ロボットと認知症〜アトムの心(前編)〜

ロボット認知症

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はじめに

弱いロボット⁉︎〜人とロボットとの共存〜

「弱いロボット⁉︎〜人とロボットとの共存〜」をご紹介しました。今回は、その記事を踏まえてロボットと認知症患者の介護に注目して現在の状況をご説明しようと思います。

癒し効果

「そろそろ家に帰らせていただきます」〜認知症 夕暮れ症候群の対応法〜

こちらの記事を読んでいただくとわかるように、認知症患者は夕方になると帰宅願望が強まり、不穏になることは介護者の間ではよくある出来事と認識されています。その対応法をいろいろご紹介しました。さらに、現在ではロボットセラピーというものがあり、その癒し効果が注目されています。

ある試み

2018年9月、東京都江戸川区にある「株式会社ケアサービス デイサービスセンター大杉」にレクリエーション用アイテムとして、ロボット「A TOMが導入されました。

その名の通り、このロボットは手塚治虫の「鉄腕アトム」を模して造られており、日常会話に歌や踊り、クイズやゲームなどを楽しむことができる「コミュニケーション・ロボット」です。

認知症患者は、周囲の状況が理解できずに不安な気持ちになることがあります。「ATOM」と遊んでいると不安げな表情が和らぎ、笑顔や、落ち着いた様子が見られたということです。

また、お客様のご家族から「おばあちゃんが、家に帰ってからも楽しそうにATOMの話をしている」という話も聞く、とも話してくれた。ATOMは現場から離れた場所でも「コミュニケーション」を生み出していた。

引用:AIロボットは認知症介護を救うか?ロボット「ATOM」の試み

という、評価も受けています。

夕暮れ症候群の対応法には、ご本人が好きなことや、夢中になれることをしてもらって楽しい時間を過ごしてもらうことがとても有効です。

行動パターン分析 見守り支援

認知症介護においてコミュニケーション・ロボットが果たす役割は癒し効果にとどまらないと社団法人認知症高齢者研究所の代表理事を務める羽田野政治氏は語ります。

今後、認知症を発症する高齢者は増加傾向にあり、かなりの高確率で発症する暴言や妄想などの「行動・心理症状」に家族や介護者がどう対応するか大きな課題となっています。

人が人の生活を24時間見続けるのは、実質、不可能です。そこでAIによる推論や分析能力の『機械知』を利用し、それを経験や体験、知恵を含む『人間知』とコラボレーションさせてケアしていかなければいけない」(羽田野氏)。

引用:AIロボットは認知症介護を救うか?ロボット「ATOM」の試み

具体的には、誰もがしている毎日のルーティンワーク(例えば、朝起きて歯を磨き、いつ服を着替え始めるかなど)をIoTセンサーで感知させ、環境やバイタル計測により評価パラメーター化して行動を記憶させます。それを元に、センサーと連携したAIによるチャットボットが「もうすぐデイサービスのお迎えが来るから、着替えましょう」「そろそろお薬を飲む時間だよ」などと教えることができます。

この行動パターンが崩れているときが何らかのストレスがかかっている状態であると考えられます。

「変な夢を見たのか」「金銭的な悩みがあるのか」「家族から何か言われてストレスがかかったのか」など、原因は様々考えられ、そこで、チャットボットが「いま、何しているの?どんな気持ちなの?何がしたいの?」と話しかけ、ニーズを探っていきます。ホットスポット分析や回帰分析を使って認知症患者たちの不穏な行動を解析し、その行動が起こりやすい場所や、気温や湿度、気圧などの条件から予測することができます。

「夕暮れ症候群」の記事にも書きましたが、夕方の不穏な行動に対して根本的な解決方法はありません。このような対応法があり、それをだましだましやっていくしかないとも書きました。しかし、このシステムがあれば、対応法だけではなく、不穏行動を起こりやすい原因を予測し、予防につなげることができます。とても画期的だと私は思います。

親の介護を頑張り過ぎて体を壊し、最悪なケースだと中高年のお子さんの方が先に亡くなり、介護が必要な親御さんが残されるというケースもあると私の耳にも届いています。それを思えば、ロボットが介護に加わり、24時間見守り支援してくれるのは大変ありがたいことだと思います。

ただし・・・

認知症の母に孫の代わりにロボットを抱かせるところを想像すると、私の心は複雑です。Twitter上でも、シニア向けに発売されたコミュニケーションロボットについて、「本当の孫を抱かせられない自分が情けない」などの意見を読むと私の心にグサグサと突き刺さります。

人間がロボットに介護されることに何らかの痛々しさを感じてしまう自分がいます。

その部分を今後どのように解消していくのでしょうか。

我が子を亡くした科学者が、息子の代わりに作ったロボット。それが鉄腕アトムです。ロボットであるために親から見放されて、数奇な運命をたどりながらも人間と触れ合うことで優しさを持つ。

そんな「心優しい科学の子」の鉄腕アトムが人間とロボットの今後の関係性を教えてくれるかもしれません。

あなたはロボットに何を期待しますか?

参考サイト:

AIロボットは認知症介護を救うか?ロボット「ATOM」の試み

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