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こんにちは、翼祈(たすき)です。
世界で小さな子ども達が働いている現状をご存知ですか?
世界には、無給、有給に関係なく、色んな形態で働いている子ども達が多くいます。 児童労働で働く5〜17歳の子どもは、2020年時点でおよそ1億6,000万人と、世界の子どもの10人に1人近くに当てはまります。 その中で女の子は6,300万人、男の子は9,700万人となっています。
毎年6月12日は、児童労働反対世界デーと定められています。
そんな中日本では、1個35円と安さが売りのチョコバー『ブラックサンダー』が、原料に使用するカカオを児童労働をさせずに収穫されたものに、2022年9月15日の生産分から全て切り替えました。児童労働撤廃の対策を行ったカカオだけで主力アイテムを製造するのは、日本国内の大手メーカーではまだ珍しいケースだといいます。
なぜ『ブラックサンダー』を製造する有楽製菓は、切り替えたのか?今回は有楽製菓の社長の想いを述べながら、この取り組みについて紹介したいと思います。
児童労働に頼らない、『ブラックサンダー』の概要
有楽製菓株式会社(本社:東京都小平市、代表取締役社長 河合辰信)は、経営理念である「夢のある安くておいしいお菓子を創造する企業を目指します」に基づき世界の子どもたちを笑顔にするために、カカオ産地の一部で学齢期の子どもたちが労働を強いられている現実と向き合い、児童労働撤廃に向けてチョコレート生産に関わる多くの人を巻き込む活動を開始します。
画像・引用:ブラックサンダーは子どもたちの笑顔をつなぐ 一部原料から児童労働撤廃への 取り組みをスタート! (2020年)
どうやって児童労働をさせないカカオに切り替えられた?社長の想い
日本国内の大手チョコレート菓子メーカーが、児童労働問題の解決に励んでいます。東京都にある有楽製菓は、幅広い世代に人気の主力アイテム『ブラックサンダー』に使用するカカオ原料の全てを児童労働をさせないカカオに切り替えました。1個35円のチョコバーに「『ブラックサンダー』を食べる人以外にも生産に携わる人も笑顔にしたい」との強い想いがありました。
『ブラックサンダー』のパッケージには、カカオ豆を挟んで2つの笑顔のイラストが描かれています。同有楽製菓が活動する【スマイルカカオプロジェクト】の象徴的なマークです。「1つは日本、もう1つはアフリカのガーナの子の笑顔をイラストに描きました」と、『ブラックサンダー』を製造する有楽製菓の会長で創業から2代目の河合辰信社長は語ります。
同有楽製菓は2020年3月、日本国内の大手メーカーの先頭を走り、2025年までに全ての自社アイテムに使用するカカオ原料を児童労働をさせないカカオに変更すると説明しました。まずは同有楽製菓の売り上げの多くを独占する『ブラックサンダー』の改善を加速させ、2022年9月15日の生産分から、全てのカカオ原料を切り替えました。
日本国内メーカーで先頭を走る活動は、5年前、東京・東銀座の喫茶店からスタートしました。きっかけとなる出来事は、チョコレートの主原料となるカカオの産地・ガーナの置かれている現状でした。
河合社長は2018年9月、日本のチョコレート菓子がいかに児童労働に依存して生産されているかをこんこんと喫茶店で聞かされました。向かい合う相手は、東京都にあるNPO法人「ACE(エース)」事務局長(現副代表)の白木朋子さんでした。
2009年から、10年以上に渡って、カカオ豆の原産国ガーナで、子どもの就労・就学支援や貧困家庭の収入向上を通じて児童労働撤廃などの活動に励む「ACE」を介し、河合社長は学齢期の子どもたちが学校に通学できず、労働を強いられている現状を知りました。アフリカの子ども達の支援を行う別のNPOから白木さんの存在を教えて貰い、河合社長からアポを取り会いに行きました。
すでに欧米企業は人権問題に積極的でしたが、日本企業は原料の見直しに消極的だと白木さんは肌で体感していました。
鋭利な刃物でカカオの実を割る、農薬を散布する、重い袋を頭に載せて運搬する、といった危険な作業を任される子ども達もいます。「食べる人に喜んで欲しいとやってきたことでしたが、実際は生産する人の笑顔を奪っていました。この矛盾を変換させなければと思いました」と河合社長は回顧します。
河合社長自身にも20年近く前に、業界団体のツアーでガーナを訪問した体験があります。カカオ農園で仕事をする子ども達と接し、図書館建設などへの寄付も行っていました。ですが、あの頃はお膳立てされた交流で、詳細な児童労働の実態に触れず、人権問題にも鈍かったと現在ではそう感じます。
2019年1月、社内に「児童労働問題を考える会」を発足し、児童労働の課題解決法と議論を積み重ねていきました。新アイテムを作る案も浮上しましたが、「主力アイテムの原料を変換させることこそが今やるべきことだ」との結論に至りました。
チョコレート材料の供給元との取引を再考し、児童労働をさせないカカオを生産する企業から材料を調達しました。その様なカカオは、農家への収入援助や児童労働から子ども達を保護する取り組み、農業指導などに対する支援金を上乗せして購入する様に調整しました。
河合社長は「美味しいのは当たり前で、社会問題に対して本気で取り組まないと購入されない時代です。会社も社会も、サステナブルなものへと転換させていきたいです」と言葉を込めます。
参考:「ブラックサンダー」を児童労働に配慮したカカオ原料に切り替え 専門家「非常にスピード感と企業努力が見られる」 2025年までに有楽製菓の全商品で ABEMA TIMES(2022年)
カカオの原料変更で数%のコスト高となりますが、ウクライナ戦争や円安による原料高の影響よりも小さくなりました。
執行役員の男性は「安いお菓子でも人権に考慮可能なのはインパクトがあるのではないか?消費者が児童労働問題などに関心を持つ機会になればと思います」と述べます。
原材料を生産するガーナの児童労働の現状
「ACE」によりますと、日本が輸入するカカオのおよそ7割を生産するガーナでは、家族で経営する小規模農園が多くあって、子どもの5人に1人が労働を課せられています。「ACE」ソーシャルビジネス推進事業チーフの佐藤有希子さんは「学校に通学できず、計算や読み書きができないことで、将来の選択肢が狭くなってしまいます」と危惧します。
国連のSDGsでは、2025年までに全ての児童労働を撤廃することを提唱していて、世界の大手メーカーも児童労働撤廃を考慮した原料に切り替える活動を加速させています。2020年1月には国際協力機構(JICA)主導で「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」が立ち上がり、製造メーカーや商社を含んだ業界全体による活動もスタートしました。佐藤さんは「児童労働の問題解決には企業の活動だけでは限界があるので、関係機関が連携して活動する必要があります」と警鐘を鳴らしています。
世界では私たちが知らないだけで、沢山の子ども達が家族を養うため、生活をしていくために、色んな理由で働いています。この現状を変えるためには、『ブラックサンダー』の様な、現状から見れば小さいことだけれども、そういうところからでも変えていく意識が大事だと思います。
冒頭の世界の児童労働者数にも言葉を失いましたが、どの国の子ども達にも笑顔であって欲しい、そう思いますー。
参考サイト
noteでも書いています。よければ読んでください。
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