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ペットショップでの個体販売が禁止に
フランスで2024年からペットショップでの、犬や猫を販売するのを禁止することになりました。ペットを飼いたい場合は、保護センターか個人からの譲渡、ブリーダーからの直接購入となり、いわゆる「衝動買い」を防ぐことができるのです。
参考:フランスで2024年からペットショップでの犬猫販売禁止に 動物愛護で – ライブドアニュース (livedoor.com)
増え続ける多頭飼育崩壊
フランスでこのような法律ができたのですが、日本では「多頭飼育崩壊」という問題が浮き彫りになっています。
多頭飼育崩壊(たとうしいくほうかい)とは、ペットの動物を多数飼育した飼い主が、無秩序な飼い方による異常繁殖の末、飼育不可能となる現象。
英語ではアニマルホーディング(Animal Hoarding)といい、過剰多頭飼育者のことをアニマルホーダー(Animal Hoarder)という。
ペットを自宅など同一ヵ所で最初は適正頭数を飼っていたが、不妊手術など適正な措置を行わないままに無計画に飼った末、飼い主の予想を超えて異常繁殖が繰り返され過剰多頭飼育となり、経済的にも破綻して飼育放棄に近い状態になる現象が各地で起こっている。
現場では、糞尿の垂れ流し、餌不足、病気、餓死、共食い、害虫・ネズミの発生、鳴き声による騒音、悪臭などが発生し、図らずも動物虐待や近隣トラブルとなっているケースも多い。
飼い主の孤独死や病気、行方不明などで問題が深刻化し、近隣住民からの悪臭などの苦情・通報により発覚するケースも多い。動物愛護団体などボランティア組織が発見したり、介入したりするケースもあるが、その後に保護先が確保できずにそのまま放置される場合もある。日本では2016年時点の最新調査で全国で約1800件の多頭飼育による苦情件数が報告されている。環境省が2頭以上の犬・猫飼育に対して複数の住民から苦情を寄せられたケースを、動物愛護担当部局がある115自治体について集計したところ、2016年度で2199件あった。飼育頭数が50以上というケースもあった。
なぜ「多頭飼育崩壊」は起こってしまうのか?
多頭飼育崩壊の原因はさまざまです。
ペットへの避妊手術など、適正な処置をしなかったため過剰繁殖が起きたり、飼い主の病気や高齢化、思わぬ事故や災害などでペットが放置された末に起きる場合もあります。
また、繁殖業者(ブリーダー)の経営が行き詰まり、飼育が崩壊するケースもあります。生活費やエサ代を稼ぐため他の仕事につかねばならず、結果的に動物の世話ができなくなる…という状況に陥っている業者もいるのです。
引用:痩せ細り、糞尿まみれで…多頭飼育崩壊の痛ましい現実「犬たちよ、いま助けに行くからね」(webマガジン mi-mollet) – Yahoo!ニュース
例えば、猫の場合の多頭飼育崩壊例を説明したいと思います。
猫の繁殖能力はすさまじく、生後6ヵ月で妊娠可能となり、年に2~3回発情期を迎えます。そして、一回の交尾で、妊娠率は100%出産で、妊娠期間は2ヵ月程。子猫が離乳すればまた妊娠することが可能になります。
3匹が6ヵ月後にまた、3匹妊娠すると、3匹×3匹=9匹になります。
また6ヵ月後に、その9匹が3匹出産すると、9匹×3匹=18匹と、1年もたたないうちに20匹近くの猫が生まれてしまうのです。
これは、例としての計算ですが、猫は平均して3~5匹の子猫を生むと言われています。
最大5匹生まれた場合、1年もたたないうちに、20匹以上の猫が生まれる計算になってしまいます。
猫の場合、多頭飼育崩壊は家庭内で起こるわけではありません。
外飼い、もしくは野良猫に「可哀そうだから」と餌を与えたところ、庭に住みつき、半年後には子猫を生んで、いつまにか家の周りが猫だらけになるという事例もあります。
中には、集まってくる猫たちに餌だけ与えて、避妊・去勢手術を行わない、所謂「エサやりさん」と呼ばれる人たちもいます。
アニマルホーダーと呼ばれる人たち
海外では、このような動物の多頭飼育崩壊を起こす人たちのことを「アニマルホーダー」と呼びます。
語源は、ゴミ屋敷などでゴミを抱え込む人たちのことを「ホーダー(抱え込む人)」と呼んでいて、その専門用語からきています。
2004年に「動物との共生を考える連絡会」主催のセミナーで、アメリカ人道協会のランダル・ロックウッド博士がアニマルホーダーを以下のように定義しました。
①多数の動物を飼育している。
②飼育動物に対し、最低限の栄養、衛生状態、獣医療が提供できない。
③環境悪化に対応できない。
④本人はもとより同居人に対しての健康や幸せにマイナス効果が生じていることに対応ができない。
アニマルホーダーは精神疾患の一種
アニマルホーダーになるのは女性のほうが多く、主に未婚者や離別経験者で、年齢は50代以上がほとんどであるとされています。
しかし、アニマルホーダーとしての、兆候は20~30代から始まるそうです。
どんな人がなりやすいのか、特徴的なのは、教育レベルが高く、教師、看護師、獣医師などの職業に従事している人が多いことです。
性格的な特徴として、寂しがり屋であること、一つのことにのめり込みやすいこと、熱くなると周りが見えなくなること、収集癖があり手放すことができないことなどが挙げられています。
中でも、不要なものが捨てられず家の中が不要なものでいっぱいになる人(ゴミ屋敷)と、アニマルホーダーは似ている精神性を持っていると言われています。
またどちらも、親や子供、パートナーの死や離別などの大きな喪失感から発症することが多いとされています。
そして、精神疾患である強迫性障害(OCD)と似ている部分が多くあると言われています。
強迫性障害とは、普通の人なら気にしなくても良いことが常に気になってしまう「強迫観念」にとらわれることや特定の行動を繰り返さずにはいられなくなる「強迫行為」が主な症状のことです。
アニマルホーダーを救うには
「犬や猫は自分の元にいるのが一番幸せだ」と考えるアニマルホーダーは、自分が動物を集めていることを悪いことだとは思っていません。
また仮に悪いことだと気がついていても、「かわいそう」だという思い込みから動物を手放さそうとはしないのです。
アニマルホーダーとなる人の多くは、正常な判断や決断ができなくなっています。
そのため、自分が飼育している動物を苦しめているとは思っていないのです。
動物へ愛情を求め、その結果負のスパイラルに陥っていくアニマルホーダーに最も必要なのは「心の理解者」だと言えます。
孤独な心や深刻な心の問題を理解し、動物への執着を解いていくことが有効な対策とされています。
そのためには、専門のカウンセリングが行えるセラピスト指導のもと家族や友人が治療に協力していくことが大切ではないでしょうか。
最後に~適切な飼育を~
多頭飼育崩壊に陥る人には、一種の精神疾患があるかもしれないということがわかりました。
飼育崩壊が起こってしまった場合は、行政や専門家に頼るしかありませんが、そうなる前に私たちにできることはあるのでしょうか?
それは、「最低限の適切な飼育」を心がけましょう。
では、適切な飼育とは何なのでしょうか?簡単なことです。
避妊・去勢手術をする。
むやみに外に出さない(猫の場合)。
天寿をまっとうするまで、愛情をもって育てる。
これだけなのです。それができない場合は、一人で抱え込まずに行政などに相談しましょう。ペットはおもちゃではありません。「命あるもの」なのです。
参考サイト
フランスで2024年からペットショップでの犬猫販売禁止に 動物愛護で – ライブドアニュース (livedoor.com)
痩せ細り、糞尿まみれで…多頭飼育崩壊の痛ましい現実「犬たちよ、いま助けに行くからね」(webマガジン mi-mollet) – Yahoo!ニュース
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