この記事は約 6 分で読むことができます。
こんにちは、翼祈(たすき)です。
パーキンソン病は前駆症状として、発症の10~20年前に睡眠障害が出ることがあります。その前駆症状の段階で見つかれば、運動能力を維持できるリハビリや、脳で不足する物質を補完する薬の服用を早く開始可能するなど、患者さんにとってメリットも多いといいます。
パーキンソン病を発症させる異常型の「αシヌクレイン」というたんぱく質が蓄積する病気は、その他に多系統萎縮症、レビー小体型認知症があります。多系統萎縮症の64%、レビー小体型認知症の患者の90%で、異常型の「αシヌクレイン」が検出されました。
そんなパーキンソン病ですが、原作者も主演の方も、パーキンソン病を患っている方が務める映画が、2023年10月に公開されます。
シンガーソングライターの樋口了一さんが主演を果たす映画『いまダンスをするのは誰だ?』が2023年10月7日(土)より東京・K‘s cinemaほかで全国順次公開されます。
パーキンソン病の当事者が主演する映画は日本では初です。
今回はこの映画に関してと、順天堂大学が研究を進めている「αシヌクレイン」の続報についてお伝えします。
あらすじ
本作は、40代で若年性パーキンソン病と診断された主人公が、出会った人たちやダンスを通じて自らの生き方を見つめ直していく物語。バラエティ番組「水曜どうでしょう」のテーマソング「1/6の夢旅人2002」などで知られる樋口が主人公に扮した。樋口自身も2009年にパーキンソン病だと診断されたが、現在も定期的にライブを行うなど、故郷の熊本を拠点に闘病しながら音楽活動を続けている。
予告編も公開中
ここからは以前制作した記事でも紹介させていただいた、パーキンソン病の原因たんぱく質の「αシヌクレイン」の続報についてお伝えします。
順天堂大学、「αシヌクレイン」のその後の研究成果
「αシヌクレイン」というたんぱく質の異常を簡単に発見できる検査法は確立されていないことから、パーキンソン病の診断をするには症状から観た視察に依存しています。行動が鈍くなることや、手足の震えという特徴的な症状が出て、脳のMRI検査などを行い、他の病気でないことを確認した上で診断を下します。症状が進行してからでないとパーキンソン病の診断が難しいのが実情です。
この度順天堂大学の脳神経外科が専門の服部信孝教授らの研究グループは、血液に注目しました。近年の研究では、異常型の「αシヌクレイン」は脳以外にも末梢神経にも蓄積することが判明してきました。異常型の「αシヌクレイン」が全身へと蓄積を拡大させる経路と疑われているのが血液です。
ですが、血液に含まれる異常型の「αシヌクレイン」はごく微量と推測されることから、それだけを「αシヌクレイン」を検出するのは困難です。そこで研究グループは、異常型の「αシヌクレイン」が持つ、ある特徴を利用した検出法を思い付きました。
最初に、たんぱく質の分離に活用される免疫沈降法という手段で、血液から「αシヌクレイン」を抽出します。続いて抽出したものを正常な「αシヌクレイン」と混ぜ合わせ、異常型の「αシヌクレイン」が有るか無いかを解析しました。
異常型の「αシヌクレイン」は、正常たんぱく質を巻き込みながらどんどん異常型に変化させてしまう性質を持ちます。抽出物の中に微量でも異常型の「αシヌクレイン」が検出されると、後から混ぜ合わせた正常型が異常型の「αシヌクレイン」に変わり量が増え、「αシヌクレイン」が検知できる仕組みです。
実際に、血液から抽出した「αシヌクレイン」を人の手で生み出した正常型に加え、120時間に渡りかき混ぜ続けた結果、異常型の「αシヌクレイン」の検出に成功しました。およそ220人のパーキンソン病の患者さんの血液を使い実験すると、95%で異常型の「αシヌクレイン」が検出され、診断に有効性があることが明らかになりました。
参考:パーキンソン病や認知症の原因タンパク質が血液検査で検出可能に 順天堂大学(2023年)
研究成果は2023年5月29日付のイギリスの科学誌[ネイチャー・メディシン]に掲載されました。
これから先、より簡単に異常型の「αシヌクレイン」を検出する手段の確立や、現状は5日程度を要する、結果が判明するまでの日数を短縮することが目標に掲げています。
免疫沈降法の後日談。
順天堂大学の臨床神経学が専門の先任准教授の男性は、「この免疫沈降法を活用すると、より早い段階からパーキンソン病の発見にも期待が持たれます」と語りました。
さらに注目すべきポイントでは、免疫沈降法で血液から検出された異常型「αシヌクレイン」を電子顕微鏡で解析すると、パーキンソン病や多系統萎縮症、レビー小体型認知症の3つの病気それぞれで、異常型「αシヌクレイン」の形状が違うことも判明しました。
順天堂大学の臨床神経学が専門の先任准教授の男性は「詳しい異常型の『αシヌクレイン』の構造が解明できれば、近い将来、抗体医薬の開発にも結び付くでしょう」と述べました。
障害者の方が実際に役を演じることが増えて来ましたが、パーキンソン病の当事者による映画は、海外の作品でも検索した結果、まだまだ少ない気がしました。
この映画もパーキンソン病の理解が深まる映画になりそうですね。障害者が主人公の話は、実話に勝る映画ではないかと思います。
参考サイト
noteでも書いています。よければ読んでください。
コメントを残す