アフターコロナで急増する対人不安、米で導入進むSEL(社会感情学習)とは?

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こんにちは、金次郎です。

 ゴールデンウィーク明けの5月8日に、新型肺炎の感染症分類が「重症化しやすい2類」から、低い「5類」に移行して2ヶ月経とうとしています。
 私たちの日常生活も元に戻りつつ有りますが、未だウイルスの感染リスクがゼロになった訳では無いので注意しましょう。
 しかし、新型肺炎が流行したこの3年。
 人並みが誰も居なくなってしまった街や、マスクを着けているので話し相手の表情が良く見えないとか、人と会話できるのはパソコンの画面越し、等々・・・。
 私達のコミュニケーションの形は、とても変化してしまいました

賑わいが戻って来た街だけど・・・

 確かに、学校や会社に行く事が再開されて、街にも賑わいが戻って来ています。
 でも、そんな中で悩んでいる人がいます。

 イギリスの、ある国立大学では今年4月から元の対面式授業が再開しましたが、2割近くの学生が不登校になってしまっているそうです。
 日本も同じで、ある私立大学ではキャンパスに学生たちが戻り始めた現在、学内に有る就職相談センターに連日多くの学生が訪れます。
 学生たちは、大学生活のほとんどをコロナ禍で過ごしています。
 相談センターの職員が気がかりに思っているのは、「人と会うのが不安」と訴える学生が以前よりも増えていることです。

 ある大学生は「大きな教室で多数の人と一緒にいるのが、なぜだか精神的に辛くなってる。だから、わざと離れて座ったりしてます。」と言います。
 また、ある女学生は「家の近所でお祭りがあったので行ってみたら、大人数が嫌になっている自分に気が付いたの。なんか人混みがちょっと嫌いになってる。」と告白しています。

 その他、多くの学生が
 「人と話すことに、何だか抵抗感がある」
とか
 「画面を見てしか、しゃべれない」
と訴えています。

 そう、学生たちに増えているのが「対人不安(対人恐怖症)」です。 

「対人不安(対人恐怖症)」とは?

 「対人恐怖症」は、人と接する事に対して恐怖や不安を表す心理的状態です。
 これに対して、「社交不安障害」と言うのも有りますが、対人恐怖症は人間全体への恐怖です。
 この対人恐怖症は、他人との接触や会話、集団状況で特に顕著に現れます。

・対人恐怖症
 人との交流や接触に対して極度の不安や恐怖を特徴とします。
 この症状は、人間全般に対する恐怖や不安であり、個別の社会的状況や特定の人物に限定され
 ません。
 つまり、対人恐怖症の患者は、人間全般を避けたがる傾向があります。

・社交不安障害
 対人恐怖症に対して社交不安障害は、特定の社会的状況や人間関係において恥をかく事や評価さ
 れることを極度に恐れる症状を特徴とします。
 これには、人前で話す事や他人との会話、パーティー等の集まりへの参加など、多様な状況が含
 まれます。
 社交不安障害の人は、特定の状況や行動に対して不安や恐怖を感じる事です。

さて、対人恐怖症になる原因は色々と有ります。

 ・遺伝的要因
  家族に恐怖症や不安障害の人がいる場合、その家族の他のメンバーが同じ様になるリスクが高
  まる事が研究で分かって来ています。

 ・脳内神経伝達物質の乱れ
  セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなど神経伝達物質のバランスが乱れると、対人恐
  怖症が発症してしまうと考えられています。

 ・過去のトラウマ
  過去に人間関係において苦い経験やトラウマがある場合、それが原因となる事があります。
  虐待やいじめ、恥ずかしい出来事などは、発症に影響を与える可能性があります。

 ・心理的要因
  自尊心や自己評価などの心理的な事が、発症に影響を与える事があります。
  また、恐怖や不安を認識して、対処方法に関する個人的考え方や信念も関与している可能性が
  あります。

 ・環境要因
  幼児期の生育環境や親子関係、周りの人との関わり方などが、発症に影響を与える事があり
  ます。
  過保護な親や逆に厳し過ぎる家庭環境、周りの人々からのプレッシャーなど、様々な生活環
  境が原因となる事があります。

参考:(大阪メンタルクリニック)対人恐怖症

SEL(社会感情学習)って、なに?

 この様にコロナ禍を過ごして来た若者たちの「心の健康問題」が悪化しているアメリカ。
 そのアメリカで、導入が進んでいる教育があります。
 それが「SEL(社会感情学習)」です。
 これは「感情のコミュニケーション」を学ぶ科目です。
 SELでは、自分が所属しているクラスとは別に、更に学年の壁をも超えて「SELの為のグループ」が作られ、高校在学の3年間は同じSELグループで活動を行います。
 活動の内容は、「自分の気持ちや感情を相手に伝える」トレーニングです。
 「嬉しかった事」や、人には言いにくい「嫌だった事」などをグループのみんなの前で話します。

話し易くする為に、大切なルールが3つ有ります。

1・正直に話して、みんなとよく共有する。
2・積極的に人の話を聞く。
3・秘密を守る。

 みんなで自分の内面を共有した後は、自由時間です。
 全員が安心した感じで、意欲的に自分の悩みを相談したり、アドバイスし合ったりします。
 学年が違う生徒同士、この様な感じで「感情のコミュニケーション」を繰り返し行う事によって、不安なく話せる関係を築いていきます。
 学生たちの反応は
 「人と話すのが怖くなくなりました。社交的にもなったし自信もつきました」
とか
 「グループの友達との繋がりが無かったら、今の私は存在してないです。自分がどう見られて
いるかを怖がらなくても良いから、なりたい自分になれるんです」
と人と話す事に自信を着け、会話を楽しんでいる様です

さて、日本は?

 AI(人工知能)を使って学習教材を開発している、とあるベンチャー企業では、いきなり広がったテレワーク(在宅勤務)で社員同士の意思疎通がとりにくくなるなど、課題が浮かび上がったそうです。
  代表の 稲田大輔さんによると「対面じゃ無い業務期間を経験してみると、対面での仕事はチーム内外のコミュニケーションを活発化しやすいんだなと感じました。
皆が一丸でいるためには、お互いがお互いの事をよく知っている状態が大切だなと思いました。」

  その結果、会社がいま特に力を入れているのが、新入社員の為の「トレーニング」です。
 この春に新入社員として入社したAさん。
 大学時代は、一人暮らしにリモート授業ずくめで、ほとんど人と会わなかったのに、いきなり大勢の知らない人に囲まれた生活が始まりました。
 Aさんは「こんなに多くの知らない人と会うのは、かなり久しぶりなので、『どうやって先輩と話しをしたら良いんだろう?』と、ちょっと戸惑っています。」と言います。
 そんなAさんに新人研修で課された課題は、約3ヶ月間に「延べ100人の先輩と会話しなさい」と言う課題でした。
 ある日、ほぼ初対面の先輩2人と、昼食を食べながら会話する事に。
 Aさんは何を話したら良いのか不安そうでしたが、先輩社員達には作戦がありました。
 事前にAさんの履歴を調べており、「卓球が大好き」と言う情報をつかんでいました。

先輩社員「卓球やっているって聞いたけど・・・」
Aさん  「はい、卓球してます」
先輩社員「僕も10年くらい前までやってたよ」
Aさん  「今も勤務終わってから、1人で練習してます」
先輩社員「凄ぉ~い!そんなに好きなんだぁ~」

 Aさんは、嬉しそうに話して、食事中の会話は卓球の話しで盛り上がりました。

 Aさんは「積極的に先輩方もしゃべりかけてくださるし、私も頑張ってしゃべろうと言う気が起きて、自分の心の持ち方も少し変化して来ました」と言い、これをきっかけに、1週間で20人もの先輩と会話ができたそうです。 

終わりに 

 私は、特に人と会話するのは苦手では有りません。
 ただ、補聴器装着者になってからは、時として相手の言っている声が聞こえ辛かったりするので、聞き返す事が有り、そこだけが少し苦労すると言うか相手に申し訳ないなと思っています。
 特に新型肺炎流行以降は、マスク越しでの会話ですので、話し相手の声がこもってしまい聴き取り辛いです。
 ですので、お店に入っても「店員さんと会話が成り立つかな?」と思いながら買い物をしています。
 聴力障害にならなければ、こんな心配事も無かったのですが、初めて会う人には時として補聴器を見せて聞こえ辛い事をアピールして理解してもらう様にしています。

参考:(NHKスペシャル)アフターコロナ 人に会うのがツラい ~科学で解明!心の異変~

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