この記事は約 9 分で読むことができます。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
厚生労働省は2024年2月5日、百日咳とジフテリア、破傷風、ポリオの4種混合ワクチンにヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)を加えた5種混合ワクチンを2024年4月から「定期接種」とする方針を決定しました。
小さいお子さんが対象で、従来のワクチンを使用した場合より、接種回数を半分に減らすことが可能です。同日2月5日に開催された専門家分科会で了承されました。
いずれも生後2ヵ月から7歳半までの間に、一定の期間を空けて初回接種と追加接種で合わせて4回接種することで5種類の感染症を防ぎます。現在、これらの感染症を防ぐため、4種混合ワクチンとHibワクチンが定期接種となっています。
トータル8回の接種が必要ですが、スケジュール管理が課題となっていて、Hibも加えた5種混合ワクチンに混合することで、接種回数を減らすことが可能だと期待が持たれています。
接種費用は、従来の2つのワクチンと同じ様に、原則無料となります。
今回はまず冒頭に書きました、ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)感染症とはどういうものなのか、紹介します。
ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(Hib)感染症とは?
Hibとは、「ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Haemophilus Influenza type b)」と呼ばれる細菌のことを指します。
19世紀末に、ヨーロッパでインフルエンザが流行した時、多くの患者のたんからあるHib菌が検出されました。最初当時の人たちはこのHib菌がインフルエンザの原因と考えて、インフルエンザ菌と名付けました。その後、1933年にインフルエンザウイルスが発見されるまで、Hib菌が“インフルエンザ菌”だと思われ、その名残が今も残っていますが、主に冬に流行るインフルエンザウイルスとは全く異なります。
Hib感染症の法律に基づいた届出は2013年4月から開始されました。
それ以前のHibの発生状況について国の統計はありませんが、Hib感染症の発生状況を調査した研究によりますと、2012年は髄膜炎等の重篤な感染症が10万人当たり1.5人程見受けられ、患者さんの数は徐々に減少傾向だと報告されています。
全数報告、7日以内に届出が必要な、5類感染症です。
▽症状
Hibがのどや鼻から入って、のどの奥の喉頭蓋(こうとうがい)、脳を包む髄膜、肺などに炎症を引き起こします。Hib菌が何らかのきっかけで侵入すると、肺炎、気管支炎、敗血症、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎、急性口頭蓋炎(きゅうせいこうとうがいえん)、化膿性の関節炎等の重篤な疾患を発症する場合があります。
Hibが脳を包む髄膜に着いて炎症を引き起こすと細菌性髄膜炎を発症します。細菌性髄膜炎は脳脊髄液(のうせきずいえき)が増えたり(水頭症)、脳の中にも膿が溜まったり(膿瘍)する場合もあります。
細菌性髄膜炎の主な初期症状は発熱と不機嫌くらいで、血液検査をしても風邪と区別できません。このことから、細菌性髄膜炎の診断が遅くなりがちになってしまいます。Hibによって起こる髄膜炎をHib髄膜炎と称します。
初期症状が出始めた後、頭痛、ぐったりする、不機嫌、けいれん、嘔吐、てんかん、意識がないなどが出てきます。その上、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌も多く、治療はかなり難しいです。Hib感染症で亡くなる子どもも2~5%いて、脳の後遺症が30%程度に残ります。
また、後遺症が無い様に見えても、中学生頃に軽度の知能低下が分かる場合もあります。
Hib感染症が恐ろしい原因は、赤ちゃんにとっては重症で命を落とす危険性があるからです。急性喉頭蓋炎になると重症化し、空気の通り道が狭くなり窒息して亡くなるケースも少なくありません。
▽原因
不明(特に乳幼児の上気道に常在)
▽かかりやすい年齢
Hib感染症の患者さんのほとんどの場合は生後3ヵ月から5歳未満で発症し、特に小さいお子さんでの発症に注意が必要となります。
主に気道の分泌物によりHibへの感染を引き起こし、症状が出ないままHib菌を保有(保菌)して日常生活を送っている子どもも多くいるといいます。
▽合併症
▽感染経路
▽診断基準
血液、脳脊髄液、胸水、中耳腔液等からHib菌のPCR法や、分離・同定により検出します。
▽治療法
▽予防策
Hibワクチン接種により、Hibが髄液や血液から検出される重篤なHib感染症を発症するリスクを95%以上減らすことが可能になったと報告されています。
Hibワクチンは1987年にアメリカで使用が始まり、WHOでは、1998年にHibワクチンを小さいお子さんへの定期接種ワクチンに推奨し、現在までに、世界120ヵ国でHibワクチンは使われ、これらの国ではHib髄膜炎は顕著に減少しています。
▽Hibワクチン
Hibワクチンは、2008年12月から日本で任意接種が可能となって、2013年4月から定期接種の対象となりました。Hibワクチンが導入されてからは、患者さんの数が減少しています。
Hibワクチンが導入される前は、日本の子ども達の細菌性髄膜炎の原因の12-20%がHibによるものでした。日本では年間およそ600人の子ども達がHib髄膜炎を発症していました。
Hib髄膜炎の致命率は先進国であっても3%であり、重症な後遺症が残るケースが多いです。
アメリカとヨーロッパでは1980年代からHibワクチンが接種されていて、Hibによる小さいお子さんの重いHib感染症は激減し、今では稀な病気になっています。同じ様に、日本でもHibワクチンの予防接種を開始した後の全国調査では、2014年と2015年はHib髄膜炎の報告はゼロになり、減少しています。
また、近年では抗菌薬に対する薬剤耐性菌が増えていて、治療が困難になっていることを受けて、Hibワクチンによる予防が重要です。
▽Hibワクチンの副反応
局所反応がメーンで発赤(ほっせき)(44.2%)、腫れ(18.7%)、しこり(17.8%)、痛み(5.6%)が見受けられますが、一般的には一時的なもので数日で消失します。 また、Hibワクチンを接種した人の数%に発熱が見受けられます。
重症な副反応として、非常に稀ではありますが、海外では、アナフィラキシー様症状やショック(呼吸困難・じんましんなど)、血小板減少性紫斑病、けいれん(熱性けいれん含む)といった副反応も報告されています。
▽接種できない人
画像・引用:Hib(ヒブ) 日本小児科学会
参考サイト
ヒブ(Hib)感染症について こどもとおとなのワクチンサイト(2023年)
インフルエンザ菌b型(ヒブ)ワクチン かわかみ整形外科・小児科クリニック(2023年)
ヒブ(インフルエンザ菌b型)について 湯梨浜町(2017年)
細菌性髄膜炎を発症する、もう1つの原因と言われている、
小児肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌によって発生する感染症の1つです。
肺炎球菌は、お子さんのほとんどが鼻の奥に保菌していて、大人が発症すると肺炎になるケースが多く見受けられますが、小さいお子さんが発症すると、細菌性髄膜炎、菌血症、副鼻腔炎、菌血症に伴う重症肺炎、中耳炎といった感染症を引き起こし、後遺症を残します。
髄膜炎をきたした場合には2%のお子さんが亡くなり、助かったお子さんの10%に難聴、四体麻痺、精神発達遅滞、てんかんなどの後遺症を残すとされています。
その多くが5歳未満で発生し、小さいお子さんでは特に注意が必要となります。小さいお子さんほど肺炎球菌を発症しやすく、特に0歳児でのリスクが高いと言われています。
Hibワクチン及び小児用肺炎球菌ワクチンは、2013年4月1日から、予防接種法に基づいて定期接種に加わりました。
2013年11月1日以降、小児用肺炎球菌ワクチンは「プレベナー7」から「プレベナー13」に変更されました。
小児肺炎球菌感染症の法律に基づいた届出は、Hib感染症と同年の、2013年4月から開始されました。
肺炎球菌に関しては、2023年に書いた主に大人用ですが、下記の記事を観て頂きたいです。↓
ちょっと久しぶりに感染症の記事を書きましたが、こうやって書いていくと、もちろん私も打ったものもありますが、私が子どもの頃と違って、ワクチンが随分増えた印象を受けます。
2024年度からは5種混合ワクチンとなって、この記事で冒頭に紹介したHibが加わりますね。ワクチンさえ打っておけば、かかる可能性は低くなりますし、これから主流となる5種混合ワクチンのスケジュールを、小さいお子さんがいるご家庭は注視して、接種スケジュールを観て欲しいと思います。
noteでも書いています。よければ読んでください。
コメントを残す