筋強直性ジストロフィーには、抗生物質の「エリスロマイシン」が有効?山口大学発表。 

筋強直性ジストロフィー エリスロマイシン

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

筋ジストロフィーとは、骨格筋の壊死・再生を主たる病変とする遺伝性筋疾患の総称です。筋ジストロフィーの中には多くの疾患が含まれますが、どの疾患も筋肉の働きに不可欠なたんぱく質の設計図となる遺伝子に変異が生じたことで発症する病気です。

遺伝子に変異が生じると、たんぱく質の働きが障害を引き起こすことから、細胞の正常な機能を維持できなくなり、筋肉の変性壊をきたします。その結果筋萎縮や線維・脂肪化が生じ、筋力が低下し運動機能など各機能に障害をきたします。

筋ジストロフィーは、国の指定難病の1つです。

この記事で紹介したいのが、筋ジストロフィーの1つの筋強直性ジストロフィーです。

筋強直性ジストロフィーですが、2023年12月に新たな治療法として、4年前から臨床試験が行われていることが発表されました。

全身の筋肉が萎縮する難病、筋強直性ジストロフィーの患者に感染症などの治療に活用される抗生物質の「エリスロマイシン」を投与し、有効性や安全性を確認するための臨床試験を行った結果、患者さんの症状を改善できる可能性が示されたと山口大学と大阪大学などの研究グループが、2023年12月27日に明らかにしました。

日本で2019年に開始された臨床試験(治験)で、身体内でたんぱく質の合成に関わる分子の機能が改善する傾向が見受けられました。早ければ2024年にも最終段階の治験を開始します。

今回は筋強直性ジストロフィーについてと、山口大学などが行う臨床試験の中身について説明します。

筋強直性ジストロフィーとは?

筋強直性(きんきょうちょくせい)ジストロフィーとは、大人で最も頻度の高い筋ジストロフィー症です。

顔や手足、喉の筋肉など色んな部位で筋肉が壊れて萎縮していくことで、今まで維持されていた筋力が維持できなくなって、「ペットボトルの蓋や缶詰が開けづらい」「ものが噛みづらい・飲み込みづらい」「つり革を握った時に手が離せなくなる」「つまずきやすい」などの特徴的な症状を呈します。

筋力低下に加え、全身のあらゆる部位に色んな合併症を併発する特徴があります。

先天性筋強直性ジストロフィーは生まれた時から「だらりとしている(フロッピーインファント)」程度の筋力低下があります。自分の症状に気付いていない軽症の女性の患者さんでも、先天性筋強直性ジストロフィーの赤ちゃんを妊娠することがあることで、女性の患者さんが妊娠を希望する時は、事前に十分な遺伝カウンセリングを受けて準備をしっかり整えて、出産に臨むようにして下さい。

人口10万人当たり7人程度の発症だとされています。原因となる遺伝子によって1型と2型に分類されますが、日本ではほとんどが1型です。

略称は世界中でよく使用されている「MyD」(英語のMyotonic Dystrophyの略)以外にも、「DM」(ラテン語のDystrophia Myotonicaの略)も使用されることがあります。

▽症状

ミオトニア(筋強直現象)という特徴的な症状で、筋肉に刺激が加わった時に生じる”こわばり”のことです。具体的には、診察用のハンマー(打鍵器)で親指の付け根の筋腹(母指球)や舌を叩いた時に、筋肉が持続的に収縮して勝手に動いてしまったり(叩打ミオトニア)や、手をぎゅっと強く握ると、その直後に素早く手を開くことが困難になったり(把握ミオトニア)が出現します。このことで、歩き出しづらい、上手く筋肉が動かせず、喋りづらいなどの症状が現れます。

最初に筋力低下に気付かれる部位として、足、下腿(じっと立っているのがツラい、つまずきやすい)、首(寝ていて頭を持ち上げにくい)、手先、前腕(ペットボトルのふたが開けづらい、つまむ力が弱い)などが多いのが特徴です。

軽症例では、筋症状が目立たず、白内障・耐糖能異常(糖尿病)のみを示すことがあります。眼瞼下垂という症状では眼の周りの筋肉が痩せて瞼が下がります。ものを噛む筋肉が痩せて顔の下半分が細くなるなどの特徴的な顔貌をしていることが多いとされる斧上顔貌だったり、おでこの部分の毛が禿げてくる前頭部脱毛も診断に役立つ特徴だと言えます。

▽合併症

画像・引用:この病気とは 特定非営利活動法人 筋強直性ジストロフィー患者会

主な合併症

・中枢神経症状:傾眠、性格変化、認知症状、疲労感

・心病変:心伝導障害、心筋障害、心不全、不整脈

・内分泌・代謝異常:耐糖能異常(糖尿病)、脂質異常(高脂血症)

・消化器症状:消化管拡張、下痢、便秘、腸閉塞、胆石症、肝機能異常

・眼症状:網膜変性症、白内障、眼瞼下垂

・耳鼻科症状:嚥下障害、中耳炎、難聴、副鼻腔炎

・良性・悪性腫瘍

・呼吸器症状:低酸素血症、呼吸筋麻痺、睡眠時無呼吸、咳嗽力低下、呼吸不全、無気肺

・骨肥大

・周産期異常:性腺機能異常、早産、死産、不妊症

・知的障害                              など

▽治療法

現在も根治的な治療は存在せず、対症療法を行います。筋力低下に関しては車椅子や装具の使用、拘縮予防のためのリハビリテーションを実施します。筋強直が非常に強い場合には抗てんかん薬・抗不整脈薬などによる薬物投与を実行することもあります。不整脈に関しては植え込み型除細動器(ICD)やペースメーカーの適応となる場合もあります。

また、糖尿病に関しての治療介入も必要となります。呼吸障害に関連して、誤嚥や無呼吸が生じることもあり、人工呼吸の補助が必要になる場合もあります。さらに肺炎を発症した時には抗生物質を使うことも検討されます。

参考サイト

筋強直性ジストロフィー MD Clinical Station 

筋疾患分野|筋強直性ジストロフィー(筋緊張性ジストロフィー) 難病情報センター

筋強直性ジストロフィー 東京逓信病院

筋強直性ジストロフィー メディカルノート(2017年)

2023年12月、

画像引用・参考:筋強直性ジストロフィーに対する世界初の根本的治療薬開発 ~医師主導第二相治験により有効性を支持する成果~ 山口大学(2023年)

筋ジストロフィーの一種で、日本に1万人を超える患者さんがいると推定される筋強直性ジストロフィーは、細胞でたんぱく質が上手に生成されず、全身の筋力の低下などを発症する進行性の難病で、現在も根本的な治療法はありません。

山口大学などの研究グループは、大人の患者数が最も多い筋強直性ジストロフィーを対象に治験を実施しました。抗生物質の「エリスロマイシン」を半年間にわたり患者さん30人に、「エリスロマイシン」を投与するグループと投与しないグループに分けて、たんぱく質を生成する機能を解析した結果、「エリスロマイシン」を投与したグループでは重篤な副作用を引き起こさずに安全性が確保され、症状を改善する有効性もデータで示されました。

新しい治療薬の開発には一般的に十年単位の時間と数百億円の費用が必要です。

研究グループは患者さんへの早期の薬の提供と、治療薬の開発にかかる時間、コスト抑制を重視し、安全性が確認されている既存の治療薬を別の病気の治療に転用する「ドラッグリポジショニング」という手法を選びました。

筋強直性ジストロフィーは、筋肉の再生に関わる身体内のたんぱく質の設計図である遺伝情報「メッセンジャーRNA(mRNA)」が正常に作られず、たんぱく質が正確に生成されないことが原因だと言われています。「エリスロマイシン」によって「mRNA」の作製に関連する分子が正常に機能する様になって、症状が改善すると期待が持たれています。

研究グループはこれから、最終段階の治験では筋強直性ジストロフィーによる筋力低下を抑制する効果など、詳細な効果を解析する予定です。

参考:筋ジストロフィーの一種に治療薬候補 既存薬を転用 日本経済新聞(2023年)

その上で、筋強直性ジストロフィーの患者さんの数を増やして治験を実施し、実際に症状の改善が見受けられるかの確認をし、根本的な治療薬の開発に結び付けたいといいます。

筋強直性ジストロフィーの治験の結果を総括した論文が、2023年12月27日に、イギリスの医学誌[イー・クリニカル・メディスン]に掲載されました。

今回の筋強直性ジストロフィーの治験を主導した、臨床神経学が専門の山口大学大学院医学系研究科の中森雅之教授は、記者会見で「世界で初めての筋強直性ジストロフィーの治療薬として患者さんからの期待も大きいです。国の薬事承認を含め、最短で2~3年で筋強直性ジストロフィーの患者さんに届けたいです。患者さんへの、安全性と有効性が確認できて、今はホッとしています。治療薬の開発に繋がる様に今後も研究を続けたいです」と意気込みを述べました。

記事を書くのが、凄く難しかったです。

まず筋ジストロフィーの説明をして、その後本題の筋強直性ジストロフィーに入っていったわけですが、筋強直性ジストロフィーという大きなカテゴリーがあって、それに細かく症状ごとに細分化されていました。さらに遺伝型の方や男女比、子ども、大人でも発症の比率がそれぞれに違い、読んでいて混乱しました。

「どこまで書いたらいいんだろう?」と調べている時に思ったのですが、あまり専門用語を使っても、読者の皆さんには読みづらいでしょうし、2023年に書いた、とある難病の記事を参考にしながら、少しでも読みやすい様に工夫をしました。

別に使われている薬を違う疾患に使う技術は、パーキンソン病の治療薬をALSの患者さんに使う、同じく2023年に書いたことと同じタイプの治療法だと感じました。

この記事での結論は2024年中に出るらしいので、これまでの治験でも良い結果が出ていますし、このまま承認されればいいなと思って、記事を書かせて頂きました。

noteでも書いています。よければ読んでください。

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左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。