この記事は約 9 分で読むことができます。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
昨今、スポーツ界ではジェンダー平等への意識が向上しています。2021年の東京オリンピックでは、女子選手の大会参加比率が47.7%と倍増し、2024年のパリ五輪では男女同数となると推定されています。LGBTQ選手への理解も加速しています。競技ダンスの五輪種目入りを目標に掲げる日本ダンススポーツ連盟もその流れをなぞり、変革に加わりました。
従来、男女の愛の駆け引きをメーンテーマとして踊られてきた競技ダンスです。選手の女性は、「その世界観を勿論大事にはしていきたいとは思いますが、変にルールで堅苦しくならず、女性同士のカップルでも男性同士のカップルでも好きに組めて、誰もが楽しんで競技を続けられるカタチになって欲しい」と語りました。同性同士のカップルが手を取り合っていけば、新たな愛のストーリーも紡いでいけるー。守るべき伝統は重んじ、変えるべき旧習は正そうとしています。
今回は競技ダンスで進むジェンダーレス化、同性同士でペアと組む女性の競技ダンスに懸ける想いについて迫ります。
競技ダンスで進む、ジェンダーレス化。
鍛錬された技術や洗礼された美しさを競う競技ダンスや、趣味で興じる社交ダンスは、男性と女性でカップルになるものだという固定概念があります。現在、同性同士のペア結成に背中を押す活動が浸透しつつあります。競技ダンスの男女比率では圧倒的に多い女性の活躍できるシーンを拡充させたい強い想いも抱きます。アマチュアやプロの世界ではどんな活動が行われているのでしょうか?
ダンススタジオの一角で、卒業証書を持った女子中学生2人がこう溜め息をつきました。「誰が決定したんだろう?。ジュニアシーズンが終了すると、男子とカップルを組まなきゃ競技を続けられないって」。2020年に公開の映画[レディ・トゥ・レディ]は、そんなシーンからストーリーが始まります。中学卒業をきっかけにカップルを解消した女の子2人が、大人になって再びカップルを組み、前代未聞の大会出場を目標に掲げる奮闘を描いた映画です。
ジュニアシーズンを終了した女子選手の想いを代弁した台詞とも言えます。従来から、女の子は男の子よりも競技ダンスの人口が多く占めます。そして男子選手は中学、高校となるに従って、続々と競技ダンスをしなくなり、他競技に移行します。総務省の2021年の社会生活基本調査によりますと、過去1年間に趣味やレジャーの一環で「洋舞・社交ダンス」を選択した人は129万2000人。この中で、およそ8割が女性でした。
競技ダンスというスポーツは、力強いステップを踏んで先導する「リーダー」と、追随しながら華麗に踊る「フォロワー(パートナー)」の2役から成り立ちます。追求される役割の相違から、任される性別が固定していることで、リーダーは男性役、フォロワーは女性役とも称されます。
中学3年生になるまでのジュニア区分では、競技を振興すべく女の子の同性同士のカップルでの大会出場も許可されていましたが、高校に進学すると同性同士のカップルは解消しなくてはなりませんでした。日本ダンススポーツ連盟の公認競技会に出場する条件に、「男性と女性がカップルを組まなければならない」と定義されていたからでした。ここ数年、メーンで男性が担当するリーダー役を女性が担うこともありますが、活躍できる場は極めて限定的でした。同性同士のカップルで競技会に参加可能なのは、昇級に影響を及ばさない競技会のみでした。
2022年春から認められた競技ダンスの規則に「出場可能なカップルは、男性役を担う登録者と女性役を担う登録者とのカップルとする」と明記されました。国内最高峰の全日本選手権を併せた公認競技会に、性別を問わず、自身が申し出た役割で出場可能となりました。同性同士のカップルも出場できることとなりました。
2023年春までの初年度に、男性役として女性15人、女性役として男性1人が競技会に登録しました。日本ダンススポーツ連盟の事務局長の男性は、「女性同士のカップルでも昇級のチャンスが与えられました。女性が競技ダンスを大人になっても続けていく1つのきっかけになれば」と力を込めます。
ですが、世界ダンススポーツ連盟の規則では今なお男女カップルが義務とされ、同性同士のカップルでの競技ダンスの世界選手権などへの出場の道は、断たれた状態です。日本でも同性カップルでの出場種目がまだそんなに沢山ありませんが、「いざそんな選択を行う時の手段となる枠組みを整えておくことが必要となります。
出場する参加者が各々の個性が発揮できる環境作りを構築していきたい」と話す日本ダンススポーツ連盟の事務局長の男性。新しい活動が、競技ダンスの可能性を拡大しつつあります。
お揃い衣装で登場した女性同士のカップルが、ラテンのリズムに乗せて同じ振り付けでダンスします。小刻みに奏でるステップも息が合います。3年前、「ラテンダブルス」は競技人口の多くを占める女性同士でもカップルを気軽に結成できる様にと新規に立ち上げました。
「社交ダンスは同性同士のカップルでも成立するという理解を、ただ浸透させたい想いでした」。「ラテンダブルス」を考案したプロダンサーの女性Aさんは、立ち上げた狙いを話しました。ドレスを着ることや社交ダンスに憧れを抱いても、男女でカップルを組むことに抵抗が生じ、競技ダンスをすることも躊躇してしまう女性もいます。
「友達同士でカップルを組むことや、自分が好きだなと思う女性プロと組んで競技会に出場できます。男性の先生に競技ダンスを習わなくてもいいということを。男女カップルではないと駄目だという固定観念が、近年で薄れていきました」と頷きました。
女性Aさんの胸中には、昔の苦い経験が思い起こされます。競技ダンスのプロになった20年余り前のことでした。元々男性役とされるリーダーの役割が好きで、教室で子ども達に指導する時も率先して名乗り出ました。女性の教え子とカップルを組み、発表会に女性Aさんは男装で参加したこともあったといいます。
「奇妙な視線で見られていました」。他の発表会の参加者が女性Aさんの教え子に、「どうして女性同士で参加したの?」「ちゃんと男性の先生から指導を受けた方がいいよ」と言っている声も耳に入りました。女性同士のカップルでの競技会の出場を断られたケースも起こりました。「生徒さんご本人は私と出たいのに…。どうしてできないんだ…」と葛藤しました。
競技ダンスの世界は競技人口が余りいない男性の方が重宝されやすいです。女性Aさんは「男女でしかカップルは組めないって言われると、女性プロの仕事が減り続け、経済力も落ちて、ますます発言しづらくなります」と危機感を露わにします。そのことで、世間から厳しい声で言われ続けても競技ダンスを続けてきました。
昔と比較して「タブーは減った」との実感は肌で感じます。「ラテンダブルス」で感じた引っかかりに、女性のリーダー役や同性同士のカップルの活躍する競技会が増える様に強く願っています。
画像・動画引用・参考:社交ダンスは男女同士のみでなく、男性同士・女性同士でも踊れる!! ASダンススタジオ
鍛錬された技術や洗礼された美しさを競う競技ダンスや、趣味で興じる社交ダンスは、男性と女性でカップルを組むものだという固定概念がありましたが、競技人口では男性より圧倒的に多い女性の活躍できるシーンを拡充させたい想いもあります。
ですが、持ち味の異なる同性同士のカップルと男女のカップルを同様の評価軸で公平に審査が可能なのか?取り組みの在り方も併せ、模索することは続きます。
女性Aさんとペアを組む、女性Bさんの想いは?
同性同士のカップルの競技ダンスには、男女カップルとは違う魅力もあるといいます。2023年2月初旬、プロダンサー9人が同性同士のカップルで踊る競技ダンスのイベントが東京都内にあるホールで開催されました。男性のプロダンサー同士の恋愛を描いたマンガ[10DANCE]にちなんだイベントで、6年前から開催されています。
このマンガのダンス監修に携わる女性Aさんも、相手役の女性Bさん一緒にドレス姿で、優美にタンゴなどを踊りました。
女性Bさんが指導する教室にもリーダー役を志望する女性は増えてきた傾向です。「人の気持ちを理解することが上手だったり、方向感覚に優れてたり。女性役より男性役の方が適任だと理解する女性は結構いらっしゃいます」と肌で感じています。
男性同士のペアで発表会のダンスフロアに立った男性は、「男性同士のカップルでの大きい筋肉のぶつかり合いで生まれるスピード力は、男女カップルではその8割程度しか魅力が出せません。その反面、女性同士のカップルでなければ生み出せないしなやかさ、曲線美もあります」と言葉を込めました。
この様にスポーツにおいてジェンダーレス化が進んでいますが、世界の大会でそれが認められない限り、そのことが主流となるのはまだまだ遠いかもしれません。
この記事を書いて、必ずしも異性同士のペアが良いとは言えないと気付きました。日本の競技ダンスの基準が世界でも標準となる日が来て欲しいなとも思いました。
noteでも書いています。よければ読んでください。
コメントを残す