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こんにちは、翼祈(たすき)です。
2022年にこちらの記事を書きました。
この記事に出て来る、ALS当事者の武藤将胤さんとその奥様を特集した、ドキュメンタリー映画が現在公開中です。
ALSを患う武藤将胤さんと、発症するのを承知で結婚した妻・木綿子(ゆうこ)さんが、愛とテクノロジーのパワーで病に立ち向かっていく姿を追ったヒューマンドキュメンタリー映画『NO LIMIT,YOUR LIFE ノー リミット,ユア ライフ』は、2023年6月23日(金)より全国順次公開中です。
今回はこの映画に関してと、武藤さんの音楽に賭ける情熱に迫った特集記事をご紹介させて頂きます。
あらすじ
一般社団法人「WITH ALS」代表で、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の課題解決などに取り組む活動に力を注ぐ武藤将胤のドキュメンタリー。
大手広告会社で広告プランナーとして充実した毎日を送っていた武藤将胤は、妻となる木綿子と初めて会った日、すでに手の震えが始まっていた。27歳の時、全身の筋肉が徐々に動かせなくなる進行性の難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)との診断を受ける。絶望しかけた武藤だったが、患者たちの未来を明るくするアイデアを形にすることを決意。ALSという現代の医学では未知の病気の啓発と、最新テクノロジーを使った活動を開始する。2021年8月の東京パラリンピック開会式では、車いすの少女が演じる「片翼の小さな飛行機」でのパフォーマンスにも参加し、全ての人が自分らしさを表現できるという、「ボーダーレスな生き方」を世界へ発信した。
ALSが治せる日が来ると信じて活動する武藤と、彼のALS発症を知った上で結婚した妻の木綿子が、愛と科学を信じて病に立ち向かう、挑戦の日々を追った。
画像・引用:映画.com
予告編も公開中
ここからは武藤さんの音楽に賭ける情熱に迫った特集記事をご紹介させて頂きます。
歩みを止めない、武藤さんの信念
「ALSと診断を受けた直後は頭が真っ白な状態で、ここで俺の人生はもう終わりなのか、何で自分がなってしまったんだろうかと、激しく落ち込んだのを今でもあの時に抱いた感情を鮮明に覚えています」。
10年前、国の指定難病「ALS」を発症した男性。声を発せなくなり、想いを誰かに直接伝えられなくなっても、諦めたくないこと、それは世の中と結び続けるために、男性が可能性を見出した先は最先端のテクノロジーのパワーでした。
流行やアートの最先端が集う東京都港区の六本木エリアでは、毎年6月の世界ALSデーに合わせて、ある音楽イベントが開催されました。DJとしてメインのステージに立ったのは、ALS当事者の武藤将胤さんです。
身体を動かすことができないことから、一般的なDJ機材の操作はできません。
視線でDJ機材を操作可能な様に独自に開発した装置を用いて、会場に流れる映像と音楽を操ります。
武藤さんは、ALSの症状で全身の筋力が衰えたことで、ほぼ寝たきりの状態です。妻の木綿子さんや介護してくれる人のサポートがないと、移動や食事もできません。
武藤さんは、大学卒業後、目標としていた大手広告代理店に就職が決まり、忙しくも充実した毎日を過ごしていました。
高校生の時からハマり始めた音楽活動も継続し、社会人になってからはDJ活動も両立していきました。
ですが、2013年9月頃から、利き手の左手がピリピリとしびれを感じる様になりました。
その後も日を追うごとにしびれなどの症状が進行し、2014年10月、27歳の時にALSと診断を受けました。
そして、症状が悪化するにつれて、呼吸を行うための筋肉も衰え、人工呼吸器の装着が欠かせなくなりました。
2020年1月には、空気の通り道と食べ物の通り道を分離する手術を受け、声を完全に失いました。
今はまだ動かすことができる目や指先、口などを使い、専用のソフトで自分の声をベースにした合成音声を再生させ、自分の意思を音に乗せます。
そうした中でも、武藤さんが最も恐怖に感じているのは、「完全閉じ込め症候群(TLS:Totally Locked-in Syndrome)」と呼ばれる状態に陥ってしまうことだといいます。
ALSは進行していくと、やがてはまぶたや目も動かせません。その反面、意識はハッキリとしているので、大切に思う人の声が聞こえても、想いを伝える手段がないからです。
武藤さんは、日々動かなくなる身体が今日も動くのか、朝起きると確認することがルーティンとなりました。
武藤さんは、「昨日までできていたことが今日できなくなってしまうのではないか?という恐怖は常にあります。身体が不自由になればなる程、自分の身体ではなくなり、自由を奪われる様に感じています」と吐露します。
希望を持つことが困難な状況であっても、想いを誰かに伝えることを決して諦めません。
「たとえ身体は動かせなくても、テクノロジーのパワーで表現できる可能性は必ず切り拓けると、信じています」。
武藤さんはそう信じ続け、世界ALSデーに合わせた音楽イベントに向けて、視線で曲を演奏する独自のDJシステムの開発を継続していきました。
サポートするのは、音響や映像など専門の技術や知識を持つスタッフ達です。音楽の切り替えのタイミングなど武藤さんの細部に渡る要望に対応しながら修正を重ねていきます。
今回、開発されたDJシステムは、視線入力で曲や映像を選択し、停止や再生をするだけだった従来の装置よりも表現の幅が遥かに拡がりました。
画面の座標上を視線が自由自在に反応することで、会場を盛り上げる発声を行ったり、エフェクトがかかった直感的な音を鳴らして演奏に加算されたりすることが可能な様に調整されました。
観客の反応に応じながら、曲に柔軟な変化を加えたことで、お互いに混じり合いながら、同じ空間をシェアすることを掲げています。
武藤さんは、「視線入力技術は、僕らALS当事者には、ただの意思伝達装置ではなく、自分の可能性を拡張するクリエイティブなシステムだと想定しています。視線入力でできる体験を重ねていければ、ALS当事者の日々の暮らしを明るく変換できると信じて、僕は研究に励んでいます」とし、
「細部にまでこだわりを持ち、お客さんの心を揺さぶっていくものを、僕は創り上げていきたいです。どんなに身体的制約が起ころうとALSには負けたくないですし、障害の垣根を越えて、音楽を介してコミュニケーションで結び付きたいです」
と述べました。
参考:動かなくなる体 それでも前に進む サイカル journal byNHK(2023年)
そして迎えたALSの啓発活動を掲げる音楽イベント当日。映像と音楽が融合したライブが、次々と披露されました。
会場やネット配信には、協賛してくれた人や難病当事者など約1000人の観客が集い、音楽で身体を動かし、一緒に歌いました。
困難に打ちまかされそうになりながらも、それでも未来を信じて前に突き進むことを選択した武藤さんの音楽が、音楽として観客にも伝わりました。
武藤さんは、
「多くの笑顔と拍手が見えて、僕らの想いがハッキリと届いたのだと実感が湧き、凄く嬉しいです。僕にとって限界を感じる時は、自分自身が未来を信じるという選択を諦めてしまった時だと感じています。どんな制約や障害を抱えていても、みんなが自分らしく挑戦可能なボーダーレスな社会の創造に挑戦し続けていきます。僕らはテクノロジーのパワーで、今まで不可能と思われていたことを、1つずつクリアにしていきます」
と語りました。
武藤将胤さんのことを知っている身では、
特集記事にしろ、感情移入して読み込みました。障害があっても、絶対に負けない強い心に胸を打たれました。
弊社TANOSHIKAも武藤さんのことは他人事では思えません。会社が福祉の会社なので、武藤さんが出演された東京パラリンピックの記事を書きました。
その時に記事に出した武藤さんのMVに心が揺さぶられた、ライターの支援員さんが、武藤さんのクラウドファンディングに参加しました。
後日、
「翼祈(たすき)さん。このTシャツ、何のか分かりますか?」
「ん?あー、あのMVのですね!」
「クラウドファンディングの返礼で、このTシャツが届きました!」
と会話をしました。それから1年経ちましたが、ライターの支援員さんは今でも武藤さんのプロジェクトのTシャツを愛用し続けています。
福祉の会社なので、病気・障害・難病の話題に関しては、いつもすぐそばにあります。これからも武藤さんにしか生み出せない音楽の創作や、武藤さんのさらなるご活躍を期待しています!!
参考サイト
noteでも書いています。よければ読んでください。
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