どうなる? 宅配業界の未来を考えてみる

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どうなる? 宅配業界

 2017年、宅配業界は大きな動きに飲み込まれました。急拡大するネット通販における荷物の量に現場の体制が追い付かず、宅配大手・ヤマト運輸の労働組合が、経営側に荷物量の総量規制を求めていることが報道されたのです。また、細かく指定されている時間帯別配達の維持も難しくなり時間帯の分類が従来よりも大きくなることや、宅配料金の値上げも決定されました。

 2016年の宅配便市場の総取扱個数は、前年比6%増の38億7000万個で、これは過去最高の数字でした。その中で、最大手のヤマト運輸は16年度(17年3月期)の「宅急便」の取扱数がおよそ18億7000万個となり、業界シェアは50%に迫る勢いです。ヤマト運輸にとって「宅急便」最大の荷主はアマゾンジャパンであり、その数15~20%(数量シェア)がアマゾンからの荷物であるといわれています。

 業界2位の佐川急便は、企業向けの配送サービスが主力事業で、ヤマト運輸ほどキメ細かな配送拠点網(ネットワーク)を持っていませんでした。そのため、2013年にアマゾンとの取引契約を打ち切ったのです。佐川急便の撤退により、業界首位のヤマト運輸は、アマゾンからの宅配荷物の急増を一手に引き受けることになったのです。

 しかし、年間約40億個もの荷物を無人ロボットやドローン(無人機)が確実に私たちに送り届けることは、当分先の未来なので、それを待つ余裕はありません。

 ヤマト運輸は日本の物流業界のあり方を大きく変えた企業の一つでもあり、「宅急便」という事業をゼロから作り上げた立役者です。しかしながら、報じられている宅配サービスの変更は、抜本的な解決にはなりません。必要なのは、最終の配達センターから各家庭・各企業とまでの「ラストワンマイル」の改革なのです。

同時性の解消

 カギを握るのは、「同時性の解消」です。それは、サービス業のセルフサービス化です。たとえば日本には、「自動販売機」という世界に類をみないセルフサービス文化があります。

 現在の宅配の仕組みは、ラストワンマイルにおいて、配達員と受取人とが、同じ「時間」と「空間」を共有して対面することを強いられています。この「同時性」の持つ非効率性をどのように解消し、セルフサービス化していくかが、今後の宅配業界に求められているのです。

 宅配業界最大の問題は、配送の時に宅配ドライバーと受取人とが、同じ時刻に宅配先の玄関という同じ場所に居合わせなければならないという、時間と空間の「同時性」が必要であるということです。

 この宅配業界における同時性は、どうすれば解消できるのでしょうか。現在でも配送先を自宅ではなく、コンビニや郵便局に指定することができますが、それだけでは増え続けるネット通販の荷物をカバーできません。

 そのために、ひとつ有望な可能性としては、日本全国に約250万台設置されている自動販売機のようなシステムです。たとえば、自動販売機のように誰でも24時間利用できる宅配ロッカーがあらゆる場所に設置されれば、再配達が少しでも減らせる可能性はあります。

 また、リアルに存在する実店舗を有効活用する道もあります。百貨店、スーパー、ドラッグストアなどの小売店の売り場の一部を宅配商品の受取所にすれば良いのかもしれません。とくに、百貨店の試着室などは、ネット通販で買った商品の試着もできるのかもしれませんし、スーパーやドラッグストアは店舗密度が高いため、地域全体をカバーできます。

 このような動きが進めば、宅配を「受け取る」という動きも変わってきます。宅配業界の未来では、私たち自らが「動く人」となり、あらゆる場所で、宅配の荷物受け取ることができるのかもしれないのです。

 

   参考

 松岡真宏、山手剛人(2017)『宅配がなくなる日 同時性解消の社会論』日本経済新聞出版社.

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