認知症とともに生きる〜どんはれの目線〜

認知症

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起こしてください!!

「食事のときは必ず起こしてくださいって言ったでしょ!」と怒るタナカさん(仮名 80代女性)。怒られてポカーンとした顔をしてしまった私。

これは社会福祉士取得のため特別養護老人ホームに実習に行ったときのお話です。

タナカさんは私を含め、介護福祉士さんたちに合計6回、声をかけられています。

タナカさんが寝ている部屋に入り、「ご飯ですよ。タナカさん、起きてくださーい」とはっきりと聞こえるような声で、数回声をかけ、なんならタナカさんの腕を軽く触ったりして優しく起こそうとしました。

しかし、タナカさんは起きませんでした。声かけに気づいていないというよりは、声かけられたこと自体をすっぽりと忘れているようでした。

介護福祉士さんが「タナカさん、何度も声を掛けましたよ」と言ってくれました。

タナカさんは若い頃、社会福祉士のようなお仕事をされていたようです。ご近所のお困りごとの相談によく乗っていたと話してくれました。さらに看護師になりたかったそうですが、結婚生活を維持していくためにその夢を諦めたそうです。もっと勉強したかったと言っていました。

このように、タナカさんをはじめ、個性豊かな利用者さんたちが暮らしている特別養護老人ホーム。

特別養護老人ホームとは

「特別養護老人ホーム」は、地方自治体や社会福祉法人の運営による、公的な老人ホームです。老人福祉法上の呼称であり、「特養」と呼ばれることもあります。また、介護保険法では、「介護老人福祉施設」と呼ばれています。原則として、「要介護3以上」の方が入居できる介護施設であり、24時間にわたって、介護サービスを受けられます。民間の有料老人ホームと比較して、費用が安いことも特徴です。

 

厚生労働省の特養の定義

厚生労働省の資料によると、「特別養護老人ホーム」は、「要介護高齢者のための生活施設」であり、「入浴、排せつ、食事等の介護、その他、日常生活の世話、機能訓練、健康管理、および、療養上の世話を行う」介護施設と定義されています。

引用:シニアのあんしん相談室 老人ホーム案内

https://kaigo.soudan-anshin.com/guide/cate/tokuyo/?ID=bpfnw45394&gclid=CjwKCAjw4qCKBhAVEiwAkTYsPBDT4Mhwldcup2PJ3v-FuoO8iMRQT5lVefMY_Q2Zh9of4VmKX03jCBoCIawQAvD_BwE

特別養護老人ホームに暮らす利用者さんたちの日常を観察して、私が感じたことを皆さんにご紹介したいと思います。

働くヤマダさん

一生懸命に窓を拭き続けるヤマダさん(仮名 70代女性)はもともと宿泊業をしていたそうですじっと椅子に座っているよりは何か体を動かしている方が好きらしく、介護福祉士さんと一緒にお部屋の掃除機をかけたり、テーブルを拭いたり、常にお掃除をしています。とても働き者だったのでしょう。現役で働いているときは、割烹着を着て掃除をしていたと私に話してくれました。

あるとき、介護福祉士さんの真似をして足の悪いサトウさん(仮名 80代女性を椅子から立ち上がらせようとするので、私が慌てて「ダメダメ、ヤマダさん。それは免許がないとできない仕事ですよ!」と言うと納得してやめてくれました。

結核になる!!

お掃除するヤマダさんの特性を活かそうと私がヤマダさんを褒めます。

「ヤマダさんは働き者ですね。雑巾を横でなく、縦に絞るところからしてお掃除の基本ができている」と言うと、ヤマダさんは照れたように微笑みます。

しかし、ヤマダさんが床の絨毯を箒でザッザッとはわくと、タナカさんが「埃が立って結核になる!と言い出しますこちらを立てれば、あちらが立たず、難しいなぁと感じながら、結核かぁ、ハウスダストアレルギーとかじゃないんだー」と私は心の中で呟きました。

私も清掃の仕事をしていたので、将来もし認知症になったら、ヤマダさんのように掃除をし続けるかもしれない。そして、タナカさんのように「ああ、コロナが怖い、コロナが怖い」と言って、未来の若い介護福祉士さんに「コロナって昔流行った病気でしょ。今は〇〇なのに」と思われるかもしれません。

想像するだけで苦笑いが浮かんできます。他人事ではないなと思いました。

家に帰りたい

車椅子に乗っているタカハシさん(仮名 80代女性)は、「ちょっと車で家まで送って欲しい」としきりに言ってきます。「今は運転できる人がいないから」とか、「タカハシさん、今は息子さんたちのお店が忙しいから帰れませんよ」と言い聞かせても、「帰りたい」と言います。

私に、壁に誰が帰る日なのか『表』にして貼ってないかと尋ねます。私は心の中で「今どき、そんな風に『表』にして壁に貼らないよなと呟きながら、「壁に『表』は見たことないですね〜」と言ってどうにかタカハシさんの気を逸らそうとします。

タカハシさんは窓から道路を走る車を眺めては切なそうな顔をしています。私の想像ですが、今でこそ車椅子を使用しているタカハシさん、多分、元気なときは自分で車を運転してどこまでも好きなようにバンバンと走っていたのだと思います。

1日が長いよ

ここにいると1日が長いよ」と言うイトウさん(仮名 80代女性)。歳をとるに連れて時間の流れが早くなるとよく聞きますが、老人ホームで流れる時間は思いのほかゆっくりです

夜眠れないと夜勤の介護福祉士さんの負担が大変になるので、昼間はしっかりと起きていてもらわないと困ります。

実習先の施設でも、体操や、いろいろなレクレーションを行っていますが、あまり長い時間レクレーションをやってしまうと利用者の方たちが疲れてしまいます。また、顔を合わせるメンバーが毎日同じなので、話すこともなくなっていくのでしょう。おしゃべりもせず、椅子に座ってただひたすらテレビを観る時間が長くなってしまいます。

もっと利用者の方たちが楽しめることがないだろうかと考えますが、介護福祉士さんの負担を考えるとなかなか難しいようです。ただ、私が行った実習施設は積極的に実習生を呼んでいたので、利用者の方たちに外からの刺激をいろいろ与えようと画策しているように見えました。

終わりに

認知症の症状の現れ方は千差万別、一人として同じ人はいないのではないかと感じます。

以前に母の認知症の記事でも書きましたが、人によって正常に機能する部分認知能力が低下している部分が、まるでマーブル模様のように混ざり切らず、両方脳の中に存在しているので、認知症を患っている方の対応はとても難しいです

下手に嘘で誤魔化そうとすると、嘘だとバレたときに信頼関係が崩れてしまう恐れがあります

そのような人びとを少ないスタッフでまとめて介護するのは本当に大変だろうなと思います。私も母一人でてんてこ舞いです。

ただ、実習が始まって一週間くらい経つと、何を言っていたかわからなかった利用者の方たちのお話の内容がなんとなくわかるようになりました。誰かとコミュニケーションをとるだけで、脳を活性化する作用があるように思えました。

いろいろな背景や、個性を持った利用者の方たちが楽しめる娯楽か、簡単な手作業など何かできることがあればいいなと思いました。

レクレーションは介護保険の算定に入っていないので、レクレーション加算なるものがあってもいいのではないかとも思います。

誰もが歳を重ねても生き生きと暮らせる社会にするにはどうしたらいいのか、日々模索することの必要性を感じました。

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