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こんにちは、翼祈(たすき)です。
音訳ボランティアとは視覚障害者や活字を読むことが困難になっている人に向けて新聞、書籍、雑誌、広報など、日常生活に必要な情報を写真や図表なども含めて「声音」に換えて伝える活動です。
テープへの録音、CD化など活動は多岐に渡りますが、音訳ボランティアの活動は無報酬で、高齢などを理由になり手が減り、「音訳は単なる読み上げではなく、修練に裏打ちされた技術が必要だ。忙しい若者は無報酬で取り組もうと思えないのでは」と現会員の方は危機感を募らせています。
今回はそんな音訳ボランティアの活動と現状に迫ります。
鳥取県の音訳ボランティア「ザ・スピリッツ」
鳥取県米子市を拠点に置いて、視覚に障害を抱えた人のための音訳ボランティアグループ「ザ・スピリッツ」が2022年で結成から30周年となりました。音訳ボランティアの会員は「障害を抱える人のため、何か役に立てたら」との願いを込めた声を発信し続けます。
「ザ・スピリッツ」は鳥取県広報誌「県政だより」の音訳ボランティアグループとして1992年に誕生。現在は30~70代の約30人の会員が米子市町村の広報誌や本を読み込んで、声音をCDなどに録音します。
広報誌の録音されたものは県ライトハウス点字図書館(同鳥取県米子市皆生温泉3丁目)がコピーし、視覚に障害を抱えた人の自宅などへ郵送されます。館長の男性は「職員での対応は困難で凄く助かっています」と感謝を口にします。本の音声は視覚に障害を抱えた人向けの会員制Webサイト「サピエ図書館」に掲載され、全国の人や図書館などへ発信されています。
CDなどの録音は音訳ボランティアの人がマイクに向かって文章を読み、録音を担当する人複数で、読み違えや読み落としがないか、一言一句を繰り返しチェックして聴き直します。27ページに及ぶ市報5月号のCDなどの音源制作は、6時間余り時間を要しました。単語の読み方などの下調べを合わせると、手間暇はさらに倍増するということです。
参考:【朝刊先読み!】視覚障害者のための音訳ボランティアグループ 今年で結成30年「ちょっとでも役に」 山陰中央新報デジタル(2022年)
聞きやすい音声にするため、感情移入せず、淡々と読むことを心がける代表の女性は「メンバーのおかげで活動を継続できた。これからも当事者の方に喜んでもらえるよう頑張る」と話しました。
沖縄県の音訳ボランティア「そよかぜ」
沖縄県沖縄市立図書館を拠点に待望の音訳ボランティア「そよかぜ」が発足し、本格的なボランティアに励んでいます。同沖縄市立図書館での視覚に障害を抱えた人への書籍の対面朗読の定期的な開催したり、沖縄市内各自治会での“出前朗読”の参加を呼びかけられるなど、メンバーの熱い想いに期待がかかっています。
「そよかぜ」は2020年1月、沖縄市社会福祉協議会の養成講座の受講生を中心に発足し、メンバーは現在10人。発足直後から新型コロナウイルスの感染拡大により月例活動が影響を与えましたが、細かくコロナ感染対策を練りながら発声法やデータを正確に声音出来る技術訓練を2020年度は8回、2021年度は6回繰り返し、参加者の対面朗読の希望に応じるために文芸書、沖縄の民話をメインに多くのテーマが用意されています。
会員は30代から70代で、職歴は多種多様。メンバーの女性は「障害を持つ人達の役に立てたら嬉しい」と「そよかぜ」のメンバーになった経緯を話しました。
また沖縄市社協の団体でも活動を重ね、那覇市から「そよかぜ」に参加しているメンバーの女性は「対面朗読でありがとうと感謝の言葉を頂けるのが何よりも大きな励ましになっています」と笑顔を向けました。月例会はメンバーの近況報告などもあり、いつも賑やかなムードに包まれます。
同沖縄市立図書館では現段階では、障害を抱える人への支援として「音声デイジー」「マルチメディアデイジー」「LLブック」など点字の本、さわる絵本、拡大読書機、読書サポート室、大活字本など効率化ため設備の拡充にも力を注いでいます。
参考:視覚障がい者に声で情報 音訳ボランティア「そよかぜ」本格始動 琉球新報(2022年)
「そよかぜ」の活動をサポートしている担当職員の司書の女性は「音訳ボランティアは待ち望んでいた活動。感謝しています。一人でも気軽に活用してほしい」と呼びかけています。
音訳でハザードマップ作成in京都府
京都府福知山市と福知山朗読ボランティア団体が共同で、視覚に障害を抱える人達が利用可能な「市総合防災ハザードマップ」CD付き音声版を完成しました。ハザードマップは福知山市が3年前に完成させました。避難する上での目印や防災情報の手にする手段、避難所での暮らし方、地区ごとの災害の被害想定と避難場所などを106ページの冊子にまとめ、全世帯に配りました。
「市総合防災ハザードマップ」CD付き音声版は、福知山市視覚障害者協会からの提案を受理し、2020年から製作を始めました。障害者福祉課と危機管理室で原稿を練り、福知山朗読ボランティア団体のメンバーが読み込んで録音し完成しました。
防災情報や地域ごとのデータなど冊子全体の膨大な内容を音声で制覇しています。「市総合防災ハザードマップ」には地図で明記されているデータも音声化しており、一例を挙げると「惇明地区は浸水想定エリアで5メートルから10メートル浸水する恐れが広範囲に到達します。福知山市役所に関しては5・4メートル、JR福知山駅に関しては5・9メートル浸水する恐れが起こる場合もあります」などと発信しています。
福知山市の公式ホームページで「市総合防災ハザードマップ」は公開され、希望者にはCD付き音声版も無料配布されています。
参考:視覚障害者のために防災マップの音声版作成 福知山市がCD無料配布 両丹日日新聞(2021年)
ハザードマップの音訳は、京都府内では城陽市に続いて2例目。障害者福祉課の男性は「視覚情報だけでは把握しにくかった部分を分かりやすくするようにしました。活用して避難意識を高めてもらえれば」と期待を寄せました。
音訳ボランティアのなり手減少で、存続の危機に…
視覚障害者らのために書籍などを音読して録音する「音訳」のボランティアが各地で減少し、存続が危ぶまれている。高齢化で担い手が減った上に、新型コロナウイルスの感染拡大で、後継者の養成講座を開けなくなったことが背景にある。ボランティア団体の解散も相次ぐが、今も音訳に頼る人は多く、「存続のため支援がほしい」と切実な訴えも上がる。
東京都調布市立中央図書館には、音訳用のパソコンやマイクを備えた「録音室」が設けられている。「後輩に技術を伝えたいけれど、なり手が少なすぎて……」。昨年末、小説の音訳を終えた女性はそうつぶやいた。
音訳は朗読とは異なって情感を込めずに淡々と読み上げ、写真やグラフも視覚障害者らの「目の代わり」となって言葉で表現する。正確に発音するため、アナウンサーらが使うアクセント辞典は手放せない。「準備には録音の3倍以上の時間を要する」という。
それでも活動は無報酬で、手弁当が基本だ。同館で活動する音訳者は高齢や親の介護を理由に辞める人が相次いだのが要因だが、同館の担当者は「コロナ禍で新たな音訳者を養成する研修も開けない」とこぼす。
凄いお仕事ではあるけれど、
凄く難しそうな印象を受けました。私はちょっとしたストレスとかで心身共にダメージを受けやすいタイプで、凄く心が揺さぶられるシーンは感動し、悲しいシーンは号泣して涙が止まらず、感情のばらつきがよくあります。なので、淡々と感情を入れずに読み続けることは、私には出来ないなと思いました。
視覚障害者の方には情報を知る大事なツールだと思いますが、なり手が少ない上に減少しているんですね。今不安定な世の中ですし、自分のことで精一杯で、助けたいという気持ちより、助けて欲しいという気持ちの人の方が多いと思うんですよね。私も1人では生きていけないと、漠然とですがそう思いますよ。
この素敵なお仕事を継承する人が増えて欲しいとは思いますし、このお仕事は世の中から消えて欲しくないお仕事の1つだと思います。まずはこのお仕事を世の中の人に知って貰いたいという想いから、この記事を書きました。
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豪雨被災地の視覚障害者に音声で生活再建情報…人吉のボランティア、市報朗読 読売新聞(2021年)
noteでも書いています。よければ読んでください。
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