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一度だけ、人の親に怒鳴られたことがある。
友達のお父さんからだ。
私は当時小学5年生だった。
学校に、身体障がいのある女の子が転校してくることになった。
体があまり動かない子だった。
その子が転校してくる1ヶ月前から、学校の雰囲気ががらりと変わった。
というのは、学校全体にバリアフリーの手すりなどが付けられたからだ。
その女の子のために先生たちも総動員。
友達のお父さんに怒られたのは、その女の子が転校してきてすぐだった。
豪雨だったその日。
私と友達は、その友達のお父さんに学校まで送ってもらえることになった。
友達のお父さんが運転する車の中で、友達と談笑していたら、何故か話題はあの体の不自由な転校生の女の子の話になった。
友達は、あまりその女の子をよく思っていないみたいだった。
「1人だけひいきされてずるい。」
「学校があの子のせいでがらりと変わった。」
「先生もあの子のせいでつきっきりじゃん」
「ずるい、ずるすぎる」
「正直、迷惑」
私は、本当はそんなこと思っていなかったけれど、気が小さかったから、「うんうん」と相槌を打っていた。
その時だった。
運転を黙ってしていたお父さんが、ぐるりと私たちの方を振り返った。
「そんなことは二度と言うな!その子は一生懸命なんだ。これからの人生で二度とそんな事は言うなよ!絶対!」
とても怖かった。
友達のお父さんの目が忘れられなかった。
真剣な眼差しで私たちをきっ!と睨んでいた。
車から出て、私はモヤモヤしていた。
「私はうなずいていただけなのに、なんで私まで?」
私は心が貧しい人間だから、つい最近まで、なんで?なんで?とずっとあの時の記憶が引っかかっていた。
元気な小学生だった私は、色々あって「障がい者」になった。
転校生だったあの子と、障がいの種類は違うけれど、同じ「障がい者」になった。
それから、「障がい者」の就労支援施設であるTANOSHIKAで働いている。
私は、自分が「障がい者」になって初めて、気付いた。
あのお父さんが、私にまで怒ってきた意味を。
頷くこと、それはつまり賛同していることで。
友達と私は同罪だった。
そうして、今、大切な障がい者の、懸命に働いている同僚たちを見て、私はあの時自分がしてしまったことに心が痛くなる。
私は、私自身が差別されるのはいいけれども、大切な障がい者のTANOSHIKAの仲間がそんな目で見られたら。
きっと私は、あのお父さんのように、その人に怒るだろう。
あの、真剣な眼差しで、大きな声で、精一杯、怒鳴るだろう。
私は、正直、身体障がい者の方の苦しみは分からない。
私は精神の障がいだからだ。
全ての苦しみが分からないから、身体の障がいを持っている人たちを傷つけないか、必要以上に怖くなる時もある。
でも、私は、もうあの時、子どもの時してしまったような、人を傷つけることはしたくない。
あのお父さんに怒鳴られてよかったと思う。
私は、あのお父さんのような親になりたいと思う。
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貴女の記事で救われたり教えられたりしている人がいると思います。これからも素敵な記事を楽しみにしています。
とても嬉しいお言葉ありがとうございます…!また頑張って書くぞー!とやる気と勇気をたくさんもらいました!これからも頑張りますので、よろしくお願いします!♡