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皆さんは「自分が明日寝たきりになったら」と考えたことは一度でもありますか?
恐らくほとんどの方は想像すらしたことがないと思いますし、どう生きていけばいいか、正直イメージすらわかないと思います。
もしそうなった時、「自分の分身がいてくれたらどんなにいいか」と夢に思うかもしれません。
そんな夢みたいな未来がもう近くまで来ているとしたら、興味はありませんか?
今回はそんな「自分の分身ロボットが働くカフェ」を体験したお話を、以下の内容でお届けします。
・「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」 in福岡について
・カフェで働く方達へのQ&A
・筆者が実際に行って感じたこと
・特別支援学校の生徒向けの遠隔就労体験プログラムも実施!
ぜひ最後までお付き合いください😌
「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」 in福岡について
先述の分身ロボットは、名前を『OriHime』(オリヒメ)と言います。
分身ロボットカフェDAWNは、接客や配膳、コーヒーを淹れるバリスタロボなど、用途によってサイズや機能が違うOriHimeを自宅から操縦して働く人達がいるカフェです。
OriHimeを操るのは、パイロットと呼ばれる分身ロボットを操って働く方達です。
パイロットの方は、ALSやSMA、筋ジストロフィーなどで外出困難なほどの重度な障がいや難病をお持ちの方も少なくありません。
OriHime開発者の吉藤オリィさんは、『サイボーグ時代』などの著書で知られるオリィ研究所の所長としてOriHimeを活用し、寝たきりの方などに就労の機会などを提供し続けています。
写真は接客や配膳の際に使われるOriHime-Dです。
このプロジェクトは以前から追いかけてきて、東京・日本橋の本店が開店する際にはクラウドファンディングで支援などもしていたのですが、そんな筆者の住んでいる福岡県にも限定店がオープンしました!期間は11/12(土)~11/27(日)の16日間です!
会場は西日本シティ銀行のココロ館・ココロガーデン内にある「ココロ館カフェ」(福岡県福岡市中央区鳥飼2丁目1-11)にあります。
限定店開設に至った経緯
今回福岡で限定店が開設された経緯については、下記のようにありました。
「分身ロボットカフェ」でトレーニングを積んだOriHimeパイロットが企業就労を打診される事例が多く生まれたことから、オリィ研究所では2020年7月に分身ロボットを使ったテレワークのための人材紹介サービス「AVATAR GUILD(アバターギルド)」を開始。
例え重度障害があっても自分らしく働きたい当事者、障害者法定雇用率を達成したいと考える企業、障害者雇用問題に悩む地方自治体などからの問い合わせが増え、実際に就労に繋がったパイロットは延べ50人を超えた。現在、日本電信電話株式会社の総合受付、JR関内駅北口高架下「cafeツムギstation at Yokohama Kannai」、モスバーガー原宿表参道店、鎌倉市大河ドラマ館、和歌山アドベンチャーワールドなど全国各所で分身ロボットOriHimeを使った就労が行われている。
このプロジェクトを機に「分身ロボットを活用したテレワーク」という新たな社会参加の形をさらに広く社会実装するため、今回オリィ研究所は各協賛企業の支援を得て全国キャラバン形式でのカフェ開催に踏み切った。【オリィ研究所】分身ロボットカフェ「期間限定地域キャラバンカフェ」2022年度内に福岡市・札幌市での開催が決定!|株式会社オリィ研究所のプレスリリース (prtimes.jp)
2021年6月に東京・日本橋に本店ができてからは、日本はもとより世界中から視察が訪れるなど注目を集めています。下記は公式HPにあった、DAWNの紹介動画です。
ここからは、実際にパイロットの皆さんに伺った話についてまとめていきます。
カフェで働く方達へのQ&A
今回は2名の方にお話伺うことができました。最初に座ったカウンター席でお話を伺ったのが、 OriHime-Dを巧みに操る今井雅子さんでした。
まさこさんはSMAという神経の難病で、日常生活を送るのにも誰かの手を借りなくてはならない大変な生活の中、当事者団体「ぐるり」を設立し、各所で講演活動をしたり、「ふうせんバレー」という北九州発祥の小さな子供から大人、高齢者の方まで参加できるコミュニケーションスポーツを通して子ども達や学生に障がいについてなど考えてもらう機会を提供したりされています。
まさこさんのTwitter
https://twitter.com/kakurekumasako?s=21&t=EagA210PZllZnIYtayBBOw
Q.どのくらい前からパイロットをやられていたんですか?
去年の3月からです。
訓練は日本橋の店舗ができた頃はかなり丁寧にやっていました。
今はこうしてあちこちに出張したりしています。
Q.日本橋の本店には外国からのお客さんもたくさん来られているそうですね!外国の方の反応などはいかがですか?
当日のお客様の半分近くが外国の方だったりします。私は英語が話せないのですが、言葉が通じなくてもリアクションなどしてくれるので、なんとか勢いで接客しています笑
写真はカウンター席での接客の様子です。
まさこさんとは自分がテーブル席に途中で移動した関係で30分ほどしかお話できなかったのですが、複雑な動きができるアームが付いた高性能のOriHimeを操り、アームを操ってエア握手をしたり、オリィさんがいつも写真の際にする腰に手を当てるポーズをとってくれたりと、たくさん楽しませてくださいました。
また、OriHime-Dの身長は120㎝で、ドラえもんが129㎝なんだそうです。
そう思うとドラえもんて結構大きいですね笑 なんて話で盛り上がりました👍
普段は日本橋の常設店でお務めだということなので、限定店が終了後もそちらでお会いできると思います!
ここからは同じくパイロットのけいさんに伺ったお話です。下記はけいさんのTwitterです。
https://twitter.com/cat25kei?s=21&t=EagA210PZllZnIYtayBBOw
パイロットに応募したきっかけはなんですか?
娘が脳性麻痺で、将来どうやって働いていけばいいのか考えた時に、まずは自分で体験してみようと思って応募しました。やってみて、娘のためでもあるのですが、自分自身も他の方と交流すること自体が楽しく、やりがいも感じて働けています。
娘もOriHimeeyeという視線入力で操作するデバイスのユーザーです。
今はパイロットの方は何名くらいいらっしゃるんですか?
今は70名ほどで、日本だけでなく、イタリアなど、海外から働いている日本人の方もいます。
緊急で離れなくてはいけない際はどうやって対応しているのでしょうか?
パイロット同士でやり取りして、緊急の際は受け付け業務から OriHimeの操縦だけバトンタッチしたりしています。
オリィさんとは接してみてどんな印象ですか?
忙しい方なのでなかなか直接お会いするのが私たちでも難しいですが、とても優しい方で、以前お会いした時には娘にも優しく接してくれました。
けいさんは北海道にお住まいで、遠く離れた地から九州にいる自分達に接客してくださいました。
今度地元の北海道・札幌にも出店する予定があるとかで、今から楽しみにされておいででした😊
OriHimeでの接客を受けた感想
今回、初めて生でOriHimeが動いているところを見て接客を受けた訳ですが、自分が感じたのは想像以上の「人間の体温」でした。
確かにロボット自体はプログラムで動いているのですが、パイロットが操作することによって若干の「ぎこちなさ」や「人間臭さ」が生まれていたり、確かな「人間の意思」を感じることができました。何より、パイロットとのやり取りや反応がシームレスに返ってくることで、相手の表情こそ見えませんが、そこに「誰かが居る」ようにも感じることができました。
また、パイロットは当事者の方がしているのだと思っていたのですが、今回接客してくださったけいさんの様に、当事者の親御さんもまた、24時間の介助を必要とする医療的ケア児と共に生きている「生きづらさ・働きづらを抱えた一人」であることを我々は忘れてはいけないと感じました。
そういう意味では当事者だけではなく、その家族をもこのプロジェクトは勇気づけ、希望となるものになっていると思います。
もしご興味持たれましたら、こちらから席を予約できますので、ご検討ください!
https://coubic.com/orylab/booking_pages
特別支援学校の生徒向けの遠隔就労体験プログラムも実施!
また、この福岡キャラバンカフェでは、特別支援学校の生徒への遠隔就労体験も実施しています!
生徒達は自宅から遠隔操作を先輩パイロットから学びつつ、最終的に実際にお客様に接客するところまで行うとのこと。
肢体障がいを持つ卒業生の進路は、他の障害を持つ卒業生と比べても「福祉施設への入所・通所」になるする割合が1799人中1530人(85%)と高く、就職や進学といった道を選択するケースが非常に低いことが問題となっています。(※下記表参照)
これも生徒達の進路や今後の人生にどんないい変化があるか非常に楽しみです😊
なぜロボットではなく、「分身ロボット」なのか?
技術の発展と共に、人の仕事はロボットが代行できるようになり、その分人間は楽ができるようになりました。近年はレストランで、配膳ロボットが食事を運んでくる未来的な光景も見られますし、自分もロボットが運んでくるのを見て、「ドラえもんの世界だ!」と興奮もしました。
ロボットが人間の仕事を担うことで、人件費を削減できたり、将来的な人手不足解消にもつながりますが、同時に誰かの仕事が無くなることも意味しています。
事実、AIに仕事を取られるのではないかと危惧する労働者も少なくありません。
かつてオリィ氏は著書「サイボーグ時代」の中で、「やりたくない仕事をやらなくてよくするためにテクノロジーを使い、やりたい仕事ができなくなったときの解決にもテクノロジーを使うのが日本のスタイルですよ」と海外の記者に答えたことがあると書いておられました。
今後の社会もかくあって欲しいと願うばかりです。
このプロジェクトはカフェという形で外出困難な人達が働いて行くことで、自分がどんな状態でも社会と繋がる方法を持てる豊かな社会へと発展させるための『実験』なんだと思います。
オリィ氏自身もかつては不登校になったり、大学時代に体調不良で講義を休みがちだった時、分身ロボットの前身となる自身の顔をかたどった「ケンタロイド」というカメラ・マイク・スピーカーを搭載したデバイスを作り、講義に自宅から『出席』し、教授達を説得して単位を取得した過去があります。
そんな様々な原体験が、このような事業設立への機運にも繋がっていったのだと思われます。
これが将来どういった形で社会に馴染んで「当たり前」の光景になっていくのか、この事業の発展が与えるパイロットの方やそのご家族の人生への影響の大きさを考えた時に、楽しみで仕方がありません。
今こうして記事を書いている自分すら、明日から突然寝たきりの生活を強いられないとも限らないのですから。
自分も就労継続支援A型事業所TANOSHIKA CRATIVEで、職業指導員として様々な障がいの当事者の方にお仕事を提供していますが、まだまだ福祉という枠組みの中でのことで、彼らの人生にどれだけの物を残せているかを考えると、遠く及びません。
でもこうしてもがいていることも、少しは皆さんの、そして自分の将来生きる世界を豊かにできることにつながると信じています。
当事者による当事者のためのメディア『AKARI』編集長 島川修一
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