この記事は約 9 分で読むことができます。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
点訳ボランティアとは、視覚に障害のある方のために、墨字か活字で書かれている新聞や本、雑誌、広報誌などの内容を“点字に変換してその文章を伝える”ボランティアの人達です。
視覚に障害を抱えている人にとっての、点字は、ライフスタイルを送る中で情報を獲得するための大切な手段です。点字には一定の決まりがあり、それに沿って、時には必要な言葉を捕捉し正しく点字に変換することもとても大事な作業となります。
視覚から入る情報を正しく点字に変換させ、同じ情報を発信するべく支援しているのが点訳ボランティアとなります。点訳ボランティアは、点訳の作業だけでなく、点訳された本などを校正したり、点字のデータ情報に編集を加えたりと、多種多様な支援を実行しています。
今回はそんな点訳ボランティアについて、実際の仕事の様子もお伝えしながら、特集します。
点訳ボランティアの過程
トトトト…。点字製作課の一室には、町工場の様な機械音が響き渡っていました。活字から点字に翻訳する点訳のため、機械が亜鉛板に突起を打ち込みます。この亜鉛板で用紙を挟み、ローラーで圧力をかけると小さな突起がびっしり刻まれました。企業や自治体から受注したカレンダーや資料、教科書なども製作し、事業収入を得ているといいます。
「職人」ならではの技術もあって、視覚障害を抱えている職員が点訳された資料を指で読み上げる触読をし、晴眼(目が見える)職員が元資料と照らし合わせていきます。
日本点字図書館の新しい蔵書はユーザーのリクエストなどに応じ、毎月1回選択します。
実用書や料理本だけではなく、中には官能小説のリクエストも。視覚に障害を抱えてる人が沢山働いているはり・灸・マッサージ関連本は特に種類が多いといいます。
貸し出される資料は無料で国内外に郵送も出来ます。視覚に障害を抱えている人は書店で本を買うのも困難で、同日本点字図書館の理事長の男性は「点字図書館の経由を行わないと、視覚に障害を抱える人にとっては情報が手に入れにくい」と日本点字図書館の役目の大きさを説明します。
IT化も加速され、同日本点字図書館が管理しているシステム[サピエ]では、日本各地の点字図書館、公共図書館などの蔵書を調査したり、貸し出される資料をダウンロードが可能です。「視覚に障害を抱えている人が手に入れやすい情報量は桁違いに倍増しました。これからも知識の泉として、情報提供に力を注いでいきたい」と、理事長の男性は話しました。
点訳ボランティアのお仕事
視覚に障害を抱えている人に対して点字図書などを貸し出す、千葉県四街道市にある「千葉点字図書館」が開館から2021年で70周年を迎えました。視覚に障害のない人よりも情報を手に入れることが難しいと言われている視覚に障害を抱えている人。その人達が本の貸し出しをするだけではなく、リクエストが寄せられた書籍を点訳などし、視覚に障害を抱えている人と情報の架け橋となるのも1つの重要な役目です。千葉県内唯一の点字図書館として「知りたい」「読みたい」という声にお応えしようと日々役目を果たしています。
同「千葉点字図書館」は、1951年に千葉市にて開館され、1994年に現在地の同四街道市に移転されました。点字図書は約3万冊、音声ボランティアで読み上げた録音図書は約3万9千冊が所蔵されています。リクエストが寄せられると、小説や学術書のみならず、雑誌や漫画も点訳などして所蔵させます。
同「千葉点字図書館」で点訳など作業を担当するのは、自身も生まれつき全盲で、同「千葉点字図書館」の点字指導員として点訳作業を担う男性ら職員のほか、2年間の養成講座を受講し登録が終わった約400人の点訳ボランティアです。
4~5人で作業を分担しても1冊の小説を点訳するのには約1年がかりだといい「とても時間がかかる作業。特に図やイラストは点字に変換することが困難で、代用でどんな風に伝えられると良いか毎回悩みます」と話しています。
それでも自身も生まれつき全盲で、同「千葉点字図書館」の点字指導員として点訳作業を担う男性は「視覚に障害を抱えているという理由だけで、読めない本や手に出来ない情報があるのはおかしい話です」と点訳ボランティアの役目を声を大にします。
「1人でも多く本を読む人がいれば私は点訳に起こす。これからも可能な限りの本を揃えて、“知りたい”という感情に少しでも寄り添うことが出来たら」と気持ちを込めます。
参考:視覚障害者の読書支援 点訳や音訳、情報架け橋に 四街道・点字図書館開館70年 千葉日報(2021年)
同「千葉点字図書館」は視覚に障害を抱えている人の利用のみ限定されているので、自身も生まれつき全盲で、同「千葉点字図書館」の点字指導員として点訳作業を担う男性は「点字図書館をそうではない人が利用することはないかもしれませんが、点字図書館という存在や、視覚に障害を抱えている人が必要なニュースや情報が求められず悩んでいるということに理解を深めて貰えたら」と言いました。
福岡県の田川点訳サークル『コスモス』
福岡県田川市にある点訳ボランティア団体「田川点訳サークル『コスモス』」は41年前から、新聞や書籍などの文章を視覚に障害を抱える人に対して点訳を行い、希望する人へ月1回点訳したものを郵送する活動を継続しています。
会長の女性は「これなら読んでくれそうな文章はないか配慮しながら、私たちも新聞や書籍を読んで、世の情勢を理解する学びの場所になっています」と述べます。
「田川点訳サークル『コスモス』」は、市社会福祉協議会が主催の点訳教室の卒業生を中心に結成されました。現在は40代~70代の11人の女性が、文章を選ぶことや点訳、郵送作業を分担して実施しています。全て無報酬となりますが、点字を打つ手作業のためには1枚5円程度の特殊な紙は、同田川市などから1年間で約1万枚支援を頂いています。
週1回、スマイルプラザ田川に集合し、編集会議をしたり、点字を打つ手作業などで約2時間かかります。会長の女性は「点訳ボランティアをする皆さん、ほぼ毎日数時間を要して、自分の家で点訳作業を行います。そうでもしないと時間が足りません」と苦笑いをします。
「田川点訳サークル『コスモス』」は毎年、複数の地元小学校に点字の出前授業を行うなど、子ども達と視覚に障害を抱えている人の関わり合いの居場所作りにも熱量を込め、会長の女性は「点訳教室を介して、若い世代に視覚に障害を抱えている人や点字が近く存在する様になって欲しい」と気持ちを込めます。新しい読者と点訳作業に携わる点訳ボランティアを随時募集中です。
参考:毎日数時間…点訳ボランティア41年 田川市の11人、記事選びから郵送まで 西日本新聞(2020年)
読者は高齢者が多く、リクエストされる文章は健康や料理だったり、相撲や旅に関連するイベント事やエッセーなどが好評だと言います。
郵送されて来る文章が「毎月1回の楽しみです」という男性「1週間位で全部読んでしまうので、次に届く文章が待ち遠しい」と述べます。眠れない夜の良きパートナーとして何度も点訳された文章を読み返し、そのまま眠りにつける読者も多くいます。
また1つ障害者の方に関わっている取り組みが、
関連記事に載せていますが、市民団体「古都鎌倉を愛する会」は、神奈川県鎌倉市に「鎌倉殿を支えた13人の重臣ガイドブック」の点字訳本を寄贈したそうです。「鎌倉殿を支えた13人の重臣ガイドブック」は同鎌倉市が鎌倉殿を支えた13人の重臣の人物像や縁の場所を紹介するべく作成したもので、同鎌倉市の公式ホームページでも公開されています。
点訳本は、鶴岡八幡宮境内に位置する「鎌倉殿の13人 大河ドラマ館」や鎌倉市役所観光課のほか、全国視覚障がい者情報提供施設協会が経営する「サピエ図書館」にも寄贈され、登録者は日本各地何処からでもダウンロードして利用可能だということです。
[鎌倉殿の13人]に関しては、OriHimeの記事で触れたので、またこうして障害のある方が関わっているのが嬉しかったです。
点字を点訳して文字起こしするのは、とても大変な作業だと思います。以前同じ様なボランティアの記事で、音訳ボランティアの記事を書きましたが、あのお仕事も物凄い時間と労力のかかるお仕事でした。こちらのお仕事も無給ですが、音訳ボランティアにしろ、こうやって視覚に障害を抱えている人の為に、色々して下さるお陰で、生活に楽しみが増える訳ですね。こちらのお仕事も感想とか下さったら、大変なお仕事でも励みになると思います。
大変かと思いますが、大切なお仕事、これからもこの点訳ボランティアの仕事の担い手が増えて欲しいなと思いました。
参考サイト
関連記事
「鎌倉殿」人物ガイドを点字訳本に 市民団体が市に寄贈 カナコロ(2022年)
99歳の点訳ボランティア 40年で290冊を点字に 「やりたいことがいっぱい」今日も誰かを元気に【和歌山発】 FNNプライムオンライン(2022年)
創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」、視覚障害者も楽しんで 西脇の中嶋さん、連載第1弾を点訳し図書館に寄贈 神戸新聞NEXT(2023年)
noteでも書いています。よければ読んでください。
コメントを残す