中高年のうつ病 -認知症になる原因のタンパク質「タウ」が関係か?-

目玉焼きを見て、驚いている卵と泣いている卵

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こんにちは、金次郎です。

父が認知症になったのは5年前ですが、去年認知症の種類や原因などを書きました。

この記事でも書きました様に、大まかに分けて4つ有る「認知症のタイプ」の中でも、一番多くの方が罹るのは「アルツハイマー型認知症」です。
原因は、脳内で作られるタンパク質の「アミロイドβ(ベータ)」と言うものが蓄積されて行き、脳の神経細胞を破壊してしまう事で発症してしまうと言われています。

今回、量子科学技術研究開発機構(QST)と大学などとの合同研究チームの調査で
・40代以降に発症するうつ病などの気分障害患者の脳にも、この「ア
 ミロイドβ」や「タウ」と呼ばれる脳内生成タンパク質が
高い割合
 で蓄積されている
ことが分かったそうです。

今回は、「中高年の気分障害は認知症の前兆か?」と言う記事を書いてみます 

中高年で罹る「うつ病」が認知症の引き金に?

これも去年書いた記事ですが、中高年になると自分の人生について色々と考えてしまい精神的に落ち込んでしまう事があります。
「中高年の心の危機(崩壊)」と言う事から「ミッドライフ・クライシス」なんて呼ばれています。

同じ電車に乗って出勤し、仕事をして帰るという単調な毎日に、ふと「私はこのままで良いのだろうか?」と悩みだしてしまう事により「うつ状態」になってしまったり、あるいは理由も無くハイな状態になったかと思えば、どん底まで落ち込む事を繰り返す「躁うつ病」になってしまったりします。

この様な、
・気分障害を発症してしまう中高年は、認知症の予備軍である
と言うのは前々から指摘されていましたが、調査が難しく研究が進みませんでした。

総論で紹介した、量子科学技術研究開発機構(QST)と大学などとの合同研究チームは、
・40歳以上でうつ病や躁うつ病などの気分障害を発症した人と、
 同年代の健常者を対象に同数ずつ調査
・アルツハイマー型認知症などの原因とされる「アミロイドβ」
 「タウ」というタンパク質が、どの程度脳内に蓄積しているか?
と言うのを「画像によって可視化できる検査方法」を開発して調べて見ました。
その結果、気分障害に罹った方の脳内には「タウ」の蓄積が、健常者の4.8倍も多い事が分かりました。

チームでは、40代以降で気分障害などの病気を発症した場合、この「タウ」の量を調べれば認知症になる可能性が有るかどうかが分かるので、認知症の早期診断や治療にもつながるとしています。

参照元:(NHK NEWSWEBトップ)“認知症発症関わるたんぱく質”うつ病患者の脳に高割合で蓄積(2025年6月9日)

「アミロイドβ」と「タウ」、2つのタンパク質

認知症の原因ともなる、脳内で生成される2つのタンパク質。
どの様なものなのか?簡単に説明いたします。

・アミロイドβ(アミロイドベータ)

アミロイドβとは、脳内で作られるたんぱく質の一種です。
健康な人の脳にも存在する物質で、通常は脳内のゴミとして短期間で分解、排出されます。
しかし、アミロイドβ同士がくっついて異常なアミロイドβができると、排出されずに脳に蓄積され、健康な神経細胞にアミロイドβがまとわりつきます。
そしてアミロイドβの出す毒素で神経細胞が死滅して情報の伝達ができなくなり、徐々に脳が委縮。その結果、アルツハイマー型認知症が進行していくことになります。

引用元:(太陽生命ダイレクト)「アミロイドβ」とは?アルツハイマー型認知症の発症に関係するって本当?

・タウ(タウたんぱく質)

私たちの脳は大きく分けて神経細胞とグリア細胞の2種類の細胞から構成されています。
神経細胞は長い突起を持ち、その突起を正常に維持するために様々な分子が働いています。
Tauタンパクは、中枢神経系の神経細胞に豊富に存在し、神経細胞突起を構成する細胞骨格結合タンパクの一つです。
例えば認知症の原因疾患として最も多いアルツハイマー病では、アミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパクが大脳皮質に沈着するとともに、Tauタンパクが神経細胞の中に沈着し病理学的な診断根拠となります。

引用元:(新潟大学脳研究所)Tau入門(2024年3月11日)

量子科学技術研究開発機構(QST)とは?

今回、「中高年の気分障害罹患者は認知症の予備軍みたいな兆候が有る」なんて言う事を見つけた合同研究チームを主導する「国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST)」と言う組織

この組織をご紹介するには、「第五福竜丸事故」を説明しなければなりません。
広島や長崎に原子爆弾が投下され、多大な犠牲者を出した事で日本は負けを認め第二次世界大戦が終わりました。
戦後、アメリカやソ連(現:ロシア)は原子爆弾の破壊力に目を向け次々と核実験を行います。
静岡県焼津港から出航した遠洋マグロ漁船の第五福竜丸は、1954年(昭和29年)3月1日にアメリカがビキニ環礁で行った水素爆弾の実験に巻き込まれ乗組員が被ばくしてしまいます。

この事故を機に、1957年(昭和32年)科学技術庁所管の放射線医学総合研究所が発足します。
前年の1956年(昭和31年)には、原子力に関する総合的な研究機関として「特殊法人 日本原子力研究所」が発足しています。
1つは放射線を使った医療の研究、もう1つは原子力を使った平和利用の研究をしていました。
この2つの研究機関の一部が2016年4月1日に統合して、新たに生まれたのが「量子科学技術研究開発機構(QST)」です。

参考元:(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構)QSTについて 成り立ち沿革(2023年4月1日)

ですから、HPの中に「QST病院」と言う項目が有ります。
このQST病院の特徴は、癌の放射線治療や重粒子線治療に特化した病院です。

参考元:(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構)QST病院

終わりに

この様に、中高年で罹ってしまった「うつ病」や「躁うつ病」などの疾患は、
・将来認知症になってしまう可能性が有るサイン
という事らしいのです

私は過去にタレントの名倉潤さんが、手術後に「うつ病」に罹ってしまった事を書きました。
奥さんの渡辺満里奈さんが経験談の中で、彼も50歳という年で罹ったと語られていました。
この記事を読んで気になった方は、画像検査で、ご自分の脳に「アミロイドβ」や「タウ」が、どのくらい有るか調べてもらってはいかがでしょうか?

また、認知症にならないために自分で出来る予防方法としては以下のような方法もあります。
1、バランスの良い食事
2、適度な運動
3、パズルなど頭を使った遊び
こういった取り組みでも認知症の発症を抑えられるそうです。
暴飲暴食やだらしない生活は控えた方がよいですね。

詳しくはWHOの関連記事や、AKARIにも認知症に関する記事が様々ありますので、よければこちらも併せてご覧ください。

関連記事
(認知機能セルフチェッカー)WHO認知症予防ガイドラインとは。認知症予防に役立つ情報をまとめて解説(2024.07.29)

AKARIでの「認知症」についての記事一覧
https://akari-media.com/tag/dementia/

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1 個のコメント

  • 記事を読ませていただきました。うつ病や認知症などの要因になりえることがかかれていました。認知症についての記事をクリックすると読めるようにされているのもよかったし、なるほどと思えることです。これからも記事を楽しみにしています。

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