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こんにちは、翼祈(たすき)です。
皆さんは、「オーラルフレイル」という言葉を知っていますか?
「オーラルフレイル」とは、口や歯の機能が衰えた状態のことを指します。「飲み込みづらい・話がしづらい・こぼす・むせる」などが、舌を含めた口の周りの筋肉の衰えで起こります。
健康な状態と要介護の間には、心身や筋力の活力が低下する「フレイル(虚弱)」の段階があります。
口や歯の機能が衰えると、話すことが減るだけでなく、栄養状態の悪化で筋力が痩せ、体力が低下し外出することが少なくなってしまいがちです。
この「オーラルフレイル」の始まりは、わずかにむせる、滑舌低下、口の乾燥、食べこぼし、噛めない食品が増えるなどといったほんの些細な症状であり、見逃しやすく、気が付きにくい特徴があるため注意が必要です。
健康長寿を叶えるためにも、口や歯の機能を維持することは重要なことです。
今回は、「オーラルフレイル」にならないための予防策などについて、説明します。
▽オーラルフレイルの初期症状チェック
画像・動画・引用:オーラルフレイル対策 神奈川県
・電車やバスを使って一人で出かけることが少なくなった
・滑舌が悪くなったと感じる
・15分以上歩いていると疲れる様になった
・親戚や友人の家を訪ねることが減った
・食べこぼしが増えた
・この半年で2~3kg体重が減った
・半年前に比較して固いものが噛みにくい
・汁物やお茶を飲む時によくむせる
・電話をかけるのをためらう様になった
・口の中の乾燥が気になる様になった
▽「オーラルフレイル」に潜むリスク
画像引用・参考:オーラルフレイルの進行とは|生活習慣を見直そう! 8020推進財団
「8020運動」という言葉を1度は耳にしたことがあるかもしれません。これは、1989年からスタートした「80歳になっても20本以上自分の歯を維持しよう」という、歯科の健康増進のための啓発運動です。厚生労働省が行なっている歯科疾患実態調査の結果によりますと、1993年時点では8020達成者の割合はおよそ1割程度でした。
しかし、歯科医療技術の進歩や国民の口腔保健に対する意識と行動の変化が奏功し、直近の2016年の実態調査の結果では、8020達成者は5割を超えました。
例を挙げると歯周病や虫歯を放置したことで歯が折れたり抜けたりして、それまで噛めていたものが噛めなくなることがあります。そのことで自然と食べやすい柔らかいものを好んで選択する様になって、いつしか柔らかいものを食べることが習慣化します。
そのことで噛むための筋肉を使わなくなり、結果として噛む機能が低下します。噛むための機能が低下することで柔らかいものを選択する様になって、さらに噛めなくなる、という負のループを引き起こします。
少しずつ口の機能の低下が進行し、食べ物の選択肢が狭まり栄養に偏りが生じたりすることで心身機能の低下にも結び付くと考えられています。この様な“負のループ”に早めに気付くための重要なサインとして「オーラルフレイル」は近年注目されています。
ある調査によりますと、「オーラルフレイル」の人はそうでない人と比較して、2年以内に身体的フレイルを発症する確率が2.4倍、4年以内に亡くなるリスクはおよそ2倍ということが明らかになってきました。ここから言えることは、口の些細な衰えを甘く見てはいけない、ということです。
また、孤食の人は、そうでない人に比較して、年齢や性別、生活習慣、独居の有無などの影響を調整しても「オーラルフレイル」の割合が1.82倍高い結果を示していました。「食」は単に必要な栄養を取ることに留まらず、「誰かと食べる」こと、「共食」は食べる楽しみや人との繋がりにも直結しますし、栄養バランスの取れた食事を摂ることと、誰かと楽しく食べることも、口の健康づくりの目標として重要であると言えます。
画像引用・参考:高齢期における口腔機能の重要性 ~オーラルフレイルの観点から~ 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
▽「オーラルフレイル」チェックシート
チェック結果
合計0~2点 オーラルフレイルの危険性は低い
合計3点 オーラルフレイルの危険性あり
合計4点以上 オーラルフレイルの危険性が高い
▽「オーラルフレイル」の検査
「オーラルフレイル」は歯周病や虫歯による残存歯数の減少によって段階的に引き起こされるため、定期的に歯科検診を受診することが大事だと考えられています。また、「オーラルフレイル」の状態にあるか否かを検査するには、残存歯数、飲み込み、咀嚼能力、唾液分泌、舌の力と動きなどの状態の総合評価が必要となります。
▽「オーラルフレイル」からなる病気
⑴ドライマウス
持病の薬などで唾液の分泌量が減少したり、高齢者は噛む力が減少したりすることがあります。そのため、唾液が少なくなるドライマウスに悩まされる人が多くなります。
口が乾いた状態だと、話しづらくなったり、食べ物を飲み込みづらくなったりします。入れ歯を使っている場合は入れ歯が外れやすくなることもあります。
意識して水分補給をして、唾液腺をマッサージして刺激し唾液を分泌する様にしましょう。
また、舌や舌を動かしたり、よく噛んで食事をしたりすることも唾液の分泌に繋がり、ドライマウスを予防することにも繋がります。
⑵誤嚥性肺炎
むせたり、飲み込みづらくなったりすることが増加してきている場合、それは飲み込むための筋肉が衰えていることが考えられます。
飲み込む力が低下すると飲み物や食べ物が間違えて気管へ入ってしまい、口の中で繁殖している細菌が肺に入って肺炎を発症してしまうことがあります。
この病気を誤嚥性肺炎といいます。
誤嚥性肺炎は高齢者がよくかかる病気で、そのまま死に至ることもある病気なので、口腔ケアをしっかりして口の中を清潔に保ち、食事の一口分も無理なく食べられる量でしっかり噛むことを意識して食事をしましょう。
▽「オーラルフレイル」を予防する習慣
①口腔機能の維持・改善
口腔機能とは、「飲み込む」「噛む」などの食べる機能だけでなく、「笑う」「発声する」といったコミュニケーションを担う機能も含まれています。これらの機能を維持するためには唇や舌、喉や口周辺の多くの筋肉の働きを衰えさせない様にする必要があります。
「オーラルフレイル」のセルフシートで「オーラルフレイルの危険性あり」以上に該当した場合は、トレーニングを行って、口腔機能が衰えない様に維持しましょう。
②口の中を清潔に維持する
口の中の衛生状態が維持されていないと、歯周病や虫歯のリスクが発生し、進行すると大切な歯を失うことになってしまいます。そのため「話す」「食べる」といったことが困難になります。
歯周病や虫歯を予防するには、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシ、デンタルフロスなどを有効に使用して適切なケアをして下さい。自分にはどんな道具が合っているのか分からない場合はお近くの歯科医院で相談して下さい。また、かかりつけの歯科医院を作り、歯石除去などの定期的な歯のメインテナンスを受けると良いでしょう。
③きちんと食べるための口を維持する
歯周病や虫歯で歯を失わないように、定期的な健診を受けましょう。また、失ってしまった歯の部分は、補うための歯科治療(かぶせ、ブリッジ、義歯など)を受けましょう。
④栄養バランスの良い食生活
咀嚼筋や歯が衰えることで、固いものが噛みづらくなり、食事が柔らかいものばかり食べて偏りがちになるため、食事の栄養バランスは常に意識しましょう。
特に魚や肉などたんぱく質が豊富な食べ物は筋肉が作られる基盤となるので、積極的に摂って頂きたいと思います。
さらに、野菜も一緒に食べることで、たんぱく質の吸収率が上がり、理想的な栄養バランスに近づき、生活習慣病の予防にも結び付きます。
⑤口の中の保湿
唾液が少なくなると口の中の細菌や汚れが停滞しやすくなったり、食べ物が飲み込みづらくなったりします。口を日頃から動かす、唾液腺マッサージ、良く噛んで食べるなど唾液の分泌を促したり、保湿剤などを利用して口の乾燥を予防しましょう。
⑥飲酒や喫煙を控える
飲酒や喫煙は歯を着色させてしまうだけでなく、虫歯や歯周病の発症にも関係します。
飲酒に関しては、お口の中の唾液を減らしてしまうため、唾液が持つ自浄作用(歯に付着した汚れを洗い流す作用)が弱まることなど、歯に良くない点が幾つもあります。
まず、喫煙はタバコに含まれるニコチンによって血管を収縮させてしまい、歯肉の血液量が減少し、病気に対する抵抗力が落ち、細菌が繁殖しやすい状態になります。
飲酒も喫煙も、止めることが理想的ではありますが、できない場合は少しずつ摂取量を減らすことで歯の健康に繋げましょう。
⑦かかりつけ歯科医を作っておきましょう
日頃から歯や口の中で気になることを相談できる「かかりつけ歯科医」を作っておくことによって早期発見、早期治療が可能です。また通院が困難になっても訪問歯科診療を受けられる時もあります。特に症状がなくても定期的に歯科医院を受診し、口の健康状態を歯科医師に診て頂くことは非常に重要です。
▽「オーラルフレイル」予防の体操
❶オーラルフレイル対策のための口腔(唇と)頬の体操
頬を膨らませた後、すぼめるという動きを数回する。(水はなくても良い)
❷(唇を中心とした)口の体操
「ウー」口をすぼめる。
「イ~」と横に開く。
❸開口訓練
ゆっくり大きく口を開け10秒間保持する。
しっかり口を閉じて10秒間休憩する。
※お口を開く時には、無理せずに痛みが出ない程度にして下さい。
❹パタカラ体操
「パ」「タ」「カ」「ラ」各発音 8回を2セット行う。
❺舌トレーニング
効果としては「誤嚥(つば・食べ物が食道でなく気道に入ってしまうこと)」や「むせること」などの症状改善に結び付きます。
❻滑舌をよくする体操
早口言葉が効果的です。口の動きを良くすることで、明瞭な発音に繋がり、表情が豊かになります。口を大きく動かしながら3回続けて早口言葉を言いましょう。
❼唾液腺マッサージ
口の中にある3種類の大きな唾液腺をマッサージで刺激をして、唾液の分泌を促進することを目的とした体操です。唾液は口の中を潤し、食べ物を飲み込むための助けとなる多くの機能を有しています。
各箇所、1回につき5秒程度を目安に優しくマッサージしましょう。3回セットずつ行います。まずは、耳下腺のマッサージです。耳の少し前くらいの位置を指(人差し指~薬指全体)で優しく、奥から手前に向かって円を描く様にマッサージします。
続いて、顎下腺のマッサージです。下の顎の骨の内側(首に近いところ)を指(人差し指~薬指の指先)で優しく、耳の方から顎先に向かって、軽く押してマッサージします。
最後に、舌下腺のマッサージです。顎先の少し内側(舌の付け根のあたり)を親指で優しく、舌を押し上げる様にマッサージします。
❽肩と首のストレッチ
食べる前の準備運動として、首回りの筋肉の緊張をほぐしたり、鍛えたりするのが目的です。息を吸いながら肩を上げて、息を吐きながら肩を下げます。これらの動きをゆっくりと3回セットしましょう。
ゆっくりと右へ首を倒して、左側の首筋を伸ばします。ゆっくりと元の位置に戻したら、今度は反対に左へ首を倒して、右側の首筋を伸ばします。これらの動きをゆっくりと3回セット行いましょう。
参考サイト
オーラルフレイルを知っていますか? 一般社団法人 日本老年歯科医学会(2024年)
若いうちから!?オーラルフレイル予防法 NHK首都圏ナビ(2024年)
お口の老化「オーラルフレイル」って何? 降矢歯科クリニック 歯科・矯正
どのトレーニングも、継続することが大切です。理解しているけどなかなか毎日は続けることができない、という人に推奨するトレーニングが「ブクブクうがい」「ガラガラうがい」です。
頬全体をふくらませる「ブクブクうがい」も、口に水をふくんで上を向く「ガラガラうがい」も、意識してやることで口腔機能を鍛えることに結び付きます。いつもより「少し回数多め」「少し長め」を意識して行って下さい。
私の両親
私の両親は二人とも高齢者に入る年です。
父の話をまずしますと、父はタバコの吸い過ぎや、生活習慣の乱れで、維持できている歯がほとんどありません。
父はテレビを観ながらというのもありますが、ご飯を食べている時、よくご飯粒とかおかずを、床とか服にこぼします。それは毎食です。
この間父の通院に母もついて行きました。栄養指導があって、「歯がないなら、歯科病院で治療しましょう」と言われましたが、父はその後も行っていません。
歯がないことで認知症の様な症状があることも伝えると、栄養士の方から「余りにずっと1日中寝るなら、脳が萎縮しているかもしれないから、脳神経外科で検査した方が良い」とも言われました。
父は歯がないことで、表情が乏しくなって、顔の筋肉を使うことも減ったなと感じています。体力がなくなっていたこともあるのか、以前よく行っていたお店にも母が行きたくても、父は母を助手席に乗せて、連れて車を運転して行こうとしなくなりました。
母の話では、実は私、まだ完治していないのですが、RSウイルスに感染しまして、母にも移りました。
母は3日間38度の高熱が続きました。そのせいなのか、味覚と嗅覚障害が出て、味や匂いが分からないそうです。
年齢的なのもあると思いますが、母の方がRSウイルスが重症化したのか、咳をし出すと止まらず、夜中も寝ていたら咳でむせて起きて、そこから眠れなくなったりとか、睡眠障害にもなっているそうです。
母は、食事中もむせることが増えました。
私は感染から2週間が経過しましたが、未だに完治する気配がありません。今年は黄砂や花粉が大量に飛んでいることで、RSウイルスなど呼吸器疾患が悪化しやすいと病院で言われました。
「オーラルフレイル」に関しては、テレビを観ていて、言葉を知って、そこから書いていくと、両親に該当するところが多いなと感じました。
この記事を書いて、両親の口腔内の健康維持のためにも、取り組めるところは取り組んでいきたいと思いました。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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