『私だけ聴こえる』。〜耳の聴こえない親を持つ子、コーダに迫ったドキュメンタリー映画〜 

この記事は約 9 分で読むことができます。

こんにちは、翼祈(たすき)です。

2022年3月27日に開催された、第94回アカデミー賞ではろう者をモデルにした、【コーダ あいのうた】が初の男性ろう者俳優で助演男優賞を獲得と3冠に選ばれました🎊

その映画とは別にコーダの子供たちを追ったドキュメンタリー映画『私だけ聴こえる』が2022年5月に公開されます。今回はコーダがテーマの2つの映画について、お話ししていきます。

『私だけが聴こえる』メインビジュアル公開

耳の聴こえないろうの両親から生まれた、耳の聴こえる“コーダ”の子どもたちが揺らぎながらも自らを語り、成長していく物語を描いたドキュメンタリー映画『私だけ聴こえる』が2022年5月28日(土)シアター・イメージフォーラムより全国にて順次公開決定。メインビジュアルが完成しました。

メインビジュアルでは、主人公ナイラの横顔を基調に、手や耳のイラストを加えて、他者と繋がりが象徴的に描かれています。「私はずっとろうになりたかった」というナイラの言葉と共に、まだ広く知られていないコーダの世界を表現し、社会に知らせていきます。

あらすじ

ろうの両親から生まれた、耳の聴こえる子どもたちはコーダ(CODA:Children Of Deaf Adults)と呼ばれる。家では手話で、外では口話で話す彼らは、学校に行けば“障がい者の子”扱い、ろうからは「耳が聞こえるから」と距離を置かれる。コーダという言葉が生まれたアメリカでコーダ・コミュニティを取材した初めての長編ドキュメンタリーとなる本作は、15歳というアイデンティティ形成期の多感な時期を過ごすコーダの子どもたちの3年間を追う。

聞こえる世界にもDeaf(デフ)の世界にも居場所のない彼らは、1年に一度の“CODAサマーキャンプ”のときだけ、ありのままの自分を解放し無邪気な子どもに戻れる。

15歳。サマーキャンプは終わり、進路を決める大切な時期に入る。「私はろうになりたい」という深い欲望に突き動かされ、聴力に異変をきたすナイラ、自分を育ててくれたろうの母から離れて大学に行こうと葛藤するジェシカ、コーダである自分の人生を手話で物語ることで肯定し友達を作ろうとするMJ、さらに日本とアメリカを行き来し手話通訳士をするアシュリーが、妊娠を機に「お腹の子がろうになるか聞こえる子になるか」という悩みを抱えながら出産に向かう――。

画像・引用:“コーダ”の子どもたちを日本人監督が追うドキュメンタリー映画『私だけ聴こえる』公開決定 cinemacafe.net(2022年)

この映画の監督

音のない世界と聴こえる世界のあいだで居場所を失い、揺らぎながらも自らを語り、成長していく子どもたちの姿からコーダの知られざる物語を綴る本作。

監督は、“社会の周縁に生きる人々の知られざる物語”をテーマに映像作品を制作してきた松井至。本作は2016年、[TokyoDocs]にて最優秀企画賞を受賞。その後取材を続け、2021年に北米最大のドキュメンタリー映画祭[HotDocs]に選出、現在、世界各国で上映を行っています。

予告編も解禁

 

引用:映画『私だけ聴こえる』公式サイト

このように予告編も解禁されています。この機会に、コーダという特殊な立場に置かれた人々の物語に触れてみていただければ嬉しいです。

また、同じくコーダを扱った映画で有名な【コーダ あいのうた】が先日のアカデミー賞で作品賞含む3部門に輝きました。

【コーダ あいのうた】が第94回アカデミー賞で助演男優賞・作品賞など3部門受賞

聴覚障害のある男優の初の助演男優賞受賞

2022年3月に第94回アカデミー賞の授賞式がで開催され、助演男優賞に【コーダ あいのうた】のトロイ・コッツァーが輝きました。トロイさんは聴覚障害のある俳優です。

聴覚障害のある俳優がオスカーで受賞するのは[愛は静けさの中に](1986)で主演女優賞を受賞した、妻役を演じたマーリー・マトリン以来35年ぶり2人目、男優では初となります。

『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァーがアカデミー賞助演男優賞を受賞。Troy Kotsur accepts the Actor in a Supporting Role award for CODA from Youn Yuhjung...

Photo: Myung Chun / Los Angeles Times via Getty Images
画像・引用:『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァー、助演男優賞を受賞。【アカデミー賞2022】 | Vogue Japan

授賞式ではASL(アメリカ手話)で「ろう者の、CODAの当事者、障がい者の当事者に捧げます」とスピーチをし、シアン・ヘダー監督も、 ASL通訳とともにスピーチをした後、映画でも登場する「 I LOVE YOU FOREVER」の指サインをし、会場はASL手話での拍手(手のひらをひらひらとさせる)で包まれました。

トロイさんはプレゼンターのユン・ヨジョンがすぐ横で像を持つ中、「私がここに立つことが今でも信じられない」「私の作品を評価してくれたアカデミー会員の皆さん、本当にありがとうございました」と手話で捧げました。続けて、【コーダ あいのうた】が世界中の映画館やホワイトハウスでも上映されたことから、多くの人がこの映画を観たことに敬意の念を覚えたと話しました。そして監督に感謝し、「”これは私たちの瞬間です″」とろう者当事者、CODA当事者、障害者当事者にスピーチで語りました。

受賞後のバックステージではマーリーさんが『35年前自分は(ろう者の俳優として初めて)アカデミー賞を受賞した。けれどもこの長きに渡って私はこの業界で孤独だった。もう孤独じゃない』と涙ながらに語る場面もあったといいます。関係者にも喜びの大きな受賞となった様子です。

参考:『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァー、助演男優賞を受賞。【アカデミー賞2022】 VOGUE Japan(2022年)

作品賞・脚色賞と合わせて3部門の受賞

また、【コーダ あいのうた】作品賞、助演男優賞、脚色賞と3部門にノミネートされ、その全てでの受賞となりました。

【コーダ あいのうた】はアメリカではApple TV+が配信、配給しており、NetflixやAmazonに先んじて配信系として初めてオスカー作品賞受賞に輝きました。Appleは、米ユタ州でのサンダンス映画祭において史上最高額となる2,500万ドル(約28億7500万円・1ドル115円計算)で同【コーダ あいのうた】の配給権を獲得していました。

ユタ州のサンダンス映画祭で観客賞・最高賞・監督賞・アンサンブルキャスト賞の史上最多4冠を達成。その後も米ニューヨーク州でのゴッサム賞、イギリスの英国アカデミー賞、全米映画俳優組合賞、アカデミー賞の前哨戦であるゴールデングローブ賞など数々の賞にノミネートが重なっていました。

スピルバーグ監督も「ここ5年で見た映画の中で最も好きな一本」と賛辞を贈るほどでした。今後、大きなムーブメントになる予感すら漂います。

参考記事

『コーダ あいのうた』スピルバーグ監督「ここ5年で見た映画の中で最も好きな一本」と賛辞! | 映画ログプラス (eiga-log.com)

【第94回アカデミー賞】作品賞は『コーダ あいのうた』!計3部門で受賞 『ドライブ・マイ・カー』は受賞逃す cinemacafe.net(2022年)

キャスト陣、手話通訳者とともに壇上に上がったプロデューサーのフィリップ・ルスレは「歴史を刻むことができました。候補となった他の作品も素晴らしいものでした。初日からキャストとクルーは大変でした。大きな問題が山積みでしたが、船は浮かび続けました。素晴らしい船長、素晴らしいプロデューサー、そしてキャスト。皆が愛する家族をスクリーンに作り上げてくれました」と、各方面への感謝の言葉と共に、数々の困難を乗り越え手にした栄冠に万感の思いを述べました。

詳しい【コーダ あいのうた】の作品に関しては、別のライターさんの書いた記事のリンクを貼ります。

日本では映画が再上映拡大中

【コーダ あいのうた】は、⽇本では1⽉21⽇に200館規模で劇場公開がスタートして、公開から2ヵ月経った現在でも異例の140館公開を維持し、アカデミー賞作品賞の受賞を受けて2022年4月1日(金)より250館公開へと拡⼤が決定しました。さらに翌週以降で300館以上に拡⼤していく予定とのことです。

又【コーダ あいのうた】は、全米600館で再上映を行うことになり、聴覚障害者向けに、字幕をつけたバージョン(キャプション付き)となるそうです。

『私だけ聴こえる』も、日本人監督が撮影されているのでとても気になります。聴覚障害のある私も久々に洋画観たいなぁと思えた瞬間でした。

私が小さい頃は漫画の主人公もですが、障害者が主人公の映画もまずなかったですね。出て来る登場人物ははつらつとした人元気のある人ばかりでした。それがジェンダーにしかり、LGBTQにしかり、障害者を主演にあてた映画が非常に増えたなぁという印象です。昔では考えられなかったこれらが題材の映画ですが、それだけ世界が、世の中が多様化して来たという事でしょうね。

関連記事

「コーダ あいのうた」を聴覚障がい者向けの劇団がミュージカル劇に 映画.com(2022年)

『コーダ あいのうた』がミュージカル化決定!手がけるのは「デフ・ウェスト・シアター」 cinemacafe.net(2022年)

『コーダ あいのうた』を観て改めて考えた「体験の共有」と「インクルージョン」。(Maya Nago) | Vogue Japan

声が聞こえない気づきのマルシェ 聴覚障害者の子・コーダが企画 毎日新聞(2022年)

「手話を使う家庭はうちだけ?」 耳聞こえぬ親から生まれた健聴者「コーダ」の悩みや孤独とは 神戸新聞NEXT(2022年)

noteでも描いています。よければ読んでください。

→HOME

2 件のコメント

  • アカデミー賞受賞で注目されたテーマですね。これまでにコーダを描いた作品として、1967年の『続・名もなく貧しく美しく 父と子』、1999年の『アイ・ラヴ・ユー』、2014年の『きらめく拍手の音』、そして同年には『コーダ あいのうた』のオリジナルである『エール!』があり、テレビドラマでは、1985年の『愛は沈黙を越えて』、1997年の『金の手がささやいている』があり、子どもが直面する困難は共通したところがあっても、周りの支える目が変化してきているのを感じます。

    • コメントありがとうございます。こういう作品が増えて来たからこそ、今でも感じない訳ではないですが、昔ほど私自身生きづらさを感じることが少しずつ減りました。周りの理解も増えて来たと思いますし、これからも障害者を主人公にした映画も作って頂きたいですし、私も記事として作品を紹介していきたいなと思います。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。

    ABOUTこの記事をかいた人

    左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。