼祈:また、お子さんのご家族の反応で、特に印象に残るエピソードはございますか?
エピソードは本当に多くありますが、2つ紹介します。
ある小学校高学年から中学生くらいの男の子がいて、その子は大事なフルートを持って入院したのですが、小児がんで非常に長期間の治療が必要でした。
その子は一時退院も難しく、ずっと病院にいましたが、そのフルートは大事に磨いたりする程度で、周りに気を遣ってか、演奏することはありませんでした。
その後で、ある活動の時ピアノとバイオリンのユニットが来て、打楽器なども配って、みんなで演奏を楽しんでいました。
その子は、周りが小さい子が多かったのもあって、「なんだか嫌だ」「自分はここにいたくないな」「幼稚っぽいな」と感じて、最初は素通りしましたが、気になって戻ってきて演奏を聴いていました。
最後の演奏の終わり頃にその子が、「僕も実はフルートをやるんだ」と言ったんです。
それを聞いたプロのアーティストに促されて、病室からフルートを持ってきた彼と、プロのピアニストとバイオリニストのセッションが始まったんです。
プロのため、すぐにその子の音階も掴んで、アイコンタクトだけでそのまま最後まで一緒にセッションしました。
『You Raise Me Up』を演奏したのですが、その様子を見て、お母様も感極まって隣で泣いていました。
まさか入院中にプロとセッションできるとは思ってもみないことで、その子自身も凄く感動していました。
『入院していなければ、できないほどの凄い活動』だと思います。
私が振り返ると後ろにいたナースさんたちも皆さん総立ちで、ナースステーションはスタンディングオベーションに包まれ、涙が出る様な本当に素晴らしいエピソードでした。
もう1つは、活動のあとに手術を控えている5歳ほどの女の子の話です。
その子は、もうすぐ手術と聞かされていたので非常にぐずっていたため、「手術の前に少し楽しいことしようよ」と、保育士さんがプレイルームに誘ってくれました。
その日の活動は廃材アートで、新聞紙などの色んな廃材を使って、「自分がなりたいものに変身する」という活動でした。
その時にアーティストが、その子に「何かなりたいものある?」と聞くと、その子は小さな声で「お姫様になりたい」と言いました。
その子のために、アーティストがドレスを作りました。
その子自身でも、ドレスにつける花・ティアラ・羽などの色んなアクセサリーを、アーティストに教えて貰いながら作っていました。
そして、ドレスを着た自分を鏡で見ると、非常に嬉しそうで、自分の姿にうっとりしてしまいました。
丁度その時間に「手術だよ」と呼ばれたため、お姫様の格好のまま凛とした姿で手術室に向かっていきました。
手術が終わるころにはもう活動が終わっていたため、私たちはいませんでした。
しかし、その後保育士さんが、「あの活動があったお陰で、手術にちゃんと向き合うことができた」と教えてくれました。
その様なことも非常に嬉しかったエピソードの1つです。
翼祈:手術で抱えていた不安が、アートに触れることで笑顔になったのですね。
アートが大変な手術も頑張れるきっかけになるのは、非常に良いなと思いました。
本当にその通りです。
子ども達が毎回気付かせてくれます。
「私たちの活動は間違っていなかったんだ」、と非常に励みになります。
前編はここまでです。
後編はこちらから読めます。
『スマイリングホスピタルジャパン』様の公式ホームページとSNS
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