「認知の歪み」とその直し方

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 人間、生きていれば誰だって失敗の一つや二つはしてしまうものです。

 食器を落として割ったり、仕事で作った書類に誤字や脱字があったり、大事な物をうっかりなくしたり…そんな失敗をしてしまったら、ちょっと落ち込みますよね。でも、落ち込むだけでなく「自分はいつもこうだ」とか「本当に何をやってもダメなんだ」と自分を責めるような考え方をしてしまっていたら、それはよくない傾向かもしれません。

無意識のうちに現れる「認知の歪み」

 人間の思考・判断には常に何らかの「偏り」が見られます。特別に意識しない限り、私達は物事を自分の都合のいいようにとらえているのです。その例の一つが「認知の歪み」です。これは物事を誇張したり極端にとらえてしまう傾向のことで、多くのうつ病の患者にはこの傾向が見られるそうです。

自分を追い詰める10パターンの認知の歪み

1.全か無か思考

 全ての物事を極端にとらえてしまうこと。「成功か失敗か」「有意義か無駄か」「完璧か不出来か」のどちらかでしか物事を判断できず、どちらでもないという考えが持ちづらくなる。

例:提案した企画を上司に褒められたが、同時に改善点も指摘された。そこ以外は完璧なのだから改善すればいいという見方もできるはずなのに、改善点があるというだけで「この企画は失敗だ」と思ってしまう。

2.~すべき思考

 「〇〇ならばこうすべきである」「××であればこうでなくてはいけない」という風に、過度な理想や勝手な義務を押し付けてしまうこと。

例:「大人は他人に頼らず、自分の問題は自分で解決するものだ」という思い込みから、一人で悩みや問題を抱え込んでしまう。

3.過度な一般化

 たった一つか二つ程度の例を取り上げて、すべてがそうだと思い込んでしまうこと。

例:職場の先輩一人と不仲になってしまい、「自分はいつも人付き合いがうまくいかない」「これではきっと他の人にも嫌われてしまうだろう」と落ち込む。

4.心のフィルター

 悪い部分ばかりを取り上げ、良い部分に目を向けなかったり除外したりしてしまうこと。「選択的抽出」とも呼ばれる。

例:仕事のミスで上司から叱責されたが、それと同時に「君には期待しているから、次は頑張って」と激励された。しかし、最初の叱責だけが印象に残ってしまい、自分に自信が持てなくなる。

5.マイナス化思考

 良いことを素直に「良い」ととらえられなかったり、悪いことに置き換えてしまうこと。心のフィルターが良いことをシャットアウトするのに対し、こちらは良いことをネガティブに変換する作用といえる。

例:業績を上げて上司に褒められても「他の人に手伝ってもらえたから良い結果になっただけだ、自分一人では何もできない」「自分なんかが業績を上げたせいで先輩ににらまれたりしないか心配だ」と後ろ向きなことばかり考えてしまう。

6.結論への飛躍

 明確な根拠があるわけでもないのに、推測だけで結論を導き出してしまうこと。思い違いの元となり、いらぬ心配や無駄な苦労に繋がることが多い。

例:会社の外で同僚を見かけたので遠くから声をかけたが、無視されたため「自分はあの人に嫌われてしまっているのだろうか」と不安になる。実際は声をかけられたことに気付かなかっただけか、もしくは急いでいて返事をする余裕がなかったのかもしれない。

7.拡大解釈・過小解釈

 ネガティブな面は大げさに受け止める一方で、ポジティブな面はたいしたことがないととらえてしまう(あるいは逆にネガティブな面を過小評価し、ポジティブな面は過大評価する)こと。

例:電話応対が苦手なことで、「こんなこともできないなんて、自分は本当にダメな奴だ」と大幅に自己評価を下げてしまう。一方で書類作成が得意な点については「こんなこと誰だってできる」と卑屈になる。

8.感情の理由付け

 自分の感情だけを根拠にして、物事を結論付けてしまうこと。

例:「自分について考えるとこんなに憂鬱な気持ちになってしまう、だからきっと自分はダメな人間なんだ」と自分に自信をなくす。

9.レッテル貼り

 自分や他人に固定化されたネガティブなイメージを持ち、何事に対してもイメージと関連付けて考えてしまうこと。

例:同僚が自分を嫌っていると思い込んだ結果、同僚に「具合が悪そうだし、今日は早退した方がいいんじゃない」と声をかけられたことで「邪魔だと思われている」と落ち込んでしまう。実際はただ心配して早退を勧めただけである。

10.個人化

 本当は自分と関係のない物事に対しても、自分に責任・原因があると考えてしまうこと。

例:自分が企画を出した商品が売れなかったことに対して、「自分の企画が悪かったせいだ」と落ち込んでしまう。しかし、本当の原因は宣伝・広告の不足である。

認知の歪みを直すには

 最初に書いた通り、人間は誰だって必ず失敗をするものです。失敗をすれば、落ち込んだり悩んだりするのもまた当然のことでしょう。ですが、認知の歪みによって失敗を必要以上に重く受け止めてしまうと、心に大きな負担がかかってしまいます。

 反対に言えば、認知の歪みを修正すれば心の負担を減らせるということです。そして、そのための方法が「認知行動療法」です。

 認知行動療法では、自分が物事をどのようにとらえ、それが感情や行動にどんな風に影響しているかを把握して、少しずつ現実と認知の間のずれを修正します。簡単な認知行動療法の例として、「書く」ことで思考を整理し、見つめなおすと言うものがあります。

・最近あった出来事を紙などに書き出す

・その時どんな気持ちになったか、どんなことを考えたかを書いていく

・なぜそんな思考になったかを考える

・その出来事に対して、違う見方ができないか探してみる

・気持ちが楽になったり、何かに気付いたりして心に変化が現れたら、今の気分も文章として書いてみる

 例えば、仕事でミスをして落ち込んだ場合は、以下のように思考を整理します。

・仕事で作った書類にミスがあった

⇒ひどく落ち込んで、自分はやっぱりダメな人間なんだと思った

⇒落ち込んだのは上司に注意されたから

⇒ミスに気付かなかったのは自分ひとりでチェックしていたせい、上司は厳しく叱ったわけではなく注意しただけ

⇒軽く注意されただけなのだから深く落ち込む必要はないし、今度からは他の人に書類のチェックをしてもらえば大丈夫

 このように自分の気持ちが楽になる考え方を探して、思考を徐々にその方向へシフトさせていくことで心の負担を軽くします。

考え方を変えれば、気持ちも変わる

 一度付いてしまった思考の癖というものは、そうすぐに直せるわけではありません。ですが、少しずつ時間をかけていけば凝り固まった思考もほぐれて、柔軟な思考ができるようになるはずです。「どうせ自分なんて…」と思ってしまうことが多いなら、毎日の出来事と自分の思考を文章にして書き出す癖をつけて、それを定期的に見直してみるといいかもしれませんね。

参考元:認知療法活用サイト こころのスキルアップ・トレーニング 認知バイアス一覧で社会心理学入門

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