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こんにちは、翼祈(たすき)です。
弘前大学男女共同参画推進室の助教の女性によりますと、日本で災害が発生した時のLGBTQへのサポートが着目されるようになったのは、2011年の東日本大震災以降からだといいます。男女共用のトイレの設置、更衣室や入浴施設を1人ずつ使用可能な時間帯の設定、生理用品や下着などの物資を個別に届ける支援の検討―。
「パートナーシップ制度を制定した自治体でも、災害が発生した時のLGBTQ対応は想定されづらく、後回しにされがちです。LGBTQ当事者は日本のどこにでもいます。防災計画や指針を紐付け、支援や情報を発信していくことが必要です」と、弘前大学男女共同参画推進室の助教の女性は言います。
実際に東日本大震災や熊本地震で避難して来た、LGBTQの人はプライバシーの配慮がない事に苦悩して来ました。今回はLGBTQと災害をテーマに、考えていきたいと思います。
LGBTQ当事者の災害時の避難での苦悩
災害が発生した時の避難所で、LGBTQ当事者への設備や自治体の配慮が進んでいません。トランスジェンダーなど多様な性を持つ多くのLGBTQ当事者は思いがけない共同生活を、周りの視線を気にして過ごさなければなりません。
国は高齢者や障害者と並行し、LGBTQも配慮の対象に挙げますが具体案は明確にはせず、それぞれの自治体の対応には大きな差が生まれています。
性別に関係なく恋愛の対象となる「パンセクシュアル」のAさんは、2016年に起きた熊本地震で自宅アパートが被災しました。熊本地震の本震が来たのが未明の時間帯。真っ暗闇の中で、胸の膨らみを隠すための、通称「ナベシャツ」という補整着を急いで着けて外へと走りました。自宅は長い間水道やガスが止まり、車中泊をしたこともありました。
約1ヵ月半、熊本市内の避難所で生活し、運営にも関わりました。戸籍上は女性。性自認も女性。雑魚寝で風呂も集団で一緒に入る避難所では女性と行動を一緒にしなければならないことが多かったといいます。ずっと「女性も恋愛の対象だと知れたら嫌われるかもしれない」と心に引っかかり続けました。
避難所には一時最大約700人が一緒に暮らしました。スタッフとして沢山の被災者に接する中で、見た感じや雰囲気で少なくとも3人のLGBTQ当事者だと気が付きました。その中で2人は身体の性別と性自認が異なるトランスジェンダーでした。
「着替えは出来ますか?」「お風呂はどうされますか?」と声をかけ、仲良くなりました。周りには話さず、さりげなく支援を継続しました。
3人はトイレは障害者用を使っていました。避難所の近くの民間施設が被災者向けにシャワーを無料開放をしましたが、トランスジェンダーの2人はシャワーの利用を躊躇しました。「男女どちらの浴室にも行きたくない」「トイレや風呂、着替えの時も、名前を呼ばれた際にも、見た目の性と異なり、変な目で見られてしまった」「パートナーと生活するのも周囲の視線が気になる」。
Aさんは幼少期から自身の性別に違和感を持っていました。中学校では制服に戸惑い、人間不信もあって将来を悲観して、自傷行為もしていました。両親からもらった名前は、20歳を過ぎて改名し、2019年秋乳房や子宮を取る外科手術を施しました。戸籍の性別も変更しました。
熊本地震が発生してからしばらくした後、熊本市内の民間施設が被災者向けにシャワーを無料開放していると聞きました。当時は女性の体でしたが、ホルモン療法を継続していたので声は低く、ひげも生やしていました。人目を考えると民間施設にAさんも行けませんでした。
避難所で知り合ったLGBTQ当事者の1人は約1ヵ月間、ウエットティッシュで体を拭いて災害から耐え凌ぎました。別のLGBTQ当事者の1人は渋滞する道を車で約3~4時間かけて無料開放された温泉施設へ通い続けました。性の事情を説明したことで家族風呂を1人でも使えたといいます。
LGBTQの中には、性的思考を伝えたことで周りの人と疎遠になるケースも少なくありません。被災した時は親類なども頼れることが出来ず、避難所にも行けなければならないことに追い詰められる恐れも生じます。
AさんはLGBTQ当事者の孤立を懸念し、LGBTQ当事者への災害が発生した時での配慮の促進を願います。
「性の多様性を認知して、行政には平時から避難所でのLGBTQの配慮を考えて貰いたい。LGBTQは心と身体のことやパートナーとの関係性で世間の差別や好奇心の目を向けられる恐怖心を持っていて、避難所の概要に困ることが多いです。設備や支援の両面で臨機応変に対応して貰いたいです」と述べました。
参考:性的少数者の配慮進まない避難所 西日本新聞(2021年)
LGBTQへの配慮が進まない都道府県
2021年1月から2月にかけ、パートナーシップ制度を2022年末までに導入した群馬、茨城両県と29の市区町にアンケートを送付、全自治体から回答を得ました。
避難所運営マニュアルや地域防災計画などに「性的少数者の配慮や対応、その必要性を明記している」と答えたのは、東京都文京区や世田谷区、神奈川県横浜市、茨城県など13県市区で、全体の4割強に留まりました。記載内容は、性別に関係なく使えるトイレの設置や理解促進の必要性、当事者が安心して集まれる場所の確保、などでした。
東京都江戸川区ではパートナーシップ制度を制定したことをきっかけに、避難所開設・運営マニュアルにLGBTQ当事者への配慮を追加しました。東京都港区は2020年度策定した男女平等参画行動計画で「性的マイノリティーの視点を取り入れた防災対策」を記しました。神奈川県葉山町は2021年にLGBTQ当事者の配慮を見直す地域防災計画に盛り込みました。
LGBTQ当事者への配慮や対応が書かれていない千葉県松戸市や神奈川県横須賀市は「配慮することに必要だとは理解していますが、国や県のガイドラインに明確な記載がされていない」と回答しました。
その反面、災害公営住宅に入居する時に、同性カップルを「同居の親族」と同様に扱うと回答したのは15自治体でした。LGBTQ当事者への配慮が書かれていない神奈川県相模原市、栃木県栃木市なども同様に「同居の親族」として扱うと回答しました。
LGBTQの方が被災した時の、避難所での配慮など
「防災課の意識だけだとLGBTQ当事者への配慮することに気付かないところもある。LGBTQ施策や多様性推進の担当者がいた上で、連携が取れていることが大きい」と、東京都文京区の防災課長はこう言いました。
2018年度に地域防災計画に修正を加えた時に、LGBTQの支援団体とも意見交換をしました。その中で、LGBTQ当事者への配慮を踏まえた訓練をすることや、みんなが安心して避難所生活を過ごせる様に、プライバシーの確保や入浴、トイレに配慮すべきだと追記しました。
千葉県千葉市は避難所開設・支援マニュアルに「性別・LGBTQへの配慮チェックシート」を作成しています。LGBTQ当事者団体「LGBTQ法連合会」に相談を持ちかけ、同千葉市が作った職員向けガイドラインの内容に意見を反映させました。
ですが、東京都渋谷区防災課の課長の男性は「実際に避難所でどういうことにLGBTQ当事者が困っているのか、細かな需要を知ることが困難です」と話しました。
LGBTQ当事者が困っている具体例では、「避難所で性別欄に記入して下さいと同意を促されるのが苦痛」「同性パートナーと避難して来ましたが、プライバシーが配慮されるかとても心配です」「性自認や見た目に沿った物資を受け取りに行くと、不審がられた」などの回答がありました。
お互いの関係を周りの人に明かしていない同性カップルの例、避難所のスタッフに「お二人はどういうご関係ですか?」と人前で尋ねられたり、生まれた時の性別は女性で、今は男性として生活しているトランスジェンダーの人が、生理用品を受け取れなかったという問題も起こりました。
こうした中で、弘前大学男女共同参画推進室の助教の女性が主宰する岩手県のLGBTQ支援団体は、東日本大震災などでの聞き取りを重ねて編集した、2016年発行の「にじいろ防災ガイド」では、性別欄を男か女か選択させる形式を取らず自由記述にすることや、プライバシーを配慮する間仕切りを用意すること、物資を個別配布することなどの対応策を掲載しています。
国や都道府県の施策
内閣府男女共同参画局は2013年5月に統計した「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の事例集の中で、男女共用トイレに関して「最低でも1つは設置するよう検討することが必須」、避難して来た人の名簿の性別欄に関しても「自由記述欄を検討すべきだ」と書かれています。
愛知県は2018年3月、避難所運営マニュアルを作成し直し、LGBTQ当事者に配慮する支援策を追記しました。熊本地震を機転に検討会を設け、その中で寄せられた意見を反映しました。山形県山形市も2019年3月、市職員や教職員を対象とするハンドブックに「LGBTQ当事者に配慮しなければならないポイントを検討しておく必要がある」と追記し、LGBTQ当事者や支援者が話が出来る居場所の確保などの支援策を盛り込みました。
私もこうやって可視化したことで、想定しなかった以上にLGBTQの人が災害での避難の時に、数々の問題が生じていることが分かりました。ホルモン治療中とかだと、人の目が気になってしまうのは分かる気もします。災害が起きるとその土地のほぼ全員に該当するので、一気にこの問題を解消するのは難しいかと思いますが、少しずつでもこの問題が解消していけばいいなと思いました。
noteでも書いています。よければ読んでください。
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