『マイスモールランド』。〜ドラマのクルド人から考える出入国管理法の在り方〜 

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

ベルリン国際映画祭で受賞した、在日クルド人を少女が主人公の『マイスモールランド』という作品が、今年2022年3月24日にテレビドラマ版放送、2022年5月6日に映画版が公開されます。今回は社会問題となっているクルド人について、映画・ドラマの内容を踏まえて、考えていきたいと思います。

ViViモデルの嵐莉菜さんが、2022年公開の映画『マイスモールランド』で映画初出演にして初主演することが決定しました。共演は奥平大兼さん、藤井隆さん、池脇千鶴さん、平泉成さん、韓英恵さん、サヘル・ローズさんら。是枝裕和さん率いる映像制作者集団「分福」の新人・川和田恵真さんが監督を務めます。また2022年4月27日には、『マイスモールランド』から生まれたもう1つの物語を、監督の川和田さんが書き下ろした小説が発売されます。

予告編は、「難民申請は不認定となりました」と告げられ、呆然とする17歳のサーリャと家族を活写。家族で食事をしたり、教室で友人と笑い合ったり、そんなささやかな幸せに満ちた日常は続かず、父が収容される事態となります。「本当は東京に来ちゃだめなの。しょうがないよね」と俯くサーリャに、「しょうがなくなんかないよ!」と声を上げる聡太。「ここに居たいと望むのは罪ですか?」というメッセージとともに、家族の失われてしまった、穏やかな日々が映し出されています。

あらすじ

クルド人の家族とともに生まれた地を離れ、幼い頃から日本で育った17歳のサーリャ(嵐莉奈)。同世代の日本人と変わらない、ごく普通の高校生活を送っていたが、あるきっかけで在留資格を失い、家族の日常が一変…。約2,000人のクルド人が住む地域で暮らしていたサーリャが、東京に住む日本人の少年・聡太(奥平大兼)との出会いをきっかけにアイデンティティに葛藤し、成長していく物語が描かれる。川和田監督のオリジナル脚本だ。母親が日本とドイツのダブルで、父親が日本国籍を取得しているイラン、イラク、ロシアのミックスという5カ国のマルチルーツを持つ嵐さんは、日本で生まれ育ち、幼少期にはキッズモデルも務めていたこともある。

在日外国人が、在留資格を失うと、働くことができなくなるばかりか、居住している地域を出ることができなくなる。そのため、本作の主人公サーリャは、奥平さんが演じる東京に住む聡太へ会いに行くことができなくなる。

今回解禁されたポスタービジュアルは、この日本に居ても立場によって越えられない国境が生まれることを表現し、高校生の淡い恋心が、社会によって分断されることを伝えるもの。ポスターに表記されているテキストは『マイスモールランド』のクルド語表記となっている。

引用:奥平大兼『MOTHER』以来の映画出演、クルド人少女との出会い描く『マイスモールランド』 cinemacafe.net(2021年)

ベルリン国際映画祭で受賞

現地時間2022年2月10日から2月20日までドイツで開催されていた第72回ベルリン国際映画祭が閉幕、受賞作品が発表された。是枝裕和監督が率いる映像制作者集団「分福」の新人監督、川和田恵真監督の『マイスモールランド』が、全部門の出品作から選出されるアムネスティ国際映画賞のスペシャル・メンション(特別表彰)を受賞した。

2005年以降、国際人権NGO「アムネスティー・インターナショナル」は、ベルリン国際映画祭で上映された作品の中から人権問題をテーマにした作品に対して「アムネスティ国際映画賞(Amnesty International Film Award)」を授与。

2022年度は、ベルリン国際映画祭に正式招待された全部門の中から15作品が事前にノミネートされており、第72回ベルリン国際映画祭のジェネレーション部門でワールドプレミア上映され、2005年から17年間続く同映画賞から日本作品が栄誉を受けるのは、今回が初となる。

海外メディアの反応

ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門のヘッドプログラマーの男性は「世界共通のテーマである現代社会の矛盾を、とても美しく、映画らしい構成で物語に練りこんでいる」と称賛。

また、海外メディア「VERDICT」に掲載されたレビューには、「川和田監督の『マイスモールランド』はあくまでフィクションとして、彼女自身がダブルとして生きる経験から、クルド人全体を描くのではなく、一人の高校生であるクルド人に焦点をあてる。彼女が生きる日本社会の中で、希望や夢を持ち、目の前の困難に立ち向かう状況を描いた特別な映画である。日本当局の非人道的な難民政策を厳しく批判する一方で、17歳の少女が自分の感情や、複数のアイデンティティによってもたらされる責任と対峙する姿を感動的に描いており、注目されるべき作品」と本作を高く評価するなど、ベルリン国際映画祭で大きな反響を得ている。

引用:ViViモデル嵐莉菜「本当に本当に光栄です!」初出演&主演映画「マイスモールランド」が日本作品初の快挙 モデルプレス(2022年)

映画公開に合わせて、NHKでテレビドラマ版も放送

映画『マイスモールランド』は2022年5月6日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開されます。

フランスとの国際共同制作ドラマ『マイスモールランド』は、NHK -BS1で2022年3月24日(木)前編 20:00~20:50 / 後編 21:00~21:49に放送されます。

クルド人とは

クルド人は、中東で第4番目の人口を誇る民族であるにもかかわらず、独立国家を持たないことが特徴です。“国を持たない世界最大の民族”クルド人。トルコからシリア、イラク、イランにかけて分散して国境を越えて広く暮らすこの民族は、差別や迫害などによりふるさとを追われている。クルド人は日本に2000人以上、その多くが埼玉に住み生活をしているが、難民として認められず、いつ強制退去を命じられるかわからない、不安な毎日を送っている。

在日クルド人とは

日本に一定期間在住するクルド人である。日本に帰化や亡命した人、およびその子孫が日本に居住している。

2021年出入国管理法改正案浮上

埼玉県川口市などに住むクルド人の難民が2021年4月18日、川口市の市民ホール「フレンディア」に集まり、出入国管理法改正案反対をアピールしました。参加者は「トルコに強制送還されたら、収容されたり、迫害を受けたりします。自分だけではなく家族の人生も終わってしまう」などと訴えました。

同法出入国管理改正案は2021年4月16日に衆院本会議で審議が始まりました。難民の早期退去、収容施設への収容の短期化の目的で、難民申請中の難民は出身国に送還しないという規定が見直され、3回目以降は送還できるようになります。

川口市や蕨市にはトルコからの迫害から逃れて国内に移り住んだクルド人の約8割に当たる約2千人が暮らしています。難民申請が認められないため仮放免中の人や非正規滞在の人がほとんどといいます。

参考:「日本語しか話せないのに」 クルド人少年、送還の不安 朝日新聞デジタル(2021年)

この少年は難民申請中で保険に入れず、医療費が高額となり、ずっと分割で医療費を支払っていたという事です。

その後、

2021年5月管難民法改正案の採決見送りを受け、埼玉県川口市や蕨市に約1500人が暮らすクルド人たちからも歓迎の声が上がったと言います。「家族の命に関わる問題だった。反対の声を上げてくれた人たちに感謝したい」。妻と子ども3人の一家5人が仮放免というトルコ出身のクルド人の男性は、ほっとした様子で語りました。クルド難民への支援組織によると、クルド人などトルコ国籍者の難民認定率は2018年に世界で約46%ですが、日本ではまだ1人も認定されていません。

参考:入管難民法改正案の採決見送りに「国を持たない世界最大の民族」クルド人も歓迎の声 東京新聞(2021年)

予告

NHKの国際共同制作ドラマは強い

NHKでは時々外国との国際共同制作ドラマを作っています。今回はフランスですが、2020年の[太陽の子]ではアメリカと共同でドラマと映画を制作し、映画版は全米でも2021年に公開されました。

NHKはこの手の国際色の強い作品の制作はとても毎回凄いです。多分本作でも良いドラマになっていると思います。このドラマでこの問題について皆さんで考えてみませんか?

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「祖国に帰ったら命がない」入管法改正案成立なら”強制送還” クルド人男性の訴え FNNプライムオンライン(2021年)

日本で暮らし、日本語話すのに存在を認められない…在日クルド人の苦しみ知って ドキュメンタリー映画公開 東京新聞(2021年)

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左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。