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こんにちは、翼祈(たすき)です。
厚生労働省が3年ごとに実施している「患者調査」の平成29年(2017)調査によれば、歯肉炎と歯周病の総患者数は398万3,000人で、前回の調査よりも66万人以上増加。性別では、男性162万1,000人、女性236万6,000人で、5人に4人が罹患している国民病の1つです。そんな他の病気も誘発する恐れのある歯周病から守ろうと、政府は『国民皆歯科健診』の導入を令和7年度を目安に義務付ける事が分かりました。
今回はその政策の概要についてお伝えします。
2025年度、国民皆歯科健診の導入へ。
政府が2022年6月上旬に掲げる経済財政運営の指針「骨太の方針」に、全国民に毎年の歯科健診を義務付けをする『国民皆歯科健診』の導入に向け、検討に入ることが2022年5月29日、分かりました。政府・自民党では令和7年頃の導入を目安に掲げています。
65歳以上の高齢者は、自身の歯を多く残し、よく噛めている人ほど生活の質および活動能力が高く、かつ健康も維持しやすく、ほかの病気の誘発を抑制することも出来て、入院回数が少ない事が分かっています。逆に歯周病などを長年放置すれば糖尿病や心臓病の合併症など、全身の病気に関連する大病に繋がりかねない可能性も指摘されています。厚生労働省は日本歯科医師会(日歯)と提携し、80歳で自分の歯を20本残す「8020運動」などを加速させてきました。
参考:<独自>「国民皆歯科健診」検討開始へ 骨太方針 産経新聞(2022年)
2021年6月、自民党内に議員グループ「国民皆歯科健診実現議連」が発足。この議連の働きかけで、同2021年10月の衆院選では「生涯を通じた歯科健診の充実(国民皆歯科健診)を進めます」と自民党の公約に初めて記され、これを受けて、日本歯科医師連盟では「国民皆歯科健診」の啓発ポスターを作成。衆院選公示日まで「印刷して歯科医院の診療室などにご自由に掲示ください」などと促していました。
歯周病と医療費抑制が狙い。
『国民皆歯科健診』は、社会保障としての歯の健康維持を介して国民全体の医療費を抑制する狙いで、具体的な検討を始める方針です。
国が提唱する健康寿命を延ばす「8020運動」と歯を多く残すには、虫歯だけでなく歯周病などの早期発見と治療がとても重要で様々な病気を予防することを目指します。ただ、日本国内において歯科健診の受診率はかなり低いです。国民に義務化しているのは1歳半と3歳の乳幼児、学校に行っている時や小中高生の学校健診のほか、塩酸などの歯に有害な化学物質のガスを業務で使用する人などに限定されてます。
日本全国の約7割の自治体に関しては、40歳から10年に1度、健康増進法で定められた歯周病対策の歯科健診なども実行していますが、それでも歯科健診の受診率は1割にも満たないのです。
『国民皆歯科健診』には歯科健診の対象の拡大や、歯周病を早期に発見するための簡易検査などの導入が想定されていて、原案では、他に「歯科専門職による口の中の健康管理の充実」などが組み込まれています。また、市場価格に左右されない『国民皆歯科健診』で使用する材料の導入推進も組み込まれています。
参考:「国民全員に歯科健診義務」検討 ほかの病気誘発抑える狙い FNNプライムオンライン(2022年)
議連の中心メンバーである参院議員は、「高校まで義務付けている歯科健診を、年一回は全国民が受診することで疾病の予防と国民の健康寿命の延伸につなげ、結果として国民医療費を適正化し、国民皆保険制度の維持を図ろうとするものです。『国民皆歯科健診』は、口腔の健康を体の健康につなげるという国の健康政策の突破口になるはずです」と話しています。
国民の反応。
30代
「人生死ぬ最後の時まで、食は楽しみたいと思うので、いいことかなと思います」
70代
「いいんじゃないですか。どうしても歯は、体のほかの病気と違っておろそかになりますよね。具合の悪いところに気づく、それはいいと思いますね」
国民皆歯科健診に関するアンケートの結果を発表
本社を東京都渋谷区に置くブランディングテクノロジー株式会社が経営する歯科医院の検索・予約ポータルサイト「歯科タウン」が、2025年度を目標に導入が検討される「国民皆歯科健診」に関係するアンケートを実行し、発表しました。このアンケートを集計した結果、9割以上の人が、「国民皆歯科健診」が導入されたら歯科健診を受診したいと思っている実態が明らかとなりました。
画像引用・参考:歯科タウンが国民皆歯科健診制度に関する意識調査を公表 PR TIMES(2022年)
その他、「国民皆歯科健診を行うことで、税金が投入されることに関してどう感じますか?」と、「あなた自身のオーラルケアに対しての意識は高い方だと思いますか?」などの質問に関してのアンケート結果も寄せられています。詳しくは参考サイトをご覧下さい。
『国民皆歯科健診制度』に対する歯科医の声
東京渋谷区にある株式会社シンフォニカルが携わる歯科医院の検索・予約ポータルサイト「歯科タウン」が、『国民皆歯科健診制度』に関連するアンケート調査を歯科医31名に実施して発表しました。
質問①:『国民皆歯科健診制度』に関して良いとお考えですか?
『国民皆歯科検診制度』に関して、「凄く良いことだと思う」・「良いことだと思う」の回答を合わせると77%にも達しました。ほぼ大半の歯科医が、好意的に受け止めています。
質問②:『国民皆歯科健診制度』に関して素直にどう感じましたか? ※複数回答可
1番多く寄せられた回答は、「オーラルケアの重要性を訴えることであり、凄くいいきっかけになると思う(48.4%)」と「国が制度化すれば国民の意識変革に期待が持てる(48.4%)」でした。肯定的な意見を多く頂きましたが、僅かな差で「『国民皆歯科健診制度』が出来上がっても、そんなに国民の意識変化や行動変容は出来ないと思う(32.3%)」などの否定的な意見がありました。
質問④:「歯科タウン」の利用者アンケートでは35%に至る人が全身疾患を防ぐ為にオーラルケアが大事なことを知りませんでした。この数値についてどう捉えますか? ※複数回答可
以前、「歯科タウン」を使い、歯科医を予約した一般の人へ「全身疾患を防ぐ為とオーラルケアが大事」に関連するアンケートを行いました。その結果は、35%に至る人が「全身疾患を防ぐために、オーラルケアが大事なことを知らなかった」という結果になりました。
今回はこの結果を受けて歯科医からは、「国や歯科医師会などでもっと大いに啓発して貰いたい(58.1%)」「TVや新聞、インターネットなどの報道媒体からももっと大いに啓発して貰いたい(51.6%)」など、もっと大いに『国民皆歯科健診制度』への発信する必要であるとの意見も寄せられました。
画像引用・参考:歯科医師の大多数が国民皆歯科健診制度に肯定的なことが判明 PR TIMES(2022年)
私は賛成派。
私の父なんですが、煙草を吸います。本数は多くないはずですが、50年以上煙草を吸っています。普通吸われる方は歯のケアをされるはずですが、父は歯のケアもろくにせず、病院に行かない事が美徳だと思っている人で、歯がどんどん抜けても病院へは行きませんでした。
ある日母から「お父さん、下の歯、1本しかないよ」と言われ、「いや、まさかーぁ」と思っていましたが、この間父が口を開けて上を向いた時、本当に下の歯は1本でした。ヤニで黄色くなって、何か出土した縄文人の歯みたいでした。普通にショックでした、、、
父が最近硬いものを食べず、柔らかい、かつスープ系を好む理由が分かりました。
その1本の下歯の事を言うと、「貴方が治療費くれるなら、歯医者行きますよ」と返しましたが、父は毎月必ず煙草代を生活費から別に分けている人なので、治療費名目で渡したら、恐らく間違いなく煙草代に消えます。
なので、まだ施行されていませんが、病院に行かない人でも、義務化なら強制力がありますし、父の為にも私は賛成派です。
noteでも書いています。よければ読んでください。
歯科医院に勤務しています。皆歯科健診になるのは患者様の健康のためにも医師が口に興味をもってもらうチャンスになることもよいことだと思います。一方、それに伴う予算や小さな企業の負担、患者さんがどうして受診できなかったかの原因や健診後の通院にどうつなげるか、虫歯や歯周病にかかわる社会的な環境、過大広告としか思えないスポーツドリンクの宣伝など、健診だけでは到底医療費の削減につながらないと感じます。ソフトドリンクやスポーツドリンクを、水やお茶より高く販売する、スポーツドリンクの過大広告を規制する、食べ物や飲み物の選び方を教育することにも目を向けてほしいです。
ぶんちゃん様。
コメントありがとうございます。まさか実際に現場に従事していらっしゃる方から頂けると思わず、貴重なご意見ありがとうございます。
スポーツドリンクはそうなんですね。私は10年以上前に、薬の影響からそれが起因で糖尿病になり、その時の主治医に、まだこの当時世の中には全く販売がなく普及していなかった、0キロカロリーのスポーツドリンクの推奨をされました。この当時から飲んでいます。
スポーツドリンクにもそんな盲点があるなんて、存じませんでした。本当に知らなかったので、現場の声を届けて頂き、ありがとうございました。今後の記事の参考にさせて頂きます。