障害者の一般就労について-正社員 or 非正規雇用どちら?-

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こんにちは、金次郎です。

 去年の4月に、障害者が働く施設には、A型とB型の2種類の事業所が有り、そこで障害者を支援する職員さんによる虐待行為が起こった事を書きました。

有ってはならない、各種障害者事業所の、虐待や不正行為

 A型もB型も、働いている障害者の最終目標は「一般就労」です。
 日本には
  ・従業員数の2.5%は障害者を雇用しなければならない(令和6年度より)
 と言う「障害者雇用促進法」による法定雇用率が有ります。
 (※令和8年度からは、法定雇用率は2.7%「国および地方公共団体等は3.0%」になります)

参考:(厚生労働省)令和5年度からの障害者雇用率の設定等について(pdf形式 2ページ)

 しかし、一般企業の人事の方たちは
  ・障害者を採用したとしても、業務をこなせるだろうか?
  ・その障害者の障害に合わせた設備を整えなきゃ
 などの考えから、障害を持っている人を雇用する事には及び腰の会社が多いです

障害を持ちながら一般就労している人の割合

 では、一般企業で働いている障害者はどのくらいいるのでしょう。

 厚生労働省は、5年毎に「障害者雇用実態調査」と言うのをしており、民間企業における障害者雇用の実態を把握して、障害者の雇用施策の検討や立案に役立てています。

         2018年(平成30年)       2023年(令和5年)

    人数 正社員率   人数 正社員率
身体障害 42万3000人 52.50%   52万6000人 59.3%
知的障害 18万9000人 19.85%   27万5000人 20.3%
発達障害   3万9000人 25.50%     9万1000人 36.6%
精神障害 20万人 22.70%   21万5000人 32.7%
合計 85万1000人     110万7000人  

 この調査結果を見ても分かる様に、身体障害者は半数以上が正社員で働いていますが、それ以外の知的・発達・精神の障害者は、増えてはいるものの20〜30%前後と、正社員比率はガクンと落ちてしまいます。

参考:(厚生労働省)平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します

参考:(厚生労働省)令和5年度障害者雇用実態調査の結果を公表します(pdf形式5ページ)

なぜ、障害者は正社員になれないのか?

 なぜ、身体障害以外の障害者の正社員割合が低いのでしょうか?

主な原因は以下の通りです。

1・フルタイムで勤務するのが難しい
  「障害者を正社員雇用している」とカウントされるには、週30時間以上働くことが必要です。
  正社員とカウントされるには、フルタイムで働いている事が前提になります。

2・簡単もしくは単純作業しか出来ない
  単純作業者の場合、正社員として雇用されにくいです。
  それは「すぐ代わりの人が見つかるから」です。
  あなたがもし辞めてしまっても、新しい人を雇って、その仕事をやってもらえば良いだけ
  です。
  ですから、わざわざ好待遇の正社員として雇う必要はないと会社は判断しています。
  正社員になりたければ、会社から「手放したくない」と思われる様な人材になる事です。 

3・正社員になる要件や条件を、クリアしていない
  会社によって違いますが、正社員になる為の要件や条件を提示しています。
  その要件や条件に達していない場合は、正社員になることはできません。
  最低限の基礎知識や、スキル(技術)、社会人としてのマナーや態度など、正社員になれる
  要件や条件を色々付けますし、入社試験(面接など)を課している会社もあります。

  それは、一度正社員として雇用してしまうと、簡単には解雇できませんし、給料もそれなりに
  上げなければなりません。
  待遇を良くするので、会社としては良い人材しか正社員として雇いたくないのです。
  これらの事から、正社員として雇用する場合、会社も慎重になります。
  逆に言えば、良い人材なら、会社はあなたを囲うために正社員にして、辞めづらくさせます。

4・早期退職してしまう、リスクを懸念している
  障害者の方は、離職率が高く、1年以内に3割以上の人が辞めていっています。
  この様な事実から、会社は障害者を正社員で採用してもすぐ辞められてしまうと、離職率が
  高くなってしまい、会社のイメージダウンになる事を心配しています。
  ですので、先ず契約社員として勤務してもらい「長く働いてもらえそうだ」と言うのを確認
  してから正社員登用する方法を取っています。

正社員に登用された、障害者の特徴

 障害者雇用で正社員に登用された人の特徴です。

1・就労が安定している
  一番の条件でして、障害の症状や体調が安定せず、いきなり休むことが多く、1度体調を崩
  してしまうと、2〜3日休んでしまうなどしてしまう方は、正社員で働く事は難しいです。
  会社は営利団体ですから、安定して会社に出勤して利益向上に貢献してくれる人材を選びま
  す。

2・フルタイム勤務ができる
  正社員として働いている障害者の方は、ほぼ全員フルタイム勤務です。
  就労の安定もそうですが、フルタイムで働いて、会社に貢献してほしいと考えています。
  ですから、障害者と言えども、フルタイム勤務が条件になります。

3・職場の仲間と、コミュニケーションを取りながら勤務できる
  企業は組織で動いていますから、他の社員と協力して働く事は無論、チームやメンバーと
  コミュニケーションを取りながら働く事が大事です。
  逆に言えば、会社の仲間と協力したり、コミュニケーションが取れないとなると、仕事を
  こなしていく事は難しいでしょう。

4・スキルアップやキャリアアップを目指して、努力している
  自身の技術力アップや経験を積む事を目指し、常に新しい情報を収集したりと色々と努力して
  いる人が、正社員で働いている方の中でも、成功する人です。
  会社は、社員が自分の会社をより良い会社にしてくれる事をを望んでいます。
  そのためには、個々の人材が様々なスキル(技術)などを習得し、さらに会社に貢献できる様
  な人材になる事が必要になります。

参考:(障害者雇用の転職部屋)【障害者雇用】正社員になれる?なれない?元人事が教える正社員になれる可能性とは?

障害者を正社員登用するともらえる「助成金」

 厚生労働省も障害者の正社員雇用を促進する為に、契約社員等から正社員に登用した場合、助成金を出しています。

 ・障害を持っているけど、キチンと仕事をしてくれるし、非正規雇用から正規雇用に変えよう

 と言う会社には、国も報いてくれます。

参考:(厚生労働省)キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

終わりに 

 私が新卒で入社した会社は、350人ほどの社員がいましたから、法定雇用率で計算すると8人は障害者を雇わなければいけないはずでした。
 しかし、私が知っている限りでは、勤務していた当時に障害を持っている社員はいませんでした。
 (私が退職した後の、現状は分かりません)
 私が正社員として勤務していた1980年代〜1990年代は、どの会社も「障害者を雇用する」と言う事に対して、それほど真剣には考えていなかった時代です。

 運輸業を中心に、あらゆる業界で人手不足が起きる「2024年問題」
 皆さんも、この問題に関してはテレビや新聞などでの報道でご存じかと思います。
 この様な時代ですから、どの会社も
 ・仕事内容によっては、障害者も戦力になり得る
 と考えて「障害者雇用」に向き合って欲しいものです。

参考:(就活応援プラットフォーム)障害者枠はほとんどが非正規雇用(契約社員)で正社員になれないって本当なの?社員登用の割合はどれくらい?

  

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2 件のコメント

  • 記事を読ませてもらいました。障害をもった人に一般就労するにはハードルが高いのでしょう。少しでも景気が悪くなると障がい者も解雇される確率がたかくなります。障がい者も普通の人とふれあいたいと願っているのではないでしょうか?これからも記事を楽しみにしています。

    • コメントありがとうございます。
      一般就労も仕事内容によりけりです。
      実際、当事業所から役所に「障害者雇用」で就職した人もいますから。
      伝票等から表計算ソフトへのデータ入力みたいな仕事でしたら、私も一般就労できそうですけどね。

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