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こんにちは、金次郎です。
皆さんも、住民票の交付や本を借りたいなどで住んでいる所の役所や図書館に行く事が有ると思います。
しかし、対応してくれる職員さんが公務員試験を受けて合格した正規の職員さんとは限りません。
自治体平均で、職員の3人に1人は非常勤の職員さんと言うのをご存知でしょうか?
日本の公務員の世界で何が起こっているのでしょう?
地方自治体の現状
長崎県の佐世保市と平戸市の中間にある人口約1万4000人ほどの北松浦郡佐々町、ここの町役場では、287人の役場職員の65%が非常勤の職員さんで占められています。
高齢者介護の相談窓口には、11人の職員さんがいますが、9人は非常勤の職員さんです。
もっと酷いのは町営図書館でして、館長含め12人の図書館職員全員が非常勤の職員さんです。
佐々町総務課の山本勝憲課長の話では「国からの地方交付税が減らされ、町の財政は厳しくなるのに、町民の高齢化で高齢者介護の福祉サービスなどの仕事は拡大の一途なんです。限られた町の予算の中で役場の職員を増やす為には、非常勤の職員を増やすしかなかったのです」との事。
2016年時点の調査で非常勤職員が50%を超える自治体は92市町村あるそうです。
当然のごとく正規の職員と非常勤の職員では、待遇面でかなりの差があります。
佐々町町営保育所では、32人の保育士の内25人が非常勤の職員ですが、正規の職員にはお給料の昇給やボーナスが有りますが、非常勤の職員さんは採用時に契約を交わした賃金のままでボーナスも有りません。
先の佐々町では、正規職員との待遇面の格差を無くそうと非常勤職員さんの給与を少しづつですが上げたりしてきました。
今回更に、通勤手当やボーナスの支給も考えている様ですが、それに伴う年間5500万円ほどの経費をどこから捻出するのか?
山本総務課長は「確かに我が町の予算的には苦しいですが、他の部分で削減できるところは削減して非常勤職員さんに報いたいです。」と。
非常勤職員の悲惨な現状例
・東京都内に住む(34歳の男性 仮名:リョウ)さんの告白
社会教育主事の資格で自治体の教育施設で働いていましたが、職場で正規職員からのパワハラを受けた事により「うつ病」になり、病気を理由に解雇されてしまいました。
正規職員には90日の病気休暇や3年の休職制度があり、また傷病手当金も支給されますが、非常勤職員には30日の病気休暇のみで休職制度は無く、更に産業医のカウンセリングを受ける権利も非常勤職員にはありませんでしたとの事です。
このリョウさんの様な、地方自治体に努める非常勤職員は、2005年は45万6000人だったのが2016年には64万3000人と10年で4割も増えています。
この人数には、任用期間半年等の短期非常勤職員は含まれておらず、短期非常勤職員も含めると70万人を超えると言われています。
・北九州市役所で働いていた森下佳奈さん(享年27歳)の場合
児童虐待を担当する相談員でしたが、「うつ病」と診断され退職した2年後に自殺してしまいます。
働いていた当時は悲しい事があると、母親の眞由美さんに 「お給料分の仕事をしていないからと言われ、残業代を付けてもらえませんでした」とか「今日もずっと怒られてしまい、泣いてしまいました」等のメールを随時送っており、母親の眞由美さんは「娘がうつ病になり自殺をしてしまったのは幹部職員からのパワハラが原因では無いか?」と考えて一般企業の労災にあたる「公務災害補償」を市に請求しました。
しかし市からは「市の条例に非常勤職員の『公務災害補償』の項目は無いので『公務災害補償』の請求はできません」と返書が届いたそうです。
眞由美さんは「同じ”働く仲間”なのに『正規採用の職員と非常勤の職員では命の重さが違うんだよ』と言われたと感じた」と怒り、市を相手に裁判を起こしました。
この事態を重く見た国は、北九州市に改善を求め2018年10月に非常勤職員やその遺族も「公務災害補償」を請求できる様に条例を改正しました。
しかし今でも市は「何回も調査をし直したが正規職員によるパワハラは確認できず、当時の対応に問題は無かった」と主張しており、現在も裁判は続いています。
何故、自治体職員に非常勤職員がこんなにも増えたのか?
これは、各自治体に住んでいる住人の収入が減り、結果入るはずの税収の減少による財政難が原因です。
2007年に「地方自治体財政健全化法」が制定され、地方自治体の職員は目に見える仕事の成果を求められるようになりましたが、正規職員を採用する予算が無いので、安価で採用できる非常勤職員へと、職員の採用をシフトしている自治体が増えたためです。
自治労(全日本自治団体労働組合)の調査によりますと、非常勤職員の7割は年収200万円以下の「ワーキングプア」と言う結果になりました。
これは、ボーナスや各種手当のある正規職員の1/3ほどの収入です。
安い賃金で、いつでも解雇にできる「官によるワーキングプア」を自治体自ら増やしている状態です。
先に書いたリョウさんも、非常勤と言う事で月の勤務日数は16日ですが、正規職員と同じ量の仕事を回され、出退勤途中の電車の中でもパソコンを開き作業に追われる日々を過ごしていました。
後で残業時間を計算したところ、月に60時間分の残業をした計算になりましたが、非常勤と言う事で残業手当は一切つきませんでした。
その様な長時間労働をした結果、ある日の朝に布団から起きられなくなり病院で「うつ病」と診断されたそうです。
そして、30日間の病気休暇を使い切った後は解雇されてしまいました。
要するに、非常勤職員の場合体調不良(特にメンタル面)になると即座に解雇して新しく職員を募集と言う感じです。
正規職員は、3年の休職制度がありますのでブランクを重ねながら働き続けられますが非常勤職員の場合は、体調を崩したらそれで終わりです。
終わりに
私も、障害者になる前は、それまでの民間企業での新人教育と言う仕事と、学生時代に行った色々なアルバイトの経験を活かして公共職業安定所(愛称:ハローワーク)で5年契約で非常勤の職業相談員として働いていた事があります。
あの当時は、5年毎の契約更新でしたが、現在は1年契約で更新も2回までと勤務できる年数が短くなっています。
去年まで働いていた障害者作業所が経営上の理由から閉鎖となり、次の障害者作業所を見つける為にハローワークに行きましたが、相変わらず求人を探しに来ている人は多いですが、相談窓口を見ると職員さんは減っている様な感じでした。
思うに厚生労働省もハローワークに人員を投入する予算が確保出来ないのかも知れません。
参考
・急増“非正規公務員” 地方自治体に何が(NHKニュース おはよう日本) https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2019/02/0210.html
・「ないない尽くし」非正規公務員の悲惨な実情(東洋経済ONLINE) https://toyokeizai.net/articles/-/254453?page=3
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