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こんにちは、翼祈(たすき)です。
ジフテリアとは、ジフテリア菌で感染する疾病です。日本国内ではジフテリアトキソイドが定期接種になって以降ジフテリア患者は激減し、その発生が最後に報告されたのが、1999年でした。ごく稀になりましたが、以前は毎年8万人以上の感染者が発生し、その中の10%程度が亡くなっていたほどの病気でした。
潜伏期は2~5日間(1〜10日間とも)程度で、主に気道の分泌物によって移り、喉などに感染してジフテリア菌の毒素を放出します。この毒素が神経や心臓の筋肉に作用することで、喉頭や咽頭に病変が見受けられる時が多く、発熱や嚥下痛、嘔吐、倦怠感、頭痛、喉の痛み、咳、首のリンパ節の腫れなどに始まって、扁桃や気道に偽膜を形作り、続いて鼻出血、鼻づまりなどが起きての呼吸困難の原因にもなります。犬吠様咳嗽や嗄声など特徴的な症状が見受けられます。
発症早期や回復期にジフテリア菌の毒素による心筋炎を合併すると、ジフテリア毒素で容態が急変し、発病2~3週間後には心筋障害や上気道閉塞、脳神経・末梢神経麻痺、横隔膜や眼球などの麻痺、不整脈から突然死や心不全、心筋炎などをきたして、重篤になる時や亡くなってしまう時があります。
他に眼や粘膜、鼻に病変をきたす場合もあります。鼻ジフテリアでは血液を帯びた鼻汁が出て、鼻孔・上唇がただれるのが大きな特徴です。扁桃・咽頭ジフテリアでは扁桃・咽頭周辺にジフテリア菌が喉などに作り出す「偽膜」という、白~灰白色の厚い膜の様なものが形作られるのが特徴で、空気の通り道が狭くなって息が苦しくなり窒息死する可能性もあります。
致死率は平均5~10%です。日本におけるジフテリア患者の届出数は、1945年にはおよそ8万6千人(その中で約10%が亡くなりました)でしたが、ジフテリアトキソイドの接種普及と共に減少し、1991-2000年の10年間では、21人の届け出(その中で亡くなったのが2人)でした。
ジフテリアは感染しても症状が出現するのは10%程度で、残りの人が不顕性感染という無症状の保菌者で、その人を介して感染する時があります。
また、特に5歳以下や40歳以上の年齢の場合は重症化しやすく、最大で20%の方が亡くなってしまいます。
今回はジフテリアのワクチンなど、基礎知識についてお知らせします。
▽流行している国
アフリカ、中南米、南アメリカ、ロシア、アジア、中東および東ヨーロッパ、南太平洋諸国、ハイチ、東欧、東南アジア、ドミニカ共和国など多くの国でジフテリアの発生がみられます。
世界的にはジフテリアの感染が流行っている地域もあり、海外渡航時または渡航者からの輸入感染に備えるために、免疫をつけておくことが大事です。
▽感染経路
ジフテリアに感染した人のくしゃみや咳によって生じた感染者や無症候性保菌者の飛沫を吸い込んだり、ジフテリア菌が付着したドアノブやタオルなどを触ったりすることで発症します。ジフテリア菌が侵入した局所の「偽膜性病変」とジフテリア菌が産生するジフテリア毒素での2つの病変に分かれます。
濃厚な身体接触によっても発症します。ジフテリアの感染者の唾液などがついた物品を触ったことによって発症する時もごく稀にあります。
▽診断基準
診断は、病源体の検出及び分離菌におけるジフテリア毒素生産性の確認に取ります。
鼻水や発熱、喉の痛みなどの風邪に近い症状がある人で、喉に特徴的な偽膜の形成が見受けられた場合はジフテリアの発症を疑います。喉に付着した唾液やたんを採取してPCR検査、顕微鏡検査、培養検査を行い、確定診断をします。
首のリンパ節の腫れや、犬吠様咳嗽、嗄声などの症状が出ていた場合、さらにジフテリアの発症を強く疑います。なお、この時点で心筋炎を起こしていないかを観察するために心電図検査を行う場合もあります。
ジフテリアは感染症法では二類感染症に定義されていて、診断した医師は速やかに最寄の保健所へ届け出ることが定義されています。感染者は原則として第二種感染症指定医療機関に入院することになります。学校保健法では予防すべき伝染病第一種に定義されていて、治癒するまで出席停止です。
▽治療法
エリスロマイシンやペニシリンといった抗生物質や抗毒素(抗菌薬)という抗菌化学療法か、抗血清の投与での治療が実施されます。
抗菌化学療法では、臨床的に確定診断を下したことをベースにできる限り早い段階に、培養結果が明らかになるよりも迅速にウマ(動物)抗毒素を経静脈的に投与します。
抗血清の治療は、治療開始時期が早ければ早いほど治療の効果が見込めることから、症状などでジフテリアの可能性があると判断すれば、確定診断を待たずに治療を進行する時もあります。
ジフテリア菌は感染力が強いことから、ジフテリア菌がいなくなったことが確認できるまで、隔離する治療が必要となります。
▽予防策
効果的な予防策は、予防接種となります。日本では、4種混混合ワクチン(DPT-IPV:ジフテリア、破傷風、百日咳、不活化ポリオ)と破傷風・ジフテリアワクチン(DT)、3種混合ワクチン(DPT:ジフテリア、破傷風、百日咳)がジフテリア含有ワクチンを接種します。DPT-IPVとDTワクチンは定期接種で乳幼児、学童に接種が必要となります。
世界各国とも拡大予防接種計画(EPI)の一環として3種混合ワクチン(DPT)の普及を推進していて、日本でも1968年にスタートし、1981年より現行ワクチンでの定期接種となっています
ジフテリアを含む3種混合ワクチン(DPT)は世界各国で行われていて、その普及に並行して世界各国でのジフテリアの発生数は激減しています。
20代前半まではジフテリアのワクチンによる免疫があることから、それまでは接種は必要ではありません。ジフテリアのワクチン接種から10年以上経過している時にはワクチンの効果が低下していることから、20代後半以降の人でジフテリア流行地である東ヨーロッパなどに長い間渡航する時などは、事前にジフテリアのワクチンを接種しましょう。
▽ワクチンの副反応
主な副反応は接種部位の発赤、腫れ、しこりなどの局所反応が認められます。接種後、7日目までに反応が出る場合が多くあります。しこりは少しずつ小さくなりますが、数ヵ月局所に残る場合もあります。
特にワクチンに過敏な子どもで肘を超えて上腕全体が腫れたケースが極めて稀にありますが、冷湿布などでの対症療法で徐々に落ち着きます。一般的に高熱は出ませんが、ジフテリアのワクチンを接種した後24時間以内に37.5℃以上になったケースが極めて稀に出現します。
▽接種できない人
画像・引用:ジフテリア・破傷風 日本小児科学会
参考サイト
ジフテリア(Diphtheria) 厚生労働省 検疫所 FORTH
ジフテリア Diphtheria 東京都感染症情報センター(2016年)
ジフテリアについて こどもと大人のワクチンサイト(2023年)
その後、
厚生労働省の専門家部会は2023年12月20日、乳幼児を対象にしたジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)を予防できる5種混合ワクチンに関して、2024年4月から定期接種に加える方針を了承しました。これまでの4種混合ワクチンにヒブワクチンを加えたもので、現在もそれぞれ定期接種の対象です。暫くは4種混合ワクチンとHibも使えます。
4種混合ワクチンとHibの両方を接種する場合、生後2ヵ月からトータル8回の接種が必要です。5種混合ワクチンは、接種回数を4回に減らせます。接種スケジュールは現行の4種混合ワクチンと概ね同様で、生後2ヵ月~7ヵ月にワクチン接種を開始し、4週~8週空けて3回目の接種を終了するのが標準の接種帰還です。4回目は6ヵ月以上経過してからワクチンを接種します。対象は7歳半までになります。
破傷風を先に記事に書いて思ったのですが、この混合ワクチンはどれも最終接種から10年しか効果がない様ですね。10年後というと22歳。それから長い月日が経っています。
打てば効果は100%らしいのですが、感染しても終生免疫にならないとか、10年しか効果がないことを考えると、やはりワクチン開発は難しいんだろうなと感じています。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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