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こんにちは、翼祈(たすき)です。
ヤングケアラーの当事者は、介護や親御さんの障害や病気を理由し、進学することや、就職することを諦めています。
2023年のこども家庭庁の実態調査によりますと、答えた日本各地の1221自治体(47都道府県、1174市区町村)の中で、「相談窓口の整備」などを推進している自治体はたったの7.8%に留まりました。都道府県は57.4%と半数を超えますが、政令市は25%、一般市町村は4.3%と、ヤングケアラーの対応にバラつきがあります。
「育児・家事支援」を行っている自治体は16.2%、「サロン(当事者同士の交流の場)の支援、運営・設置」は3.1%でした。「ヤングケアラー関連の取り組みは特にない」との回答は30.8%に上りました。
この実態調査では、ヤングケアラー78人へのアンケートも行い、利用して良かったと1番に感じた支援策は、「自分自身や家族に関しての相談」が34.6%で最多で、続いて「家事や世話の手伝い、代行」「サロン、居場所の設置」が同率の12.8%でした。
こども家庭庁は調査結果について有識者などの検討委員会から意見交換をし、2024年4月に報告書を明らかにしました。報告書は「中長期的な視点でヤングケアラーの支援が持続可能なシステムを構築することと、支援していくこと。この2つをどう両立させるかが、これから先の支援において重要だと言えます」と危惧しました。
参考:ヤングケアラー支援法成立へ 背景に相談窓口整備の地域差 毎日新聞(2024年)
また、京都府では啓発する漫画が作成され、ヤングケアラーの周知を図っています。
画像引用・参考:ヤングケアラーへの支援 京都府ホームページ
ヤングケアラーへの当事者世代の認知度や理解を上げ、相談窓口の周知にも結び付けていこうと大人に代わって家族の世話や介護、家事をする「ヤングケアラー」を主人公にした啓発漫画を、
京都府が京都精華大学と協力して作成しました。A5サイズ24ページの冊子15万5000部を、京都府府内の中学生と高校生全員に配布しました。
漫画のタイトルは「きみが選ぶ物語~ケアのある日々の中で」で、0京都精華大学マンガ学部の学生が作画しました。家族の介護を担う高校2年の女子生徒が主人公で、彼女の心情や日常が描かれています。後半では、周りの人たちとの付き合いから支援に結び付き、自身の夢と向き合う物語となっています。
漫画の最後に、ヤングケアラーに関する相談窓口やセルフチェックシートも分かりやすく紹介されています。京都府は啓発漫画を「府ヤングケアラー総合支援センター」の公式ホームページ上でも公開し、広く周知しています。
参考:主人公はヤングケアラー 実情伝える漫画 京都府と精華大が作成 毎日新聞(2024年)
この記事では、「自分がヤングケアラーだと自覚」し、負担を感じている小中学生などの多さや、親御さんが「自分の子どもはヤングケアラーには該当しない」と話しているなど、乖離的な状況を伝え、
兵庫県でヤングケアラーの人が仕事をする機会を提供しているという話を進めていきたいと思います。
2024年6月、 in大分県別府市の場合
![ヤングケアラー](https://i0.wp.com/akari-media.com/wp-content/uploads/2025/02/IMG_5932.jpeg?resize=300%2C257&ssl=1)
大分県別府市は、大人に代わって日常的に家族の介護や世話をする「ヤングケアラー」についてのアンケートの調査結果などを明らかにし、別府市内にある小中学校や高校に通学する児童生徒6846人の中で、2.26%に該当する155人がヤングケアラーだと推計しました。その中で107人が負担軽減など支援が必要な状況だといいます。
アンケートは、困難な事情を抱える子供を発見し、支援や相談に結び付けることを目的に、2023年9月から2024年3月に行いました。小学4年生~高校2年生を対象として、5658人から回答が寄せられました。
回答を分析すると、家族の家事や世話の手伝いなどを理由に「やりたいけどできないことがある」とした128人をヤングケアラーと推定しました。答えた人数の2.26%を占めたので、回答を寄せられなかった1188人にも同じ割合でヤングケアラーが存在すると仮定し、全体の推計値を155人としました。
128人の中で89人が、家族の家事や世話を「嫌だ」「仕方がない」「心がとてもツラい」などと負担に感じていたため、「支援が必要」と判断し、回答者数に占める割合は1.57%だったので、同じ様な推計で107人と算出しました。
また、128人で小学生で4人、中学生では3人が「学校に行きたくても行けない」と答え、中学生3人は「進路を変えなければならない」などと訴えていて、深刻な悩みを抱える実態も浮き彫りとなるデータでした。
参考:学校行けない子も 小中高生2.26%がヤングケアラー 大分・別府 毎日新聞(2024年)
さらに、必要があれば、ヘルパーの派遣なども検討します。また、これから先も実態を把握するため、ヤングケアラーの当事者だけではなく、周囲の大人らに向けた相談窓口(0977-21-1239)も開設しています。
2024年5月、
![ヤングケアラー](https://i0.wp.com/akari-media.com/wp-content/uploads/2025/02/IMG_5925.jpeg?resize=300%2C291&ssl=1)
大分県大分市内の小中学生に家族の介護や世話をする「ヤングケアラー」であるかなどを尋ねたアンケート調査を初めて実施した結果、家族に障害や病気を抱える人がいて、「週3回以上、家族の世話をしている」と答えた児童・生徒が2~3%いたと明らかにしました。
調査は、5年ぶりに大分市が児童・生徒の生活実態を把握するため、2023年8月10日~9月14日に行いました。今回初めてヤングケアラーに関する質問を加えました。調査対象は5歳、小学5年生、中学2年生の各親御さんですが、小学5年生と中学2年生には本人にも回答を求めました。
回答率は、親御さんが全体で78.3%(6172人)、小学5年生は91.2%(2431人)、中学2年生は85.2%(2233人)でした。
「同居家族に介護が必要な人や、障害や病気を抱えている人がいる」と答えたのは、小学5年生で181人、中学2年生が157人。その中で、小学5年生で88人、中学2年生で55人が週3回以上家族の世話をしていて、全体に占める割合は小学5年生が3.6%、中学2年生は2.5%でした。
また、自身をヤングケアラーと認識している小学5年生は55人、中学2年生では30人でしたが、その親御さんは、小学5年生でおよそ96%、中学2年生でおよそ87%が「自分の子はヤングケアラーに該当しない」と答えました。
親子間に認識のギャップが認められましたが、大分市はこの現状を「ヤングケアラーとお手伝いの違いを正確に理解しておらず、混同している恐れがあります」と総括しました。
参考:「ヤングケアラー」保護者9割否定 親子間で認識隔たり 大分市調査 毎日新聞(2024年)
2024年10月、
![ヤングケアラー](https://i0.wp.com/akari-media.com/wp-content/uploads/2025/02/IMG_5929.jpeg?resize=300%2C269&ssl=1)
大分市は、「ヤングケアラー」に関して理解を深めて頂こうと、中高生向けのハンドブックを作成し、大分市内の中学31校と高校21校に通学する生徒およそ2万6000人に配布しました。ヤングケアラーは家庭内の問題で、周りの人から状況が分かりづらいので、子ども自身に理解を深めて頂き、相談窓口などの適切な活用に結び付けていきたい意向です。
A4判1枚紙のハンドブックで、持ち運びできる様に折り畳んで冊子タイプにもなります。表面には、日常的に家族の介護や家事、幼い兄弟の世話などをしているかを質問し、それらのことで部活や進学など、諦めていることはないかを振り返って頂く内容をイラスト付きで掲載しました。
また、今までの大分市の調査などを基に「勉強に集中できず進学できるか心配」「家事負担が大きくて入院しましたが、親に原因を言えませんでした」など当事者の声以外にも、大分市や大分県の相談窓口の連絡先も記載しました。
裏面には、自身がヤングケアラーに該当するかを確認する質問を掲載し、不安なことがあれば、相談窓口を利用する様に促進しています。
大分市はハンドブックの配布に合わせて、市立小中学校の親御さんへヤングケアラーに関する情報を発信する以外にも、2025年度以降に小学生向けのハンドブックも作成する予定だといいます。
参考:私はヤングケアラー?お手伝い? 理解深めて 中高生に冊子配布 毎日新聞(2024年)
ヤングケアラーが仕事をするための社会での支援とは?
兵庫県西宮市や兵庫県神戸市にある有料老人ホームで「ヤングケアラー」の若い人たちがアルバイトとして仕事をしています。
大阪府大阪市にある施設に携わる「チャーム・ケア・コーポレーション」が神戸市と連携して励む就労支援で、家族の家事や世話に追われ、就労が難しかった当事者が柔軟に働ける様に柔軟に対応しています。日常の家族の介護から少し離れ、自身の将来を考えるきっかけにして頂く狙いもあります。
関東や関西などで88の高齢者施設を展開する「チャーム・ケア・コーポレーション」では、2021年に社員有志によるヤングケアラー支援チームを結成しました。メンバーはリーダーの男性など7人。ヤングケアラーの当事者や元ケアラーの集まりに参加し、どんな支援が必要なのか調査しました。その結果から、一般就労に備えた訓練として可能な日、時間にアルバイトとして仕事をして頂く「中間的就労」という支援スキームを結成しました。
当事者のほとんどは18歳以上になっても就労経験がほぼなく、どんな仕事に就きたいかなど将来を考える余裕がない現実に置かれていたためでした。
2022年、ヤングケアラーの相談窓口がある神戸市に支援の用意があることを申し出て、希望者を募集しました。18歳以上の3人が挙手し、2023年から働いています。
勤務は週1~4日で、仕事内容は入寮している人の洗濯や部屋の清掃、食器洗いなど。施設側は、
・規則正しい生活習慣を身に付ける
・職場を自宅以外の居場所にする
・人と接する機会を生み出す
を基本方針に対応しています。職員が若い人たちとペアを組んで助言できる様にし、休みが続くなど気がかりなことがあれば、リーダーの男性が電話や訪問で状況を確認し、神戸市と情報共有をします。一般のパート職員と同じ時給を支給しています。
3人は仕事をする中で徐々に変わってきています。最初は下ばかり向いて口数が少なかった若い人が、休憩時間に職員と談笑する様になったり、自然に高齢者に挨拶できる様になったりしています。
その反面リーダーの男性が気がかりなのは、若い人たちの自己肯定感の低さでした。仕事を続けられなかったり、家庭の事情や経済的な困窮で進学を諦めたりした経験が原因だと想定されています。
施設で仕事をしていると、お年寄りから「ありがとう」と感謝されることがよくあります。リーダーの男性は、「仕事から自分が誰かの役に立っているということを実感してくれたら」と述べました。
神戸市は2021年6月、全国に先駆けてヤングケアラーの相談窓口を設け、2024年2月末までに191件の相談が届き、必要に応じてヘルパーを派遣するなど福祉制度と連携する支援を進めてきました。
ですが、就労については、ヤングケアラーの当事者が抱えている事情を承知で受け入れる企業はほぼなく、有効な方法が見つからないのが現実です。神戸市は2024年3月に「チャーム・ケア・コーポレーション」と連携協定を締結し、協力態勢を強化していく方針で、担当者は「後をついて来る企業が出てきてくれれば」と期待を込めています。
「チャーム・ケア・コーポレーション」は、正社員になることを条件に大学時の奨学金を代わって返還するなど、それ以外の支援スキームも用意していて、リーダーの男性は、
「今はまだ仕事の体験という要素が大きいですが、『どういう大人になりたいのか?』『それに向けて何をしたらいいのか?』と、いつかは将来について考えて頂く時期が来ます」
と説明しています。
2024年春から、「チャーム・ケア・コーポレーション」では新しく神戸市から紹介を受けたヤングケアラーの当事者1人がアルバイトを始め、もう1人も近く仕事を始める予定です。
参考:ヤングケアラーに「将来」を 高齢者施設が就労支援、働き方柔軟に 毎日新聞(2024年)
これだけ観てきても、ヤングケアラーの問題は非常に深刻だと思いました。
各都道府県が啓発漫画や支援に乗り出している中で、国もこども家庭庁を中心として、ヤングケアラーの子ども達が一人で抱え込まなくてもいい様に、支えていく支援の在り方が問われているなと思いました。
![ヤングケアラー](https://i0.wp.com/akari-media.com/wp-content/uploads/2025/02/IMG_6166.png?resize=300%2C225&ssl=1)
noteでも書いています。よければ読んでください。
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