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はじめに
私がこの題材を選んだのは、「障がい者の性」についての記事を書いているときで、諸外国の性教育事情などを調べたことがきっかけでした。
調べていて思ったことは日本の性教育の遅さと、法律の問題点でした
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「お宅のお子さんが私たちの動画を見ていますよ。」
ハフポスト日本版で、とても興味深い記事を見つけました。
これは、ニュージーランド政府が推進するキャンペーン「Keep It Real Online」の一環で制作されたCMで、実際のポルノスターが自宅に訪れ、対応した母親におそらく未成年である「あなたの息子が、ネットで私たちを見ている。」と伝えます。
そして、ポルノスターたちは、母親に語りかけます。
「息子さんは、恋愛関係の仕組みをまだわかっていないのでは?私たち、❝同意の話❞とかしないからね?いきなり始めちゃうから」
「僕は実生活では、絶対にあんなことしません」ときっぱり言います。
息子は、ポルノスターが自宅の玄関前にいるのを目撃し、硬直します。
そんな息子を見て、母親は伝えます。
「ネットで見ているものと、現実の人間関係がどう違うのか。あなたに話さなければならない時が来たみたい。」
これも性教育の一環でもあるのです。
「Keep It Real Online」のキャンペーンでは、ネットポルノのほか、いじめや暴力的なゲームなどオンラインの不適切なコンテンツの問題を取り上げた動画を配信しています。
諸外国の性教育事情
ニュージーランド政府のこのような「挑戦」は、日本では絶対にできないことだと思います。
では、諸外国の性教育事情はどうなっているのでしょうか?
フィンランドの性教育
海外でも特に北欧やヨーロッパ圏の性教育は発展していると言われていますが、フィンランドはその代表的な例といえます。
性教育が必修科目になっているフィンランドでは、中学校の学校の教科書で、異性愛や同性愛、マスターベーションの説明、ペニスの形は様々あること、などについてもふれており、授業を通して子供たちは性についての正しい知識を身につけることができます。
性教育を学べる「健康教育」という科目もあり、大学入試の科目にもなっていることからも、性教育がいかに重要な教育と考えられているかがわかるでしょう。
スウェーデン
国際セクシュアリティ教育ガイダンスで性教育は5歳から始まりますが、ヨーロッパにおける性教育のスタンダードとしては、『0歳から』と書かれています。
また生殖についてのことだけではなく、ジェンダー・アイデンティティに関わることだったり、包括的な性教育が義務教育と考えられ、変わってきています。
幼児期から性にまつわる教育をしているところもあるようです。プライベートゾーンの話や、性別に限らず「好きな色を選んでいいことや、男女関係なく好きなことをしていいんだよ」など、ジェンダー観を打ち破るような教育もされていますが、やはり個人差はあるようです。
さらにスウェーデンでは、教員の資格を取るための教職課程で必ず「性に関する学び」が必須になってきています。
ドイツの性教育
ドイツでは、小学5年生から「生物の授業」で性の知識を包み隠さず教えます。
授業では避妊薬や避妊具を、実際に手に取って見ることができるほか、ペニスの模型に実際にコンドームを装着する練習も行われるといったように、きわめて実践的な内容であるのが特徴といえるでしょう。性を「生物学」として扱っているので、生徒も真剣です。
ドイツの性教育では、性暴力についても学びます。「性行為はお互いの合意があってこそ」「イヤな時はイヤ(NO)と言っていいし、イヤ(NO)と言われたら触ってはいけない」ということも理解できます。
イギリスの性教育
子供を守る制度が徹底されているイギリスでは、下着に隠れている「プライベートゾーン」の大切さを伝えるポップな動画を作ることで、子供たちにわかりやすく説明しています。
子供を性被害から守ろうという共通理解があるので、子供たちも、どんなことが危険かというのをきちんと学べます。健全な関係と性暴力を比較できる児童書や書籍もあるので、子供たちが性の問題について学びやすい環境が整っています。
中国
幼児期から性について学べる教材があり、自分の体のこと、セクシュアリティと行動のこと、生殖のことなど、かなり幅広く学べるようなものが存在しています。
現段階で、中国全土で実施されているわけではないですが、小学生になると6年間の間で72時間、1ヶ月に一回ほどのペースで性に関する授業が組まれているところもあります。
タイ
タイとユニセフの教育省が発行している「包括的性教育」の報告書(中学生以上が対象)を見ると、2016年には「年齢にあった性教育が義務である」と追加されており、国も性教育に注力しています。
タイも日本同様に、保守的な考え方が少なくなく、これらを実践する上でどうしても権利や、ジェンダーについてなど、というところが抜けてしまうようです。
この報告書でも、正しい性教育をするのには、現段階ではハードルが高いと書かれています。
タイなどのアジア圏では、どうしても性教育が遅れがちに見えてしまいます。
では、日本の最新の性教育はどのように行われているのでしょうか?
日本の性教育
日本は先進国の中でも、一番性教育が遅れており、世界中から『性教育後進国』と呼ばれていることをご存じでしたか?
日本での性教育は、かつては小学校高学年になってから性教育が始まることが多かったですが、近年は低学年から性教育が始まります。
その内容としては、最も多いのは小学生の初経教育で、次に、中学校で二次性徴や性器の名称、思春期の心の特徴、HIV/エイズについて、高校で性交・受精・出産・中絶・性感染症について、保健の時間に学ぶことがあげられます。
ヨーロッパにおける性教育のスタンダードの『0歳から』を考えると、とても遅れていることが理解できます。
包括的性教育
2022年8月12日に、日本財団は「包括的性教育」推進を目指した提言書を発表しました。
現在の日本では、「包括的性教育」に力を入れていこうとしています。
包括的性教育とは、ユネスコなどが2009年に作った性教育についての指針、「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」の中で「コンプリヘンシブ・セクシュアリティ・エデュケーション」という言葉が使われています。
日本で2017年に翻訳したのですが、その際にこの言葉を「包括的性教育」と訳し、そこから広まってきました。
国際的に広く知られ、推進されている、「性に関するスキルや知識だけでなく、ジェンダー観、多様性、人権、幸福を学ぶ」ための重要な考え方のことです。
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こちらの記事の中でも、包括的性教育について詳しく説明してあります。
これからの課題
こちらの記事をご覧ください。
2017年に日本では、性犯罪に関する刑法が大幅に改正されました。
これは、明治40年の制定時以来の大幅改正で、110年ぶりの刑法大幅改正になります。
そして、日本の法律がいかに改正されることなくきているかを象徴することとして、注目を集めました。
しかし、改正された法律の中でも、欧米諸国に比べて厳しい性犯罪(特に強制性交等罪)の成立要件や、世界的に見ても最低レベルの「性交同意年齢」など、いくつもの課題が残されているのです。
※性交同意年齢とは、個人が性行為に同意する能力があると見なされる年齢の下限。(日本では13歳)
参考:「日本は性犯罪に寛容?~性交同意年齢は13歳、主要国で最低」110年振りの刑法改正でも残る課題
このように日本では、性教育だけではなく、性的同意年齢など、性に関する課題が多く残されています。
さいごに
世界の性教育を調べていくうちに、日本の性教育がどれほど遅れているのか、そしてどれほどタブー視されてきたのかが垣間見えてきました。
「障がい者の性」についての記事でもそうでしたが、日本はもう少し性について、寛容にそして真剣に考えなければならないと感じました。
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参考サイト
「日本は性犯罪に寛容?~性交同意年齢は13歳、主要国で最低」110年振りの刑法改正でも残る課題
海外(国際基準)の性教育 | 家庭ではじめる性教育サイト命育
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