『戦争と女の顔』《同志少女よ、敵を撃て》。〜PTSDを抱えた元女性兵士を描く映画と、本屋大賞2022〜

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こんにちは、翼祈(たすき)です。

今ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で話題となっている漫画[戦争は女の顔をしていない]の原作を映画化した、『戦争と女の顔』が日本でも公開されることが決まりました。

今回はその映画についてと、今年の本屋大賞《同志少女よ、敵を撃て》についてもお話ししていきます。

第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞、国際批評家連盟賞を獲得し、第92回アカデミー賞国際長編映画賞のロシア代表に選出された【Beanpole(英題)】が、『戦争と女の顔』の邦題で、2022年7月15日から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開されることが決定となりました。

本作は、日本でも大きな話題となった証言集、ノーベル文学賞作家のスベトラーナ・アレクシエービチの[戦争は女の顔をしていない]が原案。1945年のレニングラード(現:サンクトペテルブルグ)を舞台に、PTSDを抱えた元女性兵士の生と死の闘いを描き出します。

『戦争と女の顔』あらすじ

終戦直後のレニングラード。荒廃した街の病院で、PTSDを抱えながら働く看護師のイーヤ(ビクトリア・ミロシニチェンコ)は、ある日後遺症の発作のせいで、面倒をみていた子どもを死なせてしまった。そこに子どもの本当の母で戦友のマーシャ(バシリサ・ペレリギナ)が戦地から帰還する。そんな彼女もまた後遺症を抱えていた。心身ともにボロボロの元女性兵士2人は、なんとか自分たちの生活を再建するための闘いに意味と希望を見いだそうとする。

画像・引用:「戦争は女の顔をしていない」が原案 カンヌ国際映画祭2冠「戦争と女の顔」7月公開決定 映画.com(2022年)

原作者のアレクシエービチ氏は雑誌記者だった30代、1978年から500人を超える女性たちから聞き取り調査を行い、執筆がされた本です。

『戦争と女の顔』の監督・プロデューサー・主演の二人について

本作は、巨匠アレクサンドル・ソクーロフの下で学んだ新鋭カンテミール・バラーゴフ監督が撮影し、終戦後の女性の運命を描きました。バラーゴフ監督は、ロシア出身で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって、すぐに国外へ脱出しています。

プロデューサーは [チェルノブイリ1986](20)[ラブレス](17)[裁かれるは善人のみ](14)をはじめ、ハリウッドでも数多くの実績のある、ウクライナ出身のアレクサンドル・ロドニャンスキー氏です。

ロドニャンスキー氏は、ロシア政府から名指しで“これまで携わった関連作品のロシア国内での放映や公開を禁止”されており、SNSで反戦コメントを連日投稿しています。また、息子はウクライナのゼレンスキー大統領の経済顧問を担っています。

こうした反戦の想いを強く持つお二人がタッグを組んだ作品になっています。

主演の二人は、新人のヴィクトリア・ミロシニチェンコとヴァシリサ・ペレリギナが見事に複雑な心理状態を演じきりました。第2次世界大戦から77年。これはその戦争を知らない世代のスタッフ、キャストらが今も現実に起こっている戦争の恐ろしさを伝える作品でもあります。

参考:「戦争は女の顔をしていない」が原案 カンヌ国際映画祭2冠「戦争と女の顔」7月公開決定 映画.com(2022年)

予告編も解禁。

話題のコミカライズ版が既刊3巻まで発売中

こちらは上記の映画の原作、【戦争は女の顔をしていない】のコミカライズ版についての話題です。
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチによるインタビューで語られた話を速水螺旋人監修、小梅けいさんが作画でコミカライズされたものが本作になります。

第1話では兵士の服を洗う洗濯部隊の政治部長代理に任命された女性のエピソードが展開され、特別な石鹸を使うため手の爪が抜けてしまい「もう二度と爪が生えてこないような気がしたものです」と語られる。また戦争に愛する者を奪われてしまった女性は、合同埋葬されることを拒み故郷へ夫の死体を持って帰ろうとして狂人扱いを受けたと話す。

引用:「戦争は女の顔をしていない」小梅けいとによるコミカライズ版1巻が発売 コミックナタリー(2020年)

このように、当時の壮絶な女性たちの戦争体験が克明に描かれています。

同作はKADOKAWAのWebマンガサイト・ComicWalkerで連載中です。

こちらから3巻まで購入もできます。ご興味ある方はどうぞ。

戦争は女の顔をしていない 1 | 小梅 けいと, スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 速水 螺旋人 |本 | 通販 (amazon.co.jp)

累計発行部数37万部突破、本屋大賞2022《同志少女よ、敵を撃て》

画像引用・参考:2022年本屋大賞受賞! 逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』 PR TIMES(2022年)

全国の書店員が「今いちばん売りたい本」を選ぶ〔2022年本屋大賞〕が2022年4月6日に発表され、逢坂冬馬さんの《同志少女よ、敵を撃て》(早川書房)が受賞しました。

受賞作《同志少女よ、敵を撃て》は、第二次大戦の独ソ戦を舞台に、女性のみで構成されたソ連軍のスナイパー部隊の一員となった少女・セラフィマの成長と過酷な日々を描いた作品です。第11回アガサ・クリスティー賞の受賞作で、賞史上初めて選考委員全員が満点をつけた作品として話題となりました。2021年11月に刊行後、新人のデビュー作であるにもかかわらず直木賞候補作となったほか、戦争の無慈悲さや戦時における女性差別について描かれていることもあり、ロシアによるウクライナ侵攻がはじまった際にも注目を集めました。

デビュー作での受賞は2009年の湊かなえさんの[告白]以来2人目で、デビューして5カ月という最速での快挙達成となりました。重厚なテーマで、500ページ近いボリュームであるにもかかわらず、発売直後から好調な売り上げを見せ、累計発行部数は37万部を突破しました。

受賞のスピーチで逢坂さんは「このような素晴らしい賞をデビュー作も関わらず授けていただけたことは、感謝の気持ちでいっぱいです」と喜びをにじませる一方で、「私の心は、ロシアによるウクライナ侵略が始まった2月24日以降、深い絶望の淵にあります。このナチスによるポーランド侵攻、満州事変に匹敵する、むき出しによる覇権主義による戦争が始まったとき、私はこの無意味な戦争でウクライナの市民、兵士、あるいはロシアの兵士がどれだけの数だけ亡くなっていくのだろうと考え、また私自身が書いた小説に登場する主人公・セラフィマがこの光景をみたならば、どういう風に思うのだろうと考え、悲嘆に暮れました」と複雑な胸の内を明かしていました。

参考:2022年本屋大賞は逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』に決定 ロシアによるウクライナ侵攻で注目 ブックバン(2022年)

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本屋大賞受賞作で描かれる“戦争の実像”とは NHK.JP(2022年)

本屋大賞は今年2022年で19回目。2020年12月1日~2021年11月30日に刊行された日本のオリジナル小説を対象に実施され、全国の書店で働く書店員による投票で決める賞のことです。

今回は複数の作品を併せて紹介しましたが、先に紹介した映画の原作、『戦争は女の顔をしていない』と併せて読んでいくことで、より理解が深まるものと思います。

この記事を書こうとした時

きっかけはまず母がテレビを観て、「こういうタイトルの漫画が今流行っているらしいよ」と言っていた事と、私が書こうとしていた映画の内容がその漫画と同じ原案だった事です。後どこかで今年の本屋大賞についてはずっと書こうと思っていました。

毎日ウクライナのニュースには心を痛めています。多くの民間人が亡くなり、駅を襲撃され、地雷も埋めてある。後最近は亡くなったウクライナ人の家から、ロシア軍が「スーパーマーケットに買い物に来てる様だ」と洗濯機などの家電や家具を、ロシアに持って帰っているという記事を読んで、凄く心臓が痛くなりました。

平和の祭典の1つであるオリンピックが終わって、1ヵ月経たない内に行われ始めたこのロシアによるウクライナへの軍事侵攻。毎日心が叫んでいます。

noteでも書いています。よければ読んでください。

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左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。