子どものうつ病~原因・サイン・症状・治療法について~

子どものうつ病

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はじめに

新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されてから3年経ちました。その間に社会は大きく変化し、生活様式も様変わりしました。現在、結核やSARS、MERSと同じ2類感染症から、5月8日から、季節性インフルエンザと同等の5類感染症に引き下げられようとしています。しかし、未だにマスク生活から抜けられない状況になりそうです。

そんな最中、子どもたちのメンタルヘルスにも大きな影をおとしているようです。2022年に自殺した小学生、中学生、高校生は過去最多の514名となりました。その中でも、自殺の原因・動機がうつ病とされたのは79名とされており、見過ごせない数字となっています。

子どもがうつ病になる原因

子どもがうつ病になるきっかけは、いじめ友人関係のトラブル家族の虐待などさまざまですが、環境の変化によって発症することが多いことも明らかになってきました。

例えば、以下のような環境の変化でこどものうつ病が引き起こされることがあります。

  • 親の転勤による引っ越しや進学のための引っ越し
  • 両親の離婚や再婚
  • 弟、妹ができる、できた。
  • 進級時の環境の変化
  • 受験のストレス
  • 学校、クラスになじめない
  • 話し相手や友達作りが苦手
  • 先生に慣れない

などです。

うつ病となるサイン

症状には、

  • 食欲不振もしくは食べ過ぎる
  • 体重の減少(成長とともに増加するはずの体重が増えない)
  • 吐き気、めまい
  • 頭痛、腹痛
  • 眠れない、寝すぎるなどの睡眠障害
  • 日内変動(午前中は元気がないなど)

があげられます。

状態には、

  • イライラ
  • 注意力散漫、集中力の低下
  • 寡黙
  • 成績が落ちる
  • 不登校、ひきこもり

などがあげられます。

子どもは大人よりももともと精神的に不安定な存在です。大人の様にわかりやすく元気がなくなり、抑うつ状態になるよりも、言葉でうまく説明することができないため、イライラしたり、怒りっぽくなるなどの症状が出やすく、単なる反抗期と間違われやすくなることが大きな特徴と言えるでしょう。

また、腹痛などの身体的症状で現れることが多く、まずは、小児科などを受診して身体的な異常がなければ児童精神科への診察を受けることをおすすめします。

うつ病の治療は子どもだけでなく、普段の生活や学校の状況を含めて総合的に判断されないといけません。

うつ病の治療

うつ病の治療には、認知と行動に働きかけ、思考のバランスを整える認知行動療法や、家族などの他者との関係に焦点を当てて治療する対人関係療法などがあります。

本人も状況が分かっていないことが多いので、現状を説明する必要があります。本人の置かれている立場を尊重してプライドを傷つけないように配慮しなければいけません。

薬物療法

こどもへの抗うつ剤投与に関しては、未だに専門家の間でもその効果と副作用について大きな議論がなされています。

国際的には、WHOが「フルオキセチン」を子供のうつ病の必須医薬品としてどの国でも使用可能すべきものと考えられています。アメリカでは、子どものうつ病治療薬として「フルオキセチン」が8歳以上、「エスシタロプラム」12歳以上に有効だと承認されています。けれども、日本では、フルオキセチン承認も販売もされておらず、エスシタロプラムは販売されていますが、子どものうつ病には承認されていません。

日本では、子どものうつ病の治療の選択肢が少なく、併存している別の症状の治療を先に進めたり、家庭や学校などに働きかけてストレスを取り除く「環境調整」をしながらうつが続く要因を減らしていくのが最大限の治療となります。それでも、重い症状が続く場合には12歳以上にエスシタロプラムを未承認であることを説明の上処方することもあります。

子どもに薬を処方するかどうかは難しい問題ですが、いろいろな選択肢があることを知っておくことが重要だと考えます。ご参考になさってください。

再発率が高い

うつ病と分かった場合は、症状が治まるまで半年~1 年程度かかります。

思春期に抑うつ症状がある140人を平均6年にわたりその追跡調査した結果、約半数が抑うつ症状に関わる行動が再び見られることがあります。さらに、不安障害、薬物関連の障害、摂食障害などを発症している報告もあります。

家族など周囲が注意しないといけないのは、学校に通えるようになることや成績が元に戻るなど目に見える形の成果を焦らないことです。

うつ になっても「誰にも相談せず様子をみる」こども 25~51%

下記の表のように、典型的なうつ症状が見られても誰にも相談せず、様子を見るこどもたちが大半なのが現状です。周りにいる大人たちが注意し、早期に発見することが適切な治療に繋がります。

画像引用:コロナ禍における思春期のこどもとその保護者のこころの実態報告書

終わりに

天真爛漫で悩みなどないのが子どものイメージとしてありました。しかし、社会が複雑化する一方で子どもたちの心の問題も決して見て見ぬふりできない状況があります。日本では、認知行動療法や対人関係療法など治験が行われておらず、治療法が根付いていない問題があります。国や関係機関にはすみやかな対策を施行していただくことを望みます。

お子様の様子が気になる方は、下記の相談窓口に連絡をとってみるとよいでしょう。

もちろん、お子様本人もLINEなどのSNSでも相談することができます。辛い気持ちを吐き出してみましょう。

画像引用:

ふくおか自殺予防ホットライン (fukuoka.lg.jp)

参考サイト

精神医療従事者によるサイコセラピー研究所

HelCヘルシー 疾患・特集 子供が「うつ病」になったら・・・大人はどうする?

国立成育医療研究センター コロナ×こども本部 こどものSOSに気づいたら

厚生労働省雇用均等・児童家庭局 一般小児科医のための子どもの診療テキスト

noteでも書いています。よかったら、読んでみてください。

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