乳児ボツリヌス症。赤ちゃんに蜂蜜は1歳になるまでダメ!それ以外に危険なものも。 

乳児ボツリヌス症

この記事は約 10 分で読むことができます。

こんにちは、翼祈(たすき)です。

乳児ボツリヌス症とは、生後1歳未満の赤ちゃんは、腸内環境が大人とは異なり、腸管内でのボツリヌス菌が定着して増殖が起こりやすいと言われています。ボツリヌス菌は、芽胞(がほう)を形作りますが、この芽胞で汚染された食品を赤ちゃんが食べると、腸管内で芽胞が発芽、増殖して、毒素を産生して乳児ボツリヌス症を発症させる場合があります。

乳児ボツリヌス症は赤ちゃん特有の疾病で、生後3週間から6ヵ月の赤ちゃんに多く見受けられますが、1歳未満であればどの月齢の赤ちゃんでも発症するリスクがあります。これは1歳未満の赤ちゃんは、腸の粘液の自浄作用が未熟で腸内環境が整っていないことや、母乳やミルクなど栄養価の高い食事を摂ることで、ボツリヌス菌の芽胞が腸内で発育・増殖しやすいことだと言われています。

乳児ボツリヌス症の94%は生後6ヵ月未満の赤ちゃんで、症例の最高月齢は11ヵ月の赤ちゃんです。

日本では、保健所がボツリヌス食中毒として報告したケースは1986年以降3件、医師が乳児ボツリヌス症として報告したケースは1999年以降16件あります。また、ヨーロッパやアメリカでも罹患することで、アメリカでは毎年100例以上の罹患報告もあります。

1987年に船橋市内にある病院が、日本初となる蜂蜜による乳児ボツリヌス症を報告し、当時の厚生労働省が、「1歳未満の赤ちゃんに蜂蜜を与えないように」と注意喚起していました。

2017年3月30日に、東京都足立区で離乳食として、市販のジュースに蜂蜜を混ぜて与えたことが原因とされ、生後6ヵ月の男の子の赤ちゃんが乳児ボツリヌス症で、東京都によれば、統計がある1986年以降、日本で初めて亡くなるケースがありました。

今回は乳児ボツリヌス症の症状と原因、治療法、予防策などと、医師の見解について特集します。

▽症状

 

潜伏期間は3~30日と推定されています。便秘で気が付くことが多く(多くは3日以上持続)、それに伴う脱水状態、不活発といった元気の消失、全身の筋力低下、力が入らないなど脱力状態、哺乳力の低下、よだれが多い、泣き声が小さくなるなどの変化、首のすわりが悪くなる、手足をほとんど動かさなくなる、無呼吸、特に、顔面は無表情となり、 眼瞼下垂、咽頭反射減弱、散瞳、対光反射の緩慢などボツリヌス食中毒と同じ様な眼球運動・脳神経の麻痺から、頸部、体幹部、上下肢へ、対称性および弛緩性の麻痺、筋緊張低下が進み、横隔膜に麻痺が及ぶと人工呼吸器の使用が必要となります。麻痺により頭部を支えられなくなるといった症状を発症する場合があります。

一般的に乳児ボツリヌス症では、下痢、嘔吐は見られません。

多くの場合、適切な治療により完治しますが、重症になると、呼吸困難、呼吸停止が引き起こされ、極めて稀に亡くなることもあります。ですが、乳児ボツリヌス症の致死率はボツリヌス食中毒に比較すると低く2%程度です。

▽原因

主な原因食品は、蜂蜜です。一般的に、蜂蜜は包装前に加熱処理を行わないことから、ボツリヌス菌が混入しています。その上、乳製品の様に濾過や殺菌をせずに生産されていることから、ボツリヌス菌が蜂蜜の中に存在することがあります。また、ボツリヌス菌の芽胞の耐熱性は120℃、4分間、またはこれと同じレベルの加熱殺菌が必要と言われています。100度程度では、長い時間加熱しても殺菌できません。ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死滅しません。

ボツリヌス菌は、土壌や海、湖、沼、川の中などに広く分布している細菌となります。大人の場合、ボツリヌス菌が身体内に入っても、それ以外の腸内細菌との競争に負けてしまうことで、発症する問題になることはありませんが、赤ちゃんの場合は、腸内細菌の環境が整っていなくて、ボツリヌス菌が増殖し毒素を作ってしまうことがあります。

▽その他の感染原因食品

・自家製野菜スープ

・コーンシロップ(異性化液糖)

・宮城県内ではボツリヌス菌に汚染された井戸水で検出

・皮むきや洗浄が不十分な野菜を使った野菜ジュース

意外と見落としがちなのは、原材料に蜂蜜が使われたパン、菓子類、ジュースなどです。

▽治療法

治療は対症療法が実施されます。回復した後も、長い間(1~2ヵ月)は頑固な便秘のために、便と共にボツリヌス菌が外へ排出されます。ボツリヌス菌はアルコールなどの消毒剤は効果がないので、おむつ交換をしたあとは、流水と石けんでよく手を洗って下さい。

▽予防策

蜂蜜はリスクの高い食品ではありません。なので、1歳以上の方が蜂蜜を口に入れても問題はなく、蜂蜜を摂取しても乳児ボツリヌス症の発症はありません。生後1歳以上になると、離乳食等により腸内環境が整う時期に入り、消化器が発達し、正常な腸内細菌叢(腸内フローラ)が作られるため、乳児ボツリヌス症を発症しなくなります。

・蜂蜜を避ける必要はありません。蜂蜜は栄養価の高い食品ですが、蜂蜜や蜂蜜入りの飲料・お菓子などの食品は、生後1歳以上になってから与えましょう。

・乳児ボツリヌス症は周りにいる大人が気をつけていれば予防できます。焼き菓子やカステラ、飲み物など、蜂蜜が含まれる黒蜜やシロップなどの精製度の低い砂糖も注意が必要となり、食品掲示ラベルで内容を確認し、購入する時には原材料を確認して下さい。

・家族や育児をする人にも、1歳未満のお子さんに蜂蜜を与えない様に伝えておきましょう。

・また、土壌などに広くボツリヌス菌が分布しているので、食べ物は十分洗浄をして与えて下さい。食材及び食品は冷蔵または冷凍下での保存などを行って下さい。調理器具は衛生的に取り扱って下さい。

参考サイト

ハチミツによる乳児のボツリヌス症 消費者庁(2022年)

ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。 厚生労働省

1歳未満の乳児に、はちみつを与えないでください 北海道 伊達市

知って予防しよう!乳児ボツリヌス症 Aoi あおい小児科(2017年)

乳児ボツリヌス症 JA佐久浅間(2018年)

乳児ボツリヌス症への医師の見解

「生後6ヵ月の赤ちゃんが蜂蜜を食べてボツリヌス毒素で死亡」

このニュースが日本の出来事だと知って私は耳を疑いました。どうして、こんなことに…と思ってしまったからでした。ですが、両親をその件で責めるのは間違いです。そんなことは学校では多分習いませんし、産科及び小児科の医療スタッフが親御さんに出産する前に事前にお伝えしなければならないことだからです。

「毒」といえばトリカブト、ヒ素、青酸カリなどがよく知られているでしょうか?では「史上最強の毒」とは何でしょうか?

答えは「ボツリヌス」です。これは医療従事者ならばみんなが知っている“常識”です。しかも、サリンやVXガスなどの毒と比較しても、何千倍から何万倍も強力な毒と考えて間違いありません。ごく微量のボツリヌスで人を死に追いやることができます。一般的には体重1kg当たり1μg(マイクログラム=100万分の1グラム)が致死量と言われていますし、体重50kgの人ならたったの50μg=2万分の1gで死に至ります。

そのボツリヌスを産み出すのが他ならぬ「ボツリヌス菌」です。ボツリヌス菌はクロストリジウム・ディフィシルの仲間で、正式名を「クロストリジウム・ボツリヌム」と呼んでいます。クロストリジウム・ディフィシルがヒトの腸内にも生息しているのに対し、ボツリヌス菌が生息するのは食品の中、それも酸素があるところでは生きていくことができず、潜んでいるのは、酸素のない発酵食品やビン詰め、缶詰の中です。

日本で初めてのボツリヌス食中毒の検出されたケースは、1951年に報告されました。北海道で自家製の「ニシンのいずし」を食べた4人が亡くなっています。ボツリヌスによる中毒事件で最も有名なのは1984年、熊本県で製造された真空パックの辛子れんこんによる集団食中毒です。この時は合計36人が発症し11人が亡くなっています。

参考:乳児に蜂蜜厳禁はなぜ 知られざる「常識」 毎日新聞 医療プレミア(2017年)

11人が亡くなるというのは、かなり大きな食中毒事故に該当しますが、一般に「世界最大の集団食中毒発生」と言われるのは、2006年にタイ北部で発生したタケノコ缶詰食中毒です。この時は209人が発症して、134人が入院し、その中で42人が呼吸困難となり人工呼吸器が必要となりました(ただし亡くなった人はゼロです)。この集団食中毒発生が起きた時、タイには治療をするために必要となるボツリヌス抗毒素製剤の国内備蓄がなく、日本を含んだ海外諸国が支援物資を届けました。

この記事に出て来る谷口医院の谷口恭医師は、タイのHIV陽性者やHIV孤児を支援している関係で、タイにしばしば渡航します。特にタイ北部にはHIV施設が複数あるため、毎年の様に訪れています。タイの国土は南北に長いため、日本と同じ様に南北で気候や文化が全く異なります。タイの場合、北部と南部では人の見た目や外観も異なりますし、食べ物は全く違うものを食べます。

比較的涼しい北部では、発酵食品などの保存食が日常的に消費されており、蜂蜜の産地としても有名です。タイの名産品と聞いて蜂蜜を思い浮かべる人は少ないかもしれませんが、タイ北部の人と仲良くなるとお土産によく蜂蜜を頂きます。

ある時、現地の人と蜂蜜の話をしていてボツリヌス菌の話題になりました。そのタイ人が言うには「乳児に蜂蜜を与えてはいけないことは、タイ人ならみんなが知っている常識」だそうです。

私とはちみつ

私は先にボツリヌス食中毒の記事を書きました。それを書いている時に、ほとんどの媒体で、乳児ボツリヌス症のことが一緒に書かれていました。

母に「ボツリヌスのことを書いたよ」と言うと、「それで思い出したんだけど、私、あなたが1歳未満の小さい頃、うっかりはちみつを食べさせてね、母子健診の時に、『はちみつ食べさせていないですか?』と聞かれて、『えっ⁉』って驚いたの。慌てていたら、先生から『見た限り、大丈夫ですよ』と言われて、安心したのと、本当に慌ててしまったのよ」と言いました。

今では乳児ボツリヌス症で、1歳未満の子どもにははちみつはダメという常識は浸透していると思いますが、私が小さい頃はそんなことを知っている、親御さんもそんなに居なかったでしょうし、今と時代が変わったと思います。

なぜ自家製野菜スープでも乳児ボツリヌス症が?と思いましたが、毒の素の芽胞が土壌の中にいると今回も改めて知って、畑の中か何かにボツリヌス菌が居たのかな?と思いました。

小さいお子さんのいる皆さん。この常識が、この記事を通しても、広く伝わって欲しいなと書いて改めてそう思いました。

noteでも書いています。よければ読んでください。

→HOME

乳児ボツリヌス症

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

ABOUTこの記事をかいた人

左耳感音性難聴と特定不能の発達障害(ASD,ADHD,LD全ての要素あり)、糖尿病、甲状腺機能低下症、不眠症、脂漏性皮膚炎などを患っているライターです。映画やドラマなどのエンタメごと、そこそこに詳しいです。ただ、あくまで“障害”や“生きづらさ”がテーマなど、会社の趣旨に合いそうな作品の内容しか記事として書いていません。私のnoteを観て頂ければ分かると思いますが、ハンドメイドにも興味あり、時々作りに行きます。2022年10月24日から、AKARIの公式Twitterの更新担当をしています。2023年10月10日から、AKARIの公式Instagram(インスタ)も2交代制で担当。noteを今2023年10月は、集中的に頑張って書いています。昔から文章書く事好きです、宜しくお願い致します。