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こんにちは、翼祈(たすき)です。
飲食後数時間以上経過してから、嘔吐などの症状が現れる不思議なアレルギー疾患が、2000年頃から増加傾向となっています。
新生児と乳児に多く見られる、消化管アレルギー(食物たんぱく誘発胃腸症)とは、新生児や乳児では、原因となる鶏卵の卵白や小麦、牛乳、粉ミルクなどの食物を摂取してから暫く経つと、嘔吐や下痢などのお腹の症状、血便、また体重が適切に増えない、などの症状が現れます。 じんましんや体重増減、腹部膨張や腹痛、ぜいぜいをする・咳など一般的なIgE依存性こと、即時型食物アレルギーの症状が出ないことが特徴の1つだといえます。
原因は身体内の異物を攻撃する抗体「IgE」による過剰な免疫反応です。IgEではなく、たんぱく質への免疫細胞の1つのリンパ球の過剰な反応も原因とされますが、詳細は分かっていません。発症に至った食物は、牛乳や鶏卵が大半の発症の原因だとされています。
症状が現れるのは、粉ミルクなどの原因食物を乳幼児が摂取して24時間以内と、比較的遅いスピードで進行します。一般的な食物アレルギーとは違って、ハッキリと診断が分かれるポイントは、牛乳を飲んでから30分以内に消化管アレルギーが現れることはありません。急性のケースでは原因食物を摂取して1~4時間で嘔吐を繰り返す時もあります。
今回はそんな消化管アレルギーを多角的な視点から発信します。
▽診断されるまでの経緯
食物アレルギーでは原因食物に対してほとんどのIgE抗体が血液の中で巡り回ります。そのことで、アレルギーを誘発する食物を摂取した場合、数分後から2時間までの短い時間の中にアレルギー反応を引き起こします。
ですが、リンパ球が原因食物に対して発症する新生児乳児消化管アレルギーにおいては、IgEの存在はそれほど重大なことではなく、通称T細胞という白血球の1種類が消化管アレルギーの発症に関わっています。原因食物とT細胞が交わるまでに、アレルギー反応を引き起こされることに至るまでには、短い時間の内に完了することはなく、新生児乳児消化管アレルギーに関連した症状が現われるまでには、数時間から数日の時間がか要します。
原因食物(主に牛乳)に対してのアレルギー反応を試験管の中で観察していくことを目標に、血液を使った「アレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)」という診断方法が選ばれます。また、リンパ球の中でもT細胞に対して作用する「TARC」は、消化管アレルギーでは血液中で上昇するケースが起こり得ます。
さらに、白血球の中で、好酸球が増え続ける疾患で、血液・便中に多く出現します。そこで、「アレルゲン特異的リンパ球刺激試験」という血液検査を実施し、血液中にいる好酸球数の数の確認を取り、便検査で好酸球が多く出現していないかの確認もします。
問診を行う時からこの消化管アレルギーではないか?と疑問を持ち、原因食物の除去を行い、症状に改善が見受けられたかといった確認も総合的に取ります。症状が落ち着いたら、再度食物経口負荷試験を実施し、症状が引き起こされた経緯を確認し、新生児ですと、生まれつきの腸管の感染症や消化管奇形を取り除くための検査が必要です。食物負荷試験を介して自覚症状に変化がないかや便中の好酸球の数の変化などを確認します。
その他、内視鏡を使い、腸粘膜の異常がないかを確認するケースもありますが、新生児・乳児の内視鏡に習熟した医師が実施することが要求されます。
一般的な食物アレルギーとは身体の反応が違うことで、普通のアレルギー検査では診断が下りません。新生児・乳児消化管アレルギーは消化管症状のみと限定的だということ、摂取後発症までに時間を要すこと、またアレルギー検査で陽性にではなかったことなどから、消化管アレルギーとして適切な診断が下りないこともあり、注意が必要となります。症状が鮮明ではないことも多く見られ、確定診断するのがとても困難な疾病です。
参考:消化管アレルギー(新生児・乳児消化管アレルギー)について ペンギン子どもクリニック
そのまま原因食物を摂取し続けると、腸閉塞や栄養障害からの成長・発達障害、アナフィラキシーショック、腸管穿孔などを罹患する恐れもあります。
▽検査
- 血液検査
末梢血好酸球増多、アルブミン低下、炎症反応(CRP)上昇、代謝性アシドーシス、牛乳特異的IgE抗体、TARC
- 便検査
便培養検査、便潜血、便中α1-アンチトリプシン、便粘液細胞診
- 画像検査
消化管造影、腹部超音波、腹部レントゲン、腹部CT、シンチグラフィー
- 消化管内視鏡検査
アフタ、腸粘膜の発赤、びらん、リンパ濾胞過形成、出血、粘膜浮腫などが認められますが、消化管アレルギーに特筆的な所見にはなりません。
- 食物除去・負荷試験
原因食物を除去して症状が消えることを確認します。症状が改善され5〜6ヵ月を経過し、体重増加ができた後に消化管アレルギーの診断確定へ、原因食物をもう一度与えて症状が再燃するか否かの確認を行います。
▽治療法
基本的には原因食物の除去が必要となります。牛乳由来のたんぱく質へのアレルギー反応を発症していることが多い傾向なので、最初に粉ミルクなどを止め、母乳を与えることで症状に変化が現れることになります。母体が乳製品を摂ると、それに応じるカタチで子どもさんに症状が見られるケースもあるので、注意を払って下さい。母乳にはカルシウムが足りなくなりがちなので、カルシウムサプリメントも補給することも推奨されます。
新生児・乳児期早期の頃に牛乳が消化管アレルギーを発症した素因で、母乳が使えない時、もしくは母乳を飲んでいても消化管アレルギーの症状を発症した時などには、その上でもっと精密にアレルギー反応を引き起こしづらく加工した「加水分解乳」や「特殊ミルク」、「アミノ酸乳」が使うことことになります。ですが、「加水分解乳」などの中にはビオチンをはじめとすると一部必須栄養素が足りないこともあって、とうもろこしでんぷんやサプリメントなどで別途補充する必然もあります。
このように治療をスタートしてみることで、診断に繋げることを「診断的治療」と呼びます。
多くのケースで、3歳になるまでに消化管アレルギーは自然に収まります。ですが、新生児・乳児期早期で牛乳以外が原因だとするケースや、乳幼児期以降に消化管アレルギーを発症したケースには、症状が出なくなるまでにより長い時間を要する傾向が見受けられます。
誤って原因食物を摂取し、嘔吐を繰り返してぐったりした時には、アドレナリン自己注射には効果に期待が持てず、点滴が必要となります。
▽対応食品
このアレルギーが粉ミルクによっておきている赤ちゃんには、アレルギー用ミルク(消費者庁許可特別用途食品)を医師の指示で用います。1歳で半数以上、2歳で9割前後は治るといわれています。
離乳食が原因で起こる場合も、数年で自然に治ることが多いです。原因となる食物を負荷試験等で確定して除去することが、治療の基本になります。
引用:meiji
▽消化管アレルギーを罹患した赤ちゃんの実例
東京都内に住む会社員の男性の長女は2022年1月に生まれてすぐ、病気で、東京都にある国立成育医療研究センターに入院しました。入院中では粉ミルクが病院から与えられました。1週間ほど経過すると長女から血便が見られる様になり、検査すると壊死性腸炎の疑いがあると診断を受けました。
研究センターの医師の男性によりますと、「女の子の便の中に『好酸球』というアレルギー細胞が多く出現し、粉ミルクが原因となった消化管アレルギーでの炎症でした。もし診断と治療が遅れた場合、女の子の腸が壊死してしまう可能性もあったかもしれなかったと思います」と述べました。
粉ミルクを中止し3週間は点滴で栄養を摂ると、血便は出なくなりました。その後は母乳を与え、一度は減少した体重がもう一度増加していきました。現在はアレルギー対策用の粉ミルクも併用していて、症状は現れていません。
父は「娘が入院中に消化管アレルギーを発症したのは不幸中の幸いでした。自宅だで発症していたら適切に対処できなかったかもしれません。1歳頃までには乳製品を食べられる様にになると主治医から聞いていますが、摂取できる食物には慎重になりますね」と説明しました。
参考:飲食後数時間以上たって嘔吐 近年増加する不思議なアレルギー 毎日新聞 (2022年)
何がアレルギーとなるか分からない時代。
生まれた時からアレルギーを持つことは子育てする上でも悩ましい、戸惑うことだと思います。通常のアレルギーは一度かかると治りませんが、この乳幼児が引き起こす消化管アレルギーにおいては、すぐさま発症した時に、原因物質を除去し違うものに切り替えるといった、適切な治療を受ければ、赤ちゃんの内に症状も落ち着き、治る病気だという点に救われました。
赤ちゃんは免疫力がまだ弱い分色んな病気などにかかりやすいですが、もしあれ何かおかしいな?と思ったら、速やかに検査をして、将来への影響が最小限で済む様に、健やかに元気に成長していって欲しいなと思います。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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