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皆さんは、ダウン症の天才書家・金澤翔子さんをご存知の方も多いのではないでしょうか?
東京出身でダウン症の書家として知られる金澤翔子さんは、5歳から母に師事して書道を始め、20歳の時に銀座で初めて個展を開催しました。伊勢神宮や法隆寺など日本各地の寺社以外にも、ブラジルやアメリカなどで個展を開催したりなど、国外でも奉納揮毫や個展を重ねてきました。
また、NHK大河ドラマ[平清盛]の題字を担当したり、東京オリンピック・パラリンピックの公式ポスターも手掛けました。
母の泰子さんは翔子さんが生まれてダウン症と分かった時、「希望がないから娘を育てられない」と一時絶望を感じたといいます。ですが、書家として着実に歩みを進める娘との二人三脚で、希望や夢を見出してきました。
そんな書家、金澤翔子と母・泰子を追ったドキュメンタリー映画『共に生きる 書家金澤翔子』の公開日が2023年6月2日(金)に決定し、ポスタービジュアルが解禁されました。
いまや天才書家と呼ばれるようになった翔子さんと、その書の師でもある母・泰子さんの母娘に迫った本作です。
今回はこの映画についてと、翔子さんが書道を始めるまでの道のり、翔子さんの書道を紹介した記事などをご案内します。
概要
この度解禁されたポスタービジュアルは、金澤翔子がその手で書いたダイナミックで力強いタイトルと、母娘の笑顔が印象的な一枚。天才書家として注目され世界的な活躍を見せる翔子氏だが、「何度も、ふたりで死のうと思ったー。」というコピーから、決して上り調子ばかりではなかった2人の人生が窺える。生まれてすぐにダウン症と診断された翔子に、母・泰子はどう向き合ってきたのか…。
二人三脚で才能を開花させた母娘の、絆の深さを感じさせるビジュアルとなっている。
画像・引用:天才書家とその母の絆とらえる『共に生きる 書家金澤翔子』ポスタービジュアル cinemacafe.net(2023年)
予告編も公開中
ここからは、翔子さんの書家としての歩みを語ります。
翔子さんが書道を始めるまでの道のり
翔子さんの作品に魅了された1人が、写真家の宮澤正明さんです。
宮澤さんは、150冊超の写真集を出版し、伊勢神宮など神社仏閣の洗練された美しさを収めた作品は高い評価を受けました。
今から2年前の2021年、宮澤さんが、初めて翔子さんの書を観ました。友人に誘って貰い、東京・六本木で開催されていた翔子さんの展覧会に出かけました。
翔子さんの作品が目に入った瞬間、宮澤さんはその場に立ちすくみました。その存在感に圧倒されました。「出直さなければならない」と思い、日を改めて再度翔子さんの展覧会を訪れました。
二度目の来場では、許可を獲得し、翔子さんの作品をカメラで撮っていきました。飛び散った墨のかすれ、力強さ…宮澤さんはカメラのシャッターを切る手が止まりませんでした。いつの間にかおよそ1万点の写真をカメラに収めていました。
宮澤さんは、その後翔子さんの母の泰子さんのもとに足を運び、自分の意思を伝えました。「映画なんて、荷が重いですよ」と最初は断り続けた泰子さんでしたが、宮澤さんの熱意に押され、首を縦に振らざるを得ませんでした。
ですが、お二人のことを詳しく理解していく間に、宮澤さんは当初考えていた映画の構想から変更していくことに決めました。
“芸術”が産声を上げたベースには、母としての大きな悩みと苦しみ、そして、母の想いを受け止めた娘のおおらかさがあったからでした。
泰子さんが当時42歳の時に、翔子さんは産まれました。泰子さんの日記は、翔子さんの誕生から1ヵ月余り経過した頃に始まりました。主治医から、翔子さんはダウン症で、知的障害もあると思いますと伝えられました。
どうしてそこまで…と思うかもしれないでしょう。ですが、当時は、ダウン症に関する知識が、医学的にも余りありませんでした。
泰子さんは、1人で母として苦しみ、悩み続けました。夫の裕さんにも、心に秘めた想いを打ち明けることができませんでした。
泰子さんは、ダウン症や障害に関しての本を読み漁りました。障害を抱えた長男のことをテーマに書かれた大江健三郎さんの作品も読みふけり、翔子さんとの今後について考えました。
泰子さんの気持ちは激しく揺れ動いていました。
ある時には翔子さんと共に、自分も死ななければならないとさえ、思い詰めていました。
ただ、翔子さんを抱っこした時、その笑顔は可愛らしかったといいます。
一緒に死ぬことなど、できるはずもありません。共に生きていくことを決意した泰子さんは、翔子さんが5歳になった時、2人で一緒にできることに取り組もうと思いました。
自分が取り組んできた「書」を、翔子さんにも教えようー。
翔子さんは、言葉を上手に発することができず、筋力も弱かったといいます。始めは小学校の通常学級に通学していました。
ですが、その後翔子さんが10歳になった時、泰子さんは障害を抱える人が通学する遠くの学校へ移る様に、学校側から告げられました。
悔しくて、悔しくて、数ヵ月間、翔子さんを学校に通学させず、泰子さんは自宅に引きこもりました。そして、泰子さんは「般若心経」を翔子さんに書かせました。色んな価値観に囚われない生き方を説いた276の漢字を、毎日、毎日。時には叱りながら、涙を流し続けながらも、毎日毎日繰り返しー。
酷なことをさせたかもしれないと、現在の泰子さんは振り返りました。ですが、「書」以外で翔子さんと結び付く手段を知りませんでした。
この様な経緯があったことで、端正な翔子さんの楷書は、形成されていきました。
参考:ダウン症の書家・金澤翔子とその母 サブカルjournal byNHK(2023年)
翔子さんは、言葉の意味を理解することが苦手です。「ここは、“平行”に書いて下さい」と言われても、“平行”の意味が理解できません。
泰子さんは、翔子さんと一緒に線路を観に行きました。線路に着くと泰子さんは眺めながら、翔子さんの両手を平行にして、繰り返し上げたり下げたりを行いました。“平行”という概念を、身体を使って、身に染み込ませていきました。
また、翔子さんには「いつも通り」という言葉の概念も詳しく分からなかったといいます。
ですが翔子さんには、実は毎日決まった時間に行うルーティーンがありました。決まった時間に喫茶店を訪れ、決まった時間に仲良しのおばあさんに会いに行き、和菓子屋に足を運びます。
そのルーティーンが、「いつも通り」なのよと、泰子さんは翔子さんに伝えました。
「いつも通り」、「いつも通り」…
何度も泰子さんから言い聞かされる間に、翔子さんは、いつの日か「いつも通り」の意味が分かったといいます。「いつも通り」と声を出し、翔子さんは満面の笑顔をこちらに見せてくれました。
2021年の翔子さんの個展【つきのひかり】
東京都の六本木ヒルズにある「森アーツセンターギャラリー」で、2021年12月22日(水)から2022年1月8日(土)まで、書家・金澤翔子さんの個展【つきのひかり】を開催しました。
本【つきのひかり】は「飛躍」「自立」「旅立ち」という3つシーン構成で、年代毎の作品・トータル50点以上と併せ、翔子さんの書家としての人生を体感して頂けます。代表作の「共に生きる」「風神雷神」や、最新作の「一文字」シリーズ、翔子さんの書家人生での史上最大規模を誇る15mの完全新作となる「心に光を 夜空に月を」も個展にて展示しました。
本【つきのひかり】は、書家デビューした20歳の作品をメーンとした「飛躍」のシーン。一人暮らしを始めた30歳以降の作品をメーンとした「自立」のシーン。現在の翔子の新しいチャレンジを目撃する「旅立ち」のシーン。「ハッピーと元気と感動を、心を込めて」そう説明する翔子さんの書。生い立ちとともに追っていくことで、書に親しみを感じる人にも、初めて書を体感する人にも、翔子さんが持つユニークで力強い、前向きなエネルギーを体感して頂ける個展となっています。
画像引用・参考:書家 金澤翔子展「つきのひかり」の全貌を公開。完全新作で金澤翔子史上最大規模となる15mの超大作「心に光を 夜空に月を」や、「一文字シリーズ」も展示。 PR TIMES(2021年)
私と書道。
私の叔父さんですが、仕事をしながら書家をしています。時々展示会にも出すそうです。祖母の家には、叔父さんの書が飾られています。
母が叔父さんに、「日日是好日という言葉が好きだから、書いて欲しい」と言いましたが、叔父さんは「日が多いのは、書的には良くない」と言われ、未だに書いて貰えません。
私と書道のエピソードはそういう感じですが、金澤翔子さんに関しては、お名前は存じなくても知っていました。ダイナミックな書が素敵だなと感じていました。
この映画は情報解禁から知っており、この記事を書く時に、映画の公式サイトで上映映画館をチェックしました。福岡県は博多区のみでした。
私はコロナ禍が始まってから、福岡市へ映画を観に行かなくなりました。観に行きたいなと思いますが、久々の福岡市での映画観賞となると今から緊張で、何より「移動時間もある中で、良い時間で、映画が上映するだろうか?」と、心配は尽きません。
私は映画館で翔子さんの書を浴びたいと思っています。何とか観に行けないかと、公開当日後は、上映スケジュールとにらめっこしたいと思います。もう予告編だけでも、うるうる来ましたし。素晴らしい映画に違いないと、確信しています。
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東京タワー文化大使に任命 書家の金澤翔子さん 揮ごうを披露 NHK NEWS WEB(2022年)
参考サイト
https://twitter.com/kanazawas_movie?s=21&t=hQlRcHs2oQrT0aRaseq9iA
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