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こんにちは、翼祈(たすき)です。
映画化される作品には様々なものがありますが、映画を大きく2つ分けるなら、フィクションとノンフィクションに分かれます。
ノンフィクションは実話であって、多くが映画化しやすい、闘病記などが多い様に感じます。懸命な治療を続けていて、助からず亡くなってしまうという悲しいお話もあります。
この記事で紹介したいのが、今では当たり前の様に用いられている技術が、「どうしても助けたい」と、それまでこの世には考えもつかない様な、存在しなかったものを開発し、そのことでその後の多くの命を紡いでいる、まさに奇跡だと言える、実話を映画化した映画となります。
俳優の大泉洋さんが主演を務める映画『ディア・ファミリー』の公開が、2024年6月14日(金)より全国東宝系にて決定しました。
医療の世界とは無縁な、ビニール樹脂製品の町工場の経営者・筒井宣政さん(東海メディカルプロダクツ前社長)が生み出し、世界で17万人の命を救ったIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルが誕生した秘話を描き上げた作品です。
2019年に文藝春秋の連載[後列のひと]で取り上げられ多くの反響を呼びました。
共演に菅野美穂さん、福本莉子さん、川栄李奈さん、新井美羽さん、松村北斗さんが出演し、絶対に諦めない家族が起こした大きな奇跡のストーリーを描きます。
今回はこの映画についてと、この映画のキーマンである、「IABPバルーンカテーテル」について、紹介したいと思います。
あらすじ
生まれつき心臓疾患を持っていた幼い娘・佳美は、余命10年を突き付けられてしまう。「20歳になるまで生きられないだと…」日本中どこの医療機関に行っても変わることのない現実。そんな絶望の最中、小さな町工場を経営する父・宣政は「じゃあ俺が人工心臓を作ってやる」と立ち上がる。医療の知識も経験も何もない宣政の破天荒で切実な思いつき。娘の心臓に残された時間はたった10年。何もしなければ、死を待つだけの10年。坪井家は佳美の未来を変えるために立ち上がる。絶対にあきらめない家族の途方もなく大きな挑戦が始まる――。
画像・引用:大泉洋主演、22年に及ぶ家族の愛の実話を映画化『ディア・ファミリー』6月公開 cinemacafe.net(2023年)
予告編も公開中
ここからは、この映画でキーマンである、「IABPバルーンカテーテル」と技術について説明します。
「IABPバルーンカテーテル」の紹介
画像引用・参考:IABP療法について MERA 泉工医科工業株式会社(2022年)
▽補助循環とは?
心臓は全身に血液を送り届けるポンプの働きを持っていますが、心臓自体も冠状動脈という血管の1つから栄養を貰っています。この冠状動脈が詰まってしまうと心臓は栄養を貰うことが出来なくなり、ポンプの働きが落ちます。
その冠状動脈の働きが不可能となった重症心不全の患者さんに対し、自分の心機能が回復するまでの間、肺の働きや心臓のポンプの働きを補助・代行し、心機能の回復を待つ治療法を補助循環といいます。
IABPとは、「Intra Aortic Balloon Pumping」(大動脈内バルーンパンピング)の略称で、心臓のポンプの働きが低下した患者さんの心臓の働きを手助けする補助循環法の1つです。
急性心筋梗塞などの心不全症例や重症冠状動脈疾患において、主に足の付け根に位置する大腿動脈(または上腕動脈)からバルーンカテーテルを胸部下行大動脈内に挿入し、下行大動脈に留置したバルーン部分を心臓の機能に合わせて拍動させ、心電図や血圧を外部駆動装置に入力し心臓の周期を把握します。
心臓の動きに合わせてバルーンを膨張・収縮させることで心臓の働きを助けることができます。
バルーンの膨張・収縮には、外部駆動装置を用いて、軽いヘリウムガスが活用されていて、バルーンが膨らんだ時には冠状動脈へ流れる血圧の上昇効果と血流量の増加が得られ、バルーンが縮む時には心臓が血液を押し出す時の身体への負荷を軽減させる効果が得ることができます。
1日におよそ10~15万回膨張・収縮を繰り返します。
IABPは、日本では毎年およそ15,000例~17,000例使われています。
IABPでは、膨張・収縮のサポートを心臓のリズムに合わせて毎拍行っていることで、IABP装置にはヘリウムガスをしっかりと押し引きできる高応答性と使っている最中の管理を簡単にする使いやすさが求められています。
▽IABPバルーンカテーテルが必要な人
・虚血性心疾患
・内科的治療に抵抗する心不全
・急性心筋梗塞
・急性冠症候群における梗塞領域の拡大予防、狭心痛の緩解、切迫梗塞の予防
・体外循離脱困難
・急性発症の重篤な心不全・心原性ショック
・急性心筋炎
・内科的治療に反応しない不安定狭心症
・慢性心不全加療中・基礎心疾患を有する患者の心不全増悪
・術後低心拍出量症候群(LOS)
・虚血・低心拍出状態による重症不整脈改善
・CABG(冠動脈バイパス術)前
・ハイリスク症例の冠動脈再建術における予防的使用
・PICA(冠動脈血管形成術)および心臓カテーテル施行時の血行動態補助
循環動態からみた適応(心係数≦2.0 L/分/m2、大動脈収縮期血圧≦90mmHg、肺動脈楔入圧≧20 mmHg)
▽IABPのケアのポイント
体位調整:じょくそうや腓骨神経麻痺を防ぐために、体圧分散マットレスや安楽枕などを活用して体位の調整を行って下さい。
合併症対策:末梢循環障害や出血などの合併症や、バルーンカテーテル内に水滴の付着や血液の逆流が見られた場合は、速やかに医師に報告して下さい。
参考サイト
大動脈バルーンパンピング: IABP | ドレーン・カテーテル・チューブ管理 看護roo!(2017年)
大動脈内バルーンパンピング(IABP)《知っておきたい治療法①》 看護roo!(2020年)
一人でも多くの生命を救うため 国産初のIABPバルーンカテーテルを開発 がんばるChubu ビジネスづくり編
重症心不全 自治医科大学附属さいたま医療センター 心臓血管外科
テレビで観たIABP
2024年1月に成人式のニュースを観た時に、成人式に参加したとある女性を取材していて、その人は補助心臓を着けていると言っていました。
成人式当日の話やその前後の取材の時に、こちらの記事で紹介した様な大きな機械を押して、移動したり、成人式に向かっている映像が流れていました。
それから2ヵ月後にこの記事を書いているのですが、「もしかしたらあの時に観たものも、IABPだったかもしれないな」と、記事を書くのに機械の写真を観たりして、そう思いました。
このIABPの話を通して思ったのが、親の愛は深い。子どもが困っていることがあったら、不可能と言われていることや、誰もしたことないことだって何でも挑戦する。それだけ親は子どもに愛情を持って接しているということ。
この映画がどこまで描かれるかは分かりませんが、私は実話がモチーフの映画は必ず泣いてしまうので、今回もきっと泣いてしまうと思います。
2024年6月、私は温かい涙を流していると思います。
参考サイト
noteでも書いています。よければ読んでください。
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