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こんにちは、翼祈(たすき)です。
重症筋無力症とは、神経筋接合部という筋肉と神経のつなぎ目で、神経からの指令が筋肉に上手く伝わらないことで、身体に十分な力を入れることができなくなる病気をいいます。
骨格筋は骨に付着していて、自分の意思で身体を動かす目的で使う筋肉で、手足のみならず眼球やまぶた、喉の筋肉、目を動かす筋肉、そして呼吸筋なども含まれます。
最新の疫学データでは、日本の重症筋無力症の患者はおよそ3万人と推定されています。これはおよそ10年前の調査データの約2倍の数値で、単純な患者数の増加以外にも、この病気に対する診断、あるいは認知が増加した部分が含まれる数字だと想定されてます。
男女比は、女性に多い病気だとされています。実際の調査データでも、1:2くらいの比率で女性の患者さんに多い傾向です。発症率は20~50歳代の女性に多く、ここ数年では男女共に50歳以上で発症する患者さんが増えています。
2022年に重症筋無力症が起こる仕組みが解明されました。今回はその解明結果に関してなどについて紹介します。
重症筋無力症に関する症状
全身の広範囲に障害が起こる病気で、重症度やタイプに応じて、重症化した場合には呼吸筋もマヒして人工呼吸器が必要になるケースもあります。
重症筋無力症の患者さんには20%位、ものが二重に見える、まぶたが下がるといった目に症状が現れ、これを眼筋型重症筋無力症と呼んで、他の症状と区別します。まぶたが下がっていることで、周囲の人から眠そうに見られる時があります。
普通にできていた日々の暮らしが、筋肉に力が入らなく、疲れやすくなることで、とても難しくなります。すぐにバテてしまい、手足の筋力低下が明らかで歩行が困難になる、手足を動かしづらい、ものが持てないといった重度の症状から、易疲労性がメーンで周りの人から見ると一見元気そうに見える時もあります。
繰り返し運動を継続していると早くバテます。ですが、筋肉を休めて安静にしていると筋力が次第に回復してきます。
日内変動という午前中は症状が軽く、夕方から夜にかけて悪化する症状や、日差変動という日によって、症状が良くなったり悪くなったりの繰り返しを起きる患者さんもいます。
それから手足や呼吸、喉など目以外の全身の筋肉に症状が及ぶ症例を全身型重症筋無力症といいます。
口やのどの動きが悪くなることで、嚥下障害、呼吸困難、構音障害という、食べ物を上手く飲み込めない、飲み込む時にむせたりします。そして、声が鼻に抜けて思うように発音ができなくなります。また、息苦しさや呼吸困難が出現したり、大きな声でハッキリと話すことが困難になったりすることもあります。
日々の暮らしの中では、シャンプーで洗髪してドライヤーで腕を上げっぱなしで反復動作を行い、髪を乾かす様な場合、筋力がどんどん低下していき、腕を上げ続けられなくなります。
なので、さっきまでできていたことがどうしてできないのか、といったことが多く生じて、職場や家族、友人など周囲の人からも誤解をされやすくなります。精神的におかしいとか、怠けているとか思われてしまいがちな病気と言われています。
重症筋無力症に関するアンケート結果
▽原因
重症筋無力症では多くの患者さんは、筋肉側に存在するアセチルコリン受容体に対する自己抗体が身体内に発生し、アセチルコリン受容体が壊されたりしたことで、正常に働くアセチルコリン受容体の数が現象し、神経筋接合部の伝達が上手く働かなくなります。
アセチルコリン受容体の働きは、筋肉を収縮させるためのスイッチの様な役割だとされますが、アセチルコリン受容体がスイッチとして働くとすると長い間使用できないという特徴があります。
そのことで、繰り返し持続的に力を入れ続けたり、ある筋肉を使ったりする場合は、別のスイッチが次々と必要です。そのため、アセチルコリン受容体というスイッチが減少する病気である重症筋無力症では、力が入るケースは少なくはないですが、筋肉を使っている間に徐々に力が低下していく現象が起こります。
この現象は、易疲労性と言われて、重症筋無力症の大きな症状の特徴の1つです。
重症筋無力症と診断されてから今までに経験したこと患者さんを聞いたところ、およそ4割の人が、病気を理解してもらえず、「友達や周囲の人から怠けていると言われた」(42%)、「家族から怠けていると言われた」(32%)と回答しました。
また、今までに仕事をしたことがある患者さんでは、33%の人が、「上司や同僚から怠けていると言われた」と回答し、周りの人から病気への理解を得られることが困難なことがデータから分かりました。
画像引用・参考:「重症筋無力症(MG)患者に対する実態・意識調査2022」 PR TIMES(2022年)
重症筋無力症の仕組みが明らかに
全身の筋力が段々と低下していく国の指定難病「重症筋無力症」が発症するメカニズムの一端を解明したと、大阪大学の研究チームが明らかにしました。早期診断による重症筋無力症の進行の抑制や、新しい治療法の開発に結び付く可能性が秘めているとされます。この研究は国際科学誌に論文が発表されました。
本来は身体を守るはずの「抗体」が、自分の臓器や細胞を攻撃する自己免疫疾患の1つの「重症筋無力症」ですが、詳細な原因は分かっていませんでした。
大阪大学の坂口志文特任教授と奥野龍禎准教授らは、重症筋無力症患者のおよそ21%で胸腺に腫瘍があることなどに注目しました。重症筋無力症と胸腺腫を併発した患者4人から摘出された胸腺腫の細胞、トータルおよそ6万6000個に関して、1個ずつ機能している遺伝子を網羅的に分析しました。
その結果、重症筋無力症と胸腺腫を併発した患者の胸腺では、患者自身の筋肉や神経への攻撃を指示している特異な腫瘍細胞が生み出されていることを発見しました。この腫瘍細胞に反応した免疫細胞が全身のリンパ節へ拡大し、重症筋無力症の原因となる抗体を合成していたことが判明しました。
大阪大学の研究チームの特任教授の男性Aさんは、「重症筋無力症では最初に胸腺腫を検査し、異常が発見されれば早期に腫瘍細胞の切除で症状を抑制できる可能性もあります。近い将来、重症筋無力症を起こす免疫細胞がリンパ節へ拡大する前に食い止める治療法ができる様になるかもしれません」と説明します。
重症筋無力症に詳しい、脳神経内科学が専門の金沢大学の教授の男性Bさんは、「胸腺腫と自己免疫疾患である重症筋無力症が合併する仕組みを解き明かした素晴らしい研究データです。他の難病の研究にも結び付く可能性を秘めている」と述べました。
参考:胸腺腫と重症筋無力症がなぜ合併するのか 大阪大学(2022年)
重症筋無力症の合併症
重症筋無力症の合併症で最も注意が必要なのは、「重症筋無力症クリーゼ」という状態です。
- 感染
- 妊娠出産
- 精神的ストレス
- 過労
- 何らかの薬剤
などの条件が重なると重症筋無力症クリーゼという状態になり、急激に筋脱力と呼吸困難が進行します。
重症筋無力症の治療法
20世紀前半までは重症筋無力症の治療法がなく、亡くなる確率の高い疾患だったことで、病名に「重症」が付く程怖がられていました。20世紀後半より色んな治療が実行され、亡くなる確立は急減し、必ずしも「重症」とは当たらなくなりました。
重症筋無力症の治療法は、対症療法と免疫療法があり、免疫療法が主に実行されます。免疫療法は、重症筋無力症の発症の原因となっている抗体の源を、薬などで抑え取り除くことで、免疫異常を改善させる治療法となります。使う薬には免疫抑制薬やステロイド薬などがあり、長い期間薬を飲む必要があります。
対症療法には、コリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれる内服薬を使います。コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリン受容体を分解するコリンエステラーゼの機能を抑制することで、信号伝達を増強する治療薬です。全身の重症筋無力症の症状が迅速に軽快されますが、効果は一過性となります。
全身型で胸腺腫を合併するケースは、外科的に胸腺腫を取り除く必要があります。胸腺腫は早期に発見できなければ、一括して切除可能で、生命予後の良い腫瘍となります。また、胸腺腫がないケースでの胸腺摘除術に関しても、安全性と有効性が証明されています。
そのほか、大量の抗体を静脈内投与する大量ガンマグロブリン療法や、抗体を切除する血液浄化療法などの色々な治療法が確立されています。難治性のケースには新しい治療薬も開発されています。
この難病に関しては、様々な治療法があることが分かりました。この難病の、いつか確立された治療法が解明されると思いました。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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