【体験談】精神科病院は出会いと別れを繰り返す〜勝手にヒーローだと思い込んでいた、無力な自分〜 

子ども

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こんにちは、ゆたです。

今まで【体験談】と評し、精神科病院での記事をAKARIで投稿してきました。

【体験談】精神科病院に入院する、もう一つのメリットは『薬選び』〜先生と共に、適切な薬を〜

自分語りになったり、稚拙な文章だったりと、記事としての体裁を保っているのかもわからないですが、こうして皆さんに自分の思いを発表できる場を設けて頂いたTANOSHIKA CREATIVE、並びに関わっている全ての皆様に感謝です。

さて、本日は今までで最も自分語りな記事です。

AKARIでは皆様の気持ちにぽっと温かい明かりを灯すような記事を投稿しています。

なので、私もそのような記事を書くべきなのですが、今回はどうしても紹介したいお話があります。それは私の中で大変輝かしい記憶であると共に、どうすることもない現実に絶望した話でもあります。

多少端折って書きますが、空想の話ではなく、私が入院していた病院で本当にあった出来事です。

良ければ、お読みください。

彼女は元気な女の子。

女の子

私は計3回の入院をしています。

今まで書いた記事は1回目の入院についてのことですが、今回は2回目の入院の時のお話です。

私は中学3年生になっていました。

もちろん、一回目で入院した患者さんはほとんどいません。

しかも、病棟も以前とは違う場所だったので、本当に全く新しい状態でスタートを切りました。

入り口は大きな開扉、そこを開けると直ぐに共有スペースがあります。

一回目の入院していた病棟よりかなり開けた場所です。

入り口から右手には沢山のおもちゃがありました。

そしてそこには二人ほどの子どもたちが遊んでいるのが確認できました。

「あ、新しい人や!」

そう言って私の方に駆け寄ってくる女の子、彼女の名前はTちゃんと言います。

Tちゃんは小学5年生の女の子です。

人懐っこく、病院内ではみんなから可愛がられていました。

私とは比較的、歳が近いこともあり、あっという間に仲良くなりました。

勉強をしたり、たまにサボったり、たくさん一緒に遊びました。

彼女はあまりにも世間のことを知らなかったので、私は得意になっていろいろと教えました。

すると、彼女は私に対し、凄い! とかかっこいい!  とかいってくれるので、ますます、調子に乗っていました。

彼女はオーバーリアクションをよくするので、私に対してだけではなく、みんなに対してそんな感じでしたが、それでもそうやって反応してくれることが嬉しかったのです。

気分はまるでヒーローした。

彼女に色んなことを教える正義の味方だ、なんて思ったりもしました。

恋、ではなかったと思いますが、彼女の前ではかっこいい自分でありたいと常々思っていました。

今思えば、とても恥ずかしい記憶ですが、中学生なので、許してあげて欲しいです笑

突然の提案。

ある日の夕方、外を散歩していたら、彼女が急に

抜け出さん?

と言ってきました。

私はそんなに病院が嫌なのか、と聞いたら、

そうじゃないけど、戻りたくないんよ

と俯きながら言いました。

彼女が何を思っていたのか、私にはわかりませんでしたが、正直抜け出すのは面白そうだ、と思ってしまい、脱走を試みました。

とはいえ、私はわざと見つかるような場所を提案していました。

このまま見つからないと、晩御飯も食べれないし、何より夜は冷える時期なので、正直ベッドで寝たいなと思っていたからです。

当然私たちは呆気なく捕まり、しこたま怒られ、いっとき外出が禁止されました。

この時の自分は彼女がなぜ、病院に戻りたくないのか、逃げ出したいと思っていたのか知りませんでした。

しかし、後に知ることになります。

彼女の告白。「児童養護施設には帰りたくない」

それからも彼女とは仲良く過ごしていたある日、彼女は自分の家について、話を切り出しました。

わたし、帰ってたらまた施設やん。あそこには帰りたくないんよ

詳しく聞くと、Tちゃんにはお母さんはいますが、育児できるような状況ではなく、現在は児童養護施設で暮らしてるらしいのです。

私はその時の衝撃を忘れることができません。

そしてふと、あの夜のことを思い出しました。

病院を抜け出したいと言ったのは、退院して、施設に戻りたくない、という気持ちの表れだったのではないか、私はそう思いました。

続けて話を聞いていると、児童養護施設では自由にできることがあまりにも少ないことを知りました。

家のあれこれは共有ですし、服や鉛筆一つでも自由に買うことができないのです。

もちろん全くというわけではありませんが、少なくとも一般的な家庭の生活とは全く雰囲気が異なっていました。

話を終え、無言の空気の中、私は何かを言うべきだと思いました。

しかし、私は何も言えませんでした。

なんて言うべきか、当時の私にはわかりませんでした。

助けてやりたい、そう思うけど、私がどう足掻こうがただの中学生にしてやれることなんてありません。

私は私を凄く情けなく思いました。

大きく肥大した仮初のヒーローは完全に消え去り、自分のちっぽけさを強く実感しました。

でもせめて、この病院での生活を楽しいものにしてほしい、そう思い、私は彼女が退院するまで一緒に沢山の思い出を作ることにしました。

夜遅くまでとにかく遊びました。

そして退院の日、彼女の母親が迎えにきました。

退院後は施設での暮らしではありましたが、母親との仲は悪くないように思えました。

もしかしたら、一緒に暮らせる日が訪れるかも知れません。

そう思うと、勝手ではありますが、報われる気がしました。

そして私は事前に用意しておいた色紙と感謝を記した手紙を渡し、お別れをしました。

彼女も今はもう、20歳ぐらいになっているでしょうか。

元気にしていれば嬉しいですね。

終わりに。

精神病院では人の入れ替わりが激しく、別れは当然で、そこから連絡を取ることはできません、

病院のルールで連絡先の交換は禁止なので、奇跡的な出会いがない限り再会は望めないでしょう。

しかし、思い出はいつまでも残っています。

辛い日々を彩ってくれたのは、ともに病気に立ち向かう仲間でした。

一人では孤独で死んでしまいそうな気持ちになってしまうこともあるでしょう。

そんな時、近くに適切な距離感の仲間がいれば心強いと思います。

それに学校や会社と違って、何度失敗しても大丈夫です。

ここ以外で関わることはほとんどあり得ません。

なので、存分に自分らしく過ごすことができ、それが治療にとっても大事なことなのです。

これからも思い出す限り、入院生活について話していこうかなと思います。

長々と話してしまいましたが今回はここまで。

また、次回の記事でお会いしましょう。

以上、お相手はゆたでした。

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