《精神》地域包括ケアシステム:勉強会に参加して感じた問題点と改善案

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こんにちは、改めましてM. Jです。

「地域包括ケアシステム」とは、障がい者が「病気」や「転倒」のために介護が必要な状態になっても「住み慣れた家・地域」で居住し続けることができるために創られる「システム」のことです。

精神障がい者においても、必要以上の日数を入院するのではなく「在宅・地域での生活を推進する」という目的で創られます。

前回の記事では、「地域包括ケアシステム」の理論について取り上げたのですが、難しい部分もあったと思います。しかし、厚生労働省は2025年をメドにこの「システム」を開始しようとしています。

今後は「全く知らなーい!」では済まされなくなりますので、この記事をご覧の皆さん、具体的な内容を少しでも多く知っておかれたほうがいいと思います。

障がい者のみならず、現在健康な方も含めて全てのかたの日常生活にもかなり関係がありますので、ご覧になっていただけるとありがたいです。

今回は「地域包括ケアシステム」の第2弾として、基本理論の第1弾をもとにした「精神障がい者に向けての地域包括ケアシステム」について記事にしていこうと思います。

  • 精神障がい者への地域包括ケアシステム:国の方針
  • 精神障がい者への地域包括ケアシステム:内容
  • 医療 ➡️    医学モデル・生活モデル
  • 精神科医療の問題点
  • 現在の公的機関の考え方
  • 精神障がい者への対応:国への提言

◎なお、地域包括ケアシステムの基本的なものについては前回の記事をご参照ください。

精神障がい者への地域包括ケアシステム:国の方針

現在の精神障がい者の状態と国の方針は以下の通りです。

【精神障がい者の状態】

  • 近年、精神疾患を有する患者の数は増加傾向にあり、平成29年には約420万人となっている。
  • 精神障がい者は、傷病別の患者数をみると脳血管疾患や糖尿病を上回り、国民にとって身近な疾患となっている。

【国(厚生労働省)の方針】

  • 精神障がいの有無や程度にかかわらず、「医療・障がい福祉・住まい・社会参加・地域の助け合い」などが包括的に確保された「地域包括ケアシステム」の構築を目指す方針。
  • 平成29年、精神障がいにも対応した「地域包括ケアシステム」の構築が提唱された。
  • 介護保険でいうところの「地域包括ケアシステム」とは別物ということになっている。
  • 「地域包括ケアシステム」は障がい者を含めて対象とする概念。

介護保険分野では、すでにこの「システム」の概念がありますが、今後厚生労働省では精神障がい者の分野でも「住み慣れた家・地域」での生活のために「地域包括ケアシステム」を導入していくようです。

果たして、精神障がい者への「地域包括ケアシステム」はどのような感じになっていくのでしょうか?次の項では、精神障がい者への「地域包括ケアシステムの内容」について書いていきます。

精神障がい者への地域包括ケアシステム:内容

【精神障がい者への地域包括ケアシステムの要点】

《1》地域住民の理解促進

◎地域住民の「精神障がい者に対する理解」が必要不可欠。

◎障がいによる「差別」や「偏見」を解消していくことが重要。

《2》精神障がい者本人のニーズに応じた支援

◎精神障がい者本人の「ニーズ」を引き出すこと。

◎精神障がい者「1人1人に応じた支援」がなされること。

《3》地域アセスメントに基づく目標設定・ロードマップの作成や検証

  • 「地域アセスメント(地域での計画)」が必要となってくる。
  • 「PDCA」サイクルを回していくことが必要。
  • ここでは、地域の状況を明らかにして、把握した情報を分析することを指す。

《4》支援者間のネットワークによる協働

  • 「連携体制の促進」と「新たな連携」が必要。

《5》保健所の役割

  • 「地域移行支援」や「地域定着支援」を推進するために保健所が中心となる。
  • 精神障がい者が地域で生活するうえで「保健所の介入が重要」となる。

《6》精神医療の役割

◎医療の「適切な介入」または「継続的な関わり」が重要。

《7》障がい福祉サービスなどの利用と社会参加の促進

◎地域における、「多様なニーズ」または「多様なサービス」を整備すること。

◎精神障がい者本人の「社会参加の創出」が重要。

◎市町村が中心となって「基盤整備」していくことが必要。

【精神障がい者への地域包括ケアシステムの具体的な内容】

①医療

  • 長期入院患者の地域移行
  • 長期入院患者の地域定着にかかる課題への取り組み
  • 精神科救急医療体制についてなど

②障がい福祉

  • 地域移行・地域定着を支援する事業所の育成
  • 精神障がい者支援の質を確保するための障がい福祉サービス事業所の育成

③保健・予防

  • 精神保健福祉相談の課題への取り組み
  • 各種家族相談と効果的な実際の取り組み
  • 引きこもり支援の現状と課題への取り組み
  • 依存症対策の課題への取り組み

④住まい

  • 精神障がい者の住まいの確保に係る課題への取り組み

⑤社会参加・就労

  • 効果的なピアサポーターの養成または育成
  • 就労支援の現状把握

⑥地域の助け合い・教育

  • 精神障がいの理解促進に向けた効果的な普及啓発の推進など

 

精神障がい者への「地域包括ケアシステム」の要点、理解できる部分はありますが・・・。上記《1》と《2》の地域住民の理解と本人のニーズで、かなりつまずきそうな感じがします。

また、上記《4》〜《7》の体制づくりは、今までつくられていないので、ものすごく難しいのではないかと考えられます。

現在の「精神保健・予防」の方式では、精神障がい者が「家や地域で生活していくことは難しい」と考えています。「充実した家・地域での生活」をすることができないのではないでしょうか!

次の項では、考え方を切り替えて「自分らしい暮らし」について書いていきます。

医療 ➡️    医学モデル・生活モデル

「自分らしい暮らし」をしていくためには、どのようなことが必要でしょうか?

「医学モデル」と「生活モデル」に分けて考えていこうと思います。

  ①医学モデル ②生活モデル
目的 病気の治療 QOL(生活の質)
場所 病院 コミュニティー
評価の目標 医学的データ QOL(生活の質)など
ターゲット 病気 人・環境・生活
従事者 医師が中心 多職種

実際に「地域包括ケアシステム」で重視されるモデルは「生活モデル」です。

「住み慣れた家・地域」で充実した生活ができるかがものすごく重要です!

そのためには、多くの職種の人達が「連携」することが必要不可欠です!

ところが、精神科の医療では「生活モデル」はまだまだ確立されておらず、特に「QOL(生活の質)」の部分は満たされていかないのではないかと思います。

精神障がい者への「地域包括ケアシステム」を機能させていくことは難しいのではないかと考えられます。

次の項では、精神障がい者への地域包括ケアシステムを実施するにあたって「阻害因子」となる「精神科医療の問題点」について書いていきます。

精神科医療の問題点

「地域包括ケアシステム」を精神障がい者に対して導入するには、介護保険対象者に対しての「地域包括ケアシステム」のようには簡単にはいかないと考えています。それは「精神科医療の問題点」が多く存在するからです。

【現在の精神科医療の問題点】

精神障がい者に対する「重症度認定」がなされていない

◎「重症度」によって対応が違ってくるが、それに対してきちんと対応できていない。

障がい者の1人1人に対しての「行動プラン」が確立されていない

◎病院・施設・事業所など「各部署だけ」で計画を立てている。

介護保険のような、多職種が集まる「サービス担当者会議」がなされていない 

◎他の職種が「どんなことをしているのか」分かりづらい。

地域での「相談機関」がかなり少ない

◎保健所単位では数が少ない・距離が遠いため、相談機関としては不十分!

精神障がい者のための「SST(社会生活技能訓練)の場」が少な過ぎる

◎精神科の「病院の一部」に限られている。

精神障がい者のための「憩いの場」や「ストレス解消の場」が少な過ぎる

◎一部の「精神科の病院」に限られている。

◎「ナイトケア」や「休日のケア」が不十分である。

精神障がい者が就労した時のフォローや「相談機関」が不十分である

精神障がい者に対して「訪問診療」の数が少な過ぎる

◎外来診療だけでは「不十分」なところがある。

地域に出向いている精神科の医師が少な過ぎる

◎「しっかりした取り組み」をしているところが少ない。

現在の「精神科医療」には、ハッキリしている部分だけでも「上記の問題点」があります。

精神障がい者に対して「地域包括ケアシステム」を実行するためには、最低でも「上記の問題点」を解決していくことが必要不可欠です。

さまざまな「問題点」があるので「地域包括ケアシステム」を導入していくのは難しい感じがします。

そこで、公的機関の職員さんは「地域包括ケアシステム」についてどのような考え方を持っているのでしょうか?

次の項では、現在の公的機関の考え方について書いていきます。

現在の公的機関の考え方

前回の記事のように詳しく聞くことができていないのですが、精神障がい者への「地域包括システム」についてききました。

【保健所の職員さんの説明】

  • まだ「地域包括システム」自体が機能しているわけではない。
  • まずは「介護保険の対象者に向けてのシステム」が始まってからのことになると思う。
  • 精神障がい者については、まだ何とも言えない部分が多い。
  • まだ始まってみないとわからない状態だが、とにかく「医療・地域・公的機関」が連携して障がい者に対してサービスを提供することになると思う。

 

精神障がい者への「地域包括ケアシステム」については、本当に未知数です。

精神障がい者に対する「地域包括ケアシステム」が言われることさえ、10年以上後のことになるかもしれません。

厚生労働省は「2025年をメドに開始しよう」とのことですが、あまりにも「精神科医療の問題点」が多く、実施することさえ難しいのではないでしょうか?

次の項では、国への提言について書いていきます。

精神障がい者への対応:国への提言

以上、精神障がい者への地域包括ケアシステムについてでした。

精神障がい者への「地域包括ケアシステム」の導入は、かなり難しいと考えています。

前述した「精神科医療の問題点」が多いからです。ということで「今後の精神科医療」がどのようになるのが望ましいかについて触れていきます。

【精神障がい者への対応:国への提言】

精神障がい者の重症度を把握し、介護保険のような「認定度合」にする

精神障がい者の「行動プラン」を立案して、計画を実行する

多職種(精神科医師、訪問看護師、相談機関の担当者、ハローワークの当者、市町村の職員など)が集まって「サービス担当者会議」を行う

精神障がい者の相談機関を「市町村単位」で設置する

地域包括支援センターとは別の枠組みで考える

精神障がい者の「ナイトケア」や「休日のケア」を充実させる

→公的機関だけではなく「民間企業」で精神障がい者に対するケアを考える

「土・日・祝日」への対応を重視する。電話対応だけでは不十分!

精神障がい者の「SST(社会技能訓練)」の場を増設する

「憩いの場」「訓練の場」などはものすごく重要

精神科の「訪問診療」を充実させる

訪問診療できる精神科を増設するなど

地域に出向く「精神科職員」を増やす

医師・看護師・精神保健福祉士など

精神科の診療報酬を大きく改定する

「社会復帰計画加算」や「障害者就職加算」などを導入する

精神障がい者に対応した「地域包括ケアシステム」は、これらのことをすべて実行しない限り機能していきません!これが機能していくためには「システムの創設・整備」「マンパワー(人的資源)を多くすること」が必要不可欠です!

精神障がい者を対象とした「地域包括ケアシステム」が機能するためには、最低限「精神科の医療関係者」が「地域に出やすいようにしていくこと」が必要不可欠だと思いますし、そのための「精神科医療の診療報酬の改定」が求められます。

以上のように、現在の「精神科医療のシステム」では問題点が多く「大幅な改革」が必要となるのです!

実際に精神障がい者に対応した「地域包括ケアシステム」が機能していくためには、障がい者1人1人の行動にかかっているといっても過言ではありません!

記事をご覧いただき、どうもありがとうございました。

今回の記事は、以下の文献を参考にしました。

参考:厚生労働省:精神障がいにも対応した地域包括ケアシステムの構築

   厚生労働省:精神障がい対応の地域包括ケアシステム6月版(PDF)

   厚生労働省:精神障がい対応の地域包括ケアシステム3月版(PDF)

   鎌倉市基幹相談支援センター:地域共生社会・暮らし(PDF)

   岐阜市:精神障がいにも対応した地域包括ケアシステムとは(PDF)

   新潟県社会福祉協議会:地域アセスメント(PDF)  

   CYDAS:PDCAサイクルとは?

以前書いた精神科医療の記事をしっかりご覧になっていただけると有り難いです。

今後について

興味があることや、今後書いていきたい記事のテーマとして、デパートにいる時の災害時の対応、エスカレーターの誘惑に負けないで運動しよう!、どうする!危険なアレルギーへの行動!があります。

皆さんに役立つ情報を届けていければと考えています。
今後ともよろしくお願いします!

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