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はじめに
今月24日、米連邦最高裁判所が、人工中絶を憲法上の権利として認めた1973年の「ロー対ウェイド」事件の最高裁の判決を覆したことが大きな波紋を呼んだ。
今回中絶を規制する判断を認めたことになり、今後は中絶の可否の判断が各州に委ねられ、米国としての統一基準が事実上なくなることとなり、世論は大きく揺れている。
高裁は昨年12月から、妊娠15週以降の中絶を原則として禁止するミシシッピ州の州法が、憲法違反にあたるか審理していたが、今回最高裁は「憲法は中絶の権利を与えていない」と結論付けたのだ。
ロー対ウェイド事件とは?
それまで違法とされていた妊娠中絶を女性の権利と認め、
人工妊娠中絶合法化の契機となった裁判。
原告のジェーン・ロー(仮名)は中絶を禁止する州法は違憲であると訴え、
「女性は妊娠を終わらせるかどうかを決定する権利を有し、よって中絶の権利は女性の基本的な権利である」として主張。
これに対し「中絶を禁止することによって母体と胎児の生命を保護することは州の義務であり、責任である」として、地方検事ヘンリー・ウェードは中絶を禁止する州法を擁護した。
連邦地方裁判所は、「中絶のほとんどのケース(母体の生命保護を目的とする以外の中絶手術)を犯罪とするテキサス州法は、憲法で保障されている女性のプライバシーの権利を侵害している」として違憲であるとの判決をくだし、1973年連邦最高裁判所もこの判決を支持した。
それまでアメリカでは人工妊娠中絶に対して厳しい法規制をしいていたが、条件つきながら人工妊娠中絶を初めて認めた画期的な判決であった。
連邦最高裁の前で「容認派」と「反対派」がデモ
人工中絶を女性の権利として認めた「ロー対ウェイド事件」判決が覆されたことで、連邦最高裁判所の前には、中絶の「容認」を訴える人たちと「反対」を訴える人たちの双方がアメリカ各地から大勢集まりデモを行なった。
容認派のバイデン大統領のコメント
バイデン大統領は最高裁の判断を受け、
と今回の判決を強く批判した。
反対派のトランプ前大統領のコメント
中絶反対派のトランプ前大統領は、連邦最高裁の判断を受けて、公式に声明を発表し、
として、自身の大統領の任期中に3人の保守派の判事を指名したのは、自身の功績だとして強調した。
もちろん、女性の権利を考えたら、中絶に「容認派」する人たちは多くいると思われる。
しかし、中には宿った命を守ろうと必死になっている「反対派」も少なくはない。
今月発表された最新の世論調査でも、中絶に対して「合法とすべき」と答えた人は61%だったが、「違法とすべき」と答えた人も37%いたとのことだ。
「半世紀にわたって人々に保障され、頼りにしてきた権利が失われることは、社会に深刻な影響を与える」と専門家が話すとおり、中絶を提供する医院には脅迫や嫌がらせがあるなど、既に医療現場には混乱も起きている。
性暴力での妊娠。中絶を認めなかった、ブラジルでの事件
性暴力の末の妊娠の中絶を認めなかった最近のブラジルでの事件を知っているだろうか?
当時11歳だった少女が、性暴力を受けた上に、妊娠してしまい、気付いた時には妊娠22週をすぎていた。
少女は病院で中絶手術を希望したが、医師は少女が妊娠22週であることから、「病院の院内規定では中絶手術は20週までしか行えず、裁判所による許可が必要」と告げ、中絶手術を拒否したのである。
司法判断に最後は委ねられたが、担当判事は少女の中絶を認めず、性暴力の加害者を「赤ちゃんの父親」と呼んだり、赤ちゃんを救うために中絶を我慢することを求めたり、命名するよう勧める姿が撮影されていた。少女は繰り返し「産みたくない」とうったえていた。
少女は一時シェルターで保護されていたが、
中絶手術の可否が決まらないまま自宅に戻っている。
ブラジルでは、生命の危険が伴うケースや、性暴力や近親相姦による場合を除き、妊娠中絶は犯罪とされているが、少女はどうなるだろうか?
性暴力で妊娠した少女が合法的に中絶するのを妨げた可能性があるとして、人権団体は判事の解任をブラジル司法評議会に要求し、司法評議会は調査を開始した。
参考:性暴力で妊娠した11歳の少女に「もう少し我慢を」。中絶を認めなかった判事に波紋 ブラジル | ハフポスト WORLD
おわりに
今回の判決を受けて、もし自分の身に起きたことだったらと考えた。道端で襲われたりして、最悪妊娠などしてしまった場合、アメリカでは中絶できないことになる。
これは、望んだ妊娠ではないし、犯罪である。なのに、妊娠中絶は許されない。被害にあった方は、これ以上にどう傷つけというのであろうか。
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参考記事
米連邦最高裁 “中絶は女性の権利”だとした49年前の判断覆す | NHK
性暴力で妊娠した11歳の少女に「もう少し我慢を」。中絶を認めなかった判事に波紋 ブラジル | ハフポスト WORLD
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