「ビジネスケアラー」。仕事と介護の両立ができず、介護離職する人が多い、社会問題。

ビジネスケアラー

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

皆さんは、「ビジネスケアラー」という言葉をご存じでしょうか?

働きながらご両親などの介護をする人たちを意味する言葉です。

ビジネスケアラー」の数が毎年増え続けていて、現在多くの人が「他人事」とは言えない状況にまで陥っています。

経済産業省によりますと、介護離職をする人は毎年10万人前後ですが、2030年には「ビジネスケアラー」は、将来推計が家族を介護する人の内の4割に該当する318万人に及ぶという試算を、2023年に公表しました。

特に2020年時点で45~49歳の年齢層は、10年後の2030年には6人に1人が介護を担当することが見込まれています。

2015年の232万人から15年間で「ビジネスケアラー」の人は86万人も増加し、労働生産性の低下などに伴う経済損失額は、9兆円に達するとされています。

団塊世代が75歳以上となって、介護が必要になる人が急増する「2025年問題」が迫る中、「ビジネスケアラー」の担い手の中軸は、働き盛りの40~50代の世代が家族を介護する「ビジネスケアラー」へのサポートが喫緊の課題となっています。介護による仕事を辞めることや労働生産性の低下などを阻止するには、どんな対策が必要になってくるのでしょうか?

今回は働き盛りの世代が直面する、「ビジネスケアラー」という社会問題について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

「ビジネスケアラー」の当事者が直面する話

「家族の介護が始まった時に、どこにまず連絡すれば専門家に会えるか、ご存知ですかー?」。

2024年2月初め、長野県諏訪市にある精密機器メーカー「セイコーエプソン」が開催した管理職向けの研修会です。講師からの問い掛けに、この日研究会に参加したおよそ470人の6割超が「知らない」と回答しました。

講師は、仕事と介護の両立サポート事業を展開する「チェンジウェーブグループ」取締役の酒井穣さんで、30年以上に渡る母の介護経験を持ちます。介護への知識を持たないまま介護に突入し、介護離職やキャリアの中断に追い込まれない様に、「介護リテラシーを学んでおくことが大事です」と語ります。

「ビジネスケアラー」の8割が「両親の介護に専念するより仕事を頑張りたい」と考えていることなどが研修会の中で紹介されました。部下から相談を受けた時に、「どんなキャリアを歩みたいかを尋ね、そこに近付けること」「家族が住む地域にある地域包括支援センターへ連絡し、介護のプロへの相談を促すこと」などとアドバイスしました。

近くご両親の介護が始まる可能性があるという男性は研修会を終えた後、ケアマネージャーや地域包括支援センターの役割に関して電話で確認しました。「自分の介護の負担を下げるには、初動が大事だと思いました。専門家に迅速にアクセスしたいです」と述べました。

「ビジネスケアラー」の急増を見据え、より柔軟な働き方を導入する企業もあります。2022年春、東京都渋谷区にあるIT関連会社「MIXI」は、それぞれの事情に合わせ、部署ごとにオフィス勤務やテレワークをする頻度が決定可能な「マーブルワークスタイル」を取り入れました。「社員は子育て世代が多いですが、ご両親の介護を心配する声も増えています」と、担当者は説明しました。現在はおよそ40人が新幹線や飛行機を使って出勤するという様な、遠方に暮らしながら仕事をしています。

マーケティング職の女性は、母が1人暮らしをする愛知県岡崎市の実家近くに東京都内から移住しました。母が父との死別で体調を崩したり、病気の影響で歩行などが困難になったりしたことが移住のきっかけでした。介護保険でデイケアなどを利用しつつ、頻繁に帰省して兄弟で母の世話をしていましたが、「仕事が手に付かないこともありました」と吐露しました。

移住した後も同じ業務を担当し、テレワークを基本に、1ヵ月に1回ほど東京都内の会社に出勤しています。女性は「母と一緒に出かけたり、孫の顔を見せに行ったりと、近くにいる安心感は大きいです。仕事の成果にも結び付き、将来を考えられる様に変わりました」と語りました。

参考:経済損失9兆円の試算!増える“ビジネスケアラー”(1)対策進める企業は NHK首都圏ナビ(2023年)

介護を開始してから「仕事のパフォーマンスが低下した」と回答する「ビジネスケアラー」は3割超にも達します。2024年3月に、経済産業省は、企業が励むべき仕事と介護の両立サポート策をガイドラインに総括する方針でいます。介護保険外サービスの充実も図りたい狙いです。

仕事と介護の両立サポート事業を展開する「チェンジウェーブグループ」取締役の酒井さんは、「人類史上かつてないほどに超高齢化社会が進み、誰もが『ビジネスケアラー』になり得る状況にいます。休みやすい制度の導入も大切ですが、仕事をどう励んでいきたいのかをベースに、介護体制を構築していくことが重要だと言えます」と語ります。

「ビジネスケアラー」が抱える悩みが分かるデータ

腰の負担を軽減するアシストスーツ「マッスルスーツEvery」などを製造・販売する株式会社イノフィスは、仕事と両立して介護をする「ビジネスケアラー」を対象に、「仕事と介護の両立編」と、「ビジネスケアラーの身体的負担」をテーマにした実態調査を行いました。

介護をすることで身体的負担を感じている「ビジネスケアラー」に、身体的負担が、仕事と介護の両立の支障となっているかどうかを質問しました。具体的な負担を聞いた結果、43.6%の方が「経済的不安がある」と答えました。また、「思う様に身体が動かせず、仕事のパフォーマンス力が落ちた」、「身体がキツく、仕事に集中できない」、と答えた人は同率23.7%にも達しました。

「仕事と介護の両立が可能な制度や環境の整備された会社があれば、転職をしたいと考えていますか?」と質問すると、「すぐにでも転職したいと考える」と「転職を検討したい」を合算すると55.5%に達し、半数以上の方が転職を検討したいという結果でした。

介護による身体的・精神的負担に関して周囲の人に相談したことがあるかを質問すると、5割を超える方が兄弟など家族に相談していて、ケアマネジャー、友人には3割程が相談すると回答しました。その反面、身体的・精神的負担に関して相談をしているのは会社の同僚へは16.5%、会社の上司は10.2%、人事・総務では4.2%に留まるという結果になりました。

画像引用・参考:ビジネスケアラーの6人に1人が仕事との両立に悩み「離職を検討」。プレゼンティーズムとパフォーマンスが低下。精神的・身体的負担を上司に相談しているのはわずか1割 PR TIMES(2023年)

「ビジネスケアラー」の仕事と介護の両立が懸念される中で、多くが指摘されていないのが「介護による身体的負担の影響」です。介護は肉体的な作業が多いことで、色んな身体への負担が生じます。

実態調査に答えた「ビジネスケアラー」のうち、63.4%の人が身体への負担やダメージを感じていると答えました。具体的な負担の内容を質問すると、50%以上の回答者が腰痛を挙げた以外にも、肩こり、関節痛、筋肉痛と答えました。2002年に福島県立医科大学整形外科と京都大学医療疫学分野が共同して実施した腰痛に関連する調査によりますと、20歳~80歳の男女の腰痛有病割合は30.6%という実態調査もあります。

さらに、具体的な身体的負担の深刻度に関してそれぞれの負担別に質問しました。「じっとし座っていても強く痛む」と「じっと座っていても少し痛む」を合算すると、腰痛で58.7%、肩こりや関節痛ではそれぞれ69.4%、68.7%となり、どの負担カテゴリーにおいてもじっと座っていても痛みを感じている人が半数以上という結果となりました。

身体的負担の内容別に「仕事と介護の両立に対する支障」「日々の暮らしへの支障」「精神的負担を感じているか」を質問すると、どの質問も腰痛が最も深刻である症状であることが明らかとなりました。特に、腰痛が日々の暮らしと仕事と介護の両立に支障があると回答したのはおよそ8割と突出して高い結果になりました。

身体の資本である腰が仕事や日々の暮らしに与える影響は、それ以外の症状に比較しても大きく、腰痛を感じてしまうと影響が多岐に及んでいることが明らかになりました。その上で、身体的負担によって精神的な負担を感じるかを質問すると、腰痛は58.0%とおよそ6割の方が精神的負担も感じているという結果になりました。

身体的負担を感じている「ビジネスケアラー」に限って、身体的負担が日々の暮らしに及ぼす影響と具体的な内容を質問すると、最も支障があると答えたのが睡眠障害(42.2%)でした。続いて着替え(39.8%)、近場への外出(37.0%)と続き、回答した人のうち82.5%は日々の暮らしに支障があると答えました。

負担の有無を限定せず、実態調査の全対象者に介護による精神的な負担を質問すると、およそ半数が「不安感がある」「イライラする」と答えました。また、3割が「仕事のやる気が出ない」「不眠症になった」と答えました。「精神的負担を感じていない」と答えたのはわずか19.2%に過ぎませんでした。

画像引用・参考:ビジネスケアラーの63.4%が腰痛など「身体的負担」ありと回答。半数が「イライラや不安感」3割「眠れない」など日常生活に支障。治療や服薬などにかかる平均費用は月8,789円 PR TIMES(2023年)

目を背けていた

AKARIでは父がどれだけ老いているかの話を色々して来ましたが、最近の状況をお伝えします。

私はいつも寝るのが、0時半位なのですが、その頃には眠くなる様に、23時半には眠剤を飲む様にしています。23時半がベストなタイミングで、これより遅くなると、眠剤が身体に残り、仕事中眠くなるなど、支障が出ます。

眠剤を飲む頃は父が休みの日はまだテレビを観ていましたが、最近は0時過ぎには観るのを止めて、お風呂に入って、そのまま寝る様になりました。

数ヵ月前まで、2〜3時過ぎまでテレビを観るために起きていて、それからお風呂に入って寝る。それからしたら、良い結果だと思いたいですが、そうも言えないのです。

父は早く寝る様になったのに、過眠が治らず、14時過ぎに起きて来て、昼ご飯を15時半過ぎまで食べていることもあります。

父はちょっと作業をするとすぐ疲れて、ずっと寝ています。「今から仮眠します」と言いますが、ずっと寝ています。起きている時間の方が、短いです。

以前できていたことに、始めるまでに時間がかかり、始めると、以前ならすぐ終わっていたものにも時間がかかります。

仕事に行く時、「マスクをしているから」とヒゲも剃らず、身なりもきちんとしないまま、仕事に行く様になりました。

寝過ぎて、どんどん行動が鈍くなり、歩き方も足が上がらず、シャカシャカ上がらない歩き方をする様になりました。

この間支援員さんとの面談の時に、「ご両親もこれから介護とかそういうことが出てくる時期だし、しっかりしないとね」と言われて、父のことを「まただよ」と思いながら、事実から目を背けていることに、気付かされました。

私もいずれはこの記事に出てくるような、「ビジネスケアラー」に嫌をなしに入ってくる時期がきます。それまでに、自分自身もしっかりしなくてはと、考えさせられた今回の記事でした。

関連記事

増える“ビジネスケアラー”(2)仕事と介護の両立に「保険外サービス」が頼みの綱? NHK首都圏ナビ(2023年)

“ビジネスケアラー”どう支援する? サクサク経済Q&A(2023年)

介護と仕事 両立のポイント“ビジネスケアラー”予兆がわかるチェックシートも NHK首都圏ナビ(2023年)

参考サイト

noteでも書いています。よければ読んでください。

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左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎、右手人差し指に汗疱、軽く両膝の軟骨すり減り、軽度に近いすべり症、坐骨神経痛などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。