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こんにちは、翼祈(たすき)です。
これは2024年に明らかになった、現在の不登校の推定人数の統計結果です。
2024年10月31日、文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校調査」によりますと、2023年度、全国の小中学校で30日以上欠席した不登校の状態にある児童・生徒は、34万6482人で、2022年度と比較して4万7000人余り、率にして15%多く、11年連続で増加して過去最多を更新しました。
この中で、小学生が13万370人(2022年度比2万5258人増)で10年前の5倍に、中学生が21万6112人(2022年度比2万2176人増)で10年前の2.2倍に、それぞれ増えています。
また、高校生も3年連続増加して、6万8770人(2022年度比8195人増)でした。
小中とも高学年ほど不登校は多いですが、増加率は小学校低学年になるほど高い傾向で、文部科学省は保育園や幼稚園と小学校の接続に課題があるのではないか?と考えています。
その上で、病気による長期欠席も近年増加傾向で、この中に実質的に「不登校」となっている児童・生徒が含まれているという懸念もあります。不登校の児童・生徒の欠席日数は、「90日以上」が55.0%で最多で、「出席日数ゼロ」は3.1%でした。
参考:不登校の小中学生、全国で初の30万人超 コロナ禍以降で15万人増 朝日新聞デジタル(2024年)
不登校の支援では、フリースクールやオルタナティブスクール、メタバースなどがありますが、国が積極的に取り入れているのが、
「不登校特例校」から名前が変わった「学びの多様化学校」です。
私の住む福岡県でも、開校済み、2025年に開校というところが分かっているだけで、4ヵ所あって、県立で導入するところもありますし、既に来年に向けて、願書を受け付けているところもあります。
「不登校特例校」(学びの多様化学校)は、世間的にも関心が高く、色んな都道府県で導入されていますし、私もこれまで5つ、この話題を取り上げて、その記事がよく読まれたりすることで、
「不登校は本人だけではなく、家族など多くの人に関わってくる問題だし、今は私の頃と違って、無理やり学校に行かせない親御さんも多いみたいだけど、それだけ悩んでいる人が多い問題なんだ」
と、感じています。
私も大学時代、不登校でした。不登校のまま中退し、そのまま約10年間、引きこもりに移行しました。
県外の大学に行っていたので、両親など、頼る人が近くにいないことで、非常につらい、不登校でした。
そんな不登校ですが、実は不登校だった方が、ある健康問題を抱えていることが分かりました。
子ども達の心身の成長を診察する健康診断は、医師が毎年学校に訪問し、体重や身長、骨格に歪みが無いかなどを確認し、虫歯があったと言われる人も多いかと思います。
では、学校に来られない子ども達は…?
不登校を経験した子ども達225人を対象に実態調査を行うと、健康診断を「毎年受けられていた」のは1割程度に留まり、「受けた時期と受けてこなかった時期がある」と回答したのが3割、「ほぼ毎年受けてこなかった」と回答したのが4割でした。
不登校で学校に行けない子ども達が35万人に迫る現代社会で、健康診断を受けてこられなかった子ども達も多くいる現状です。中には健康診断で発見されるはずの病気を見落とされ、一生涯に影響を被ってしまった人もいました。
今回は、不登校だった子ども達が大人になって見つかった病気、その支援などについて紹介します。
かつて不登校を経験した子ども達。大人になって生じた身体の異変とは?
不登校の子ども達の健康問題を研究する、福岡県北九州市に住む大学院生の女性は、小学3年生から中学3年生まで学校に行けませんでした。
小中学校の健康診断では一般的に、体重や身長以外にも、口の中の病気、心臓疾患、栄養状態、骨格の発達などを診察し、異常が分かると病院の受診を促します。
女性は、学校に行けない日が断続的に続き、不登校の7年間、健康診断をほぼ受けてきませんでした。
最初、歯に異変が現れました。中学3年生の時に10本以上の奥歯が虫歯になり「口腔崩壊」に陥りました。上下左右奥歯の神経全てを摘出した影響で、今も奥歯の根元が膿んでいます。
さらに最も深刻な身体の症状が、背骨の異常でした。20代になってから、肩や腰の鋭い痛みに苦しみ、整形外科を受診すると背骨が曲がってしまう、中等度の「側弯症」と診断を受けました。
女性が身体を前に倒すと、背中が向かって右側に大きく傾いています。
「側弯症」の診断は、小中学校の健康診断で医師が確認する項目に書かれています。もし適切に健康診断を受け、成長期に発見できていれば、コルセットで完治できる病気でした。
成長期を過ぎてしまったので、完治するには背骨にボルトを入れる高度な手術を受けるしかありません。女性はリスクを考えて手術はせず、週に数回、整形外科までリハビリに行っていますが、「その場しのぎの対応」だといいます。
レントゲン撮影をすると「かなり酷い側弯だね」と初めに言われて、次に医者には「今まで小学校や中学校の学校の健康診断で何か言われてきたでしょう?」「どうしてコルセットを巻いたりとかして、矯正しなかったの?」と何度も尋ねられました。
女性は背骨が曲がっている自覚はなく、「側弯症」の知識もありませんでした。
女性は、「学校には不登校で行っていませんでした。そのことで健康診断も受けていませんと返答します」と、吐露しながら説明するといいます。
「側弯症」の影響で、常に肩こりや腰痛に常に悩まされ、長い時間座ったままの体勢ができません。2023年十二指腸の病気も発覚してから嘔吐が止まらなくなり、体重が10kg落ちました。「側弯症」の影響で、腸が圧迫されたことが原因の1つだと想定されています。
女性は、痛みに耐えながら暮らしています。
参考:WEB特集 健康診断を受けられない 不登校児に健康リスク|NHK(2024年)
「学校の勉強はこれからの人生でいくらでも取り戻せると私は思いますが、やはり過去の健康な自分は取り戻せませんね。背骨が曲がったり、歯の神経を取ったりというのは昔には戻りません。不登校の子ども達の健康問題は非常に大きな問題だと思いますが、これまで見過ごされてきました。非常に深刻な課題だと思います」
と述べ、
「電気の走る様な痛みがいきなり襲ってきます。鋭い痛みで夜中に何度も起きてしまうこともあります。成長期に『側彎症』の診断を受けて、コルセットでの治療を受けていれば、ここまで背骨は歪みませんでした」
と後悔しています。
ここからは、不登校の人の健康診断に向けた支援の議論の話について、取り上げます。
2024年5月、
健康診断を受けようとすると、複数の病院を回らなければならない上医療保険の対象外で費用負担も重いことを受けて、神奈川県横浜市にある「フリースペースたんぽぽ」を運営するNPOは、
不登校の子ども達が学校の外で健康診断を受けられる様に学校外の病院でも費用の負担がなく支援して頂きたいと、約1000人分の署名を集めて市議会の事務局に請願を提出しました。
横浜市にある小中学校の児童・生徒は毎年5月頃に医師を学校に招いて健康診断を受けていますが、不登校の子ども達は健康診断を受けることができません。
NPO法人「フリースペースたんぽぽ」の理事の男性は、
「不登校の子ども達は不登校なことで追いつめられ、体調を悪化させるなどといった健康を害するリスクが非常に高いです。迅速に市議会で改善して頂きたいです」
と訴えました。
参考:“不登校の子どもに学校外での健康診断を” 要望署名提出 横浜 NHK NEWS WEB(2024年)
簡単には片付けられない問題
不登校になる理由は色々あると思います。
友人関係の悩みやいじめ問題、起立性調整障害など病気が隠れていたり、交流するSNS内での誹謗中傷、学校の授業についていけない、学校に馴染めない、何となく学校に行くのが嫌だ、とか…。
私は大学時代、2つの理由がありました。
友達がいないことで、授業で分からないことがあっても、聞ける人がいないことで授業についていけなかったこと。
本当は1年間最低でも寮にいなくてはいけなかったのに、相部屋の人に嫌がらせを受けていたことで、半年で退寮し、一人暮らしを始めるも、大学に行くと、「勝手に退寮したのに、大学に来ているなんて厚かましいよね」と、寮にいた数名で陰口を聞こえる様に言われたこと。
中学校時代のいじめの時は両親が守ってくれて、1回も休まず、皆勤賞で卒業しましたが、大学は近くに家族など頼れる人がいなくて、孤立して、昼夜逆転して、不眠症になり、不登校になってしまいました。
私は学校の健康診断で、「側弯症」のことを診ているのは知っていました。2023年に下記の記事を書いたからです。↓
不登校は1つの要素だけではなく、色んな要素が重なり、絡み合っていることで、それが解消されない限り、学校に行くこと、まず家から出ることも難しくなると思います。
それでも、不登校であっても、健康問題は誰でも、ずっと一生付きまとう問題。
不登校だったことで、色んな病気を将来大人になって、誘発してしまうリスクがあることは、非常に悲しいことです。
学校に行けない子ども達を学校に無理やり行かせることは、経験者の私にはお勧めできません。
学校に行かなくても、今は代わりとなる居場所は他にもあるのだからー。
代わりとなる居場所ができたとしても、そこで健康診断を受けることは難しいと思いますし、不登校であっても、健康診断を受けられる、そんな支援を、実際にそれで病気を誘発するリスクがあることを体験している方が声を上げていますし、国をあげて、もっと推し進めるべきだなと思いました。
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