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それはたまたま見たネットのニュースでした。
『場面緘黙』についての記事で、読んでいるうちに、私の中には1人の女の子の記憶が蘇ってきました。
女の子の名前は、仮にMちゃんとします。私とMちゃんは、小学校の同級生で、同じクラスになることが多くありました。
Mちゃんは、同級生の中では小柄で、ショートヘアのよく似合う女の子でした。
特に仲がいいわけではなかったですが、放課後は一輪車の上手なMちゃんに、乗り方をよく教えてもらったりしました。
クラスでは、普通の女の子だったMちゃん。
ですが、彼女は授業中に先生から問いかけられると、黙ってしまうのです。
どれだけ怒られても話さなかった
例えば国語の時間、「ここからここまで、順番に教科書を読みましょう。」という場面になると、Mちゃんは固まって、一切話さなくなってしまうのです。
先生がどれだけ怒っていてもダメで、彼女が教科書の一行を読むのを待っていたら、授業が終わってしまった、なんてこともありました。
そういった場面が何度かあり、時にはMちゃんが先生に泣きながら職員室に連れて行かれるのを見たこともあります。中学では、体育の授業中に黙って動かなくなったMちゃんに腹をたてた女性教師が、彼女を平手打ちをしたこともありました。
なんでMちゃんは、先生たちと話さないんだろう。私たちとは話すのに、大人が嫌いなのかな?性格が悪いのかな?
Mちゃんは“変な子”なんだ。
子供心にそう思っていました。
小中と同じ学校でしたが、中学を卒業してからまったく会うことはなくなっていました。
私も年を重ねるごとに、しゃべらないMちゃんのことは忘れていました。
そんな時に見たのが、『場面緘黙』という症状の記事でした。
読んでいくうちに、小さい頃の記憶がよみがえり、「これは、Mちゃんのことかもしれない。」と思いました。
場面緘黙(かんもく)とは、家などではごく普通に話すことができるのに、例えば幼稚園や保育園、学校のような「特定の状況」では、1か月以上声を出して話すことができないことが続く状態をいいます。 典型的には、「家ではおしゃべりで、家族とのコミュニケーションは全く問題ないのに、家族以外や学校で全く話せないことが続く」状態です。
詳しく調べてみると、「学校などで、1ヶ月以上、複数人の前で音読や発表やスピーチができないこと。」と症状の説明があり、まさにMちゃんが話さない場面そのものでした。
彼女は、場面緘黙という病気だったのか。話したくても話せなかったのか。
ショックでした。発表や、音読の時間などに、先生から泣くまで怒られていたMちゃんの姿が思い出され、大人はだれも気づいていなかったのだろうか。そんな疑問すらわいてきました。
場面緘黙がどのようにして発症するのか?
そのメカニズムはまだ研究段階ですが、発症要因(原因)は、「不安になりやすい気質」などの生物学的要因がベースとしてあり、そこに心理学的要因、社会、文化的要因など複合的な要因が影響しているのではないかと考えられています。
例えば入園や入学、転居や転校時などの環境の変化により、不安が高まって発症することが多く、クラスでの先生からの叱責やいじめがきっかけとなることもあります。
専門家は、「場面緘黙の人は0.5%といわれています。200人に1人ですから学校に1人いる可能性があるかなと思います。女の子のほうがやや多いというふうに考えられています。」と述べています。
認知が進まず、心ない言葉をかけられることもある場面緘黙。周りにはどのようなサポートが望まれるのでしょうか。専門家は「場面緘黙の子どもは、おとなしい子どもが多く、見過ごされがち」と早期発見と対応の重要性を訴えます。
緘黙のことを知っていたら…
もし、子どもの時に『場面緘黙』という病気を知っていたら、Mちゃんは先生に怒られることも、叩かれることもなかったのかもしれない。「Mちゃんは先生とは話せないんだよ。」と私たちも先生に訴えることができたかもしれない。考えずにはいられませんでした。
高校2年生のころに一度だけ、Mちゃんを地元のショッピングモールで見かけたことがあります。彼女は、同じ制服を着た友人たちと楽しそうにおしゃべりをしていました。
その時は、「Mちゃんだ。大人っぽくなったなぁ。」と思いました。
それが、私がMちゃんを見た最後の記憶です。
もし周りに彼女のような症状の子どもや、大人がいたら『場面緘黙』という病気があることを思い出して欲しいと、認知が進むことを強く願います。
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